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2021.06.17

きついクレームを即座に鎮火するプロの7つの技|CAのクレーム対応は、なぜ隙がないのか?


CAの仕事にはクレームもつきもの。その対処法が参考になります(写真:takeuchi masato / PIXTA)

CAの仕事にはクレームもつきもの。その対処法が参考になります(写真:takeuchi masato / PIXTA)

憧れの職業であるキャビンアテンダント(CA)は実は、トラブル対処のプロでもあります。時々、ニュースでも流れる、マスク着用を拒否する乗客といった航空機内のトラブル。CAは飛行機という密室でいかに対応しているのか?

25年間日本航空に勤め、ファーストクラスのCAやCA育成に当たる管理職教官も務めた山本洋子さんは、「トラブル対処には7つのコツがあります」と話します。『どんなストレス、クレーム、理不尽にも負けない 一流のメンタル100の習慣』を刊行した山本さんに、トラブル対処のコツについて話を聞いた。

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クレーム対応、CAが教える7つのポイント

(1)クレーム対応はスピード勝負。お待たせできるのは「1分」だけ

クレーム対応の「肝」、それは「迅速性」です。丁寧に対応するあまり、確認に時間を要したり、電話口で待たせてしまったりしてしまいがちです。時間にしてほんの数分なのかもしれませんが、実はこの時間の感覚が、クレームを増長させてしまうことがあるのです。

クレームをするお客様にとって、「待たされる時間」やクレームに対してどうアクションをしているのか状況がわからない「空白の時間」は、苦痛でしかありません。それが長引くほど、イライラが募っていきます。

「いつまで待たせるんだ!」と別のクレームに発展させないためにも、お待たせするのは「1分」です。同じ「1分」でも、「待たせる1分」と「待たされる1分」の長さの感覚は大きく異なります。「待たされる1分」は、意外と長く感じるものです。電話口で1分以上お待たせするような場合は、必ず途中で経過をお知らせしましょう。時間に敏感であることが、クレーム対応達人への第一歩です。

(2)「あご」の位置に気をつける

日常生活において、つねに正しい姿勢でいることは難しいものです。猫背になったり、首が曲がってきたりと、気をつけていても知らず知らずのうちに体のクセが出てきます。

姿勢は相手に与える印象を大きく左右するものですので、背筋をピンとのばし颯爽とありたいものですが、見落としがちなのが「あご」の位置です。「あご」の位置を気にする人は、あまりいらっしゃらないのではないでしょうか?「あご」は上がっていると不遜に見え、下がっていると自信なさげで相手を疑っているような印象を与えます。

特に「あご」が上がっている場合、頭が後ろに反れ、視線が上から見下ろす「上から目線」の状態になります。これだけで、相手は見下されているという印象を持ってしまいます。

特にクレームに対応する際は要注意です。クレーム対応は、真摯で誠実な態度で接することが大原則。そんなつもりはないと言っても、相手に不遜だという印象を与えてしまっては、上手くいくはずはありません。自分でも気づいていない目に見えない印象は、些細なことで大きく変わります。「あご」の位置は、気をつけないと大きな落とし穴になることもある見落としがちなポイントです。

(3) すべての組み(手組み、腕組み、脚組み)を外す

「あご」の位置同様、特にクレームに対応する際に気をつけたいのは、「すべての組みを外す」ことです。すべての組みとは、「手組み、腕組み、脚組み」です。

初対面で腕を組みながら挨拶をする人はいないと思います。なぜなら、腕組みはなんとなく相手に対して失礼だという意識が働くからです。そしてそれは非礼以上に、相手に対して心を閉ざした状態でもあるからです。心を閉ざした状態では、人間関係は上手くいきません。

マナーとしても腕組みは礼を欠く振舞いに映ります。見えないからと言って、テーブルの下で足を組みながら謝罪しても、相手に誠意は伝わりません。

(4) 思わぬ言いがかりにも、決して口を挟まない

「そんなつもりはなかったのに……」。ちょっとした誤解や相手の勘違いで、物事が自分の意図したこととは違う方向に進んでしまうことがあります。そういう時は、反論し、すぐに誤解を解きたくなるものですが、ビジネスシーンにおいては注意が必要です。

フライト中さまざまなお客様にサービスをするCAは、ちょっとした不注意で誤解を与えてしまうことがあります。飲み物サービス中、飲み物を伺い忘れたお客様から強いクレームを受けたことがあります。そのお客様は「無視をされた」の一点張りで激高されています。

飲み物を伺い忘れた不注意はプロとしては失格ですが、他意はありません。お客様を無視する意図も理由もないのですが、「なぜ無視をするんだ」を繰り返し、取り付く島がありません。

そんな時は、相手の言い分をしっかり受け止め、決して口を挟まないことです。相手の勘違いや誤解であればつい言い訳をしたくなるものですが、相手の話の途中で少しでも弁解をしてしまうと、ますます相手の怒りは大きくなります。

まずは、相手の気が済むまで感情を吐き出してもらいましょう。感情を吐き出すと、人は冷静になり、聞く耳を持つようになります。弁解や説明はそれからです。「思わぬ言いがかりには口を挟まない」。これもクレーム対応の鉄則です。

(5) 2種類の相づちを使い分ける

みなさんは「相づち」を意識したことがありますか? 相づちは人の話を聞くときや会話をしているときに、特に意識をすることもなく無意識に打っているものです。

普段あまり意識されることがないのですが、実は「相づち」は相手に好印象を与えるコミュニケーションスキルでもあります。「相づち」は、相手の話を真剣に聞き、受け入れ、同意したときに打つものですから、相づちを打ちながら話を聞いてくれる人には、おのずと好感を持ちます。

適切な相づちは効果的なのですが、ただ打てばいいというものではありません。特にクレーム対応の時には注意が必要です。まず、相手の話す内容に合わせて、タイミングを合わせます。このタイミングを外してしまうと、「この人、ちゃんと話を聞いてるのかしら?」と不信感を持たれてしまいます。

そして、相づちを打つスピードや回数にも注意しましょう。早いスピードで、「ふんふん」と何度も相づちを打つと、投げやりな感じを与え、「早く話を終わらせたい」というメッセージにも受け取られてしまいます。

クレーム対応の時は、相手の話す内容に合わせて、最初は大きくゆっくりとうなずき、徐々に小さく、少しずつうなずく回数を増やしていきます。そうすることで、相手はきちんと話を聞いてもらっている、わかってくれていると受け取り、クレームする感情が収まってくるのです。たかが「相づち」、されど「相づち」。非言語のコミュニケーションの持つ力は絶大です。

(6) 「申し訳ございません」の前に「不快な思いをさせてしまい」をつける

クレームに対しては、真摯に謝罪し、状況をご納得していただけるよう誠心誠意対応しなければいけませんが、明らかに相手に非があるような場合は、むやみやたらと謝罪する必要はありません。かといって、こちらの言い分だけ並べ立て一切謝罪をしないという態度では、事態はこじれていくだけです。

そういう場合の第一声は、「この度は不快な思いをさせてしまいまして、申し訳ございません」です。相手の誤解やこちらに非がないような場合でも、相手に不愉快な思いをさせてしまったことには変わりありません。不快感を与えてしまったことに対して、申し訳ないという態度を表すと、相手の気持ちも落ち着き、冷静に話しができるようになります。この一言があるだけで、クレーム対応はスムーズに進んでいくのです。

(7)「正直」「誠実」「リソースを最大限に活用」の3つが肝

ここまでクレーム対応成功の秘訣を述べてきましたが、最後に3つのポイントをお話しいたします。

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クレーム対応では、まず第一に「正直」であること。自分に都合の悪いことは、つい隠してしまいたくなるものですが、事実はすべてをさらけ出し、「正直」であることです。

第二は「誠実」であること。誠実とは、自分の都合で物事を進めないということです。相手の状況に寄り添い、できる限り個別の対応を心がけます。

そして第三は「リソースを最大限利用する」ことです。クレームに対応する場合は、一人で抱え込んではいけません。個人でできることは限られていますので、組織を巻きこみ、考えうるリソースを使い倒して全身全霊で対応します。

私はCA時代、「クレームのお客様を最後は笑顔にする」を目標に、7つのコツを踏まえて、逃げることなく誠実にクレームと向き合ってきました。そうすることによって、クレームがいつの間にか「やっぱりJALだね」といった褒め言葉に変わり、ファンになってくださるお客様が何人もいらっしゃいました。

クレーム対応は誰にとっても気が重いものですが、「ピンチはチャンス」「わが社の新しいファンを増やす」ぐらいの目標を掲げて、プロフェッショナルな意識で臨むと、それほど苦手意識はなくなるものです。

ピンチをチャンスに

人生には一度や二度、絶体絶命と思えるようなピンチがやってきます。そしてそのピンチは突然降りかかかってきます。予想していないピンチには誰もが驚き、戸惑うものです。そのときは必死になって対応しているので余裕がありませんが、「ピンチはチャンス」と言われるように、後から振り返ってみると「ピンチがチャンス」に転じることが多々あります。

その最たるものが、クレームです。ビジネスにおいて、クレームは宝の宝庫。きちんと対応することで、まさしく「ピンチがチャンス」になるのです。

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「手ぶらで謝罪に行くな」の想像以上に深い意味

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提供元:きついクレームを即座に鎮火するプロの7つの技|東洋経済オンライン

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