2021.12.22
誰もが感じている「なんだかしんどい」の正体|鍼灸師が考えるあなたの「疲れ」の原因とは
「なんだかしんどい」のにその理由が特定できない、ということはありませんか?(写真:Pangaea/PIXTA)
現代人は何かと疲れがち。京都で鍼灸師として活躍する傍ら、ツイッターやメディアなどでも人気のすきさんの著書『ゆるませ養生――“何だかしんどい”を楽にする「自分を大事にする作法」』から一部抜粋して紹介します。
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「しんどさ」を特定するのは難しい
「なんだかしんどい」「気が付いたらいつの間にか疲れている」……。こうした悩みを持つビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。筆者は、京都でお灸と養生の治療院を営んでいますが、こうしたお悩みを抱えたお客さんは毎日のようにいらっしゃいます。
この「漠然としたしんどさ」の原因は、多くの場合、特定することが難しいものです。多くの方は、何もアスリートのように日々体に強い負荷を与えているわけでも、不眠不休で仕事を続けていたりするわけでもありません。
ほとんどの人は、各々にとって普通の生活を営んでいる中で、「特にこれといった理由もなく」「気が付いたらいつの間にか」漠然としたしんどさを感じるようになっています。
私たちは、ただ真面目に生活しているだけで、なぜか不思議と疲れてしまうのです。「あなたの不調の原因は〇〇です」とはっきり特定できれば、病院に行ったりできるのでしょうが、なかなかそうはいかない……。そうしたことが、こうしたお悩みの改善を難しくさせています。
でも、あきらめるのはまだ早い! 私たち現代人の多くが抱える“なんだかしんどい”の原因を探るヒントは、意外にも東洋医学にありました。気軽にできる、具体的な解決法とあわせてみていきましょう。
東洋医学の世界観を一言でいうなら「バランス」です。
どういうことかというと、たとえば私たちの体調というのは、まるでシーソーのように、常にゆらゆらと動きながらバランスを取り続けている、ととらえます。「緊張と弛緩」「疲労と回復」「仕事と遊び」……といった具合に。このシーソーのバランスがある程度の範囲内に保たれてさえいれば、基本的に体調を大きく崩すことはありません。
ところが、現実はそうはいきません。私たちは何かというと「頑張る」が口グセになっているし、それを社会から期待されることが多いです。
筆者が見たところ、「なんだかしんどい」というお悩みを持つ人は、基本的にみなさん、「頑張り屋さん」。「頑張りグセ」が染みついている人って、本当に多いのです。もちろん、それ自体はとても素敵なことです。ただし、その人の負担になりすぎない「頑張り」でなくてはいけないと思います。
ちなみに「頑張る」というのは、書いて字のごとく「頑(かたく)なに張る」ということ。つまり、無意識のうちに私たちの体や心は固くなってしまうわけです。それを続けていると、心身の固さは増していき、いずれ体調のシーソーもバランスを乱したまま固まってしまうことでしょう。
筋肉だって、ゆるんだ状態から固くなるときに一番パワーが出るものです。ひるがえって私たちはどうでしょう。頑張り続けて固くなり、いざというときに本来の力が発揮できなくなってしまっては、何とも悲しいじゃあありませんか。
「頑張る」のまま固まってしまったシーソーの反対側に一刻も早く“何か”をのせて、バランスを取り戻さねばなりません。この「頑張る」の対になるのが「養う(養生)」ということ。現代人は「養う(養生)」が決定的に不足しているのです。
そもそも「養生」ってどういうこと?
「養う」つまり「養生」とは、自分を大事にしてあげる、ということ。でも、これがなかなか難しい。たとえば、あなたもこんな経験はありませんか?
・休日、一日中横になって、かえって疲れをためてしまう
・体力をつけようと筋トレやランニングに励んで、体を痛めてしまう
・気分転換のつもりで旅行に行ったが、むしろ疲れて帰ってきてしまう
・体にいいといわれる食べ物を食べても効果がよくわからないし、続かない
・そもそも、どこから手をつけていいかわからない ……etc.
よかれと思ってしたことで、かえって体を疲れさせてしまう(実際、今挙げた事柄は、体をむしろしんどくさせてしまうことがあります)。「養生」って、なんて難しいんだろうと思った方もいるかもしれません。
私たちは、なんでこんなに養い下手で休み下手なんだろう。これについては、おそらく仕方がないことです。だって、みんなおそらく今まで「休み方」「養い方」を教えてもらったことがないんですから。
小学生のころから、私たちは「頑張り方」はたくさん習ってきました。でも、その対となる「休み方」「養い方」を習う機会って、実はほとんどありません。これは、どうにもバランスが悪すぎる。だから、ただ真面目に生活をしているだけで、いつの間にかしんどくなってしまうのです。
頑張りすぎは命を削る
私たちは一度生まれたら、誰でもいつかは命が尽きて死んでしまいます。体は鍛えたら強くなりますが、命は鍛えても強くなりません。
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これ、よく考えたら当たり前のことなのですが、意外と見落としがちなことです。何が言いたいかというと、頑張りすぎれば、私たちの命は、それだけ早く燃え尽きてしまうということです。限界を越えた頑張りは、いわば「命の無駄づかい」。無駄づかいすればするほど、どんどん消耗してしんどくなってしまうのは、当たり前のことだと思いませんか。
今まで無意識にあなたをしんどくさせていた「頑張る」を少しずつ「養う(養生)」にシフトさせて、自分を大事にする作法を身につけていきませんか。難しいことは1つもありませんので、どうぞご安心ください。
ペンキを塗るときなんかに、周囲が汚れないように貼るシートのことを「養生シート」といいますね。あれには、「ものを保護する」という役割があります。そう、「養生」と同じことです。「養生」なんていうと、何だか難しくて高尚な感じがするかもしれませんが、養生シートと同じくらい、私たちの身近にある「ごく簡単な、ごく当たり前のこと」なんです。
その内容も、たとえば早寝早起き、手洗いうがい……のような、小さな子供でもできるようなことばかり。
肩透かしを食らったような気分になるかもしれませんが、そのごくごく簡単なことが積み重なって、あなたの体や人生を変えるほどの変化を生み出すのです。
たとえば、「体は疲れると固くなる」ということを知っていましたか? 筆者の専門の一つは「お灸」ですが、何ももぐさなど専門的な道具を使わずとも、身近にあるもの(蒸しタオルや浴槽、風呂おけなど)で体を温めて、疲れを取ることは、十分可能なんですよ。変化が実感できる目安は、およそ3カ月と言われています。3カ月後、あなたの体は大きく変わっているはずです。
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提供元:誰もが感じている「なんだかしんどい」の正体|東洋経済オンライン