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2020.12.09

「スマホで疲れ目の人」に知ってほしい2つの技|目と脳のトレーニングで見る力を鍛える


スマホやパソコンの見過ぎによる視力低下を防ぐケアをしましょう(写真:Blue flash/PIXTA)

スマホやパソコンの見過ぎによる視力低下を防ぐケアをしましょう(写真:Blue flash/PIXTA)

情報の9割近くを視覚から得ている人間にとって、「見えづらい」ことはかなりのストレスになります。目への負担が大きいとわかっていても、スマホやパソコンはすでに生活必需品。目を休めるための「デジタル断ち」も難しく、疲れた目をさらに酷使している人が多いのではないでしょうか。眼科医・宇佐美欽通(眼科医ヨシユキ)氏が、視力低下を防ぐセルフケアの方法を解説します。
※本稿は『1日1回2つの画像を見るだけで目がグッとよくなる本』を一部抜粋・再編集したものです。

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視力低下の原因はピント調節を担う筋肉の疲労

ものを見る働きには、目と脳が関わっています。私たちは目から入ってくる光によって形や色をとらえ、その情報が脳で処理されることによって正しい画像を認識しているのです。

水晶体は、遠くを見るときは薄くなり、近くを見るときは厚くなります(筆者提供)

水晶体は、遠くを見るときは薄くなり、近くを見るときは厚くなります(筆者提供)

人の目の構造はカメラにたとえられることがありますが、ものを見る際にレンズの役割をしているのが「水晶体」です。

水晶体は凸レンズのような形をしており、見るものとの距離に応じて厚みをかえることでピントを合わせています。

ピントを合わせる際に働くのが、水晶体につながる「毛様体筋」。毛様体筋が緊張すると水晶体は厚くなり、弛緩すると薄くなります。こうしたピント調節が適切に行われないと、見える画像はぼやけたものになってしまうのです。

視力低下の原因として多く見られるのが、毛様体筋の疲労です。近くを見るときは水晶体を厚くする必要があるため、毛様体筋は緊張しています。筋トレをしすぎると筋肉がこわばって動かしにくくなるように、近くを見ている時間が長すぎると毛様体筋が疲労し、ピント調節機能が低下してしまうのです。

ただし、オーバートレーニングでこわばった筋肉は、休息をとることで回復します。同様に、使いすぎた毛様体筋も、疲労をとり除くことで本来の力をとり戻せる可能性があるのです。

そして毛様体筋の疲労回復に役立つのが、「平行法」と「ガボールパッチ」。どちらも、画像を短時間見るだけの簡単な方法です。

「平行法」とは、2点の同じ画像(特殊な画像処理がされている写真など)を立体視するトレーニング法です。右側の写真を右目で、左側の写真を左目で見ることを意識し、実際の画像より遠くに焦点を合わせるようにします。2点の画像の間に、1点の立体的な画像が見えてくれば成功です。

右側の写真は右目で、左側の写真は左目で見るように意識します。ただしこの画像はイメージで、立体視はできません。PCやスマホでは適切な効果が得られにくく、また画面を集中して見続けると目によくないためです(筆者提供)

右側の写真は右目で、左側の写真は左目で見るように意識します。ただしこの画像はイメージで、立体視はできません。PCやスマホでは適切な効果が得られにくく、また画面を集中して見続けると目によくないためです(筆者提供)

立体的な画像を10秒ほど見つめたら、いったん目を閉じて5~10秒休憩。これを10回繰り返して1セット。1日に1~2セット行います。

「平行法」を行う際、毛様体筋は弛緩し、水晶体は薄くなっています。つまり、遠くを見るときのように目を使いながら、近くにあるものを見ているわけです。

日常生活では行わないこうした動きは、毛様体筋にとってよい刺激になります。このトレーニングを毎日続けることで、毛様体筋の疲労は徐々に回復。使われすぎてこわばっていた毛様体筋が柔軟さを取り戻し、ピント調節もスムーズに行われるようになっていくのです。

脳の情報処理能力を高める「ガボールパッチ」

「ガボールパッチ」は、特殊な画像変換でつくられた複数の模様の中から、同じものを見つけ出すトレーニング法です。模様にはさまざまなパターンがありますが、すべてぼやけたように見えるのが特徴です。

特殊な画像変換で作られたガボールパッチ。模様を一つ選んで、それと同じ模様を探してみましょう(筆者提供)

特殊な画像変換で作られたガボールパッチ。模様を一つ選んで、それと同じ模様を探してみましょう(筆者提供)

トレーニングを行う際は、まず、模様のどれかひとつを選びます。そして画像の中から、それと同じ模様を探します。

同じ模様をすべて見つけたら、別の模様で同様に繰り返し。1回3分を目安に、1日1回行います。

「ガボールパッチ」の効果は、「探すために見る」ことで得られます。そのため、正解・不正解や見つけられた数は視力の向上に関係ありません。

「平行法」が毛様体筋に働きかけるトレーニングであるのに対し、「ガボールパッチ」は脳をきたえるためのものです。

目から入ってきた情報を処理する際、脳では「見えづらい部分を補う」などの補正が行われています。

「ガボールパッチ」を見ると、ぼやけたような模様を補正しようとするため、脳の「視覚野」が刺激されます。そして視覚野をきたえることは、視力向上や視野の拡大などにつながることが証明されているのです。

「最近、急に目が悪くなった気がする」という場合、ピント調節機能の異常によって起こる「屈折性近視」または「スマホ老眼」であることが多いようです。

屈折性近視のおもな原因は、目のピント調節機能に関わる毛様体筋の疲労。近視にはこのほか、眼球の変形によって起こる「軸性近視」と呼ばれるものもあります。

「スマホ老眼」は、加齢によって起こる老眼とは別のもの。スマホなど近くのものを見続けることで毛様体筋が疲労して起こり、進行すると近くのものまで見えづらい老眼のような症状も加わることがあるため、「スマホ老眼」と呼ばれています。

最低でも4週間トレーニングを続ける

「平行法」は、毛様体筋の疲労回復に役立つトレーニング法です。そのため、軸性近視や加齢による老眼などには効果が期待できません。ただし軸性近視や老眼と、屈折性近視やスマホ老眼を併発していることも少なくありません。その場合は、一定の効果を感じられることもあります。

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「ガボールパッチ」は、脳の情報処理機能を高めることが目的です。そのため、屈折性近視やスマホ老眼はもちろん、軸性近視や加齢による老眼が原因の視力低下にも効果が期待できます。

視力回復の効果を実感するためには、必ず守らなければならないことがあります。それが、「続ける」ことです。三日坊主で終わらせてしまっては、効果は期待できません。

最低でも4週間、続けてみてください。「ガボールパッチ」は1回3分、「平行法」は1セット3~4分。2つのトレーニングを続けて行っても、6~7分しかかかりません。

目は、人生のパートナーです。何をするときも「見る」ことがかかわってくる私たちにとって、「よく見えるかどうか」は、生活の質に直結する問題です。

大切な目のために、1日数分のトレーニングを習慣に。これだけで、人生がより豊かなものになるはずです。

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提供元:「スマホで疲れ目の人」に知ってほしい2つの技|東洋経済オンライン

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