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2022.04.04

これで下半身がスッキリ「階段の上り方・下り方」|筋肉だけでなく骨の健康維持にもいいらしい


たるんできた下半身は、やり方次第では「身近なもの」で引き締めることが可能のようです(写真:teresa/PIXTA)

たるんできた下半身は、やり方次第では「身近なもの」で引き締めることが可能のようです(写真:teresa/PIXTA)

リモートワークで増えた体重を落としたい、低下した体力をなんとかしたい、筋力をつけたい……。日々の生活の中でそう感じている人は少なくないはず。そこで、テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授するシリーズ。6回目は「身近で効果的な運動ツール、階段の効能」をご紹介します。

自粛やリモートワークで運動量が減って体にエネルギーが余り、体重増加や健康状態の悪化をもたらしています。これを改善しようと極端に食事を減らすのは的外れで、日常生活での消費エネルギー、つまり「NEAT(非運動性身体活動時代謝)」を増やすのが根本的な解決になります。これは第5回(体内の余剰エネルギー燃やす「チリツモ」の超工夫)で話した通りです。

体内の余剰エネルギー燃やす「チリツモ」の超工夫 ※外部サイトに遷移します

運動不足によって筋肉が減って基礎代謝が下がることも、体にエネルギーが余る原因の1つ。特に筋肉が落ちやすいのは下半身の筋肉で、とりわけ太ももの前側の筋肉である大腿四頭筋の筋肉量と筋力の低下は顕著です。

では、この大腿四頭筋の筋力と筋肉量を高めるために、最も効果的な日常生活動作はどれでしょうか?

 A 歩行
 B 階段上り
 C 階段下り

膝を曲げる角度が大きいほど負荷が上がる

答えは「Cの階段下り」です。いかがでしたか? 案外、Bと答えた方が多いのではないでしょうか。

歩行ではさほど大腿四頭筋を鍛える効果がないのは、皆さんも普段の生活で実感されていることと思います。立った状態では膝を曲げる角度が大きくなるほど大腿四頭筋にかかる負荷も大きくなるのですが、歩行時は膝をほとんど曲げないため、大腿四頭筋にかかる負荷は非常に小さく、鍛える効果はほとんどないのです。

これに対して階段昇降時には、膝を45°程度(膝を伸ばした状態が基準)曲げるため、大腿四頭筋に大きな負荷がかかります。

では、階段の上りと下りではどちらのほうが効果的なのか。

実感としては、階段を下るより上るほうがキツく感じます。ところが、つらく感じる階段上りよりも、ラクに感じる階段下りのほうが、健康や美容の要となる大腿四頭筋を鍛える効果があるのです。

今回は、その理由と効果的な階段の使い方をご説明します。

まず、階段の上りと下りでは「筋肉の収縮の仕方」が異なります。

階段の上りと下りで使う筋肉が違う

筋肉の収縮の仕方は、大きく2つに分けられます。1つは重りを持ち上げるときに筋肉が縮みながら力を発揮するもの、もう1つは重りを下ろしていくときに筋肉が伸ばされながら力を発揮するものです。

前者を「コンセントリックな収縮(短縮性収縮)」、後者を「エキセントリックな収縮(伸張性収縮)」と呼びます。階段昇降では、上りで下半身の筋肉がコンセントリックな収縮をし、下りでエキセントリックな収縮をします。

筋トレではこれまで、コンセントリックな収縮に重点が置かれてきました。しかし近年、オーストラリア・エディスコーワン大学の野坂和則教授らの研究によって、コンセントリックな収縮よりもエキセントリックな収縮のほうが筋肉を鍛える効果が高いことが明らかになってきたのです。

階段下りのほうが大腿四頭筋を鍛える効果が高い理由は、もう1つあります。それは両者で使う筋肉が異なることです。

階段を上る際には、上段側にある足の膝関節と股関節が曲がり、両関節が伸びることで体が持ち上がります。膝を伸ばす筋肉は大腿四頭筋、股関節を伸ばす筋肉はお尻の大殿筋です。上りではこの2つの筋肉が協働して体を持ち上げるため、負荷が分散します。

これに対して、階段の下りでは上段側にある膝だけが曲がり、大腿四頭筋のみで体を支えることになります。膝の曲がる角度も下りのほうが大きいので、大腿四頭筋により大きな負荷がかかります。

これらの理由から、階段下りは最も衰えやすい大腿四頭筋を鍛える効果的な運動というわけです。

階段下りの効果はこれにとどまらず、体の支柱である骨を鍛える効果もあります。

筋肉量も骨量も、基本的には加齢に伴って減少していきますが、骨は筋肉と違って、高齢になると増やすことがほとんどできません。骨量が落ちるとちょっとした衝撃でも骨折しやすくなり、しかもなかなか回復しません。骨は弱くなってもそれに気付かないため、厄介です。30~40代でも少しずつ骨量は落ちているので、将来のために骨を鍛えることが大切です。

骨は、骨を破壊する破骨細胞と、骨をつくる骨芽細胞の両者が働くことで、日々新しく丈夫な骨へと新陳代謝が行われます。

骨芽細胞の働きを促すのは、骨に対する縦方向の刺激です。立った姿勢で足裏から体に加わった衝撃が骨に伝わることで、骨の新陳代謝が促されるのです。日常生活ではジャンプのように骨に刺激を与えるダイナミックな動作はほぼ皆無ですが、その例外的な運動が「階段下り」です。

私が行った実験では、その場で連続ジャンプを行うのと、階段を下るのとでは、同程度の衝撃が体に加わることがわかりました。

日常生活動作でありながら、筋肉も骨も鍛えることができ、しかもラクにできる階段下り。今すぐ始めて損はありません。1日合計4フロア分の階段下りを週に3回続けるだけで十分な効果が得られます。

ランチと帰宅時間に階段を利用すればOK

オフィスが3階にあるなら、ランチと帰宅の際に下り階段を利用すればクリアできます。数週間続けるだけでも大腿四頭筋の筋力アップが実感できるはずです。実感はできませんが、骨量も確実に増えています。

階段下りを行う際に注意すべき点は3点です。

1点目は勢いにまかせずゆっくりと下ること。重力で加速がつくため、勢いがつき過ぎると階段を踏み外したり、転落したりするリスクがあります。ゆっくり下れば、エキセントリックな収縮をしっかり行うことになるので、筋トレとしての効果を最大限に引き出すこともできます。

2点目は手すりに手を置くことです。コロナ禍で手すりに触れるのには抵抗があるかもしれませんが、少なくとも手を近くに置いておいてバランスが崩れたらすぐに握れるようにしておきましょう。

3点目は正しい姿勢を取ること。つま先を正面に向けて、足と足の幅を狭くとり、骨盤を立てて背すじを伸ばします。こうすることで正しく下半身の筋肉を使えるようになるとともに、膝や股関節にかかる余計なストレスを防ぐことができます。

大腿四頭筋の力がついたら、階段上りも取り入れましょう。

階段上りでは股関節の動きが大きくなるため、大殿筋も使われます。大殿筋は大腿四頭筋と並んで強く大きな筋肉で、各種のスポーツ動作はもちろん、日常生活動作でも活動源となる大きなエネルギーを生み出します。

階段上りの動作は、筋トレの王様といわれるスクワットの動作と酷似しています。スクワットと比較して関節の動きは半分程度ですが、片脚で行うので、実際には自重を用いたスクワットと遜色ないエクササイズです。

大殿筋以外に太もも裏にあるハムストリングスからふくらはぎの下腿三頭筋まで、下半身全体をまんべんなく鍛える効果がありますので、階段下りに慣れたら階段上りをお勧めします。

階段上りは下りと違い勢いがつきにくいですが、念のため手すりの近くに手を置いておきましょう。また、スピードを上げると筋肉に負荷がかかりにくいだけでなく、つま先を階段に引っ掛けて転倒しやすいので、ゆっくり前側の足で踏みしめるように足を進めましょう。つま先を正面に向けたよい姿勢を取るのも、階段下りと同様です。

以上のように、何気なく使っている階段もやり方によっては非常によい筋肉と骨のトレーニングになります。「NEAT」を増やすため、筋肉をつけるために、取り入れていただければと思います。

筋力を付ける階段上り下りのやり方

■階段下り(大腿四頭筋を鍛える)

(1)階段の端に立ち、階段側の手を手すりの近くに置く。両足のつま先を正面に向けて、背すじを伸ばしたら片方の脚を伸ばしたまま前に出す
(2)後ろ側の膝をゆっくりと曲げて体を下ろし、つま先、かかとの順で前側の足を下の段に置く。同様にゆっくりと左右交互に足を進めて階段を下る
※足の内側(親指側)を意識して、つま先を階段に下ろす

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■階段上り(下半身の筋肉をまんべんなく鍛え、平衡性と股関節の柔軟性も高める)

(1)階段の端に立ち、階段側の手を手すりの近くに置く。両足のつま先を正面に向けて、背すじを伸ばす
(2)片方の足を上の段に乗せて体重をあずけたら、前側の脚を伸ばしながら体を引き上げる。同様にゆっくりと左右交互に足を進めて階段を下る
※前側の足で階段を踏みしめるようにゆっくりと上る。後ろ側の脚では階段を蹴らない

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余裕ができたらぜひチャレンジしていただきたいのが、「階段の1段抜かし上り」です。

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1段抜かすだけで体重相当の重さのバーベルを担いでスクワットをするのと同程度の負荷になりますし、片足立ちの時間が長いために平衡性(バランス維持能力)も高まります。また、股関節を大きく動かすため、お尻ともも裏の柔軟性を高めることもできます。

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提供元:これで下半身がスッキリ「階段の上り方・下り方」|東洋経済オンライン

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