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2022.04.08

「ちゃんとダラダラ休む」が人間に必要な納得理由|メンタル不調から回復までにたどる4つの段階


メンタル不調から回復するのに必要なこととは(写真:Ushico/PIXTA)

メンタル不調から回復するのに必要なこととは(写真:Ushico/PIXTA)

「最近何だか元気が出ない」「気持ちが沈んで、何にも興味が持てない」など、春は気温や生活の変化でメンタルの不調が起きやすい時期です。『元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術』より、メンタル不調を抱えた人が回復していくまでの4段階を紹介します。

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前回記事:「何となく不調な人」が見過ごすと危ない4サイン ※外部サイトに遷移します

ちゃんとダラダラ休むのが大事

メンタル不調には、うつ、抑うつ状態などいろいろな呼び方があります。
精神的・肉体的ストレスにより脳がうまく働かなくなっている状態が「うつ」といわれるもので、セロトニンなど神経伝達物質の枯渇によって、「心の水位」が下がってしまっているということです。あせらず、きちんと治療に向き合えば、状態は以前よりもっとよくなります。

■第1段階・ちゃんとダラダラ休む

第1段階で、とにかくちゃんと休むことが必要ですが、これがなかなか難しいのです。クリニックにいらっしゃる患者さんも、どう休んだらいいのかわからないとおっしゃいますので、ともかく初めの1か月間は、特に集中的に休んでくださいということから説明しています。

心の水位が下がる状態になる原因は、仕事の量が多すぎることや、人間関係などで、大きなストレスを抱えたことです。それによって、脳疲労を起こしているのです。脳科学的には、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの不足・枯渇が原因だろうと言われています。まずは、「ちゃんとダラダラ」休みましょう。

■第2段階・休むことに飽きてくる

第1段階でしっかり休み切ると、変な言い方ですが、休むことに飽きてくるものなのです。それと同時に、少し気持ちの活動度が上がってきます。そうしたら次のステップですね。

第2段階では、「なにかしようかな」という気持ちになってきますので、ウォーミングアップとして、ご自身の趣味とか、好きなことに時間を使い始めてもらいます。漫画でも、動画の流し見でも結構、ストーリーが頭に入ってこなくても結構、ただ眺めるだけでもOK。

初めのうちは、そんな刺激の少ない活動であっても、30分もすると疲れて嫌になってしまうものです。人によっては、「先生、今日はテレビを47分観られました」とか「今日は漫画を80ページまで読めました」という場合がありますが、そういうときは、「ちょっと頑張りすぎたんじゃないですか? まだ頑張りすぎちゃ駄目ですよ」とお話ししています。

第2段階の初めのうちは、頑張らないことを徹底していただきます。
そうして何かをやり始めていると、徐々に持続力や集中力が戻ってきます。テレビドラマや映画を観ても、ストーリーが頭に入ってこなくて、共感したりできなかったのが、徐々にできるようになってきます。このときも、仕事のメール、チャット、電話などからは、まだ離れていてもらいます。

人によって変わっていくプロセスや期間は、まちまちになりますが、だいたいで言うと、第2段階は、1カ月~3カ月ぐらいでしょうか。第2段階の後半には、集中力・感受性なども高まり、充実してきます。自分の好きなこと、興味関心のあることがだいぶできるようになってきて、自炊を始めたりもします。睡眠も、前には日中12時間ぐらい寝ていたとか、1日合計15時間寝ていたのが、「最近、朝は7時ぐらいに起きています」というように、生活リズムが整い始めてくるものです。

働く意欲が出てきているか確認

■第3段階・意欲が出てくる

第3段階への移行の目安は、意欲が出てきているかです。働く意欲、生活する意欲が出てきているかどうかを確認しましょう。そしてこの段階で、リワーク的なものを始めることになります。リワークとは、休職した場合のリハビリのことを言います。定義は広いのですが、まずは、日中ちゃんと起きているとか、ある程度の作業負荷に耐えられるようにしていくということです。

たとえば、朝起きてから、食事などを終えたら、とりあえず机に向かう。
ネットで興味のあることを検索するだけでもいいのです。作業をしているような姿勢と状況を作って、準備していくことです。

医療機関や就労移行支援・就労継続支援事業所などで、復職に至るまでの橋渡し的なシステムを用意しているところもあります。ストレスの対処法や対人コミュニケーションを学ぶようなプログラムなど、その方の状態に合わせて選ぶことができます。そうした施設を利用したほうがいいかどうかは、回復の上昇曲線によります。

特に後期になってくると、人によって回復の仕方はさまざまです。一定のレベルに達してリワークを始められるようになってから、ある程度ゆっくり回復していく方は、こうした施設を利用してじっくり復職に向かっていったほうがいいでしょう。逆に、後期にぐっと回復していくような方は、こうした施設を利用する必要はないかもしれません。

■第4段階・復職への準備を始める

第3段階で、以前の自分の生活リズムに近い過ごし方を疑似体験できたら、復職が目の前にやってきます。主治医が、そろそろ休職から復職に向かっていくというゴーサインを出すことになります。

企業によって、復職の基準はさまざまです。通勤訓練から始めることを認めている企業から、週5のフルタイムで働けないと復職を認めないという企業まであるわけです。そこで主治医は、その患者さんの勤務先が定めた基準をしっかりと踏まえて、復職の診断書を出さないといけません。

まず週に3日、会社に行って帰ってくるだけ

「だいぶ良くなってきたから、復職ですね」といった感じで軽い気持ちで診断書を出したことが、再発の大きな原因になることがあるのです。なんとなくいい軌道に乗ってきたという段階の方に、急に週5のフルタイムで仕事を再開することを課したら、相当のダメージを受けてしまいます。初めは、会社に行くというだけで大変です。まず週に3日、月水金に会社に行って帰ってくるだけといったことから始めます。

最初の月曜日に会社の前まで行って帰ってきたら、疲れて真夜中まで泥のように寝てしまったというのはよくある話です。自分がいた職場に近づくというだけでドキドキするものなのです。そういう準備段階を踏まずに、いきなり週5フルタイムなど、絶対無理ということですね。

復職の前に、通勤訓練、模擬ワーク体験、会社の方とのやりとりなどを始めておかないといけない。まずは、話しやすい人から部署の近況を聞くといったところから始めておく必要があります。

休職期間は何カ月であると決まっていても、制度を柔軟に運用してくれさえすれば、転職する人はかなり少なくなると思います。主治医は、その患者さんが属している会社の休職期間が、何カ月と定められているのか、初めの段階で聞いておくべきでしょう。

例えば1年半と聞いて、「あなたは治るのに1年半かからないし十二分な期間だと思います。だからじっくりちゃんとやりましょう」と自信を持って言える場合もあります。

場合によっては、「2カ月しかないんですか。では、僕もしっかり産業医の先生や会社の担当者の方とも話しましょう。それは、ルールがきついです。ともかくちゃんと必要な人に相談しましょう」ということになります。

不安を乗り越え、前よりもいい状態に

休職期間が終わって職場に戻ったとしても、そこから何もないわけではありません。初めは、どんな方でも、やっぱりおそるおそるです。久しぶりの社会復帰、同僚や上司との再会、緊張もするしうまくいくかもわからない。また会社に戻っていくということは、不安で、エネルギーも使うものです。

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そういう中で、「いや、もう治ったはずだから、同じことは起こらないはず」と頑張りそうになったら、それ自体がまだ回復していない発想だった、と思い出してみてください。また頑張ってしまったら、その結果、後戻りしてしまうかもしれないわけです。

ひと言で言うと、正しく恐れるということが必要だと思います。詭弁のように聞こえるかもしれませんが、正しく恐れるということをちゃんとやっていると、そんなに恐ろしいことにはならないのではないでしょうか。

いつまた何が起こるかわからないから、ともかく無理するのはやめようというふうに考えるのが、正しく恐れるということですね。僕は患者さんに、リミッターをかけるとか、アクセルとブレーキのバランスという言い方をします。

第4段階に至るまで自分のことをしっかりと見つめ直し、自分のことを理解し、自分のことをいとおしく思う、そういう体験をしてきたわけですから。ここまででお伝えしてきたように、意味ある回復のプロセスをじっくり経ることができたのであれば、そんなに簡単に、また弱ってしまったりはしません。

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提供元:「ちゃんとダラダラ休む」が人間に必要な納得理由|東洋経済オンライン

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