2021.04.16
「人前で緊張する人」が知らない話し方の原則|アナウンサーの話し方だけが「正解」ではない
気弱な人はどのように会話に臨めばいいのでしょうか(写真:horiphoto/PIXTA)
自分に自信がないことが原因で、生きづらさを強く感じている――。そういった「気弱さん」でも、会話相手に自分の思いを伝えるにはどうしたらいいのでしょうか。スピーチライターの蔭山洋介氏が上梓した『「気弱な人」の失敗しない話し方』より一部抜粋・再編集してお届けします。
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アナウンサーの話し方を目指さなくていい
話し方の手本の話をするとき、アナウンサーがよく例に挙がります。聞き取りやすい発音、よく通る声、誠実な印象など、ビジネスで好まれるイメージの多くが、アナウンサーと共通しているからでしょうか。
歴史的には、1950年代に集団就職などで地方から上京してきた人たちに、共通のマナーや話し方が必要になりました。方言が強く、コミュニケーションが難しかったのだろうと思われます。そのとき話し方教室を開いて、共通語を伝えたのがアナウンサーたちでした。そのため、アナウンサーが今でも話し方の手本と考えられているのかもしれません。
アナウンサーは、音声で情報を伝えることに関してとてもレベルが高く、厳しい訓練を経て、あの話し方を習得しています。決して、生まれ持った才能で、あの話し方ができているわけではありません。
アナウンサーはすばらしい職業で、話し方の手本であることは間違いありませんが、気弱さんには、アナウンサー的な話し方を目指すのは、あまりオススメできません。
気弱さんは、正解を探すことに身体が慣れすぎていて、正解に頼りたくなる癖が身体に染み込んでいます。そんな気弱さんが、ものすごい数の「テクニックという正解」のうえに成り立つアナウンサーの話し方を学んでしまうと、自分がその通りに話せていないというプレッシャーから、さらに自分に対して自信が持てなくなってしまいます。
実際、話し方に正解があるわけではありません。プレゼンテーションにしても、ゆっくり間を取って話すアップルの創業者のスティーブ・ジョブズのような話し方もあれば、中田敦彦さんのように、言葉をリズムよく畳みかけるように話すスタイルもあります。
「ギョギョギョ」でおなじみの、魚類学者でタレントのさかなクンは、甲高い声で早口で話します。一般的には、低い声でゆっくり話すことがいいとされる中で、まったく逆をやっているのに知性を感じますし、親しみもあります。女性でいえば、モデルのローラさんや滝沢カレンさんYouTuber 芸人のフワちゃんもすばらしい話し方をされています。みんなそれぞれに個性的な話し方です。
そしてそれぞれに、この話し方で伝わるのかと自問自答しながら、自分が思っていることを、勇気を持って話しているように見えます。思いを大切にすることが重要です。正解を探すのではなく、どうすれば伝わるかを考え続ける姿勢を崩さないことです。
話し方に正解があるわけではありません。まずは、正解がないと理解して、肩の力を抜きましょう。自分が間違っているのではないかと思うと、自信が持てなくなって、声が小さくなります。発声練習で大きな声が出るようになったとしても、結局自信がなければ声は出ません。
正解がないという正解を、身体で覚えていくことが大切です。そうすれば次第に緊張が解けて、自然と声が出るようになります。
リーダーでも実は自信がない?
気弱さんは、正解がわからなかったり、そもそも正解がない問題に直面したりしたときに、自信をなくしてしまいがちです。
一方で、同じ課題でも、自信たっぷりな話し方で提案をする人がいます。「私はあんなふうには自信が持てないし、話せない」と思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。気弱さんでも、同じように自信が持てるし、自信のある話し方を身につけることができます。
というよりも、自信を持って話しているように見えるその人が、本当に自信があるかどうかはわかりません。
私は、一般的には成功者と呼ばれるような日本のリーダーたちのスピーチを書いています。そんな人たちと接する中でわかることは、どんなに外からは立派に見える人であっても、日々悩み、苦悩し、これで本当にいいのか、こんなことを話して大丈夫かと、不安でいっぱいの中でスピーチをしているということです。
自信にあふれて見えるリーダーたちでさえ、実は自信を持って話せていないのです。
もし、「あの人」が自信にあふれているように見えたとしたら、それは本当に自信があるのではなく、自信があるように見せているだけです。どんなリーダーでも、本当に自信のある人はいません。
自信が持てないのは、正解のない提案をしようとしているからです。仕事には、ルーティンワークとクリエイティブワークの2つがあります。例えばスーパーのレジ打ちという仕事はマニュアル化されていて、ルーティンがはっきり決まっています。
一方で、昨日と同じことをするのではなく、正解のないこと、新しいことに挑戦し続ける仕事があります。クリエイティブワークです。一般的にデザインなどの仕事を指しますが、ここでは単に創造的な仕事という意味です。
クリエイティブワークには答えがない
例えば、「お客様に喜んでもらうこと」を目的にします。すると、スーパーではクリスマスイベントや、年に一度の赤字覚悟の大安売りを企画したりしますが、こういう仕事はルーティンではありません。その目的を達するための方法が無数にあって、しかも最終的なゴールもないからです。「お客様に喜んでもらうこと」に正解はありません。
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人に何かを提案するというのは、基本的にはクリエイティブワークです。そして、クリエイティブワークには答えがないので、つねに不安です。
ですから、実は「あの人」も、本当の意味で自信があるわけではないのです。みんな、不安になりながら、仮説を立てて、一生懸命その道を信じて走っているだけです。
だから、完璧なアイデアが出せないと、悲観的になる必要はまったくありませんし、自信をなくす必要もありません。
自信がないのはみんな同じです。だからこそ、自信があるように振る舞うしかないのです。自信のなさが、外から透けて見えると、相手は心配になってそのアイデアの欠点に注意が向いてしまうからです。自信があるように見える話し方を心がけましょう。
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提供元:「人前で緊張する人」が知らない話し方の原則|東洋経済オンライン