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2021.04.02

すでに始まった「大豆肉」を食べる衝撃的な生活|世界を席巻するインポッシブル・フーズとは


世界で注目されているインポッシブル・フーズ。「大豆肉」を食べる世界はすでに始まっています(写真:shige hattori/PIXTA)

世界で注目されているインポッシブル・フーズ。「大豆肉」を食べる世界はすでに始まっています(写真:shige hattori/PIXTA)

日本ではあまり知られていないが、世界で注目されている企業が、インポッシブル・フーズ。「ベジタリアンだけど肉の食感もほしい」というベジタリアンのニーズに応え、現在、アメリカで大流行しています。

これまでもベジタリアンフーズを製造している企業はありましたが、インポッシブル・フーズのような本当に肉の食感が得られるベジタリアンフーズはなかった――『2025年を制覇する破壊的企業』の著者であり、ビジネスとテクノロジーをつなぐベンチャーキャピタリストである山本康正氏はそう語ります。どういうことか。同氏に聞きました。

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「ベジタリアンだって肉の食感がほしい!」を実現

食業界に大革命を起こすのではないかと注目を集めているインポッシブル・フーズ。アメリカではお肉を食べない、お肉がダメなベジタリアンがかなり多く、レストランにもベジタリアン向けのメニューが当たり前に用意されています。

ベジタリアンがお肉を食べない最大の理由は、動物を殺すことに抵抗があるからです。一方で、お肉の食感を楽しみたいとの願望もある。そこで、まるで本物のお肉のような食感や味わいが楽しめる、代替肉が注目されています。インポッシブル・フーズは、この代替肉を製造しているベンチャーです。

原材料は大豆です。ただ実際に食べてみるとわかりますが、牛肉のような食感が楽しめます。ふつうにおいしいですし、牛肉に比べ価格も安い。牛を育てている最中に発生する地球温暖化の原因の1つとされるメタンガスも発生しません。エコな商品でもあるわけです。

価格が安いのは、牛肉に比べ製造コストが圧倒的に低いからです。牛肉であれば子牛から育てて最低でも3年は出荷するのにかかります。一方、インポッシブル・フーズのお肉は大豆ですから、原材料さえあれば工場で短時間で作れてしまう。もちろん大豆を生産する時間もありますが、牛を育てるのと比べたら、はるかに短い時間です。

有害な化学調味料も入っておらず、栄養価もあります。そのため今アメリカではこの代替肉が大変人気で、インポッシブル・フーズ以外にも、ビヨンド・ミートという同業者も存在、ビヨンド・ミートはすでに上場済みで、時価総額は1兆円に迫る勢いです。

インポッシブル・フーズも時価総額約5000億円のユニコーン企業で、市場からの評価も高いです。

今後の動向としては、ほかの代替肉を展開していくでしょう。すでにインポッシブルポークは製造しており、とんかつのような商品も発表しています。この流れが進み、インポッシブルチキン、インポッシブルツナなども開発されていくと私は見ています。

インポッシブル・フーズの成長に伴い、精肉業界、牛や豚の生産者、漁業関係者の仕事は破壊されていきます。さらに言えば、食の流通を生業としている企業にも大きな影響を与えます。つまりインポッシブル・フーズが、これからの食業界全体の大革命の基点になるのです。

お肉や魚以外にも、インポッシブル・フーズのような動きがあります。ワインやウイスキーです。中でも私が注目しているのはGlyph(グリフ)というベンチャーです。ワインやウイスキーには熟成期間があり、長く寝かせることで味わい深くなっていきます。この熟成期間をテクノロジーの力で解決しようとチャレンジしています。

実際に私も飲んでみましたが、現時点ではあまりおいしくない、というのが正直な感想です。ただインポッシブル・フーズも出始めのころは、今ほどはおいしくはありませんでした。

とはいえ、グリフもインポッシブル・フーズのように、30年もののウイスキーをわずか30分で製造する。数年後には、そんな会社に化けているかもしれません。だからなのでしょう、サントリーが一時期グリフを買収しようとしていたといった動きもありました。

インポッシブル・フーズはテスラとも似ている

「既存のシステムに頼るな」という言葉があります。今あるシステムや常識が絶対に正しいわけではない。つねに疑う必要がある、との意味です。

この言葉を実践しているのが、インポッシブル・フーズです。これまでもベジタリアンフーズを製造している企業はありました。ただ、インポッシブル・フーズのような食感はありませんでした。多数のベジタリアンの目的は、肉を食べないことではなく、家畜を殺さないことなど環境への配慮ですから、大多数は我慢して食べていたわけです。

でも中にはもちろん、お肉のおいしさ、とくに食感を好む人だっているわけです。このまるで本物のお肉のような、これまでベジタリアンが我慢していた肉の食感を、インポッシブル・フーズの大豆肉は実現しました。まさしくゲームチェンジャー、これまでの常識を取っ払ったのです。

本物のお肉のような食感を味わえるとの体験が、目的を達成しながら、できるようになったわけです。当然、ベジタリアンから支持されます。

インポッシブル・フーズの取り組みは、肉の食感だけでなく、食料問題、環境問題、貧困問題という、3つの大きな社会課題解決にも貢献しています。まさに昨今のトレンドであるESG(環境・社会・ガバナンス)まで実現してしまったのです。これまでの業界や境界の壁を意識していないからこそ、実現できたと言えます。

現在ではアメリカのみでの展開のようですが、おそらく内実ではパートナー企業などを通じ、海外でも販売すると思われます。

つまりこの先の、世界の食産業を変える可能性があると私は見ています。農家の雇用がなくなるのが問題だと指摘する人もいますが、私はそうは思いません。逆に、無理やり雇用を維持する方が、当事者だけでなく、国も不幸になると考えるからです。

それよりも今後人口爆発で食料不足が問題視されているのですから、その解決策になりえるだろうと。

「我慢」を取っ払ったエコから得る体験

インポッシブル・フーズはテスラと似ているとも感じています。電気自動車が出始めのころは、単にエコな乗り物であることが、コンセプトでした。そのため見た目はイケてない、走行距離も短い、それでいて充電時間は長いし、価格もガソリン車と比べると高い。でも環境に優しいなら、我慢して乗るかと。

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過去のベジタリアンフードと同じく、ユーザーは我慢して乗っていたわけです。そしてこのような我慢が、常識でした。ところがその常識を、テスラは取っ払いました。エコでありながら、見た目もかっこよく、スピードも速い、充電も含めたサービスも充実している。体験として満足する電気自動車を開発したのです。

業界や領域に固執していると、その中でのしきたりや固定観念に縛られてしまい、ユーザーや市場が求める本質的なニーズとはズレた商品やサービスを提供してしまっている例は、多くあります。

いま行っている事業やサービスが、ユーザーのニーズにフィットしているのかどうか。ハード、ソフトどうこうではなく、その先の体験に基点を置いた企業が、これからの未来をつくっていくのです。

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提供元:すでに始まった「大豆肉」を食べる衝撃的な生活|東洋経済オンライン

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