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2022.01.31

所持品ゼロ生活で気づいた「着る服がない」の真因|悩んだ末に「60点の服」ばかり着ていませんか


自分にとって本当に必要なものは何か、生活とは何かを考えてみませんか(写真:NOBU/PIXTA)

自分にとって本当に必要なものは何か、生活とは何かを考えてみませんか(写真:NOBU/PIXTA)

掃除を始めたものの家にあふれかえるモノに悩み、「いっそのこと全部捨てたい!」とやけになったことはないでしょうか。実際に「何もない部屋」に住み、「1日1個」物を増やしていく生活を100日間チャレンジしたのが、文筆家・ラジオパーソナリティーとして活躍する藤岡みなみさんです。
その生活を通し、自分にとって本当に必要なものは何か、生活とは何か、といったことが浮き彫りになっていったといいます。新著『ふやすミニマリスト 1日1つだけモノを増やす生活を100日間してわかった100のこと』では、藤岡さんによる100日間の記録や気づきがつづられています。本稿は、同書から一部抜粋・再構成してお届けします。

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おたまだけで8つも持っていた

ずっと家にいながらにして、サバイバルな挑戦。所持品ほぼゼロでスタートし、1日1つだけ道具を取り出せるというルールで100日間生活してみました。きっかけは、『100日間のシンプルライフ』という映画についてのコメント依頼をいただいたことです。

私が映画を観て抱いた感想は「やってみたい!」というものでした。コメントを依頼されただけなのに。

もともと私の家はシンプルライフにはほど遠い状態でした。おたまだけで8つも持っているし、10年前のもう着ない服も捨てられないし、くだらないものであればあるほど集めたくなる性格で、変なお面だけをしまってある引き出しがあります。冷静に考えると、そんな私がモノのない暮らしに耐えられるとは思えませんでした。

チャレンジを始めたのは2020年の夏の終わり。

映画では、家じゅうのすべての道具を倉庫に預けて毎日取りに行くというシステムでしたが、さすがにそれは大変すぎるので自宅とは別に新しく家を借りて挑戦しています。また、下着や最初の服、コンタクト、その他マスクや消毒液などは初期装備としてノーカウントにしました。

これでかなりハードルが下がるのですが、それでも布団や包丁など基本的な道具のない生活は困難の連続で、人生をリセットしてレベル0からやり直しているような強烈な新鮮さがありました。

〈ルール〉

•自宅から1日1つだけモノを取り出せる
•食料の購入はOK(調味料は毎回カウントする)
•電気・ガス・水道のライフラインは完備
•最低限必要な初期装備を設定
•期間は100日間

日常で当たり前のように思っていたことが覆される場面もあれば、なぜこのことに気づかずに生きていたんだろうと思うこともあり、生まれて初めて「暮らす」ってどんなことなのか本気で考えました。それは、ただ生き延びるということとは違うものでした。

その中から、今回は「衣類に関する発見」をまとめてみようと思います。

100日間で選んだ衣類に関するモノたち

100日の間に選んだ衣服に関するアイテムの一部は以下のとおり。

・3日目…スニーカー
・5日目…パーカーワンピース
・11日目…洗濯機
・23日目…防寒レギンス 
・32日目…防寒インナートップス 
・45日目…パジャマ  ほか

<衣類に関する発見>

●いつも同じ服を着ていると思われてもなんの問題もない

人の目が気になる性格だ。また同じ服着てるって思われたら嫌だな、とつねに考えていた。人前に出る仕事も多いので、これはあの時も着たから……と、好きなのにそれ以降封印してしまう服もある。

そのくせ、今日会った人がどんな服を着ていたかは全然思い出せない。興味はある。おしゃれだなあ、という感想は持ったけれど、思い出そうとすると何色だったかすらよくわからない。きっとそういう人は多いと思う。

よく考えてみると、同じ服を着ていると思われたくないというよりも、自分自身が同じ服を着ることに飽きていたのだった。ものすごく飽き性で、とても気に入って買ったのに2回くらい着て出かけたらすぅっとときめきが色褪せてしまった、ということが何度もあった。人の目を言い訳にしていたけれど、本当に向き合うべきだったのはなぜ飽きてしまうのかという部分だったのかもしれない。

また同じ服着てる、といちいち思うほど、おそらく人は他人に興味がない。もしも、また同じ服着てるね、と言われたら「そう、スティーブ・ジョブズ目指してる」とか言っておけばいい。2回で飽きてしまう服をとっかえひっかえ着ているよりも、いつも文句なく好きでいられる服を大事に堂々と着ている自分になりたい。

本当に好きな服は毎日着ても飽きない

このことに気づけてよかった。私はどうせ飽き性だから、何度も同じ服を着たら飽きてしまうのが当たり前だ、と感じていた。

でも違った。1日1つずつしかアイテムを取り出すことができないので、何を選ぶかは時間をかけて真剣に考える。おでこにふわっと浮かんだアイデアではなく、みぞおちの奥から湧き上がる「我、これを欲す」みたいな要求に耳をすまし、自分と相談して1つひとつ決めていった。そうやって選んだ服は本当に好きな服だったし、本当に好きな服は毎日のように着ても全然飽きなかった。

ここでいう「本当」とは、自分もまだ発見していなかった真実のこと。まだ気づいていない、というよりまだ生み出していない「真の好き」があった。これまでは悩んでいる時間が無駄だと思っていたけれど、自分に必要かどうか考える時間は、かければかけるほどその選んだものへの愛に変わるのだとわかった。悩むことで好きの形がはっきりして、どうして好きなのかがわかると愛着を持つことができるのかもしれない。

シンプルライフでは、選ぶほど持ってないから選ばなくていい。洗い上がっているものを着るだけ。服選びをスキップできるというのは、家事が1つなくなるくらい軽やかだった。

誰にも会わない日でも、何を着るか少しは迷う。家で大事な服を着てヨレヨレにしてしまいたくない。でも気の抜けた服ばかり着ているとやる気も出ない。長いと10分くらい悩んで、結局よそ行きと部屋着の間みたいな、どうも思ってないけれどひどすぎない60点くらいの服に落ち着く。悩んだ末に60点はつらい。その繰り返しでほんの少しずつ自分を大事にできなくなっていくんだとしたらもっとつらい。

ずっと白が着たかった。好きな色だし、顔色もよく見える。着るレフ板。でも醤油をこぼすことにかけては右に出る者がいない私なので、ずっとためらってきた。シンプルライフではあえて白いパーカーを選び、手持ちの服が少ないからこの白いパーカーを着るしかない、という状況を作ってみた。汚すのこわいな〜どうしようかな〜と思わずに、有無を言わさず白を着る生活。

気持ちいい。好きな服しかないと好きな服を着るしかない。毎日同じような服を着るといっても、学生時代の制服と違うのはそういうところだ。

服を減らすなら洗濯に強いことが重要

初めのうちは2着くらいでやりくりしていたので、毎日洗って回転させていけることが第一条件だった。これまで洗いやすさを基準に服を選んでこなかったため、手持ちの服は一度洗っただけでピタピタに縮んでしまいそうな服や、破け散ってしまいそうな服、プリーツが無に帰してしまいそうな服ばかり。

もちろん、繊細なレースがついているようなたまのおしゃれ着も大切だけど、まずは基本の丈夫な服をそろえて、そのうえでクリーニング店に持っていく服は1、2割ぐらいがいいのかも、と思うようになった。これまでは8割が洗いづらい服で、結局2割の丈夫だけどどうでもいい服をよく着てしまっていた。タフな服を選ぶということは、長い目で見て付き合っていける服を選ぶということ。心地よさの基盤になるし、エコでもある。

洗濯機に再会した時、改めて一番尊敬したポイントは脱水機能だった。手洗いの場合、水を絞りきれず乾くまでに時間がかかりすぎるばかりか、絞れば絞るほど服がしわしわになるという問題に悩まされていた。絞りたいけど絞りたくない。私はどうしたらいい。遠心力を使って水気を切るという洗濯機の仕組みは絶妙なんだなと思った。私にはできない。

乾燥機能もついているため、汚れた衣類を入れてから3時間ほどでまた着られる状態に戻してくれる。手洗い作業の時間と乾燥を待つ時間がカットされ、洗濯機に自由時間をプレゼントしてもらった気がした。乾燥が完了した服やタオルはホカホカで、それは別にそういうサービスじゃないというか、単に乾燥させるために熱が必要だっただけだとわかっていても、洗濯機からの愛に感じる。洗濯機をリスペクトでき、さらに愛も感じられたので、一旦別れてみてよかった。勘違いかもしれないけれど洗濯機と両想いになれた。

まとめ:発見できたのは自分の正体

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1日1つ道具を増やしていく生活を通して見えてきたのは、新しいライフスタイルというよりも、自分自身の姿や人生の時間の本質でした。

暮らしと自分と時間は切り離せない、ほとんど同じものだということなのかもしれません。暮らしを愛することは自分を愛することだし、時間を大事にすることは暮らしを大事にすることでした。

なかなか気軽に「ぜひ皆さんもやってみてください!」と言えるチャレンジではありませんが、私の体験を通して暮らしを再発見していく感覚を一緒に味わってもらえたらうれしいです。

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提供元:所持品ゼロ生活で気づいた「着る服がない」の真因|東洋経済オンライン

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