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2021.01.28

「職業」で人の明暗はなぜこんなに分かれるか|消える仕事・残る仕事を決定づける複合的要因


パンデミックやAI、脱炭素など、雇用を取り囲む環境は激変している。仕事選びで「勝ち組」になるか、「負け組」になるか。その差はあまりに大きい(写真:zaksmile / PIXTA)

パンデミックやAI、脱炭素など、雇用を取り囲む環境は激変している。仕事選びで「勝ち組」になるか、「負け組」になるか。その差はあまりに大きい(写真:zaksmile / PIXTA)

新規株式上場(IPO)の勢いが止まらない。

2020年12月は何と駆け込みで26社。家電のバルミューダや資産運用のウェルスナビ、保育のポピンズなど、そこそこ知名度を持った銘柄も多い。新型コロナウイルスが襲った2020年だが、終わってみると、実に93社が上場を果たした。今年も100社程度は上場すると見られ、半導体のキオクシア(旧東芝メモリ)、クラウドファンディングのCAMPFIREなどが上場準備に入ったと見られる。

早ければ設立後2~3年の上場も今やざらにある。IPOは現代の一攫千金の物語となった。一般的に創業者は、上場で持ち株の5~10%を売却するとされ、時価総額が100億円なら、最低5億円のキャッシュが手に入る。上場しなくても、その前段階で投資ファンドや大企業のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に買収をもちかけられ、持ち株を全部売ることも珍しくない。そうなると現金で数十億、下手をすると100億円が手に入る。起業家に憧れる学生が後を絶たないのもわかる。

だが一方で、コロナ禍による暗いニュースが連日流れている。解雇・雇い止めされたのは、現時点で8万人超。実際には政府による雇用調整助成金の特例措置のおかげで、会社は従業員に支払う休業手当について、1人当たり1日最大1万5000円を支給してもらっている。この”肩代わり”がなかったら、もっと失業者は飛躍的に増えていたのも本当である。

『週刊東洋経済』1月25日発売号は「1億人の職業地図」を特集。コロナなどのパンデミック(世界的大流行)だけでなく、AI(人口知能)や脱炭素など、これから起こるであろうさまざまな構造変化を基に、各職業の明暗を大胆に予想。2030年に「消える仕事」「残る仕事」として全36業種を取り上げた。

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時短協力金で得する店、損する店

今、最もコロナの被害に遭っているのが、飲食店だろう。

『週刊東洋経済』1月30日号(1月25日月曜発売)の特集は「1億人の職業地図」です。

『週刊東洋経済』1月30日号(1月25日月曜発売)の特集は「1億人の職業地図」です。

『週刊東洋経済』1月30日号(1月25日月曜発売)の特集は「1億人の職業地図」です クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

1月8日の緊急事態宣言によって、全国11都府県で20時までの時短営業を余儀なくされた。東京都は時短要請に応じる店に対し、1店舗1日6万円、31日間で計186万円の時短協力金を支給する。当初は中小・零細に限定していたものの、大手全国チェーンの外食企業からの猛反発を受け、大企業にも対象を拡大するはめになった。それでも、夜どころかランチでの会食の自粛もお願いする政府に対し、「ふざけんなよ」(堀埜一成・サイゼリヤ社長)と言いたいのが偽らざる気持ちだろう。

実はこの時短協力金にもいろいろな意見がある。特に零細店には、むしろ時短や休業のほうが「おいしい」のではないか、という声だ。

たとえば、個人経営で1店舗しかない零細店の場合、元々の1カ月の売上高が186万円未満なら、かえって時短に応じたほうが収入は多い。時短で昼間に営業しても、材料費や光熱費はかかるため、さらに休業までしてしまうほうが割がいい。人件費も自分1人で済み、家賃も郊外なら安く、売上高がゼロでも協力金だけでやっていける。

悲鳴をあげているのが、時短の要請を受けていない、小売業やサービス業だ。中でも在宅勤務の浸透、外出自粛が直撃したアパレル店は厳しい。

紳士服専門店の青山商事は、40歳以上の社員に対し、希望退職400人を募集。役員報酬減額や通期無配も決めた。定款を一部変更し、クリーニング業を追加するなど、今後の事業展開を模索しているのがわかる。といっても、今日の事態はコロナだけが招いたとも言い切れない。スーツ離れが進んでいたのは以前からの傾向だったからだ。実際、政府がクールビズのキャンペーンを行ったのは2005年で、当時からオフィスでの服装のカジュアル化はじわじわと進んでいた。

三陽商会は「バーバリー」のライセンス契約終了後、柱となるブランドを育てられなかった(撮影:今井康一)

三陽商会は「バーバリー」のライセンス契約終了後、柱となるブランドを育てられなかった(撮影:今井康一)

また百貨店向けに強いオンワードホールディングスは1400店、三陽商会は350店、ファッションビル向けに強いワールドも360店の閉店を発表。こちらもファストファッションの流行で時代遅れとなり、百貨店という高度経済成長時代のビジネスモデルとともに沈んでいる。三陽商会の場合、45年間続いた英「バーバリー」ブランドが15年に契約終了したのに、それに代わる後継ブランドを育てられなかった。

だが、アパレル店がみな壊滅しているわけではない。既存店売上高を見ると、ファーストリテイリングは国内ユニクロが2020年6月から7カ月連続プラス、しまむらは同年9月から4カ月連続プラス、ワークマンは何と2017年10月から39カ月連続プラスなのだ。ユニクロやしまむらは在宅で着る肌着など、日常着の需要拡大が追い風になった。ワークマンは従来の作業服の機能性におしゃれさが加わり、それまでガテン系など縁のなかった女性たちの支持を集めた。

アップルがEV開発、トヨタが下請けになる?

かように同じ業界でも、落差は考える以上に激しい。

これから「100年に一度の大変革時代」(豊田章男・トヨタ自動車社長)を迎えるのが自動車業界だ。

政府は2020年12月25日、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表。2050年までに二酸化炭素などの温暖化ガスの排出をゼロにすることを掲げた。中でも最大の注目が、排出量の19%を占める運輸部門。「2030年代半ばまでにガソリン車の新車販売ゼロにする」とうたわれ、1月18日の通常国会の施政方針演説では、菅義偉首相が「2035年までに」と明言してさらに踏み込んだ。

現状、ガソリン車でない電動車(ハイブリッド車=HV、電気自動車=EV、燃料電池車=FCV)は、まだ全体の4割弱にすぎない。特にEVでは部品の数が半減するとされ、基幹部品であるエンジンは、バッテリーとモーターに置き換えられる。完成車メーカーやサプライヤー(部品メーカー)だけでなく、販売店からガソリンスタンド、整備工場、自動車保険まで、500万人以上が自動車産業に関わっている。また普通車はともかく、軽自動車やトラックでは、ほとんどEV化が進んでいない。そのインパクトはとてつもなく大きい。

まだ正式には認めていないものの、アメリカのアップルもEVで自動車への参入を考えているとされる。中国でもネット検索最大手の百度(バイドゥ)が民営自動車最大手の浙江吉利から出資を受け、EVの生産販売に乗り出す。いずれも自動車とは縁のない業界からの進出で、そうした新興勢がPCやスマホと同様にプラットフォームを握ってしまえば、既存の自動車メーカーはただの下請け工場に成り下がるかもしれない。

業界間の動きばかりではない。これからは会社に縛られない働き方も出てくる。ギガワーカーと呼ばれる人たちだ。ギグワークとは、1~3時間の短時間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方を指し、ネット上で申し込める場合が多い。隙間時間を利用した都合のいい働き方ができる。プログラミングやクラウドワークス、ランサーズ、うるる、ココナラの大手4大サイトの登録者は、のべ750万人以上に達している。

たとえばフードデリバリーが代表的だ。スマホで受注が確定、自転車やオートバイなどを使って、店舗から顧客の自宅まで飲食物を配達するのが仕事。宅配代行と言えばわかりやすい。目下、外食の自粛で飲食店に行く消費者が減り、代わりにフードデリバリーの需要が増している。ウーバーイーツや出前館、menu、楽天デリバリーなどがある。店舗側もマクドナルドのように、自前の配送網とフードデリバリーを併用している企業もある。

今やフードデリバリーを見かけない日はない。ウーバーイーツののべユーザー数は2020年11月で508万人(撮影:梅谷秀司)

今やフードデリバリーを見かけない日はない。ウーバーイーツののべユーザー数は2020年11月で508万人(撮影:梅谷秀司)

これが意外にもけっこう稼ぐことができる。配達の基本料金は回数報酬+距離報酬。1件500円として、1日20件こなせば、日給1万円。月20日間稼働なら、月収20万円だ。ランチタイムのピーク時や雨の日は、基本料金が上がる場合もある。1km以内の短距離の案件を量で稼ぐのが最も効率がいいとされる。

ただし契約上、配達員は個人事業主の扱いとなり、労働面などで完全に守られているとは言いがたい。基本的には配達の途中で、第三者と交通事故を起こしたとき、飲食物をダメにしたときなどでは、対人・対物賠償責任など補償制度がある。だが、たとえば配達完了後、次の配達までに起こした事故は補償されないなど、注意が必要だ。

結局、好きなことでマネタイズできれば理想

働き方は多様化している。Youtuberは今や、小学生男子が「将来つきたい職業」の上位常連だ(19年は1位、20年は4位。学研教育総合研究所)。億円単位の年収を稼いだり、著名YouTuberがアイドルと結婚したり、話題にも事欠かない。アイドルやお笑い芸人がYouTubeに活路を見い出すなど副業として始めているケースも珍しくない。フワちゃんはYouTubeから地上波へ出てなお成功している例だ。

もっとも競争は厳しい。稼ぎは動画の再生回数による広告収入だが、1再生当たり0.1円とすると、月収20万円を得るには、月200万回の再生回数が必要だ。頂点を見ると、2021年1月に再生回数1位だった「Junya.じゅんや」は月間3.8億回だったが(出所:yutura)、これにはTikTokで国内最多の2400万人というフォロワー数が基盤になっている。今からこの中に割って入るのが難しいのも事実である。

その意味では、自分の好きなこと、得意なことを突き詰めていき、それがマネタイズに結びつけば理想だろう。マイクロソフト日本法人元社長の成毛真氏は「ゲーム実況配信などは、はるか前から先駆者たちがおり、これから始めても遅い。誰もやっていないニッチなジャンルで挑戦し、ディテールにこだわることが近道。あとプロになれるかどうかの差は、どうマネタイズできるかだ」と冷静に見通す。

いずれにしても、仕事選びは、人生を左右する出来事である。ただ今就いている仕事も、環境次第でどうなるかわからない。改めて職業について考え直す機会にしてもらいたい。

『週刊東洋経済』2021年1月30日号(1月25日発売)の特集は「1億人の職業地図」です。

「1億人の職業地図」 ※外部サイトに遷移します

記事画像

日本ではコロナよりも恐慌を招くほうが怖い

40歳料理人をクビにした社長の酷すぎる言い分

今の40歳前後に苦しい生活を送る人が多い因縁

提供元:「職業」で人の明暗はなぜこんなに分かれるか|東洋経済オンライン

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