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2020.11.17

日本の会社「コロナ後を生き抜く」為の絶対条件|価値観と産業構造の変化をどう受け入れるか


デジタル化による産業構造の変革や地価の変動などが起きてきそうだ(写真:Easyturn/iStock)

デジタル化による産業構造の変革や地価の変動などが起きてきそうだ(写真:Easyturn/iStock)

コロナ禍によって、人々の働き方が大きく変化しそうだ。人々が集まって、ひとつのプロジェクトを成し遂げていくプロセスが中心ではなく、在宅でのリモートワークが仕事を進める定番になるかもしれない。そういう意味では、完全なリモートワークが可能なのに、いまだにできていない企業は将来を見通せない企業となる可能性がある。

GoToトラベルキャンペーンなどでもわかるように、政府が支えなければならない業種の未来の姿は、まだまだ不透明だが、コロナ後の世界は徐々に見えてきた。コロナ後の世界を考えてみたい。

日本の不得手な部分が一気に表面化した

日本だけで単純に考えるわけにはいかないのだが、これまで日本が不得手としてきた部分、あるいは遅れていた部分が、今回のコロナ禍によって一気に表面化したと言ってよいだろう。例えばデジタル化の遅れ、とりわけ行政についてはコロナ禍の中では国民生活に大きな影響を与えた。さらに、情報技術や人工知能(AI)といった最先端のオペレーションが遅れていた日本企業では、かねて生産性の低さが問題視されてきたが、パンデミックによってその遅れが鮮明になってきた。

コロナの感染者数を集計するのに、いまだに「ファクス(FAX)」がメインの通信ツールだったことがわかり、さらにPCR検査も十分とは言えなかった。日本の感染症対策を振り返ってみれば、その遅れはデジタル化の遅れや情報通信技術者不足であったことは間違いないだろう。

企業活動でも、いまだに紙ベースの決済システムが主流で、コロナになってから初めて押印付きペーパー中心の決済システムが見直されるようになってきた。日本企業の生産性の低さがこんなところにあったと気づいた経営者も多かったのではないか。

さらに、日本経済成長の牽引役となってきた外国人観光客の誘致がこのコロナ禍によってひっくり返ってしまったことも大きかった。「アベノマスク」で打開を図ろうとしたマスクなどの医療用品不足も、グローバル化を進めるあまり、緊急事態への対応には大きな欠陥が見つかったようだ。

また、何よりも大きな問題は、かつて「土地本位制」とまでよばれた日本経済を支える不動産価格や土地価格に懸念が出てきたことだ。

コロナ前は、東京圏や大阪など大都市の中心地は、中国などの投資家が買ってくれたこともあり、不動産価格は順調に値上がりしてきたが、今回のコロナ禍によってリモートワークが増えるなど、オフィス需要が大打撃を受ける可能性が出てきた。

ここぞとばかりに買いあさっている投資家も一部にいるようだが、どうなるか。リモートワークの定着やデジタル化によるオフィス革命などで、コロナ後の社会がオフィスを必要としない、あるいは店舗を必要としない産業社会へと大きく転換する可能性もありうる。

中長期的には、コロナ以前に戻るのではないかという期待があるために、当面ははっきりと不動産価格が下落するような現象は現れないかもしれないが、もっと先を見据えたときに、都市部に集中していたビジネス拠点が大きく分散する可能性が出てきたと言っていいだろう。

コロナ後の世界ではさまざまな「シフト」が起こる?

いずれにしても、コロナ後の世界で大きく変化するもの、シフトしていくと考えられるものとは何か……。いくつかキーワードを考えてみると、次のようなものが考えられる。

●アナログ→デジタル化へシフト
●化石燃料→再生可能燃料へシフト
●グローバル化→自給自足社会へシフト
●マンパワー中心→AIパワーの社会へ
●都市部一極集中→地方分散化
●リスク先送り→リスク管理が最重要課題に

こうしたキーワードをベースに、産業構造や資産価値、国民生活の変化について考えてみるとパンデミック後の社会が見えてくる。

たとえば、日本経済の根幹を支えてきた自動車産業や製造業なども、ここに来て大きな変革を求められる状況になってきた。もともとパンデミックの後には、歴史的にみても大きな産業構造の変革が避けられなかった。

14世紀に流行したペストは、ローマ教皇の勢力を衰退させ、この時期には「ルネサンス」が起こり、人々の価値観ばかりか社会構造そのものも変えてしまった。当時の欧州の人口の3分の1がペストで亡くなったといわれているから、新型コロナウイルスはそこまで大きなパンデミックを引き起こさないにしても、ワクチンが年末にかけて開発されても経済に与える影響は大きい。

「新自由主義」「グローバリズム」といったこれまでの資本主義社会を支えてきた価値観が変わることになり、産業構造も大きく変化していく可能性がある。パンデミックによって、人々の移動という根源的なものがストップしてしまった。それをリカバリーするためには、大きな変革をしなければ人類は生き残れない、と言っても過言ではないだろう。

業界によってコロナの影響は明暗が分かれた

そもそも今回の新型コロナウイルスの影響で、業界によって「明」と「暗」に大きく分かれることになった。人々の流れがストップしたために、航空業界などの運輸、宿泊業や飲食サービス業、さらにエンターテインメントなどの娯楽産業が大きな影響を受けた。

新型コロナウイルスのパンデミックが収束すれば、こういった事態は解消されてまた元に戻ると思う人も多いが、現在のパンデミックは「気候変動」とも密接な関係があると言われている。今後も、次々と新しい感染症が登場してくる可能性も十分にある。

日本だけの傾向ではないが、最も新型コロナウイルスの影響を受けたのは、やはりサービス産業だったと言っていいだろう。総務省統計局が発表した「サービス産業動向調査」によれば、サービス産業全体の売上高は2020年8月分を見てみると27.2兆円、前年同月比13.0%の減少となっている。一口にサービス産業といっても、情報通信業から飲食サービス業までさまざまだが、同年同月の前年同月比で見ると次のようになっている。

●情報通信業……▲2.5%
●学術研究、専門・技術サービス業……▲3.4%
●医療、福祉……▲4.0%
●サービス業(ほかに分類されないもの)……▲7.0%
●不動産業、物品賃貸業……▲8.8%
●教育、学習支援業……▲12.1%
●運輸業、郵便業……▲21.2%
●生活関連サービス業、娯楽業……▲25.8%
●宿泊業、飲食サービス業……▲ 33.4%
(▲はマイナス)

こうしてみるとやはり宿泊業、飲食サービス業、さらに生活関連サービス業、娯楽業といった業種の落ち込みが激しいことがわかる。

もっとも、これですぐに飲食業や飲食サービス業が衰退していくのかと言えば、それは大きな疑問だ。ただ、これまでと同じノウハウではやっていけないかもしれない。出前・宅配、テイクアウトなど、多種多様なサービスを提供する体制を整える必要があるだろう。

そもそも人が集まる場所が変化しつつある。都心部の家賃の高い場所での営業は、それなりに人口密度が高く、また観光客などの来店数も圧倒的に多かった。これからは郊外の住宅街のほうが来店者数を見込めるケースもありそうで、それなら郊外の住宅街で営業したほうが収益を上げられるケースも出てくるかもしれない。

ちなみに、人と人が会わないことによって、企業接待に欠かせない高級クラブや高級料亭といった業種は、今後の営業に難しさを生じるかもしれない。

問われた危機管理能力、現状対応能力?

業種別には、人々が集まり密になることが避けられない業種は、極めて厳しい状況にあることがハッキリしたわけだが、今回のコロナ禍によって同じ業種の中でも、企業によってその対応が大きく異なり、生き残れる企業と存亡の危機に直面した企業も見受けられた。

緊急事態宣言が出されていたときも、書類に印鑑を押すだけの作業のためにわざわざ出社する社員が報道されていたが、こうした緊急事態に対応できるマニュアルがなかった企業が多かったのも事実だ。

常日頃からリスクマネジメントをきちんとやってきた企業は、パンデミックに対応するノウハウも準備していたはずであり、今回はそうした企業の危機管理能力に大きな差が出たと言ってよい。中小企業も含めて、どう危機に対応していくのかを日常的に想定している企業のほうが生き残りには有利になるだろう。

言い換えれば、危機管理能力をアップするための新たな産業や企業が台頭してくることが予想される。例えば、5Gなどはセキュリティーシステムを確立する効果的な通信ツールと言っていいだろう。警備員を配置してセキュリティーを強化する、といった昔ながらの方法は今後衰退していくのかもしれない。

今回のコロナ禍によって、今後はますます人間の代わりに機械がやってくれることのニーズが高まったと言っていいだろう。台湾や韓国、中国のスマホを使ったコロナ感染者把握ツールは、その威力を十分に発揮したと言っていい。

そういう部分では、残念ながら日本では情報技術に関わる人材不足が目立つ。警備員など、ロボットなどに代替できる部分では人余りとなり、IT技術者などは圧倒的な人材不足に陥っている。

実際に、「IT人材白書2020」(IPA社会基盤センター)によると、2019年度のデータでは「大幅に不足している(33.0%)」と「やや不足している(56.0%)」を合わせると、ユーザー企業の9割がIT人材の“量”に対して不足を示している。

移民受け入れも日本の課題に

不足しているのは、IT技術者だけではない。海外の先進国では移民を数多く入れて、患者が家にいても十分な介護サービスを提供できる環境が整っているが、日本では言語などにこだわって、いつまでたっても介護サービスについてくれる移民の受け入れができていない。コロナによって、病院関係者の疲弊はピークに達したが、そんなケースを見ても、今後は医療、介護などについては移民受け入れを今まで以上に考えていかなければならないだろう。

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いずれにしても、日本社会に与えられた課題は数多く残っている。これらにきちんと対応できるかどうかが、今後の課題であり、個々の企業は存亡にかかわる事態と言ってよい。マンパワーにこだわって、いつまでも社員を一堂に集めようとするような企業は衰退していくかもしれない。

まして、飲食業や宿泊業、そしてスポーツイベントや観劇、芸能、出版といったサービス部門の危機管理体制は急務だ。対コロナに対する危機管理だけではなく、企業活動中止に伴う広告収入の急激な落ち込み時に、資金繰りをどうするのか、といった財務管理面でも真価が問われることになる。企業に課せられた課題は山ほどある。

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提供元:日本の会社「コロナ後を生き抜く」為の絶対条件|東洋経済オンライン

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