2021.06.02
堀江貴文「睡眠を削って生きる人に伝えたいこと」|「リモートワークのエキスパート」が語る
堀江氏が睡眠の重要性を強調する理由とは?(撮影:梅谷秀司)
数々の逆風もある中、圧倒的な結果を出し続けてきた堀江貴文さん。なぜそれが可能なのでしょうか。新刊『やりきる力』より一部抜粋・再構成してお届けします。
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睡眠をおろそかにしてはいけない
「堀江さんは、いつ寝ているんですか?」
多くのビジネスを同時進行させているためなのか、よく、こう聞かれる。そんなときは、「いや、普通に夜、寝てますけど?」と答える。
どうやら僕は、寝る時聞がもったいないほどに、あくせくと動き回っていると思われているようだ。毎日1~2時間ほどの睡眠で済ませているイメージらしい。
自慢することではないが、睡眠時間はしっかり取っている。だいたい1日7時間は確保している。短くても5~6時間は、しっかりと眠る。それだけ寝ても、1日で17時間以上はフル活用できるのだから十分だろう。
早起きにはこだわらない。ゴルフなど予定があるときは別だが、夜中まで飲んでいることが多いので、朝はゆっくり寝ていたい。昼前までベッドの中にいる日も、たびたびだ。早起きは規律正しい生活の基本だ、と大人は教えるけれど、あまり根拠は感じられない。ラジオ体操が奨励されていた時代の刷り込みとしか思えない。
早起きが体質的に向いている人は結構だが、僕の場合、寝たいだけ寝ているほうがベストな体調をキープできる。逆に、無理な早起きは危険だと思う。早起きを目的に、睡眠時間をおろそかにしてしまう人がいるからだ。睡眠不足はうつ病や心筋梗塞など、さまざまな病気を誘発する。そこにこそ根拠があるので、ぜひ注意してほしい。
「睡眠時間がもったいないほど楽しい」「人生やりたいことだらけ」という人の言い分は、わからないでもない。ただ、楽しいことを100%楽しみ尽くすためには、体調が万全でなくてはならないはずだ。ビジネスも同じだ。せっかくやりがいにあふれていても、眠たい頭では、満足なパフォーマンスを発揮できるはずがない。
起業したての頃は、現場でプログラミングも担当していたので、本当に忙しかった。自宅には戻らず、会社にシャワーとベッドを入れて、食事にもなるべく出掛けたくなかった。仕事しながらコンビニ飯をかき込み、眠くなっては頬を叩き、24時間働き詰めだった。
そんな生活を何年か続けていて、確かに仕事の成果は拡大していった。だが、睡眠時間を削らなければいけなかったあの頃の仕事は、いまならテクノロジーを駆使して、時間や作業量を何分の一にも圧縮できる。もう二度と「寝ずに仕事」なんて、やらない。
僕が睡眠時聞を大事にするのは、ビジネスや遊びの能率を上げるためだ。人間は通常、睡眠中に浅い睡眠と深い睡眠を1~2時間のサイクルで繰り返す。脳内では、深い眠りの間に昼間の短期記憶が整理され、浅い眠りのときに長期記憶への固定化が行われるという。つまり、学んだ知識を自分のものとして定着させるには、睡眠中の記憶の固定化が欠かせないのだ。
僕の場合、睡眠が5時間を切ると、やっぱり記憶が不安定になる。8時間寝れば、かなり長い文章や数式も、すらすらと覚えていられる。しっかり眠ろう! 短い睡眠時間で頑張っても、いいことはない。“寝てないアピール” がイケていた時代は、とうに終焉したのだ。そんなことを自慢してもまったく羨ましがられないし、せっかく覚えたことも記憶に残らない。起きている時聞が、まるっきり無駄になってしまうのだ。
無駄を減らせば、人生という時間は飛躍的に快適になる
会社員の睡眠時間を妨げている要因のひとつは、通勤時間だ。住んでいる場所が都内のオフィスから遠くて、早朝に家を出ないといけない。毎朝、満員電車の不快な通勤に耐えている。そんな人は少なくないだろう。
睡眠時聞を失うほど通勤に時間を取られるところに、なんで住んでいるのだろう? 睡眠時間を確保するには、“職住近接” という考え方があるように、職場の近くに住むのが効率的だ。僕がそうだったように、許されるなら会社に泊まり込んで眠ったっていい。
寝ないで通勤している人は、総じて稼ぎが少ない。「通勤に往復2時間かかる場合、給料が20%低くなる」と、僕は考えている。ビジネスを通じて、さまざまな人から話を聞き、自分でも体感した、ほぽ間違いない数字だ。
コロナ禍でオフィス通勤が減り、Zoomでの会議や打ち合わせが普通になっている。それで生産性が下がったという話は、まったく聞かない。逆に、パソナやアミューズなど有名企業が本社を地方に移転させたり、オフィスの規模を大幅に縮小する流れだ。
先を読んでいる企業が、いま、オフィスという不良資産を手放そうとしている。昔から僕は「会社にオフィスは要らない」「通勤は無駄!」と説いてきたのだが、コロナによって、ようやく一般にも浸透してきた感がある。
会社に行かなくては仕事ができない、という考えは完全な思い込みだ。リモートワークで全然問題ない。煩わしい社内政治から離れたり、嫌なヤツと会わなくて済んだり、好きなようにデスク周りを整えられる。会社に行かないほうが、仕事の能率は上がるのではないか。
昔の話だが、僕は2011年6月から長野刑務所に収監された。以降、自由な暮らしは奪われた。時間も規律も、刑務所が決めた通り。他人のルールに縛られて過ごさなければならなかった。
だけど、発信はやめなかった。メールマガジン発行や著作など、仕事をやり続けた。インターネットは見られなかったので、新聞やテレビのニュース、差し入れられる書籍などから情報を得て、僕なりの考察や意見を、外の社会へ述べ続けた。
収監前に関わっていた多くの事業も、獄中でこなしていた。僕がいなくても進められるシステムを収監前につくり上げていたので、スムーズにやりきれた。
塀の中でも充実していた
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塀の中でも一般のビジネスパーソンと同じか、それ以上のアウトプットを続けていた。航空工学の勉強もしていたので、退屈だった時間はすぐに消え去った。
たぶん僕は、刑務所生活中も、外にいた普通の会社員よりも充実して過ごしていた。言ってみれば、リモートワークのエキスパートだ。
気持ちさえあれば、制限された現実の環境を、自分の望む通りに変えることはできるのだ。収監という特殊な経験をした僕は、若い人たちに聞いたい。
刑務所にいても、やりたいことはできる。あなたちは、なぜやらないのですか?
提供元:堀江貴文「睡眠を削って生きる人に伝えたいこと」|東洋経済オンライン