2021.08.16
「中田敦彦の話し方」何が凄いか、プロが大解剖|YouTuber「一流と二流」分ける3つの必殺技は
人気YouTuberとして活躍する中田敦彦氏。彼の話し方、3つの秘訣について解説します(画像:『中田敦彦のYouTube大学』より/YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=ITHbu8p7N8Q)
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=ITHbu8p7N8Q ※外部サイトに遷移します
日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。
たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。
その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高話し方 1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』は発売後、たちまち12万部を突破するベストセラーになっている。
コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「人気YouTuberとして活躍する中田敦彦氏の話し方、3つの秘訣」について解説する。
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YouTuberの「コミュ力」には人生を生き抜く知恵がある
子どもが将来なりたい職業の上位に上がる「YouTuber」。子どもに「YouTuberになりたい!」と言われたら、親世代は当惑しそうですが、今やその社会的影響力は甚大です。
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暗記だけの「日本型」学力より、一流のYouTuberの持つ「コミュ力」のほうが、将来的には役に立つ可能性は高いはず。なぜなら、そこには、「表現力」「思考力」「調査力」「質問力」「話力」「即応力」「対人力」「共感力」「決断力」「度胸」「機転」など、人生を生き抜く知恵が詰め込まれているからです。
YouTuberは星の数ほどいますが、リモート時代の「プレゼンエリート」といえる「一流」と、それ以外の力量には天と地ほどの違いがあります。なかでも、教育系YouTuberの代表格として抜きんでているのが、芸人の中田敦彦さんです。
彼の「YouTube大学」のチャンネル登録者数はなんと約402万人。 静岡県の総人口(約370万人)を超えるインパクトは推して知るべし!というメディアに、先日、光栄にも、拙著『世界最高の話し方』が取り上げられました。
1冊の本の「本質」をじっくり掘り下げ、魅力的に伝えることで知られる中田敦彦さんですが、その「超プレゼン力」の秘密を、今度は私が大解剖してみます。
まさに、YouTube界きっての話し方の達人が『世界最高の話し方』について解説するという「神回?」だったわけですが、本の魅力を何倍にも膨らませて伝える話法は脱帽ものでした。
何はともあれ、ぜひ彼のYouTubeチャンネルからご覧いただきたいのですが、ここでは、中田さんがYouTubeの達人たる「3つの理由」を分析しましょう。
「アウトプット」の10倍以上「インプット」に時間をかける
【1】情報や知識の「超インプット力」
YouTuberの一流と二流を分けるもの。そのなかで最も重要な条件は、「超インプット力」です。
実は私は中田さんをお見かけしたことがあります。メディアの取材を受けるために、とあるカフェに行ったときのことでした。こちら側は私と記者、カメラマン、編集者の4人。少し離れたテーブルに座って、一心不乱に本を読み続けていたのが彼でした。
客はほかにはいません。お店の許可を得て、カシャカシャと撮影などもしていたのですが、そうした雑音やわれわれの気配にも一顧だにせず、1時間以上、まったく顔を上げることなく、ページをめくり続けていました。
そのすさまじい「集中力」が非常に印象的だったわけですが、優れたYouTuberのひとつめの条件がこの「超インプット力」です。
二流YouTuberはただ、思いつくままにだらだらと話をしたり、脈絡もなく荒唐無稽なことをしたりするだけですが、一流は、カメラに映る時間、つまりアウトプットする時間の10倍以上の時間を準備やインプットにかけています。
彼は毎回、解説する内容の要旨を手書きで白板に書いており、それらもすべて自分で考え、何回も推敲して仕上げています。
膨大な量の情報や知識などのインプットを「消化」し、その本質だけをアウトプットとして「昇華」する。これは、日ごろのプレゼンにおいても非常に重要なプロセスです。
スティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスなどは、大切なプレゼンの前には何日もリハーサルをし、コンテンツを作り変え、完璧なアウトプットに仕上げました。
一流のプレゼンターは「超インプット」と「準備が9割」。これがまずひとつめの鉄則です。
2つめは、あっという間に聴衆を引き込む「超高速つかみ力」です。
心に刺さるキーワードを「打ち上げ花火」のように連打する
【2】一気に人をひきつける「超高速つかみ力」
面白いプレゼンは「最初の1分」でその真価がわかります。
「ええ~、本日はありがとうございます」「〇〇についてお話します」「どうぞ、よろしくお願いします」なんて、月並みな文句は一切ありません。とにかく、冒頭から、「これは面白い!」と思わせ、聴衆を引き込むように、いきなり時速120キロでぶっ飛ばします。
人をひきつける話し方には2つのパターンがあります。音楽や演劇、落語などのように、「徐々に盛り上げていくタイプ」と「最初からテンションを上げ、それを維持していくタイプ」です。
実際に客が会場に来て、何時間もの時間そこに滞在し楽しむ前者であれば、最初のパターンでもいいわけですが、YouTubeのように、あっという間に聴衆が離脱してしまうメディアにおいては、冒頭から、聴衆の心をわしづかみにする必要があります。
そのために、がっしりと聞き手の心をとらえる「つかみ」が大切。大げさなアクションや表情、「はじける」テンションで、畳みかけるように話しかけていきます。
「話し方って覚えたくない人いませんからね」「恋愛も仕事もそのどっちにも必要なのが話し方」「恋も仕事も制するのはコミュニケーション!」「話し方さえ制すれば、人生が制圧できる!!」。こうした心に刺さるキーワードを、打ち上げ花火のように連打していきます。
まさに、冒頭のつかみで、「聞き手の心を制圧してしまう」わけです。
【3】「話している」ようで「聞いている」
リモートでのプレゼンで、やりにくいと感じる人の多くが、「カメラの向こうの聞き手のリアクションが見えないこと」を理由に挙げます。聞き手の表情も見えず、面白いのか、聞いてくれるのかさえわからない。
実は一方的にまくしたてているようで、「あっちゃん」はよ~く、聴衆の心の声を聞いています。ここが、プレゼンの名手の名手たるゆえんなのです。
どういうことかというと、これは彼のYouTube特有の「仕組み」です。
カメラに向かって話している向こう側のスクリーンには、サポーターの人たちの顔がずらっと並んでいます。リアルでその人たちに向かって話しながら、その表情やリアクションを読み、「彼らと対話をする」ように動画を収録しているのです。
「みんなが笑ってくれるのがモチベーション」と語る彼が、リモートの難点を解消するために編み出したのが、今のスタイルだったようです。これなら、「聞き手がつまらなそうだ」「面白がっている」などの表情を読み取り、ギアを上げたり、下げたり調整ができます。
「受け取れないような剛速球を延々と投げ込んでくる人」と「取りやすい球を投げてくる人」。どちらとキャッチボールを続けたいですか? もちろん後者ですよね。
日本人がよくやりがちなのが、前者の話し方。自分が話したいことを一方的に話すだけの「モノローグ」プレゼンです。聞き手のことを置き去りにし、自分1人、好きなように好きな方向に投げ続け、相手がボールを受け取れなくてもお構いなし。一方、彼は徹底的に、相手が受け取りやすいボールを投げ、「キャッチボール」をし続けようとします。
彼の話し方は、聞き手を置き去りにしません。「そうだよね」「なるほどね」「なんででしょうか」「そこ、教えて~」「聞きたくない? 聞きたいよね」「そういう人いるよね~」「しましょうよ」。徹底的に会話調で、問いかけを織り交ぜていく。
拙著『世界最高の話し方』で、池上彰さん、高田明さんの2人がよく使うテクニックとして「2人のあきらのカネの法則」と名付けて紹介しているのですが、ただ、「です」「ます」と言い切るのではなく、時折、「〇〇でしょうか?」「△△ですよね」など、語末を「か」か「ね」と問いかけ調にすることで、聞き手との間に共感を作り出すことができるのです。
これを彼は「『か』とか、『ね』とかでトスを上げる」とたとえていましたが、まさに、相手が打ちかえしやすい球を投げる工夫をつねにしています。だから聞いている人が、「あっちゃんは私に、僕に、話しかけてくれている!」という気持ちになるわけです。
一流のYouTuberには奥深い「話法」が詰まっている
というわけで、いかがでしょうか。「『あっちゃん流』心をつかむ話し方」。その魅力はまだまだここでは書ききれないほどあり、実に奥深いのですが、「リモート時代の話し方」は「一流YouTuber」に学ぶべし!
皆さんもぜひ、お気に入りのYouTuberのスキルを盗んでみませんか。
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提供元:「中田敦彦の話し方」何が凄いか、プロが大解剖|東洋経済オンライン