2020.11.17
瞑想するなら「朝一番・10分間・毎日」がいい理由|毎日「心」が同じ場所に戻ることで穏やかになる
瞑想は毎日同じ時間、場所で行ったほうがいい理由とは?(写真:Prostock-Studio/iStock)
瞑想やマインドフルネスというものにとっつきにくさを感じていたり、スピリチュアルなイメージから敬遠しがちな人もいるのではないでしょうか。
しかし、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がたびたび推薦するマインドフルネスの入門書の邦訳版『頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる』では、手軽で日常に取り入れやすい、実践的な心のエクササイズを紹介しています。
本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。
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同じ場所に戻ることで「心」は穏やかになる
自宅に専用の瞑想ルームを持てるような人はあまりいないでしょうが、幸いなことに、瞑想はどこでもできます。
始める際に心にとめておいたほうがいいことがいくつかあります。まず、10分間、邪魔されずに座ることのできる場所を見つけてください。家族のいる家庭では、これは言うほど簡単ではありません。ですから、家族と話をし、きちんと伝えることが大切です。小さい子どもがいてほかに面倒をみてくれる人がいない場合、子どもが寝るまで待ってからやるか、朝子どもが起きる前にやるのがいいかもしれません。
瞑想を始めるときには、その間だけは、なるべくそのスペースに自分1人でいられることが大切です。外の音を気にする人がよくいますが、その音自体を瞑想に取り入れられるので、心配はいりません。とはいえ、騒がしい環境と静かな環境のどちらかを選べるのなら、もちろん後者を選んでください。
できれば毎日同じスペースを使うほうがいいでしょう。こうすることで、新しい習慣を再確認するのに役立ちます。それに、毎日同じスペースに戻ってくることで、ほっとできる効果もあります。
そのスペースがなるべく清潔で片付いているほうがリラックスできるかもしれません。ひどく散らかった部屋に入ったときと、きちんと片付いた部屋に入ったときのことを思い出してみてください。
どんな気分になりましたか。片付いた部屋では気持ちが落ち着きませんでしたか。多くの人は落ち着きます。ですから、もしあなたもそうなら、その部屋もしくは、せめて部屋のその一角だけは清潔で片付いた状態を保つといいでしょう。
部屋のどこに座ってもかまいませんが、周囲にある程度のスペースが空いていたほうが落ち着くかもしれません。部屋の隅や家具と家具の間に挟まったような状態では、窮屈さを感じることがあり、心にとってあまりよくありません。瞑想はどこででもできます。実は、邪魔が入らない場所がそこしか見つからないというので、トイレに座って(ふたは下ろして)瞑想しているという人も何人か知っています。
瞑想のときに着るものは、楽な服装であればなんでもかまいません。これも瞑想を柔軟なものにしている要素の1つです。通勤途中にスーツ姿でもできるし、家でジョギングスーツ姿でもできるし、パジャマ姿でもできます。けれども、服装について、知っておくと便利ないくつかのヒントがあります。
おそらく最も大切なことは、楽に呼吸できるだけの余裕があることです。ジーンズがきつくて胃が締めつけられていたら、リラックスして座るのにはよくありません。
ベルトをゆるめたり、必要ならボタンをいくつかはずしてください。足がしっかり地面についていたほうがいいので、高いヒールの靴を履いていたらぬいでください。はだしになる必要はありませんが(そうしたいならかまいません)、足がぴったり床についていたほうが安定感があり、エクササイズの最初のパートもやりやすくなるでしょう。
最後に、首にネクタイやスカーフをしているなら緩めるといいでしょう。どこかに少しでも窮屈さを感じると、座っているうちに不快になってきますので、楽になるよう必要なことをすべてしてください。
意識を研ぎ澄ませる座り方
最も大切なのは心で何をするかであって、体で何をするかではありません。体も一定の役割を果たしますが、完璧な蓮華坐を組んで座ることができたとしても、心が千千に乱れていてはなんの意味もありません。瞑想を仕事にしようと思うなら蓮華坐の組み方を覚えるのも役に立ちますが、毎日10分の瞑想では、いすに座ることになんの問題もありません。
ある僧院では、あらゆる瞑想をいすに座って行います。そこで修行した私が保証しますが、それでも瞑想の効果はまったく変わりません。大切なことは、心地よく楽にリラックスし、それと同時に集中し、意識をとぎすませることです。
体は心を映します。疲れを感じていたり、だらけた気分のときには、ごろりと横になりたくなります。エネルギーやスピードにあふれている気分のときには、じっとしていられません。怒りを感じているときは体に力が入ります。逆にリラックスした気分のときには、体からも力が抜けます。
毎日瞑想するときには、この「輪の関係」を思い出すといいでしょう。いすに座ったとき、安定していて、自信に満ち、気を抜かない、それと同時に、楽にリラックスした姿勢をとろうとしてみてください。目指す心の状態を反映した姿勢をとることで、そのような状態にずっとなりやすくなります。
瞑想に使ういすはなんでもかまいませんが、背もたれがまっすぐのダイニング・チェアのようなタイプのいすが使いやすいかもしれません。アームチェアやソファ、ましてベッドは、どれも瞑想に使うには少し柔らかすぎます。リラックスするにはいいですが、意識を研ぎ澄ますのには向きません。姿勢を保つのに少々の努力が必要ないすがベストです。座る際にはいくつかの注意点があります。
1. 背筋がまっすぐ伸びているのがベストですが、無理にそうするのはよくありません。
2. 骨盤の位置が背中の位置を決めます。またお尻の下に 小さなクッションを敷くと背中が丸まるのを防げます。
3. 必要ならいすの背もたれを支えにしてかまいませんが、後ろに寄りかからないようにしてください。
4. 後ろ方向ではなく、上方向をイメージしてください。足は組まず、足の裏が完全に床についていて、足は肩幅ほどに開いているのがベストです。
5. 両手を重ねて膝の上に置きます。指や手、腕の重みを脚で支えてください。
6. 当たり前に思うかもしれませんが、頭は首の上になるべくまっすぐ置かれているのがよく、上を見上げたり床を見下ろしたりしていないほうがいいでしょう。このほうが楽なだけでなく、集中力も高まります。
7. 最後に、はじめのうちは目を閉じていたほうが、気が散りにくくなります。
できれば朝一番の習慣にする
1日の中でいつ、10分間の瞑想をするか決める前に、考えておいたほうがいいことがいくつかあります。朝はもうろうとしている、またはいつもバタバタしているので、朝一番にやるなんて考えられないという人もいるでしょう。あるいは、1日の終わりには疲れきっているので、夜に回せば必ず瞑想中に眠ってしまうのが目に見えているという人もいるでしょう。
もしかすると、あなたはもうすでに職場の中の静かなスペースに目をつけていて、昼休みに瞑想の時間をつくれるのではないかと考えているかもしれません。私たちの生活はみな違っているので、あなたにとって都合がよく、やりやすい時間を見つけることが大切です。
しかし、できれば避けたい時間帯があります。それは昼食の直後です。そのころは体が消化の真っ最中で、とても重く感じるため、眠ってしまいやすいからです。また、たっぷり夕食を食べた後も同じです。
私はよく、1日の中で最もおすすめの時間はと聞かれますが、答えはいつも同じです。朝型の人も夜型の人も、瞑想を学んでいる間は、瞑想をするのにベストな時間は朝一番です。
最も実際的な理由の1つは、家族がまだ寝ているうちが1日でいちばん静かな時間であり、邪魔されずに座ることのできる静かな場所を見つけやすいからです。
それに、起きぬけのもうろうとした状態を脱し、すっきりリフレッシュして、よい心の状態で来るべき1日にのぞむことができます。けれども、おそらく最も重要な理由は、朝一番にやれば、早く済ませてしまえるからです。
後の時間まで引き延ばすのは危険な戦略であり、ほかの用事や締め切りや邪魔が入るかもしれません。仕事が終わって家に帰るまで引き延ばしたら、ただソファに倒れこみたくなり、瞑想など考えたくもない気分になっているかもしれません。
私は瞑想の時間をスケジュールに組み込もうとするだけでストレスを感じる人さえ知っています。それは「やることリスト」の項目に加わり、「まだ終わっていないこと」が1つ増えるだけだからです。ストレスを減らすためにやろうとしていることが、なぜかさらなるストレスのもとになっているのです。これでは本末転倒です。
朝早くに時間を見つけようと思うと気が重くなるかもしれませんが、忘れないでほしいのは、たった10分の話をしているということです。しかも、それは1日をすべて自分のものにするための10分なのです。少しでも長く寝たい気持ちもわかりますが、瞑想で感じられる深い安息は、あと10分寝ることよりもはるかに有益で役に立ちます。そのうえ、あなたにはそのことがわかっているのです。
いつやるかを決めるのはあなたですが、うまくいく可能性が最も高くなるよう、いつなら自分が毎日続けられると思うか考え、現実的な時間を選ぶようにしてください。
10分で終わらせる
タイマーをセットするのは瞑想の精神に反するような気がする、と多くの人が言います。制限時間内にやらなければというプレッシャーにさらされて、頭を空っぽにできないのでは、というのです。
けれども、タイマーを使うのには実際的な理由があります。瞑想中に眠ってしまうのは珍しいことではなく、終わりと決めた時間に目を覚ますのは大切です(とくに朝、時間どおりに仕事に行かなければならない場合は)。また、自分がどれだけの時間座っていたのかがわかるかどうかという問題もあります。けれども、決め手となる、最も大切な理由があります。
瞑想では毎日が異なります。心が静まりかえっている日もあれば、とてもざわついている日もあります。まったくなんの感情もない日もあれば、とても強い感情を感じる日もあるでしょう。落ち着いてリラックスした気分のときなら、間違いなく心地よく10分間座って瞑想できるでしょう。10分間を終えたとき、とても楽しくていい気分だったので、今日はもうあと10分やろうと思うこともあるかもしれません。
それとは逆に、心の中がざわつき、何かにいらだっているときには、ほんの数分でこれ以上続けてもしかたないと思い、そこでやめてしまうかもしれません。
瞑想の目的が自分自身の心について知ることだとすると、このアプローチでは、あなたが知るのは幸せなときや落ち着いているときの心だけで、よりやっかいな面について知ることはできません。
これは一見、魅力的に思えるかもしれませんが、幸せすぎたり、リラックスしすぎるのが問題だと思ったことがありますか ? 最もよく知らなければならないのは、やっかいな感情や思考なのです。自分の心を知り、ひいては新しい視野で人生を体験するためには、毎回ゴールテープを切ること、何があっても10分を終わらせることが大切です。
同様に、永遠に続けられそうなほど気分がいい日も、10分たったら終わりにするのがベストです。そうやってきちんとした習慣をつけるのです。もちろん、その日のうちにもう一度瞑想したくなったらしてもかまいませんが、やはり 10分間のルールは守るようにしてください。
最後に、タイマーは、時間が来たときに思わず飛び上がってしまうような音のしないものを選んでください。クッキング・タイマーを買ってしまったばかりに、鳴るたびに心臓が飛びでそうになったという男性を知っています。携帯電話のアラーム音の中から適度にソフトな音が見つかるかもしれません。
ただし、電話は画面が見えないように伏せておき、音を切って、バイブ機能もオフにしておいてください。この3つを最初にやっておかないと、電話やメールが来たとき、誰から来たか確かめたくなる衝動にはなかなか勝てません。
また、朝の目覚ましに使っているのとは違うアラーム音を選んだほうがいいかもしれません。人は目覚ましの音に特別なイメージを抱き、時には強い嫌悪感をもつことさえあります。ですから、それを毎日の瞑想の一部にしないほうがいいでしょう。
しなかった日をやめてしまう口実にはしない
瞑想というのはスキルであり、あらゆるスキルと同様、身に付けたり磨いたりするためには、定期的に繰り返す必要があります。毎日座って瞑想することで生まれてくる勢いは、単純に再現できるものではありません。
新しい運動を始めるときと同じです。毎日の日課の一部になって、考えなくてもよくなるまで、定期的にやることで勢いをつける必要があるのです。毎日同じ時間にやることで、強力で確固とした習慣にするのに役立ちます。
10分間瞑想とマインドフルネスの効用について調べている神経科学者は、研究結果の中で、反復の大切さを改めて指摘しています。
それによれば、毎日繰り返し瞑想することだけで、脳の好ましい変化を促す十分な効果があるそうです。実は、このことが新たなシナプス結合関係と神経経路の確立に不可欠だと科学者は考えています。
つまりどういうことかというと、新しい行動や精神活動のパターンをつくることができ、同じく重要なこととして、古い精神活動のパターンを消すことができるのです。私たちの精神活動の多くが習慣化していることを思えば、このことには、人生をまさに一変させるような意味合いが含まれています。
研究ではさらに、瞑想する人が瞑想体験をよいものと認知しているか悪いものと認知しているかにかかわらず、脳には同じ有益な効果が見られることがわかりました。つまり、瞑想があまりうまくいっていないように思えるときでも、実はよいことが起こっているのです。
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ですから、その日の気分や感情にかかわらず、毎日繰り返すようにしてください。この反復を通じて、いつの日かもっと頭を空っぽにすることができるようになるでしょう。
もし、たまたま瞑想を休んでしまった日があっても、瞑想をすっかりやめてしまう口実にしないでください。
より意志を強くもち、忍耐力を鍛え、状況の変化にうまく適応するための機会にしてください。そのこと自体にメリットがあります。最近、患者の1人がこう言っていました。「どんなメリットがあるのかを言葉にするのは難しい。ただわかるのは、瞑想した日はすばらしい気分になり、しなかった日は最悪の気分になるということだけ」――。
あなたも、瞑想した日はどんな気分か、そしてなんらかの理由でできなかった日はどんな気分かを感じてみてください。
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