2021.07.16
日本人が知らない「日焼け止め」の意外な「危険性」|シャンプー、洗顔料、医薬品を選ぶ時の注意点
家にある化粧品やシャンプー、日焼け止めは安全なのでしょうか? (写真:プラナ/PIXTA)
あふれる加工食品、動かない生活、睡眠不足。私たちのからだは、ここ数百年の環境の変化にまだついていけていない。その結果、体重が増え、ストレスを抱え、疲労し、気分がすぐれない日々を送っている――。
ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーとなった『ジーニアス・フーズ』(未邦訳)の著者であるマックス・ルガヴェア氏が、このたび健康的な生活を送るための実践的なガイドブック『ジーニアス・ライフ』を上梓した。本書から、家にある化粧品や薬の「疑わしい物質」について一部を抜粋し、編集してお届けする。
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シャンプーや洗顔料に使われているパラベン
私たちの生活に入り込んだ多くの化学物質は、便利で快適な現代生活を可能にしてくれている反面で、思わぬ健康被害をもたらす恐れがある。
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そんな「疑わしい化学物質」の1つが、シャンプーや洗顔料、デオドラント、潤滑油やローションなどに使われ、パック入り食品の保存料としても一般的なパラベンだ。防腐剤のパラベンは、微生物の繁殖を防ぐために使われる。
パラベンは口や皮膚を通して簡単に体内に吸収され、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として働く。
内分泌攪乱物質は、細胞のホルモン受容体を活性化することでホルモンの作用を模倣し、体内で生成された本来のホルモンの働きを阻害する。
パラベンは、実験動物をがんにし、人間の場合には――直接的な因果関係は証明されていないにしろ――さまざまな種類のがんの発症に“関与”してきた。
たとえば、乳がん患者の腫瘍からは、パラベンが検出されている。だからと言って、パラベンが乳がんの原因だと証明するわけではないが、ホルモンの正常な働きを阻害することから、乳がんの原因が疑われるのももっともだろう。
食事を通して体内に入ったパラベンは、肝臓や腎臓によって“解毒”される仕組みだが、皮膚から吸収されたパラベンは蓄積しやすい。
パラベン入りのクリームを毎日たっぷり皮膚に塗っていれば、口からの摂取と合わせて、習慣的に体内に取り込んでいることになり、かなり懸念される。
しかし、いい知らせもある。パラベン入り製品の使用をやめれば、ほかの内分泌攪乱物質と同様、やがて体外に排出される。今ではパラベンフリーの製品も市場に出回っている。
パラベンの健康被害を防ぐ確実な方法はひとつ――口に入れる気になれないものを、皮膚につけないことだ。
認知障害のリスクが高まる抗コリン薬
不眠やアレルギー、不安、乗り物酔い。これらの治療には抗コリン薬が用いられる。
抗コリン薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンが受容体に結合するのを阻害することで作用する。
アセチルコリンには首から下の不随意筋を収縮させる働きがあり、過活動膀胱の原因になるが、いっぽうで学習や記憶に重要な役目を果たす。
抗コリン薬を持続的に服用してその合成が阻害されると、早ければ60日ほどで認知障害が生じる。3年以上という長期の服用者の場合には、認知症の発症リスクが最大54%も増加するという研究もあるようだ。
念頭に置いておきたいのは、強い抗コリン薬は時おり服用するだけでも、急性中毒症状が現れることだ。副作用には、瞳孔散大、発熱、口内乾燥、譫妄(せんもう)と短期の記憶喪失などがある。
抗ヒスタミン薬や睡眠改善薬として使われるジフェンヒドラミン、酔い止め薬のジメンヒドリナート、抗うつ薬のパロキセチンやクエチアピンなどは、強力な抗コリン作用がある。
これらの薬を処方されて服用しているのなら、もっと安全な薬に変えられないか、医師に相談してみよう。
からだの痛みを自己流で治そうとすると、必ず予期せぬ結果を伴う。とくにそれが当てはまるのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を服用した時だ。
アスピリンやイブプロフェンなどの市販の鎮痛薬と言えば、わかりやすいだろう。
NSAIDを定期的に服用すると、心臓発作などの循環器系のリスクが高まるとされる。考えうる原因のひとつは、心筋細胞のミトコンドリアの機能に障害が生じ、エネルギーをつくり出す能力が低下するためだ。
これが活性酸素種(別名フリーラジカル)の生成を促し、心臓組織の損傷を招く。
そのメカニズムは複雑で、まだ解明されていないことも多い。しかし少なくとも、神経変性疾患のリスクのある人は頻繁な服用は避けるべきだ。脳のミトコンドリアの機能障害は、認知機能の低下をもたらす。
NSAIDはまた、胃腸障害を引き起こす。胃粘膜を保護するプロスタグランジンを作る酵素の働きを阻害するからだ。
実際、NSAIDの定期的な服用者には、胃潰瘍や消化管出血などの副作用が見られる。さらには腸内の善玉菌に働きかけて微生物のコロニーを変えてしまい、クロストリジウム・ディフィシルのような日和見病原菌の感染症にかかりやすくなるという論文もある。アメリカでは毎年50万人が感染し、3万人が亡くなっている。
そしてもうひとつ。NSAIDは、本来の炎症経路を無差別に変えてしまう。研究によれば、幅広い炎症を抑えるNSAIDは、筋肉の成長といった、エクササイズの優れた効果まで阻害してしまう。
覚えておこう。その医薬品が、処方せんなしに店頭で買えるからといって、無条件に安全だというわけではない。
サンブロック(日焼け止め)の化学成分のリスク
サンブロックもまた、注意が必要だ。化学成分を使ったごく一般的なサンブロックの危険性のひとつは、紫外線を浴びると非常に有害な物質に変化することだ。
最近になってそう証明されたのが、アボベンゾンという化学物質である。
ドラッグストアで買えるアボベンゾン入りのサンブロックを、紫外線と塩素消毒されたプールの水で実験したところ、アボベンゾンは、肝臓や腎臓の障害、神経系障害、がんを引き起こすことがわかっている化学物質に変化したという論文がある。
それが、実験に参加した被験者の皮膚で起きていたのである。
このほか、オキシベンゾンという化学物質は、内分泌攪乱物質の恐れがある。私たちは毎年夏が来るたびに、こうしたサンブロックをからだにたっぷりと塗り込んでいるのだ。
パラベンのように、アボベンゾンやオキシベンゾンも、皮膚から血液中に簡単に吸収される。ある論文によれば、サンブロックを用法通りにからだ全体に塗ったあと、さらに塗り直したところ、これらの化合物の血中濃度が跳ね上がったという。
アメリカ食品医薬品局が定める「毒性学的懸念の閾値」――それ以下では有害な影響が現れないとする許容摂取量――を、はるかに超える血中濃度だった。
薬や化粧品は、必ず成分を確認しよう
とはいえ、あらゆる化学物質を完全に避けようとするのは不可能に近い。大切なのは知識を得て、適切に選ぶことだ。
からだの痛みに対して、NSAIDを長期にわたって服用するのはおすすめしない。穏やかな筋肉痛や痛みには、クルクミン(ウコンの根茎に含まれる黄色い色素)や、オメガ3系脂肪酸のEPAを摂取して乗り切ろう。どちらも抗炎症効果があるが、NSAIDに伴うような副作用はない。
日焼け止めには、酸化亜鉛を使ったサンスクリーン(紫外線を減らす)を使おう。皮膚と日光とのあいだに、化学的なバリアではなく物理的なバリアをつくってくれる。
アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、エカムスルを含むサンブロック(紫外線をブロックする)はできるだけ避けよう。これらは日焼け止めだけでなく、リップクリームや口紅にも使われている。必ず成分を確認してから選ぶようにしよう。
(構成:笹幸恵)
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提供元:日本人が知らない「日焼け止め」の意外な「危険性」|東洋経済オンライン