2021.04.13
65歳定年後に元気な人とガックリくる人の大差|本当に必要な「人間関係」とコミュニケーション
孤独に陥らないことが大切です(写真:Fast&Slow /PIXTA)
「第2の人生」を愉しく過ごすためには、定年前からの準備が大切と言われる。「65歳定年後も輝く人とダメになる人の致命的差」(2021年4月2日配信)に続いて、定年後の3大リスク「お金・健康・生きがい」の疑問や不安の正体を可視化し、解決策をまとめた『定年の教科書』より一部を抜粋、再構成してお届けする。
「65歳定年後も輝く人とダメになる人の致命的差」の記事はこちら ※外部サイトに遷移します
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「よい人間関係」が老後にとっていかに大事か
定年後は「よい人間関係」をつくることが、幸せで健康な老後を過ごすための秘訣です。
ここで、世界でもっとも長期間にわたっておこなわれている研究──ハーバード大学の「成人発達研究」を紹介します。そのなかに幸せな老後を過ごすヒントがあるのです。
「成人発達研究」は1938年に始まり、現在まで続いています。資金が続かなかったり、担当者がいなくなったりして、10年ぐらいで終わる研究が多いなか、80年以上も継続とはじつに異例の長さです(2015年の時点)。予算も毎年1億円を得ており、現在のロバート・ウォールディンガーは4代目の所長です。
研究では、男性を2つのグループに分けました。1つがハーバード大学の2年生、もう1つはボストンの極貧生活をしている子どもたちです。10代の彼らにインタビューをし、健康診断を受けさせて、その後を追跡調査しました。
スタート時点で724人だった被験者は、2015年には90歳になり、当時約60人が健在でした。調査はいまも続いています。さらに、彼らの2000人以上の子どもたちも被験者として追加されています。
ロバート・ウオールディンガーは、「健康で幸福な人生を送るのに必要なのは、〈富〉や〈名声〉〈がむしゃらに働く〉ことではなく、〈よい人間関係〉である。それこそがもっとも大きな幸せの要因だ」と結論づけています。
さらに、周囲とのつながりは非常に重要で、「孤独」は命とりになると述べています。
家族や友達とうまくコミュニケーションを取れている人ほど、健康で幸せになります。
コミュニケーションをうまく取れていない人は、孤独を甘んじて受け入れ、少しも幸せとはいえない生活を送ります。孤独な人は中年以降、健康の衰えが早くなり、脳の機能障害なども起こりやすく、孤独でない人に比べて長生きできないそうです。
また、「何かあっても頼れる人がいる」人ほど、記憶がはっきりしています。一方「パートナーはいても、まったく頼れない」と感じる人は、早期に障害が表れるといいます。
よい人間関係は、健康だけでなく、脳の機能も守ってくれるのでしょう。
メットライフ生命の「老後を変える全国47都道府県大調査」(2018年)によると、「老後に不安がない」という人の85%が「本音で話せる友人がいる」と答えています。
「老後に不安がある」という人のうち「本音で話せる友人がいる」と答えた人は75%でした。
また、老後の楽しみについての調査では、「友人あり」と答えた人のほうが「友人なし」と答えた人より、充実した老後を送れることが調査からわかりました。
ちなみに、アメリカのプリガム・ヤング大学のホルト・ランスタッドらの研究によれば、孤独を感じるピークは思春期と青年期で、超高齢期で再びピークが訪れるとしています。
孤独に関する病気のリスクは、65歳未満よりも65歳以上のほうが高いこともわかっています。そして最近の研究では、孤独はアルツハイマー病の前駆症状だという可能性も指摘されています。
定年後のプランは「長期的な視点」で考える
では、第2の人生は、どうやって歩いていけばいいでしょう。
定年後のプランって考えていますか。「趣味をしたいな」「旅行に行こうかな」「なかなか会えなかった友人に会いたいな」「習い事でも始めてみようか」など、漠然と思い描いている人が多いと思います。
ここ、要注意です。
定年退職後にやりたいことのアンケートで、必ずトップにあがるのが「旅行」です。
しかし、旅行に行くとしても、お金がかかります。趣味を優先するあまり、老後資金がなくなっては困ります。
「お金のプランニング」と「やりたいことのプランニング」を見比べ、バランスを取る必要があります。
また、1年中旅行をしているわけではありません。海外旅行や国内旅行なら10日間から、長くても1カ月程度でしょう。世界一周クルージングに出かけたとしても期間は半年です。
でも、定年後はくらべものにならないほど長いのです。やりたいことが1カ月で終わってしまったら、残りの時間はどうしますか。
たしかに、退職後のお疲れさま旅行はいい思い出づくりになりますが、もっと長期的なプランニングが必要なのです。
友だちだって、毎日はつき合ってくれません。仕事仲間や後輩を誘っても、応じてくれるのは最初だけです。あまり頻繁に誘うと、ウザいと思われるのがオチです。こうなると、暇をもてあましてしまいます。
私がよく利用する図書館は朝10時に開くのですが、開館前から60代、70代とおぼしき男性が並んでいます。午前中の図書館には、老齢の男性が多くいます。
平日の大型ショッピングセンターも同様です。退職者らしき男性が、閑散としたスペースの中で所在なさげにソファに座っています。
平日のスポーツクラブなど、高齢の男女がひしめいて、まさに老人クラブ。更衣室ではほとんど挨拶も交わさず、黙々とトレーニングマシンに向かっているか、マッサージチェアに座ってずっと新聞を読んでいます。もちろん健康のためもあるでしょうが、ほかにいく場所がないのです。
妻に始終ついていく夫は嫌われる
「濡れ落ち葉」になる人もいます。
濡れ落ち葉とは、濡れた枯れ葉が地面から離れないことです。定年後にすることのなくなった亭主が、いつも妻から離れない姿を揶揄した言葉です。
妻が買い物や散歩に出かけようとすると、「オレも」とついていく。1日じゅうベッタリまとわりつかれれば、妻もうっとうしく感じます。
それをずっと続けていると、熟年離婚ということにもなりかねません。いくら仲がよくても、それぞれの時間は必要です。
ただし、あまりにも暇だからといって、ギャンブルやフーゾクに走ってはいけません。老後資金を減らすハメになります。
厚生労働省の「人口動態統計月報年計」(平成30=2018年)を見ると、離婚の総数は若干減っています。しかし、婚姻期間が25年以上のカップル、いわゆる熟年世代に限ると上昇傾向にあります。
定年後に必要なのは「きょういく」と「きょうよう」
定年後に必要なものは「きょういく」と「きょうよう」だそうです。これは「教育」と「教養」ではなく、「今日いくところ」と「今日、用事がある」ことです。
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まずは自分にできることをじっくり考える必要があります。とはいえ、「それが難しいんだよ」というぼやきが聞こえそうですね。
そこで、私は「トライアンドエラー」をお勧めします。少しでも興味のあることをまずやってみて、「自分には向いていないな」と思えば、次のものを試してみるのです。何度か試すと自分にできることは何かや、向き不向きがわかってくるはずです。
たとえば……。
▼もう一度仕事をしてみる
1カ月5万円の仕事でも、収入があれば助かります。老後資金に問題がない人も働くことによって、生きがいにつながり、社会との接点をもつこともできます。これはお勧めです。
▼ボランティア活動に参加する
地域の活動でもOKです。コミュニティが広がって仲間もできる機会となります。
▼男の料理教室に通ってみる
これは妻に大好評になるはずです。家事の助けになりますし、見直されること間違いなしです!
▼学び直し・リカレント教育
知識の探究に年齢は関係ありません。今からでもけっして遅くはないのです。時間に余裕ができたからこそ、昔かなわなかった夢に近づくことだって可能です。通信教育などさまざまな制度があるので、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
このように何でも挑戦してみるのはけっこうですが、いきなり大金を注ぎ込むトライは慎んでください。エラーしたときの痛手が大きすぎます。「お金のプランニング」と「やりたいことのプランニング」の両方を考えることが大事です。
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提供元:65歳定年後に元気な人とガックリくる人の大差|東洋経済オンライン