2022.03.18
平気で「糖質オフ食品」を買う人の3大深刻盲点|「麺類、お菓子、調味料…」その食品は安全か?
「糖質オフ」をうたう食品がたくさん販売されていますが……(写真:スムース/PIXTA)
食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、新聞、雑誌、テレビにも取り上げられるなど大きな反響を呼んだ『食品の裏側』を2005年に上梓した安部司氏。70万部を突破する大ベストセラーとなり、中国、台湾、韓国でも翻訳出版され、いまもなおロングセラーになっている。
その安部氏が、『食品の裏側』を発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、このたび『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』を上梓した。15年の間に書きためた膨大なレシピノートの中から、たった5つの「魔法の調味料」さえ作れば、簡単に時短に作れるレシピを厳選した1冊だ。
発売後、たちまち7刷6万部を突破し、各メディアで取り上げられるなど、大きな話題を呼んでいる安部氏が「平気で『糖質オフ食品』を買う人が知らない残念な真実」について語る。
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「糖質オフ食品」という一大市場
世の中、「糖質オフ・ロカボ(低糖質)食品」が花盛りです。
この記事を書くためにスーパーやコンビニをリサーチしたのですが、驚くほど糖質オフ食品が増えています。
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レトルトのご飯、パン、カップ麺、パスタ、シリアル、ハム・ソーセージ、レトルトカレー……。それからチョコレート、クッキー、キャンディ、アイスクリームなどのお菓子類。さらにはソフトドリンク、酒類、調味料まで。
まさに一大市場となりつつあるようです。
なかには「これはもともと(の性質として)糖質は低いよね?」というものまで、ちゃっかり「糖質オフ」と銘打っていたりして、なんとも商魂たくましいというか……。
この20年ほど、日本では「糖質制限ダイエット」が流行しています。もともと糖質制限食は糖尿病の治療の一環として行われていたものですが、ダイエットにも応用できるとして紹介されて以来、爆発的に広まりました。
糖質制限ダイエットについては、短期間で行う分には非常に効果があるけれど、長期間続けるものではない、リバウンドしやすいなど、いろいろ意見があります。近年ではマウスの実験で長期的に続けると老化が早まるという結果を指摘する人もいますが、私はその分野の専門家ではないので、糖質制限食の是非に意見するつもりはありません。
ただ、食品加工・開発に長年携わってきた経験からして、今流行りの「糖質オフ食品」には、思わぬ「落とし穴」があるように思えてならないのです。
チョコレートやお菓子など、本来「砂糖」が使われるべき食品を「糖質カット」するためにはどうすると思われますか? 代替品、つまり「人工甘味料」が使われます。
糖質オフの陰で使われる「あるモノ」とは…?
【落とし穴1】「人工甘味料」が使われている
この人工甘味料にもその時々の流行みたいなものがあって、最近よく使われるのは「スクラロース」「アセスルファムK」「アスパルテーム」などなど。新しいものが開発されると、また流行も変わります。
これらの「人工甘味料」はどれもカロリーがほぼゼロなので、「糖質オフ食品」を作る時にはとても便利なのです。
しかも価格は砂糖よりはるかに安く上がります。「アセスルファムK」は砂糖の200倍、「スクラロース」などは砂糖の600倍の甘みを持ちます。つまり少量でよく効くから、大変コスパがいいのです。お菓子や清涼飲料水だけでなく、卵焼きなどのお惣菜などにも「砂糖不使用」とうたうために、よく使われます。
人工甘味料は国が認可したものではあるけれど、専門家の間でも賛否両論あり、長期的に摂り続けた場合の安全性を懸念する声もあります。
私は人工甘味料のあの独特な甘さが好きではありません。それぞれ味は違いますが、砂糖の純粋な甘さと違う、舌に残る味です。もちろん気にならないという人はそれでいいのですが……。
要は、糖質オフ食品は「砂糖は摂らないけれど、人工甘味料は摂る」ことになりかねないわけで、「みなさん、それでもいいのですか……?」ということを私は問いたいのです。
お酒の世界でも糖質オフが流行っていて、「糖質オフビール・発泡酒」ばかりか、「糖質オフ日本酒」というものまで出ています。私もこれらのお酒を飲んだことがありますが、ハッキリ言って少なくとも私には、「本来のおいしさ」を感じることができませんでした。
糖質オフビール、おいしいと思いますか?
【落とし穴2】「おいしさ」が犠牲になりがち
というのも、お酒やビールというのは、中に含まれているでんぷん(デキストリン)やブドウ糖といった糖分こそが「うま味」なのですが、「糖質オフ」にしているため、それが抜けてしまっているのです。
また、ビールは麦芽のでんぷんが酵素の働きで糖に変わることで、独自のコクや風味が出ますが、「糖質オフ」で糖分が少なくなると、そのコクや風味が生まれにくくなります。
もちろんメーカーや商品によって違いがありますが、「糖質オフ」をうたう「発泡酒」や「新ジャンルビール」の中には、「酸味料」「乳化剤」「カラメル色素」「調味料(アミノ酸等)」「酸化防止剤」「アセスルファムK」「香料」などが使われているものも売られています。本来、ビールの原料は「麦芽、ホップ、水」なのにもかかわらず、です。
酒飲みの一意見として言わせてもらえば、そういう商品では「ビール本来のおいしさ・楽しさ」を十分に感じることができず、「おいしさが犠牲」になっているように感じます。
【落とし穴3】他で糖質を摂ったら意味がない
しかし、糖質オフ食品で減らせる糖質は、はたしてどのぐらいなのでしょうか。たとえば、うちの冷蔵庫にあったビールの糖質は100ミリリットルで3グラムです。350ミリリットル缶で10グラムちょっと、500ミリリットル缶でも15グラムです。
ここでがんばって10グラムの糖質をカットしたとしても、ジュース1本、缶コーヒー1本飲んだら、帳消しどころか、糖質超過です。
「日本人の体を壊す『隠れ糖質』とりすぎの深刻盲点」でも述べたように、500ミリリットルの清涼飲料水には「50~60グラムの糖類」が含まれているものも少なくありません。
要は、別のところで糖質を摂取していたら意味がないのです。どうも「糖質オフ食品」を一生懸命選んでいる人に限って、そういうバランスの悪さがあるような気がしてなりません。
「日本人の体を壊す『隠れ糖質』とりすぎの深刻盲点」 ※外部サイトに遷移します
私が15年かけて開発したレシピ集『安部ごはん』は、ご飯、味噌汁を中心に、バランスの良い副菜を摂るという、昔ながらの「和食」です。
和食ですから、もちろん砂糖もしっかり使います。砂糖は和食のおいしさを引き立てる欠かせない調味料です。
たとえば安部ごはんの「魔法の調味料」のひとつに「かえし」があります。
「かえし」はしょうゆ100ミリリットルに対して砂糖30グラムの割合でブレンドさせたもので、安部ごはんのベースともいえる欠かせない調味料です。
「料理家も絶賛!『魔法の調味料』5つは便利すぎだ」を見ていただければおわかりのように、これひとつで肉じゃが、親子丼、牛丼、しょうが焼き、おにぎり、鍋などなど万能に使えます。
ちなみにこの「かえし」に対して「砂糖の量が多い」「甘い」という意見が寄せられます。本を見て実際に作ってくださるのは本当にありがたいことですが、「10対3」は必ずしもその通りでなくてもいいのです。
味覚は人によって異なります。「甘すぎる」「もっと砂糖を控えたい」と思うなら、20グラム、15グラムというように量を調整してください。
そもそも他の料理家のレシピでは、しょうゆと砂糖を「1対1」で使うことが多く、それに比べれば「安部ごはん」はかなり砂糖の量は少ないと思います。
「料理家も絶賛!『魔法の調味料』5つは便利すぎだ」 ※外部サイトに遷移します
「70歳で健康そのもの」秘訣は和食!
私自身、長年和食を食べてきた……というより、ほぼ和食しか食べないし、糖質のことなど一度も気にしたこともありません。ご飯も3食、しっかりいただきます。
自ら開発した「魔法の調味料」を手にもつ安部司さん。昨年末に70歳を迎えた(写真:佳川奈央)
ただ、甘い菓子、スナック菓子、カップ麺、甘いドリンクなどは、仕事上の理由でもない限り、一切口にしません。それを考えると、トータルでは、糖質はそれほど摂っていないと思います。
こうした食生活を続けてきて、70歳を過ぎて、「血圧」「血糖値」「中性脂肪」などの生活習慣病は何もなし。血液検査もすべて正常値です。お酒の飲みすぎの反省はあるけれど、健康そのものです。
結局は「食べ方」と「バランス」の問題だと思うのです。
みなさんも目先の「糖質オフ」ではなく、「トータルのバランス」を考えて、健康的な食生活をおくっていただきたいと切に願います。
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提供元:平気で「糖質オフ食品」を買う人の3大深刻盲点|東洋経済オンライン