2022.01.26
「寒くなると体が痛む」は手足の冷えが原因かも|自覚がない「隠れ冷え」に陥っている可能性も
万病の元「手足の冷え」。放っておかずちゃんと対策をとっていますか?(写真:Ushico/PIXTA)
漢方には「未病」という言葉があります。
未病とは病気の一歩手前、「何だか調子が悪いな」という状態を指します。病院で検査をしても何も問題が見つからず、「加齢ですね」「様子を見ましょう」で終わることも少なくありません。
結局、対処法が見つからず普通に生活もできるので、そのままにしがちですが、放っておくとジワジワと進行して、大きな病気のきっかけになってしまうこともあります。
冷えは、まさにこの未病の代表です。体が冷えると、健康を保つために必要な血液の循環が悪くなり、酸素や栄養が体内にうまく行き渡らなくなります。また、大きな病気のサインとして冷えが生じることもあります。
わきの下に手を入れて温め、その手で足先を触ってみてください。冷たく感じたら足が冷えている証拠です。実際、治療の際に靴下を脱いでベッドに横たわっていただくと、氷のように冷たい足の人がとても多いです。
冷えを自覚できる人はまだ救いがあるかもしれません。実は、現代人に増えているのが、自覚のない「隠れ冷え」です。本人に冷えている自覚がないので、そのまま放置しがちなのです。
冷えに気付かない「隠れ冷え」かチェック
まずは、以下の隠れ冷えチェックを試してみてください。当てはまる項目が1つでもあればあれば、隠れ冷えの可能性があります。
■隠れ冷えチェック
□テレワークが増え出勤がなくなった
□足先に手を当てると冷たい
□平熱が 35度台である
□目の下にクマがある
□上半身は暑い、または汗をかきやすい
□寒いときでも手足がほてる
□階段よりもエスカレーターを選ぶ
□ペットボトルをつねに持ち歩いている
□肩こりや片頭痛に悩んでいる
□湯船に入らず、シャワーですませることが多い
□足が冷えて、または熱くて眠れないことがある
□立ち仕事、あるいは座り仕事が多く、あまり動かない
□寝不足の日が多い
冷えはまさに体が発するSOSのサイン、黄色信号ともいえます。赤信号に変わる前に正しいケアをすることが重要です。そのようなときに強い味方になるのが、漢方です。
漢方には「不通則痛(通ぜざれば則ち痛む)」という言葉があります。
漢方でいうところの「気(生命エネルギー)」や「血(血液やその働き)」の流れが悪くなると、痛みが生じるという意味ですが、実際、体が冷えると血管が収縮して血流が悪くなり、痛みを生じます。
当院にも今の時期に腰痛、膝痛などがひどくなったと訴える患者さんが来院しますが、ほぼすべて冷えが原因といえます。特に多いのが、"足の冷えがもたらす痛み"です。冷たい足を巡った血は、膝や腰を通過して内臓を巡ります。手足が冷却装置のようになり、冷たい血が循環するとさまざまな痛みを生じやすいのです。
また、女性には冷えによる特有の問題もあります。
足の内側には、婦人科と関係が深い経絡が3本通っています。特に重要な肝経(かんけい)という経絡は、足親指を起点に足の内側を通って子宮につながっています。
足が冷えると子宮も冷え、月経痛や不妊症など、さまざまな婦人科系の疾患の原因になります。実際、私の治療院に来られている患者さんにも、冷えを改善して月経痛がなくなったり、赤ちゃんを授かったりされた方が数多くいらっしゃいます。
手足の冷えを改善するセルフケア
こうした手足の冷えは、セルフケアで改善が可能です。ぜひ試してみてください。
(1)運動で血行促進、筋肉をつける
冷えの根本的な改善法は、とにかく筋肉をつけ、血流を良くすることに尽きます。筋肉がついて血流が改善すれば、自然と冷えは解消されます。
足の冷えを訴える方は、膝から下が棒のように細い、あるいはむくみがあって上半身に比べて不自然に足が太い、このどちらかです。両者に共通しているのは、筋肉が少ないということです。ですので、とにかくこまめに体を動かして、筋肉をつけていただきたいと思います。
ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの運動もいいですが、エレベーターではなく階段を使う、座っているときは足首から下を上下に運かすといったことでも、十分に効果が見込めます。
コロナ禍で通勤が減り運動不足になった人も多く、「ここ2年で急に足が冷えるようになった」と訴える患者さんも多く来院されます。自宅で過ごす時間を上手に利用し、意識して体を動かすようにしましょう。雑巾がけや窓拭きなどの家事も立派な運動です。
運動は、少し汗ばむくらいがちょうどよく、たくさん汗をかくのは毛穴から気が漏れ、かえって冷えを招くのでよくありません。入浴も汗をかきすぎないよう気をつけてください。
このほか、足指から足の甲、足裏、足関節、足首、ふくらはぎ……というように、下から上へとやさしく5~10分くらいかけて揉みほぐすのも、筋肉によい刺激となります。
(2)冷える前に温める
冷えが強い患者さんだと、医療用の温熱器で30分以上温めても足が冷たいままということがあります。ここで言いたいのは、「冷えきってしまった足を温めるのは、大変」ということです。ですので、足が冷えてから温めるのではなく、冷えないような工夫が大切です。
家にいるときは、保温効果のある靴下やレッグウォーマーを履き、それでも冷えてきたら足湯や湯たんぽなどで温めます。そうやって冷える瞬間を作らないようにします。
冷えが強い人は、外出時は足裏用カイロなどで保温を。特に女性はスカートやパンプスを履く機会も多く、足が冷えがちです。できれば裏起毛が付いたタイツやレギンス、ボア入りのブーツなどで対応してください。
足の冷え対策として靴下を何枚も重ね履きされる人がいますが、残念なことに、靴下を脱いでもらうと足は冷たく湿っていることが多いです。
靴下を重ね履きすること自体は悪くありませんが、その際はまず足を温めてから履くことをおすすめします。靴下は温かい足を冷やさないためのものと考えてください。また、ちょうどよいサイズの靴下を重ねて履くと靴下のゴムで締め付けられてしまい、逆効果です。ゆったりしたサイズのものを履くようにしましょう。
(3)食べもので体の中から温める
漢方では、食品には「体を温める食品」と「体を冷やす食品」、そしてどちらでもない「平性の食品」という分類があります。体を冷やす食べものをなるべく減らし、体を温める食べものを積極的に摂ることで、体を内側から温めて冷えを改善することができます。
「体を冷やす食品」というと、アイスクリームや冷えた飲みもの、氷などが思い浮かべるかもしれませんが、ここでいうのは「自分の体温以下のもの」です。
冷えが強い患者さんには、徹底して自分の体温以下のものは口に入れないことを勧めています。具体的には、冷蔵庫から出したばかりのもの(サラダ、ヨーグルト、刺身など)は避け、水やお茶、くだものも常温で摂ってもらいます。なお、コーヒー、ハーブティーなどの温かい飲みものでも、飲み過ぎると体を冷やすので、ご注意ください。
また、夏野菜(今は季節に関係なく売られています)、フルーツ全般、砂糖(を使った料理、菓子)、小麦製品は体を冷やす性質がありますので、控えめにしましょう。
私自身は足の冷えはありませんが、冷えて手の感覚が鈍ると、施術に悪い影響が出ますので、冷え予防は必ずしています。
まず、運動不足解消も兼ねて往復1時間を自転車通勤にしています。冬は冷たい風が吹くので、標準的な服装では冷え切ってしまいます。
そこでダウンパンツにボア入りの靴、ダウンジャケットにネックウオーマー(針金入りで目の下まで隠れるもの)、ヘルメットをかぶり、外気に触れるのは目の周囲だけという、完全武装します。その状態で自転車をこいでいると、10分くらいすると軽く汗ばんできます。
食事では、2日に1回は夕食を鍋にしています。体が温まりますし、具材や味を変えれば飽きることもありません。まず魚や肉、豆腐などを食べ始め、次に野菜、最後は雑炊にします。
食事は、何を食べるかも大切ですが、食べる時間や量にも気をつけています。毎日なるべく同じ時間に食べ、特に夜は遅くても寝る2〜3時間前には食べ終わるようにしています。眠っている間に内臓に血液が集まりすぎると良い睡眠を得られず、疲労物質が残ってしまいます。質の悪い睡眠は結果的に冷えにつながります。
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提供元:「寒くなると体が痛む」は手足の冷えが原因かも|東洋経済オンライン