2021.07.05
雨の日は「頭痛がする」「ダルくなる」納得の理由|人間だけでなく犬や猫も「気圧の変化」に弱い
私たちの体は天気の変化によって、さまざまな影響を受けています。それは可愛いペットたちも例外ではなく……。今回は「天気痛」の原因についてご紹介します(写真:Flatpit/PIXTA)
「天気が崩れ始めると頭痛がする」
「梅雨は体が重くて動けない」
など、天気による不調を感じている人は多いのではないでしょうか。
なかには天気による不調が原因で、本来の実力が発揮できないと感じている人もいるかもしれません。
『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』では、天気による体の不調が起こるメカニズムと、通勤中やデスクワーク中にもできる、不調を予防・改善する方法を紹介しています。
本稿では同書より一部を抜粋・編集しお届けします。
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体は天気の変化に影響を大きく受ける
はじめまして。「天気痛ドクター」こと佐藤純と申します。2005年に愛知医科大学病院で日本初の天気痛・気象病外来を開設し、これまで延べ1万人以上の患者さんを診察してきました。
この記事を読んでいるビジネスパーソンの中には、「天気痛」という言葉を初めて聞いた方もいるかもしれません。
そもそも、私たちの体は天気の変化によって、さまざまな影響を受けています。例えば、寒い時期には脳出血が起こりやすく、季節の変わり目には気管支ぜんそくが起こりやすいといったことがあります。このように、天気の影響を受けて発症したり、症状が悪化したりするものを、昔から「気象病」と呼んでいます。
その中で、頭痛や関節痛など、特に痛みにまつわる症状を私は「天気痛」と名付けました。「天気痛」というのは、「病気」の種類ではなく、「病態」と考えてもらったほうがいいかもしれません。
ロート製薬とウェザーニューズが1万6千人を対象に行った調査(「天気痛調査2020」)によると、女性の43%が「天気痛を持っている」、35%が「天気痛を持っている気がする」と答えています。また、男性の場合も、割合は減りますが、それぞれ回答が20%と27%だったことから、男女を問わず多くの方が天気痛を自覚していることがわかります。
では、具体的に天気痛の原因は、何でしょうか?
それは、一言で表すとしたら「気圧」の変化です。天気の中でも、温度や湿度に関しては、体の皮膚や粘膜などからその変化を感じるため、「暑い」とか、「湿っぽい」というふうに、瞬時にわかります。
しかし、気圧というのは、なかなか感じる機会の少ないものなので、気象条件のうちの大きな要素であるにもかかわらず、私が研究を始める以前は、気圧が体に影響するのかについて基礎研究を行った人はおらず、その認識はとても曖昧なものでした。
しかし、25年ほど前、あるテレビ番組で「天気と痛みの関係」を調べる実験に協力したことをきっかけに、科学的に気圧と痛みのメカニズムを解明するための本格的な研究に乗り出しました。
そして長年の基礎実験や臨床研究により、基本的に天気の崩れるときや、天気の崩れが回復するとき、つまり「気圧による変化」で症状が出やすくなるということを突き止めました。
これまで、「頭が痛くなる」「憂うつになる」「耳鳴りがする」「めまいがする」など、ざまざまな痛みの症状や不調で悩みながらも、病院で検査をしても原因がわからず、職場でも「気のせいだろう」「サボりじゃないか」と周囲の理解を得られなかった方もたくさんいると思います。しかし、その痛みや不調は、もしかしたら「天気痛」なのかもしれません。
人間は、誰でも気圧の影響を体で感じ取っています。健康と思われる人の場合でも、気圧を下げた部屋や、気圧を少し高くした部屋に入ると、心拍数や気分が変化するということが、私の実験結果からわかっています。
「気圧の変化」を感じるのは人間だけじゃない
そしてこの感覚は人間だけに限ったことではありません。むしろ、気圧の変化を感じる力は、もともと動物に備わっている能力で、生物が生存するために重要なひとつの感覚であると思っています。
例えば、鳥類は気圧を感じる能力があることがわかっています。
鳥類は、耳の中の中耳と呼ばれる鼓膜のすぐ後ろ側にある空間に、気圧を感じる器官があります。そのため鳥は、自分が飛び上がるときの気圧の変化で、どれくらいの高度を飛んでいるかということを知ることができます。渡り鳥は、24時間ずっと海の上を飛んだり、高い山を越えたりするわけですから、自分がどれくらいの高度にいるかを知ることは、とても重要です。
また、カモやツバメ、ハクチョウといった渡り鳥が、南や北へ飛び出すタイミングを決めるときも、気圧が重要になってきます。もちろん温度や湿度も関係あるでしょうが、気圧を感じて、嵐や台風を事前に察知すれば、飛び立つのをやめているはずです。
鳥類だけでなく、他の爬虫類や両生類、昆虫も、気圧を感じて行動しているだろうと思われる点がいくつもあります。
例えばアリは気圧の変化を察知し、雨が降る前に、巣穴を埋めて水が入っていかないように事前に準備をするという話があります。天気が崩れてくるとゲコゲコ鳴き始めるアマガエルは、皮膚に湿気を感じるセンサーがあり鳴いているという説もありますが、気圧を感じて鳴くのではないかという専門家もいます。
犬や猫などのペットを飼っている方は、天気が崩れたり台風が近づいてきたりすると、ペットが体調を崩すというのはご存じでしょうし、人間だけが気圧の変化を感じないというのは考えにくいことなのです。
こういったことを考え合わせると、人間の遺伝子の中にも気圧の変化を感じる力が保存されて残っているだろうと考えるのが自然です。ただ、文明の発達とともに、人間はさまざまな能力が退化しています。そのうちのひとつが気圧の変化を感じる力であると私は考えています。
狩猟時代や農耕時代は、台風や吹雪などの天気の変化が、生死に直結していました。しかし現代は、食料の心配もなく、エアコンの効いた快適な部屋で過ごすことができます。特に、都会で働いているビジネスパーソンは、自然と触れ合う機会も減っているため、外の環境の変化に気が付く力が衰えてきていると言えるのではないでしょうか。
とはいえ、中には気圧の変化を敏感に感じ取る人が、まだまだたくさんいます。これは、昔からの能力が残っているというよりも、体が持つさまざまな調節機能がうまく働かず、気圧の変化に対して過剰な反応をして痛みやめまいを生じさせていると考えられます。
「天気痛」は適切な予防と対処法で軽減される
私が持っているアンケートデータや、天気痛・気象病外来に来る患者さんなどを診ている実感としては、軽度なものや、潜在的なものを含めれば、「頭痛」「めまい」「憂うつ感や不安感」など、実に国民の4人に1人は天気痛の可能性があるのではないかと感じています。
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そしてこの天気痛は、適切な予防と対処法によって、ずいぶん軽減されることもわかってきました。
天気痛は、決して珍しい症状ではありません。今まで、つらい思いをしてきたビジネスパーソンも、ぜひ次回の記事で紹介する方法を実践してみてください。
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提供元:雨の日は「頭痛がする」「ダルくなる」納得の理由|東洋経済オンライン