2022.03.07
人生100年時代、介護は「25年」もの超長期戦になる|親子共倒れを防ぐために重要なことは一体何か
長寿化の影響で、介護の期間も長期化しています。親子共倒れにならないためには何が必要なのでしょうか?(写真:kazuma seki/GettyImages)
超高齢化社会の今は、親も自分も100歳まで生きる前提で考えておくのがベター。子どもが親の介護に「時間」も「お金」もガッツリ費やした場合、自分が老後を迎えた際に破綻が待っている……という可能性もゼロではありません。そんな現代の介護では、自分の「時間」と「お金」を守ることが大切であり、さまざまな制度やサービスについて知ることが重要なようです。
介護歴約20年の経歴をもち、厚生労働省の補助事業「GO!GO!KAI-GOプロジェクト」の副団長でもある、お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと、介護・暮らしジャーナリストである太田差惠子さんとの共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』から一部抜粋・再構成してお届けします。
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自分の「時間」と「お金」は確保すべし
安藤:自分の子どもが成人して一段落ついたとホッとした頃、親の様子がなんとなくおかしい、という人が多くなりますよね。
太田:そうなんです。子育ての手が離れた頃に、親から「ちょっと転んだ」「腰が痛い」など、ちょくちょく呼ばれることが増えてきます。何でも、「はいはい」と聞いてしまうと、子ども自身の身がもたなくなりますよ。
安藤:でも、今まで育ててくれた親には、できる限りのことはしてあげたいと思うのは当然な気もしますが……。
太田:いえいえ、そこでいいかっこうをするのは、禁物なんです。たとえば、自宅から実家まで、片道1時間とします。毎週実家に通っていると、往復2時間、1年に換算すると、100時間以上にもなります。もし子どもが50歳、親が75歳だとすると、人生100年時代だから、これがあと25年は続くんですよ。
安藤:えええ! 25年も。しかも25年後、子どもは75歳だ。とても体がもちませんね。
太田:交通費だって片道1000円なら往復2000円。1年で約10万円。25年で250万円ですよ。
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安藤:250万円って……新車1台分より高いじゃないですか! バカにならないですね……。
太田:子どもだって、100歳まで生きるんです。その老後資金の250万円が、親のための交通費に飛んでしまうんですよ。子どもが老後破綻になることだってなくはないです。
安藤:まさに、親子共倒れ……。
太田:介護は「就職」「結婚」「出産」と同じライフステージのひとつと考えて、親には、お金も気持ちも自立してもらって子どもはドライに割り切ることが大切なんです。
安藤:ライフステージのひとつ。考えたこともなかった。でもやっぱり親のことを見捨てるなんてできない……。
太田:そこで、上手に活用したいのが「介護保険サービス」や「自治体が独自に行うサービス」です。美味しいご飯が食べたいならレストランに行くように、プロのヘルパーさんや、地域のボランティアサービスをどしどし利用しましょう。親の介護をきっちりサポートしてくれます。
安藤:なるほど! 親の介護は、親のお金でプロのサービスを使い倒すってことですね。プロに任すことで、子どもは自分の時間を確保することができますね。
はじめにやるべきは「介護体制作り」
安藤:親の介護って、やっぱり子どもが全面的にやらなければいけないって思ってしまうのですが。離れて暮らしていると難しいような。
太田:親に介護が必要になったら、介護の体制作りをまず考えます。介護を「ひとつのプロジェクト」と考え、サポートできる人たちをそのメンバーと考えます。
安藤:「ひとつのプロジェクト」ですね。 みんなが親の介護というプロジェクトのために一致団結するってことですね!
太田:参加するメンバーには、まずは、介護の中心を担う「主たる介護者」がいます。通常、両親がそろっていれば、元気なほうの親が担当し、主な役割としては、身体的なケアや精神的なケアを担います。
安藤:元気なほうの親か……。でも介護する親も高齢だとなかなか大変ですよね。
太田:もちろん、すべてを1人ではやりきれません。できない部分を子どもがサポートしたり、プロの手を借りたりなど、みんなで役割を分担していくのです。この人たちもプロジェクトのメンバーなのです。主たる介護者の役割として、もう1つ「キーパーソン」と呼ばれる役割があります。
安藤:「キーパーソン」って何ですか? なんだか重要そうな響き……。
太田:キーパーソンの主な役割は、外部との「調整・交渉・手続き」の窓口となり、家族間の意見のとりまとめをする人です。たとえば、介護サービスを利用する場合、申し込みや契約などの手続きが必要になります。またサポートする家族が複数いる場合も、外部との窓口は1つにしておかないと混乱するだけ。こういった役割は、必ずしも身近に暮らしている人がベストとは限りません。離れて暮らしている子どもでもできる役割なのです。
安藤:なるほど! 外部との交渉や調整は、普段仕事をしている子どものほうが向いていそうですね。
太田:親の介護で子どもがやるべきもう1つの役割として、親の介護を「マネジメント」していくことを提案します。
安藤:「マネジメント」とは? タレントのマネージャーみたいですね。
太田:最初にお話しした通り、親も子どもも105歳まで生きる可能性があります。いつ終わるかわからない介護を息切れせずに、続けられるように、環境を整えてあげることが「マネジメント」の考え方です。
安藤:環境を整える? 確かにマネージャーは、タレントが仕事をしやすいように環境を整えてくれる存在ですね。介護でも、ヘルパーさんと一緒になって介護の現場に入り込むより、冷静な視点で介護がスムーズにいく環境を整えることが大切なのですね。
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太田:まず、マネジメントの手始めとして、親は、何ができて何ができないのかを確認します。親ができないことを自分がサポートできないなら、手を出さずに代役=サービスや制度を探すようにしましょう。
安藤:子どもが離れて暮らしていると、日々の身の回りのお世話のために通うわけにはいかないからサービスを使うことは必須ですね。
太田:適切なサービスや制度を探すためには、情報収集が不可欠です。介護保険制度を理解して、適切なサービスを受けられるように子どもがサポートしてあげましょう。
安藤:介護保険制度って言われても難しそうで理解できる気がしない! でも弱っている親より子どもが勉強して理解しておくべきですよね。
太田:その通り! たとえば、親の体調が思わしくなく、歩行が難しくなってきた、ということで相談が必要な場合、親は説明に手間取るでしょう。子どもが、代わりに状況を説明して、適切な手立てを段取りする必要があります。親に代わって状況を理解して、適切なサービスを受けられるように環境を整えていくことが「マネジメント」の役割です。
安藤:わかりました。難しいと嫌がらずに、理解するように頑張ります!
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提供元:人生100年時代、介護は「25年」もの超長期戦になる|東洋経済オンライン