2021.04.08
「仕事が終わらないと言う人」に欠けている視点|人生をより充実させる「スケジューリング」の技
リモートワークで仕事時間が増えた、と感じる場合は、時間の区切り方に問題があるのかもしれません(写真:asaya/PIXTA)
新型コロナウイルスの影響でリモートワークになったものの、勤務時間が「増えた」という人は少なくありません。通勤や飲み会に費やしていた時間が減ったことで自由時間が増えたにもかかわらず、時間がうまく使えないと考えている人もいるでしょう。本稿では、リーダーシップ・行動心理学の研究者であり、『タイムマネジメント大全』の著者、池田貴将氏が、プライベート時間を確保することの重要性を紹介します。
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「終わるまで仕事する」のは絶対ダメ
自粛生活がスタートして1年が経ちましたが、あなたはこの1年間何をしてきたでしょうか? リモートワーク中は、普段以上に労働時間が増えている人も多いと聞きます。そういう人がやりがちなのが、「終わるまで」仕事をすること。出社や退社などの区切りがなくなった今、「この仕事が終わるまで」というような時間の区切り方は絶対にしてはいけません。
リモートワークをうまく使って人生を充実させるには、スケジューリングがポイントになります。
スケジューリングの初手にすべきことは、「プライベート時間」を先に確保することです。「時間が余ったらプライベート時間にしよう」と思っていると、ほとんどの場合はとれません。仕事が遅れたら自動的にズレこんで削られますし、テレビや動画をダラダラ見るような受動的な時間の使い方をしていたら、あっという間になくなります。
僕がすすめるタイムマネジメントは、「自分の時間を他人のためにささげる」のをやめて、プライベート時間をしっかり確保することで幸福度を上げるためのものです。ですから、プライベート時間を先にスケジュールに入れることは、最優先にしてください。
たとえば僕は食事や睡眠の時間をのぞいた次の5つで1日の予定を区切っています。
・起床~8時
朝のルーティンの時間です。運動、瞑想、ジャーナル、勉強、90分の重要タスクを完了させる5つを自分に課しています。
・8時〜13時
超重要なアウトプットをする時間です。僕の場合は、執筆、研究、事業計画、意思決定などをする時間で、集中する必要があるので、この時間は細かい仕事やメール・チャットなどはしないと決めています。
・14時~17時
ランチを食べて意識も緩んでくるので、作業的なタスクや書類を片づける時間にしています。考えるよりは「やれば終わるタスク」にあてるのがコツで、終わったら明日の分をやるのではなく、「自由時間」にしています
・17時~20時
17時を過ぎたら基本的に仕事はしません。仕事関係の通知アプリはすべて切って、プライベート時間にしています。映画を観たり、読書をしたり、友人と会うことも。英語の勉強など新しいことをインプットする時間にもなっています。人によっては家族と過ごす時間にしてもいいでしょう。
どんなに忙しくても、こうした時間がとれなかったら、何かがおかしくなっているサインです。楽しむための時間がとれなかったら何のために生きているのかわからなくなりますから、一番に確保すべき時間です。
・21時~22時半
夜のルーティンをする時間です。就寝時間がずれないようにしながら読書習慣や翌朝の準備もしながら、就寝の準備をします。
こうして1日の時間割を5つに分けている理由は、「今何の時間かを脳に自覚させる」ためです。すると、終わらなかったからといって、ダラダラ仕事を続ける自分にストップをかけることができます。
やりたいことを見つける「アーティスト・デート」
でも、こうして「プライベート時間」を確保しても、そこで何をしたらいいかわからない、という声もよく聞きます。そんなときに僕がおすすめするのが「アーティスト・デート」です。
世界中で400万部以上も読まれているジュリア・キャメロン氏が書いた名著『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』では、やりたいことを見つけるために「アーティスト・デート」というものをすすめています。
雑貨店に行く、古い映画をひとりで見る、水族館やアートギャラリーに行くなど、すすめているのはほんの小さなこと。ごく身近で些細な自分の喜びを再発見するのです。
僕の場合は、昔の絵の具を引っ張り出して、思うままに紙に絵を描いてみました。おそらく時間にして20分くらいのことだったと思うのですが、とてもスッキリしました。うまくやろうとか、誰かに見せようということから離れて、「やってみたい」と思っている自分の気持ちと純粋につながりながら取り組むことが大切なのだと思います。
アリストテレスによれば、「善い人生には、その行為そのものから生まれる満足感以外に何の利益ももたらさないような行動が必要である」そうです。目的なんてなくてもいいのです。確かに、ちょっとでいいので「やってみたい」と思ったことを行動に移していかないと、人生の幅がどんどん狭くなってしまいますよね。
ほかに、「プライベート時間」に「手仕事」をすすめる専門家もいます。
ランドルフ・メイコン大学心理学部長のケリー・ランバート氏は、その著書『うつは手仕事で治る!』(木村博江訳・飛鳥新社刊)の中で、「人は体をつかって努力し、目的を達成すると大きな喜びを感じる。畑仕事や手仕事から解放され、スイッチ1つですむ生活になってから、うつになる人が増大した」と述べています。
手仕事には、農作業や木工、ペインティング、編み物などはもちろん、コーヒー豆を自分で焙煎したり、パンを焼くなどの料理をすることも含まれます。手を使って集中する作業というのは、PCの前に座って何かをしているときとはまったく違う脳の使い方をしていると感じて、とても気分がよくなります。
出来上がった実体のあるものを、見たり食べたり使ったりできることも、充実感をもたらす理由の1つでしょう。せっかくの「プライベート時間」をうまく使えていないと感じる人は、ぜひ試してみてください。
手仕事は「1人で行う」のが鉄則
ただし、絶対に守ってほしいのが「1人で行うこと」。写真や感想をSNSに投稿するのも禁止です。他人からの評価を求めるのではなく、自分だけの満足感を大切にしましょう。
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「プライベート時間」があるのが当たり前の毎日になると、「あ、あれをやってみよう!」とか「この本読みたかったんだ!」というように、どんどん「小さなやりたかった」を思い出せるようになります。
すると、時間に追われる毎日から、やりたいことを追いかける毎日に変わっていくのです。ぜひ日々のToDoリストとは別に「やりたいことリスト」をつくってみてください。誰にも見せないので、どんなに些細なことでも、ちょっと恥ずかしいことでも大丈夫です。
すると、ふとしたときにリストを見るだけで、または新しいことをリストに書きこむだけでも、「プライベート時間」が楽しみになり、週末が待ち遠しくなり、毎日が充実していきます。
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提供元:「仕事が終わらないと言う人」に欠けている視点|東洋経済オンライン