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2020.12.17

JR東「新幹線オフィス」開始、将来は専用車両も|KDDIと組み、来年からテレワークの実証実験


新幹線車内をテレワークオフィスとして活用する「新幹線ワークプレイス」構想について説明するJR東日本の深澤祐二社長(記者撮影)

新幹線車内をテレワークオフィスとして活用する「新幹線ワークプレイス」構想について説明するJR東日本の深澤祐二社長(記者撮影)

JR東日本は、東北新幹線の車両をテレワークオフィスとして活用する「新幹線ワークプレイス」構想を12月15日に発表した。来年からスタート。当初は既存車両を使用するが、将来は専用の車両を造ることも検討する。

同社エリアの新幹線では「JR-EAST FREE Wi-Fi」という携帯電話の電波を利用した無料公衆無線LANサービスが提供されている。今年7月に東北新幹線七戸十和田―新青森間、上越新幹線越後湯沢―浦佐間で携帯電話サービスが利用可能になり、フル規格新幹線の全区間で同サービスが利用できるようになった。

ただ、新幹線の客室内で仕事をする場合は、携帯電話での通話は自席でなくデッキでというのがマナーであり、パソコンのキーボードを叩く音が周囲の迷惑にならないか気になるという人もいる。そこで、テレワーク専用の車両を設置して気兼ねなく仕事してもらおうというわけだ。

「通常のオフィスで仕事をするのと同じような環境を提供する」と、深澤祐二社長は説明する。個別の通信回線やテレワークツールも提供される。新幹線の客室内でZoom会議もできるようになるかもしれない。

実証実験は「できるだけ早い時期」

まずは既存の列車の一部をテレワーク推奨車両として、個別の通信回線を提供する実証実験を「来年のできるだけ早い時期」(深澤社長)にスタート。利用者から働く機能としての要望を聞き、多くの利用者が同時にインターネットを使うことでネットワーク上の問題が起きないかといった技術面を検証した上で、「次のステップとしては専用車両を視野に入れて考えていく」(同)という。

「新幹線ワークプレイス」のイメージ(画像:JR東日本)

「新幹線ワークプレイス」のイメージ(画像:JR東日本)

同社が「新幹線ワークプレイスのイメージ」として紹介したCG画像は、既存の新幹線車両よりも窓がずっと大きく、開放感あふれるデザインとなっている。だとすると、既存車両の客室内を改造するのでなく、新たなワークスタイルにふさわしい専用車両をゼロから造り上げる可能性もある。

JR東日本はコンセント、Wi-Fiが完備した成田エクスプレス用の車両を両国駅に停車させ、列車内をテレワークオフィスとして開放するという実証実験を11月27~28日に行っている。この実証実験が今回の新幹線をテレワークオフィスとして活用する構想につながったのだろうか。

こんな疑問に対して、JR東日本の担当者は「違います」と言い切った。成田エクスプレスを活用したテレワークオフィスは、利用者低迷で余剰となっている車両の有効活用、同社が展開している個室ブース型シェアオフィス「STATION WORK(ステーションワーク)」のPRといった意味合いがあった。これに対して、新幹線をテレワークオフィスとして活用する構想は、KDDIとの共同事業という異なる性格を持つ。

JR東日本が「成田エクスプレス」の車両を使って11月27~28日に実施したテレワークの実証実験(編集部撮影)

JR東日本が「成田エクスプレス」の車両を使って11月27~28日に実施したテレワークの実証実験(編集部撮影)

実は、この構想は、JR東日本とKDDIが12月15日に発表した「空間自在プロジェクト」の一環である。JR東日本が2024年の街開きを目標に進めている品川開発プロジェクトを中核として、JR東日本とKDDIと共同で分散型スマートシティに関する共同事業を行うというものだ。

高輪ゲートウェイ駅を玄関口とする品川開発プロジェクトでは、5Gを前提とした最先端の通信インフラとサービスプラットフォームを両社が提供する。また、分散拠点として都市周辺や日本各地に分散型ワークプレイスを開発する。来春以降に東京、神奈川、埼玉、千葉エリアを対象として、多拠点とつながる分散型ワークプレイスのトライアル拠点を開設し、実証実験を実施する。「移動中においても効率的に働ける環境作りを目指す」(KDDI)としており、新幹線ワークプレイスもそこに含まれる。

移動時間の過ごし方を変える

空間自在プロジェクトはKDDIの通信技術を活用して「どこに出勤しても本社と同等の働く空間にする」というのがコンセプトの一つであり、ワークプレイスへの入室と同時に社内と同じ環境になるようなイメージだという。現在のところ、「新幹線ワークプレイスで使われる通信回線が5Gになるかどうかは未定」(KDDI)だが、いずれ5Gが整備されれば、新幹線ワークプレイスでの仕事は、現在の既存車両で行っているようなワークスタイルとは質的にまったく違ったものになりそうだ。

JR東日本とKDDIは分散型スマートシティに関する共同事業「空間自在プロジェクト」に取り組む(記者撮影)

JR東日本とKDDIは分散型スマートシティに関する共同事業「空間自在プロジェクト」に取り組む(記者撮影)

昨年5月、JR東日本は、2030年度末の北海道新幹線札幌延伸を見据えた高速運転試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」を公開している。この列車では、東京―札幌間を長時間乗車する利用者にいかに有意義に移動時間を過ごしてもらうかということを念頭に試験が行われている。おそらく、東京―札幌間の移動時間を働いて過ごすというニーズもあるのだろう。

コロナ禍で出張を自粛する動きが続いているが、「出張がなくなるとは思わない」と、深澤社長は話す。新幹線での移動時間に、オフィスにいるのとまったく変わらない状態で働けるようになれば、それ以外の時間を有効に活用できるようになる。新たな働き方改革の時代が、すぐそこまで来ている。

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提供元:JR東「新幹線オフィス」開始、将来は専用車両も|東洋経済オンライン

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