2021.12.21
疲れが取れない人がやりがち帰宅後の「悪習慣」|仕事後もストレスを感じる人の疲労リセット法
家に帰ってきてソファに直行していませんか?(写真:byryo/iStock)
疲れて家に帰るとついついソファに座りこんでしまい、そのままダラダラと時間が過ぎてしまう――家での時間をメリハリなく過ごしてしまうのは、自律神経を乱す要因です! 自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生は、帰宅したらすぐに「1日をリセットする」ことで、仕事後も大きな充実感を得られるといいます。『「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました』から詳しく紹介します。
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1回目:何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み ※外部サイトに遷移します
2回目:昼休みに仕事する人が自律神経を乱す「腸的」理由 ※外部サイトに遷移します
ソファでくつろいでも疲労が回復しない理由
――「今日も疲れた」と家に帰っても、料理をしないと、洗濯物を取り込まないと、家計簿をつけないと……とあれこれ考えて落ち着きません。
小林弘幸先生(以下、小林):
働きながら毎日家事をして、家計簿をつけて、偉いですね。家に帰ってきたときに大切なことは「1日の仕事をリセットする」ことです。
――家で「1日の仕事をリセット」するんですか?
小林:
そうです。私は帰宅したら、冷蔵庫をあけてミネラルウォーターをコップ一杯飲む。玄関に戻り靴の汚れを拭き取ってシューズボックスに入れる。スーツを着替えて丁寧にクローゼットにしまう。ゴミを捨てて、郵便物をチェックしたあと、翌日の仕事の準備をする。これら一連の行動をして、ようやく「1日の仕事をリセット」しています。
――そんなにたくさんのことを、疲れているのに、家に帰ってすぐにしているんですか……。
小林:
時間にして30分程度ですが、このリセットをすることで、とても大きな充実感を手にすることができるのです。家事や家計簿をつけることが、オンとオフを切り替えるスイッチになっているのであれば、良い習慣だと思いますよ。
――うーん……。どちらかというと、体も疲れているし、家事や家計簿をつけるより、家に帰って「あー疲れた〜」とソファに座り込むときのほうが、オフに切り替わっている気がします。
小林:
その気持ちはわかりますが、それでは心身ともに「仕事モード」から「自分の時間モード」に切り替えるのは難しいですよ。「とりあえず一休み」をしてしまうと、交感神経の働きが下がり、リラックスモードの副交感神経が活発になるからです。
そこから家事や明日の仕事の準備などをしようと思っても、再び交感神経を働かせるには気力が必要で、結局、何もしないまま……になってしまいがちです。さらに、ソファで横になったとしても、「あー疲れた〜」という疲労感はとうてい軽減されません。
――たしかに。ソファで横になっても結局、体のだるさや疲労感は回復されていないことが多いです。
小林:
私は、ソファは休息の強敵だと思っています。とくにパソコンの前にいる時間が長いビジネスパーソンにとって、血流を悪くするソファは、油断できない相手です。疲れをとるには、帰ってすぐにソファに座るより、「自分の時間モード」に切り替えてから、ベッドでしっかり睡眠をとったほうが圧倒的に良いことは間違いありません。
――そうですか……。でも忙しく働いて家に帰ってきたので、正直なところ、ダラダラ過ごす時間もほしいのですが……。
小林:
ダラダラ過ごすことも、ときにはあってもいいのですが、翌朝もスッキリした頭で働くためには避けたほうがいい習慣です。体のコンディションを整えるためには、夜の時間は副交感神経を高める生活習慣を身につけることが大切。
家計簿をつけるのは、自分をみつめ直す時間にもなるから、とてもいい習慣だと思いますよ。その日を振り返ることは、自律神経の安定につながります。
――習慣を決めて、毎日やらないと! と考えると、ちょっとハードルが高いんですが……。例えば、家計簿をつけるとき「疲れている日はレシートの整理だけ、家計簿に転記するのは後日に回す」みたいに、疲れている程度によってやることが変わってもいいんでしょうか?
小林:
疲れているかどうか、というよりも時間を決めて、その時間内に「やれることだけをやればいいや」という発想のほうがいいと思いますよ。家計簿の作業が苦痛だと感じたときは、後日、気分が落ち着いたときにやりましょう。
――時間を決めたほうがいいんですか?
小林:
自律神経を整えるために、時間を区切ってリズムある生活を過ごすことは大切です。私も以前は、家に帰ってすぐテレビをつけて、時間を決めずにダラダラと観ていました。でも、自律神経を乱すと気づいてからは、テレビの前にいる時間をあらかじめ決めてから観るようにしています。
「自分の時間モード」を有意義に過ごすために、自分の趣味なども、時間を決めて楽しむようにしましょう。終わりの時間がはっきりすると、その分、集中できて、より充実した時間が過ごせます。
この際、綿密に時間を決めたり、ましてストップウォッチで測ったりする必要はありません。よけい、心が乱れてしまいます。だいたいでいいのです。余裕があるときは本やテレビを2~3時間、楽しんでもいいのです。ただし、だいたいの終わりの時間を決めておくことが重要です。
勤務後に上司からメール、返すべきか?
――家事が一段落して、お風呂にでも入ろうと思ったときに、上司から「明日のプレゼン、よろしくね」といった連絡がくることがよくあります。とくに急ぎの用事でもないんですけど、お世話になっている上司だし、すぐに返信したほうがいいかな? と迷うことがよくあります。
小林:
私だったら申し訳ないけど、そのメールは「ブラック刺激」と判断して返信はしません。働いていれば、どんな連絡が緊急かどうかはすぐに判断できますよね。そのメールは緊急性の高いものではないうえに、家でくつろいでいる時間に届いています。「ブラック刺激」と認定してもいいでしょう。
――なんですか、その「ブラック刺激」って?
小林:
私が名づけたのですが、交感神経の働きを高めてしまうような不快な刺激を「ブラック刺激」。副交感神経の働きをより優位にしてくれる刺激を「ホワイト刺激」として、自分にとって有意義な刺激かどうかを見極めるようにしています。仕事モードから、自分の時間モードに切り替えた後は「自分のために」を最優先することをおすすめします。
――なるほど。白黒をハッキリつける、ということですね。「ブラック刺激」と「ホワイト刺激」。わかりやすい名前です。
小林:
とくに副交感神経の働きが高まりつつある夜は、なるべく「ブラック刺激」は避けたいものです。差し迫った連絡や至急で何か対処するようなメールでなかったら、チラリとみて終わりでいいと思いますよ。
――「どうして昨日、返信しなかったの?」と次の日に言われるんじゃないかな、と考えてしまうんですけど……。
小林:
メールに返信しないくらいで何かいってくる上司は、ちょっと考えものですよ。無視するわけではなくて、次の日、直接返事をすれば大丈夫だと思いますよ。夜は、自分中心な過ごし方をしても誰にも文句はいわれません。誰かに嫌われることを恐れないようにしましょう。
――そうですよね。次の日に、直接返事をすることにします。
小林:
対人関係はストレスの大部分を占めますが、メールだと24時間どこにいても人とつながることができます。「ブラック刺激」から身を守るために、とくに夜は人と適切な距離感をとることを意識してください。
ストレス軽減には、リラックス方法を増やすこと
――わかりました。ところで、「ホワイト刺激」には、どんなものがありますか?
小林:
私の場合は、タブレットやスマホに、ネット上でみつけた、真っ白な秋田犬の子犬の画像を入れています。まるまるとした可愛らしい無垢な表情を見ていると、一瞬で心が和みます。
――秋田犬の子犬の画像ですか。たしかに癒されそうですね。
小林:
見るだけで自然に顔がほころんでしまうような画像はおすすめです。交感神経の過剰な興奮が抑まり、副交感神経の働きがアップします。心が落ち着く風景を見ることも、ストレスを軽くする効果があります。ほかにも、私はテレビドラマが好きで、お気に入りのドラマがあると、予定を入れずに真っ直ぐに家に帰ります。最終回が近づくと暗くなることもありますが。
ちょっとした楽しみ、小さな幸せでもいいので、自分なりのリラックス法を複数持っていたほうがいいでしょう。視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚など五感の癒しを活用することで、副交感神経の働きをより高めます。
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――顔がほころぶ画像を見たり、ドラマを見たり、気軽なものでいいんですね。音楽を聴いたり、読書をしたりするのも良さそう。
小林:
もちろんです。脳が心地良いと思えることが重要です。そのときにアロマを焚いて香りをプラスしてみてください。ラベンダーの香りは、リラクゼーション効果や睡眠効果が高いアルファ波が増加するし、日本的な香りでも、杉や檜には交感神経の過剰な働きを鎮めるという効果があります。
自分が癒される香りを嗅ぐことで「ブラック刺激」を遠ざけて、夜の熟睡力を高めることができます。
また、好きな音楽を聴くことも気持ちを鎮めるのでおすすめです。最近の研究では、「ド」の音を528Hzの周波数に設定した音階でつくられた音楽が、自律神経を整えることがわかっています。この「528Hz音楽」は音楽配信などでもあるので一度聴いてみてはどうでしょう。
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提供元:疲れが取れない人がやりがち帰宅後の「悪習慣」|東洋経済オンライン