2021.06.11
一流の人が大体「感じがいい」のは一体なぜなのか|ファーストクラスのCAが明かす「礼節」の効果
一流の人は「感じがいい」ことも多いもの。いったいなぜなのでしょうか(Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
誰もが一度は乗ってみたいと憧れる飛行機のファーストクラス。経営者、一流スポーツ選手、芸能人などなどさまざまな人が搭乗するファーストクラスをチーフパーサーとして長年担当してきた元日本航空のCA山本洋子さんは、「ファーストクラスに乗るお客様には共通点がいくつかあります」と話す。
『どんなストレス、クレーム、理不尽にも負けない 一流のメンタル100の習慣』を刊行した山本さんに、ファーストクラスに乗る一流の人たちの共通点について話を聞いた。
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一流の人ほど、「礼節」をわきまえている
成功するビジネスパーソンに、共通している資質があります。それは、「礼節」をわきまえていることです。
専門知識があり、業務遂行の能力が高くて、仕事ができるといわれているような人も、「礼節」をわきまえていないと、周りからの信頼を得ることはできません。
「礼節」とは、「礼儀と節度」のことです。単なる「礼儀」ではなく、相手に対する敬意と思いやりの心が伴った行きすぎでない礼儀のことです。慇懃無礼の対極と言ってもいい振る舞いです。
ファーストクラスに乗る人は、一般的に社会的地位も役職も高い人が多いのですが、その地位にある人の多くは、人に対する接し方や身のこなし、振舞いの仕方が極めてスマートで、「礼節」をわきまえた人が多いのです。
たとえば、機内で食事のサービスをするためにCAがカートを押しているとき、通路はすれ違うのも難しく、お客様が通る場合は、CAはお客様を先に通すようにします。ところが、一流の人ほど「お先にどうぞ」と言って、CAとカートを先に通してくれることが多いのです。「After You」という振る舞いが身についているのです。
また、一流の人ほど、誰に対しても分け隔てなく「丁寧で正確な敬語」を使って話しかけられます。「お水をください」も丁寧な言い方ではありますが、「手の空いたときでいいので、お水を一杯いただけますか?」と、さらに気を配った丁寧な話し方をCAに対してもされる方が多いのです。
「名前を呼ぶ」ことには、意味がある
CAが機内でお客様に呼び止められるとき、多くは、「すみません」や「CAさん!」と声をかけられます。CAは制服にネームバッジをつけていますし、ファーストクラスとビジネスクラスにおいては、担当するお客様には、お一人お一人に「本日担当いたします山本と申します。飛行中ご用がございましたら、ご遠慮なくお申し付けください」と自分の名前を名乗り、ご挨拶をします。それでも、エコノミークラスやビジネスクラスで、お客様から名前で呼ばれた記憶はあまりありません。
日本は、個人を特定するときに名前よりも役職や肩書で呼ぶことがあります。例えば、会社では、「社長」「部長」、ママ友の間だと「○○ちゃんのママ」、夫婦間でも、「パパ」「ママ」など、違和感なく使われています。悪いことではないのですが、大統領であってもファーストネームで呼ぶ欧米諸国から見たら、不思議な風習かもしれません。
そんなお国柄ですが、ファーストクラスのお客様は、ごく自然に名前を呼ぶ人が多いのです。機内で呼び止められるときも、ファーストクラスでは「山本さん!」です。
何気ないことのように思えますが、「名前を呼ぶ」ということは、実は相手を尊重する行為です。名刺交換をしただけの相手から、名前を覚えてもらっていたら、誰しも嬉しく感じ、時に感動すら覚えるものです。
このように、きちんと相手の名前を呼ぶという行為は、ビジネスシーンにおいて、相手を尊重し、礼を尽くすという「礼節」でもあるのです。ファーストクラスに乗る人は、当たり前のことを当たり前のようにサラリと行い、疎かにはしません。
ただし、中には名前で呼ばれることに抵抗を感じる人もいますので、配慮が必要ですが、敬意をこめて役職ではなく、名前で呼んでみてください。「部長」ではなく、「○○部長」と呼ぶだけで、相手の反応は変わっていきます。
「MYペン」と「MYメモ」の絶大な効果
最近は、何かメモを取りたいときは携帯のメモ機能や音声録音で記録を残す人が増えています。自分用の備忘録としてはいいのですが、ビジネスシーンにおいて、相手を目の前にして携帯でメモを取るのは誤解を生むことがあります。
もちろん相手に、「携帯でメモを取らせてもらっていいですか?」と確認を取る場合はいいのですが、そうでない場合、相手はメモを取っているのか、単にメールをチェックしているのかがわかりません。特に目上の人を前にして携帯を操作していると、不信感を与えてしまっていることも多々あります。
そんな誤解を与えないためにも、MYペンとMYメモでメモを取ることをおすすめします。
ペンとメモを持って、人の話を聞くという振る舞いは、相手に「この人は真剣に私の話を聞いてくれている」という信頼感と安心感を与えます。
例えば、あなたが上司に呼ばれたとき、手ぶらで伺うよりは、ペンとメモを持っていくだけで、真摯な態度が伝わります。逆にあなたが上司で重要なことを伝えたくて部下を呼びつけたとき、手ぶらの部下とペンとメモを持参している部下では、どちらに仕事を任せようと思うでしょうか。
私がチーフパーサーとしてファーストクラスのお客様と雑談していた時のことです。話の途中、そのお客様は、ご自分のペンとメモを取り出して、「メモしてよいですか?」と言って、私の話をメモしだしたのです。私の拙い話など、あまり参考にもならないとは思うのですが、メモを取りながら聞いてくださる姿勢に、嬉しいと同時に感動を覚えたものです。メモを取るという行為は、「あなたの話を漏らさず聞いています」というメッセージになります。
特に目上の人や役職が高い人が、目下や役職の下の人の話をメモを取りながら聞いているとその振る舞いが相手に感動を与え、好感を持たれることによって信頼を得ることができるのです。ビジネスにおいて、MYペンとMYメモは強力な武器になります。
「またご連絡します」。ビジネスシーンにおいて、別れ際などに交わされることが多いやり取りですが、実際には、そう言った自分も連絡をしなかったり、相手から連絡が来なかったりすることが多々あります。嘘をついているという認識はないものの、口にしたことが口約束や社交辞令に終わってしまうことは、意外と多いものです。
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人間関係を円滑にするうえで、潤滑油のような役割をしてくれる社交辞令。適切に使えば、相手に不快感を与えず、良好な関係を保つ有効なコミュニケーション術のひとつです。
私がチーフパーサーを務めていた頃、ファーストクラスでご一緒した一部上場企業の社長から、会社に私宛の手紙が届いたことがあります。フライト中、サービスの話や経営の話、趣味の話までさまざまな話題で会話が弾み、楽しく会話させていただいたお客様です。そのお客様は、成田到着後、「またご一緒しましょう」と言って降機されました。
ここまでは、よくある話です。また機会があれば、ご一緒したいけれど、次の約束をしたわけではありません。「またご連絡します」「またお会いしましょう」というやり取りは、一般的によく使われるいわゆる社交辞令です。
機内では、基本的には個人的な連絡先は交換しません。当然、このお客様にも連絡先はお伝えしませんでしたので、飛行機を降りた後に私と連絡を取りようがありません。しかし、この社長は、会社に手紙をくださったのです。
そこには、機内でお世話になった御礼が綴られ、最後に、「先日のフライトで、またご連絡します。とお約束しましたので、お手紙を差し上げました」と連絡先が書かれていたのです。フライト中の「またお会いしましょう」は、社交辞令で終わることが多いのですが、このお客様は、わざわざ時間を使って手紙を書き、口約束で終わらせなかったのです。
お手紙をいただいたときは、本当に驚きました。フライト中、その場で連絡先を渡すこともできたはずです。しかし、それをなさらず、後日会社を通して書面で連絡をくださることは、なかなかできることではありません。このお客様には、後日一緒にファーストクラスを担当した部下を連れて、会社にお邪魔し、社長室で美味しいお茶とお菓子をご馳走になりました。
小さな口約束も、実行する
エグゼクティブと言われる人は、できないことを、できるとは言わないものです。それが世間一般では社交辞令と言われるものでも、小さな口約束だとしても、愚直に誠実に実行します。人はそんな振る舞いに感動し、惹きつけられるのです。
相手に「礼を尽くす」という気持ちは、日常の些細な出来事に表れます。超一流と呼ばれる人たちは、自分の言葉に責任を持ち、最後まで実行する「礼節」の達人なのです。
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提供元:一流の人が大体「感じがいい」のは一体なぜなのか|東洋経済オンライン