2021.02.12
写真下手に知ってほしい「映える撮り方」超基本|SNSで「いいね!」が集まりやすくする技法
重要なのは「構図」と「アングル」です(写真:elwynn/PIXTA)
SNSでの発信が企業や商品のイメージを決定づけることもある今、「写真」の重要性は増しています。「いいね!」を集めやすい「映える写真」を撮るにはどうすればよいのでしょうか。実は、それほど難しく考える必要はありません。押さえておくべきなのは基本的な技法です。戦略デザインコンサルタントでアートディレクターのウジトモコ氏の新著「これならわかる!人を動かすデザイン22の法則」を基に、今回は知っておきたい「構図」と「アングル」の原則をお届けします。
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第1回:実例で学ぶ「売り上げを伸ばす」デザインの凄技 ※外部サイトに遷移します
第2回:「伝わらない資料」が大改善するたった2つの技 ※外部サイトに遷移します
「構図」を意識して撮影する
Twitter(ツイッター)、Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)といったSNSは、個人に限らず、企業にも積極的な参入が求められています。
やるリスクよりも、やらないリスクが叫ばれるものの、いざ始めた場合、最初にぶつかる壁のひとつは「写真の投稿」です。スマートフォンに対応したカメラの技法を身につけ、壁を乗り越えましょう。
ここでは「映え」を作る「構図」と「アングル」を紹介します。
写真を撮るときに「構図」を意識しない人は、画角の中の被写体(風景や料理など)を「漫然と」撮影してしまっています。一方、構図を意識する人は、被写体に「焦点」を合わせて撮ることを心がけています。
この焦点を合わせて写真を撮るということを、「フォーカスロック」などと言いますが、では、どこに何を置いてどのように「焦点」を合わせて撮影していけば、よい写真になるのでしょうか。
写真撮影における構図を大きく分けると、「基本的な構図」((1)日の丸構図、(2)三分割構図)と「基本的な構図を理解できればすぐに応用できる構図」((3)基本構図に画角外からストーリーを加える)の3つがあります。
(1)日の丸構図
日本の国旗のように主題をど真ん中に持ってくる構図の取り方です。表現がストレートな分、力強くてインパクトがある一方、「単に主題を真ん中に持ってくるだけ」では、目を引かない可能性があります。
被写体を真ん中に置き、しっかりと主題を引き立たせるには、周囲の無駄な要素を排する工夫が必要です。そのためには「背景をぼかし、周囲の余計なものをすっきりさせる」「主題以外を暗く落とす」「あるいは明るく飛ばす」といった方法で、しっかりと視線を釘付けにできます。
力強くてインパクトがある日の丸構図 (写真:Markus Spiske)
Markus Spiske ※外部サイトに遷移します
自然体で表現したいときに有効な三分割構図
(2)三分割構図
まず、画角の中に縦線2本、横線2本のグリッドを引きます。すると、縦線と横線が交差する4か所の交点ができます。三分割構図は、この4つの交点のいずれか1つに主題を置くことです。
先に紹介した日の丸構図は、見る側にほどよい緊張感を与えるのに対し、三分割構図は安心感を与えます。被写体をより自然体で表現したいときに有効です。
安心感を与える三分割構図(写真:Brooke Lark)
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もちろん、主題を交点とぴったり重ねる必要はありません。おおむね交点あたりに来るだけでもよいのです。また、主題から対角線上に向かって余白(奥行き)が生じます。背景に余計なものが写り込んでいないかも注意が必要です。
ちなみにスマートフォンのカメラアプリには、「グリッド」の機能が備わっているものもあります。設定をオンにすることで、三分割構図の補助線が表示されて撮影が楽になります。
(3)基本構図に画角外からストーリーを加える
被写体をあえてフレームからはみ出させることで、ストーリーや味わいを表現する方法です。
「画角外からの視線誘導」は、視線の導線が画角外からスタートし、ゴールの主題へと導く構図の取り方です。ポットのお湯(画角外)が、ドリッパーに注がれる(日の丸構図)という形で、1枚の写真の中でストーリーが生まれています。
画角外から視線を誘導する(写真:John Forson)
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画角外へと視線を誘導する
「画角外への広がり感」は、主題から視線がスタートし、画角外へと誘導する構図の取り方です。おいしそうなフルーツ(三分割構図)と積み上がったパンケーキ(画角外)という形で、立体感を演出しています。
シズル感やみずみずしさといった、料理写真でとくに有効な構図です。
「画角外への広がり感」は料理写真に有効(写真:Henry Be)
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シンプルな構図に対する補正、あるいは工夫も重要です。主題を引き立たせるため、焦点以外を目立たなくさせる(余白を作る)工夫が必要です。
下の写真は、インスタグラムに付いている「ビネット(vignette)」というフィルター機能を使って撮影しています。周囲を暗くし、主題が明るくなるよう補正を行うと、中心の花が際立ち、よりインパクトのある写真に生まれ変わりました。
周囲を暗くすると被写体が際立つ(画像:筆者提供)
インスタグラムでのぼかし方
本格的なカメラとレンズを使った撮影では、周囲がふんわりとボケることで、優しい雰囲気を保ちながら被写体を目立たせることができますが、スマホでも、フィルターを使用して周囲のモノをぼかす方法があります。
インスタグラムでは、「チルトシフト(Tiltshift)」というフィルター機能がそれです。ボケ味の強弱は調整できませんが、「円形」と「直線」のどちらかを選択して、強調したい部分(焦点)をタップすれば、その周辺がボケます。
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「アングル」とは、撮影時のカメラレンズが被写体に向けられる角度のことを指します。アングルを定めることで、見え方や世界観は決まります。
真俯瞰アングルの撮影方法の例(画像:shutterstock)
真上から撮った「真俯瞰」(まふかん)アングルは、インスタグラムの流行で、一般的によく見かけるようになりました。
被写体はカメラと平行で、均一の距離感を持ち、物と物との関係も理解しやすいという利点があります。が、カップの高さやマカロンの厚みなどは写りません。
真俯瞰の構図は、テーブルに置いてあるもののすべてが入るため、今ここにある世界の全体を伝えるのに適しており、「オーガニックコーヒーとピスタチオマカロンで至福のひとときナウ」を伝えたいときに、ベストなアングルといえます。
インスタグラムで流行し、よく見かけるようになった真俯瞰アングル(写真:Brigitte Tohm)
Brigitte Tohm ※外部サイトに遷移します
かつて、プロの現場で真俯瞰アングルを撮影するには、ストロボやタングステンといった照明機材を使い、高い天井があるスタジオが必要でした。
しかし、最近の傾向として、クリエイティブの領域においても必ずしも大がかりなセットではなくてもよいし、なるべく自然なシチュエーションを早く出したほうがよいという流れもあります。手軽にぱっと撮って1枚でわかる真俯瞰は、まさにスマホ時代の王道アングルといえそうです。
「斜俯瞰」アングルはカタログのスタンダード
時代を超えて、カタログ写真に使用される最もスタンダードなアングル、それが「斜俯瞰」(しゃふかん)です。被写体に対して斜め上から撮影します。
斜俯瞰アングルの撮影方法の例(画像:shutterstock)
レンタカーのサイトなどで「どの車を選ぼうか?」というとき、真上(真俯瞰)や真横からでは、死角になる部分が多く、全体の形が想像しづらいものです。斜俯瞰のアングルであれば、全体像(雰囲気)もわかるし、機能的な面(ドアの数はいくつあるのかなとか)も同時に把握できます。
車のような大きな商品に限らず、食品や化粧品、家具などさまざまな商品写真を斜俯瞰アングルでは、そつなく無難に(あるいは安心に)写すことができます。
「見上げ(あおり)」は、被写体に近づいてパースを感じるくらいに見上げる視点になります。
見上げアングルの撮り方の例(画像:shutterstock)
この構図のよいところはなんと言っても迫力を演出できるとこと。また、車や商品にかかわらず、見る人から被写体が上にある想定なので、神々しさ、あるいは威厳を表現することが可能です。
人が視線を上げて物を見ること自体、太陽や星を見上げる、空を見上げる、などのように「前向きな」心情をもたらす効果も期待できます。車のような趣味嗜好にかかわるものであれば、「イケイケ感」「インパクト」などの演出などにも向いています。
真俯瞰よりも斜俯瞰よりも、さらに高く引いた目線のことを「鳥瞰図」(ちょうかんず)と言います。鳥の視界に当たり、最近では、ドローン映像などがこれに当たります。広く見渡せることや、一気に世界が広がることなどから、開放感やスケール感の演出に向いています。
ただし、自然豊かな山林風景であっても、規模感のある都市部でも写真本来の独特な世界の切り取り的な部分は薄まり、いわゆる「ドローン映像」になってしまうことは否めません。
都市の特徴をアピールしたい絵を撮りたいときには、地上からのアングルを織り交ぜた方が効果的になります。
対等な関係を訴求する真正面のアングル
真正面のアングルは、スムージーや野菜ジュースのようなナチュラルテイストの食品や、無添加の化粧品ラインナップなどでよく見かけるアングルです。
『これならわかる! 人を動かすデザイン22の法則』(KADOKAWA)
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食品のパッケージであれば、車や家電ほど複雑な形状をしておらず、パッケージの顔(フェイス)を見せること、全体の印象をよく見せることが重要になります。
このとき、被写体とカメラの角度は平行で、商品の正面が見える絵になりますが、そこには「被写体と目撃者の対等な立場」という関係性や、あるいは、肩肘張らないナチュラルなライフスタイルなども訴求されます。
最近の傾向としては、とくに若い世代を中心になるべくニュートラルでフレンドリーな雰囲気が好まれる傾向もあります。そのあたりの世代感覚をおさえるとともに、真正面のアングルを意識してみるといいかもしれません。
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提供元:写真下手に知ってほしい「映える撮り方」超基本|東洋経済オンライン