メニュー閉じる

リンククロス シル

リンククロス シルロゴ

2021.03.18

昼夜問わず「スマホを使い続ける生活」の大弊害|なぜ「メンタル不調に悩む日本人」が激増したか


過度な「スマホ理由」が招く弊害とは?(写真:ponta/PIXTA)

過度な「スマホ理由」が招く弊害とは?(写真:ponta/PIXTA)

過度なスマホ利用が招く弊害とは? 脳科学者で「セトロニン研究」の第一人者である有田秀穂氏による新書『脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣』より一部抜粋・再構成してお届けする。

『脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

2019年末、中国・武漢市に端を発したといわれる新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の爆発的流行は、またたく間に世界各国に広がり、世界的大流行(パンデミック)を引き起こしました。私がこの文章を書いている2020年末現在も、まだ終息の見通しがついていません。そして、この新型コロナの蔓延は私たちの生活を根底から変えてしまいました。

2020年春に政府から出された緊急事態宣言は、海外のような厳しいロックダウンの措置こそありませんでしたが、不急不要の外出や都道府県境を越える移動の自粛を求められて、商店や飲食店は休業または営業時間短縮を余儀なくされました。手洗いやマスクの着用が呼びかけられ、企業においても、可能な限りネットを利用して自宅で仕事をする、いわゆるリモートワークをおこなうところが増えていきました。

増える「コロナうつ」「コロナストレス」

こうした措置は時間の経過とともに緩和されたものの、新型コロナの流行が収まったわけではなく、まだまだもとの生活様式に戻るまでには時間がかかることでしょう。あるいは、二度と戻ることはないかもしれません。そんな状況のもと問題になっているのが、私たちのメンタルヘルスです。これまで心身ともに健康だった人が、うつうつとして沈み込んだり、家庭内暴力を起こしたりという話をよく耳にするようになりました。

新型コロナの蔓延によってストレスを受け、「コロナうつ」「コロナストレス」と呼ばれる症状に悩まされている人が増えているのです。つまり、新型コロナによって、ストレスに悩まされる人が増えているといってよいでしょう。

その原因は、大きく分けて2つあると考えられます。1つは、新型コロナそのものに対する不安です。誰しもがかかる可能性がある病気ですし、重症化すると苦しいだけでなく命にかかわる恐れもあります。特効薬もまだないことから、不安を抱くのは無理もないかもしれません。さらに間接的な影響として、コロナ禍による収入減や失業といった経済的な不安も見逃せません。

もう1つは、自粛生活における生活習慣の変化があります。ウイルスを避けようと自宅にひきこもった結果、運動や日に当たる時間が減ったり、他人と会話する機会が減ったりすることで、メンタルに不調が出てきたという人がかなり多いように見受けられるのです。

実は、ひきこもり生活による運動不足、太陽光を浴びない生活、他人との会話のない暮らしというのは、セロトニンという神経伝達物質(脳内物質)を減らしてしまう要素になるのです。

セロトニンは脳内にあるセロトニン神経から分泌され、私たちの精神状態を健やかに保つという大事な役割を果たしています。セロトニンが脳内にたっぷり存在していれば、私たちはちょっとやそっとのストレスにも動じることはありません。イヤなことがあってもすぐに気分転換できたり、失敗してもくじけずにチャレンジを繰り返せる、いわば「ストレスフリー」で過ごせるのは、セロトニンのおかげといってもいいでしょう。

セロトニン神経は、太陽の光を浴び、適度な運動をして、周囲の人と楽しく触れ合うことで活性化されていきます。しかし、「新しい生活様式」が求められ、ひきこもり生活が続いて、孤独な状態で家の中にじっとしていると、セロトニン神経はしだいに弱っていき、セロトニンの分泌量が減ってストレスに弱い脳になってしまいます。セロトニン神経はストレスに弱いという性質を持っているのです。

新型コロナの自粛生活によって、コロナうつ、コロナストレスというメンタルヘルスの問題が浮き彫りになったのは、セロトニン神経の働きからすると当然といってもいいでしょう。

「長期の引きこもり」が心を蝕む

セロトニンがさらに欠乏していけば、朝の目覚めが悪くなり、イヤなことがあっても気分転換をしにくくなります。テレビやネットで流される暗いニュースを見聞きしては、ネガティブな気分になって落ち込むばかり。そうなると、外に出て元気に動き回ろうとも、友人と会って話そうとも思えず、さらに悪循環に陥ってしまいます。やがては、ささいなことでキレやすくもなるでしょうし、自律神経失調症にもなってしまいます。最終的には、本当のうつ病になる恐れもあるのです。

これまでも、私はセロトニン神経の研究者として、パソコンやスマートフォン中心のデジタル生活がメンタルヘルスに悪影響を及ぼすということを主張してきました。それでもまだ、コロナ以前では、会社への通勤や買い物がそこそこ運動になりますし、会社の同僚や近所の人とのおしゃべりが、なんとかセロトニン神経の活性化に役立っていました。

しかし、新型コロナによって、そうした生活習慣も制限されてしまったのです。これまで意識していなかったようなちょっとした生活習慣が、実はメンタルヘルスにとって重大な問題を引き起こすと、多くの人々は新たに認識したのではないでしょうか。

私たちは、ウイルスに感染しないために家にひきこもりましたが、それが長期間続くと、元気だった人が病んでしまうという状況を目の当たりにしました。

逆にいえば、「新しい生活様式」のもとでも、セロトニン神経をうまく活性化させる工夫ができれば、私たちは「ストレスフリーな脳」を手に入れることができ、不安に振り回されることがなくなるのです。

もちろん、家にひきこもっていても、なんとか生活を維持できているのは、デジタル技術の発達のおかげです。家にいながらにして、仕事、買い物、情報収集、友人とのやりとり、そして遊びに至るまで、手元にあるパソコンやスマホでできるようになりました。それですべてができるのですから、すばらしい発明であることは間違いありません。

記事画像

『脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣』(青春出版社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

しかし、その便利さが諸刃の剣となり、セロトニン神経を弱らせる原因となっています。そして、セロトニンがきちんと出ない生活を続けていることが、イライラを引きずったり、睡眠の質を低下させたりといった状況を生み出す理由にもなっています。

かといって、デジタル機器なしでは仕事も生活もできないことは明らかです。重要なことは、パソコンやスマホとのつきあい方を学ぶことです。これが、現代人にとってストレスフリーに生きるための急務といってよいでしょう。

「常にスマホをいじる生活」の弊害

私たちは、朝起きてから夜ベッドに入るまで……、いやベッドに入ってからもスマホをいじる生活にどっぷりとつかってしまいました。これは、大昔から生きてきた人間の営みからすると、とんでもないことなのです。

昔の人間は、太陽が出ると外に出て体を動かして、狩りをしたり畑を耕したりしていました。汗水たらして、体を動かして、太陽も浴びるというのは、セロトニン神経が自然に活性化される暮らしです。そういう生活の中で、人間は1万年以上も生きてきたのです。そんな暮らしが、つい20年ほど前まで続いていました。

ところが今は、机の前に座りっぱなしで何でもできるようになりました。太陽の光を浴びず、体もほとんど動かさない。それでも仕事がきちんと成り立ち、お金が入るという便利な社会ができ上がりました。

コロナ以前は外出や通勤が気分転換や運動になる面もありましたが、コロナ禍ではそれもできなくなってしまいました。それでは、セロトニン神経を活性化するいとまがありません。ストレスはただたまる一方になってしまったのです。

ストレスが加われば、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが副腎皮質から分泌されることはよく知られています。同時に、セロトニン神経が抑制されてしまうこともわかっています。つまり、ストレスが加わることでセロトニン神経が弱り、結果としてストレスに押しつぶされやすくなってしまうわけです。

記事画像

【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

「白米好きの日本人」を襲ったヤバい病気の正体

50代で「うつになる人」「ならない人」決定的な差

アラフィフ女性の9割が悩む「謎の不調」の正体

提供元:昼夜問わず「スマホを使い続ける生活」の大弊害|東洋経済オンライン

おすすめコンテンツ

関連記事

【新連載】国がすすめる健康づくり対策とは?~健康日本21(第三次)を優しく解説

【新連載】国がすすめる健康づくり対策とは?~健康日本21(第三次)を優しく解説

視力と聴力が低下、軽視される「帯状疱疹」の恐怖|新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない

視力と聴力が低下、軽視される「帯状疱疹」の恐怖|新年度の疲れに要注意、子どもも無縁ではない

「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解|新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解|新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

カロリー削れば太らないと頑張る人を裏切る真実|エネルギーが過剰だから体脂肪が蓄積するのではない

カロリー削れば太らないと頑張る人を裏切る真実|エネルギーが過剰だから体脂肪が蓄積するのではない

戻る