2020.11.09
「減塩」ばかり選ぶ人が知らない、調味料の裏側|何故みそにビタミンB₂や酒精を添加するのか
調味料の違いはほとんどが製造方法。商品の裏面から製法を確認して使い分けることがおすすめです(写真:kash*/PIXTA)
コロナ禍で自炊する回数が増え、食品の質や安全性に対する意識が高まった人も多いのではないでしょうか。
百貨店やスーパー向けの食品バイヤー業やアドバイザー業を行う岩城紀子氏の新刊『裏を見て「おいしい」を買う習慣』では、安心安全な商品を選ぶ際の視点や、家計の負担にならないように購入しながら日々の食卓を豊かにする方法を説いています。
本稿では、前回に続き、同書から一部を抜粋しお届けします。
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塩の裏読み。製法を確認して使い分け
塩にもいろんな種類があり、「たったこれしか入っていないのに1200円?」というのもあれば、1キロで100円台というものもあります。その違いはというと、ほとんどが製造方法です。
裏面を見ましょう。「イオン膜、立窯」と書かれたものは、工場で作られたものです。海水から塩化ナトリウムを化学的に抽出する方法で作られています。代表的なものが精製塩、つまり食塩といわれるもので、99.5%が塩化ナトリウム。しっかりしょっぱいです。そして価格が安いです。
「天日」「天日、平窯」と書かれているのは、昔ながらの天日干しの手法を用いているものです。海水を塩田にくみ上げ、太陽の熱と風によって濃縮させて塩にしたものが「天日塩」です。メキシコやオーストラリアなどは、この手法で大規模な塩田を作っていますが、高温多湿の日本では大規模なものは作れません。国産の天日塩は非常に高額なのです。
天日だけで作るのは時間がかかるので、平窯で炊き上げる方法を併用しているものもあります。それが「天日、平窯」と表示されているものです。まず太陽の光で海水を濃縮させ、そのあと平窯で炊き上げて最終的にまた天日に干すという方法。これもかなり手間がかかります。
なかには原材料に「天日塩(メキシコ)」などと書かれているものもありますが、製造方法は「溶解、立窯、焼成」と表示されているものが多いはず。これはつまり、メキシコなどの天日塩を輸入していったん水に溶かし(溶解)、そこににがりなどを加えて結晶化させている方法。「再生自然塩」などともいわれます。
私が選ぶのは、やっぱり天日塩です。値段が高いので、これしか使わないというわけにはいきませんが、天ぷらにちょっとつけるとか、ステーキの仕上げにかけるなど、塩の味で料理を完成させたいときには絶対に天日塩です。そのかわりパスタをゆでるときは再生自然塩にするなど、適宜、使い分けています。
ちなみに、「天然塩」や「自然塩」と呼ばれているのは、塩化ナトリウムのほかにマグネシウムやカリウムなどのミネラルが含まれている塩です。「塩分が高いと高血圧が心配」と言う人がいますが、それはミネラルが取り除かれた精製塩が一般的だったときの話で、今は塩の種類が豊富になりました。ミネラルが含まれた塩なら体のバランスを整えてくれるので心配はいらないといわれています。
また、血圧が心配で減塩の商品ばかり選ぶ人がいますが、減塩のものは塩が少ない分、保存性を高めるために保存料を加えていることが多いのです。また、塩が不足してミネラル不足になることがあります。私は「減塩」と書かれているものは、すべてのジャンルで買わないことにしています。
砂糖の裏読み。ミネラルが多いのは黒糖
砂糖にもたくさんの種類がありますので、まずは原材料で分類しましょう。
ひとつはサトウキビ。あたたかい地方のものなので、体を冷やす作用があるといわれています。もうひとつはテンサイ。サトウダイコン、ビートなどとも呼ばれ、冷涼な地域で育つので、体をあたためる作用があるといわれます。
国内に流通する砂糖の大半はサトウキビ由来です。その種類も、製造方法によって分かれます。裏に「上白糖」「グラニュー糖」などと書かれているものは「精製糖」です。濾過を繰り返すことで不純物を取り除き、無色透明な糖液を作ります。これを結晶化させて結晶部分のみを乾燥させたものが精製糖です。ミネラル成分はほとんどゼロです。糖液を加熱して作ったものが「三温糖」で、白い砂糖と同じくミネラルはほとんどないと言っていいでしょう。
精製糖は不純物やミネラルが取り除かれているので、体内に吸収されるスピードが速く、血糖値の急激な上昇が心配されています。
ミネラルを残して作っている砂糖は「含蜜糖」といいます。なかでももっともミネラル分が多いのが「黒糖」です。原材料はサトウキビのみ。本来のミネラルがすべて含まれているので、独特の味わいがあります。黒糖よりもミネラル分が減るものの、ショ糖などを加えて使いやすくしているのが「加工黒糖」です。
「きび砂糖」は、精製糖と黒糖の中間くらいの存在で、ミネラル分もほどほどです。「てんさい糖」は、テンサイの糖蜜から作られるもの。精製糖よりはミネラルが多く、オリゴ糖も含まれています。いずれも精製糖に比べて血糖値の上昇はゆるやかです。
みその裏読み。「膨張する」ものをチェック
みそは日本全国各地でさまざまな味のものが造られています。基本の原料は大豆なのですが、そこに米麹を加えると米みそ、麦麹を加えると麦みそ、大豆麹なら豆みそ(八丁みそ)です。
製造方法には「天然醸造」と「速醸法」があり、天然醸造は昔ながらの製法のものです。加熱して、1年程度の時間をかけて発酵させたものをいいます。速醸法は、2~3カ月程度でできあがるものです。
裏をみて、添加物もチェックしてみましょう。原材料として、大豆、米または麦、食塩と書かれていると思います。本来はこれで十分なのですが、だし入りみそなどには化学調味料が添加されています。ビタミンB₂が添加されているのは、見た目を鮮やかにするためです。
酒精やアルコールが添加されているのは、発酵が進んで容器が膨張するのを防ぐためです。それらを添加することで麹菌が不活性になり、容器の膨張や、熟成による色の変化を防ぎます。メーカーはお客様からの「色が変わった」とか「膨らんだ」というクレームが怖くて、添加物を使ってしまうのです。
容器のどこかに「容器が多少膨張することがあります」などの注意書きがあるものは「生きているみそなんですよ!」というメッセージでもあります。
大豆についてもチェックしてみてください。大豆は圧倒的に輸入ものが多いのですが、輸入されたものは遺伝子組み換えの可能性があります。国産大豆、有機栽培大豆などと書かれているものは安心ですが、値段も少しアップします。
みりんの裏読み。「本みりん」にも種類が
みりんは現在3種類が流通しています。「本みりん」「みりん風調味料」「みりんタイプ発酵調味料」です。
よく見かけるのは「みりん風調味料」ですよね。よくスーパーで安売りされています。でもこれは、みりんとはまったく別のものです。ブドウ糖などの液体に化学調味料やアミノ酸液などを混ぜて作られた、ちょっと不思議な調味料。安価で製造できるうえ、酒税もかからないので低価格で流通できるのです。
発酵調味料は「加塩みりん」とも呼ばれ、作り方は本みりんに近いものがあります。もち米のかわりにうるち米を使っていること、食塩が添加されていることが違い。塩が添加されているので、酒税対象にならず低価格です。
では「本みりん」とはなんでしょう? もち米、米麹、焼酎もしくはアルコールを原料にして仕込んだものを、熟成させたあとにしぼって、半年から1年間貯蔵熟成させたものです。アルコール度数は14%前後。れっきとした酒類なので酒税もかかります。
本みりんのなかにも「古式製法」と「新式製法」という2つの作り方があります。表示されていないことが多いので、原材料で見分けましょう。
古式製法の原材料は、米、米麹、焼酎のみ。新式製法はこれに加えて醸造用アルコールを使い、熟成期間を短縮しています。熟成が足りないと甘みが不足するので、糖類も添加されています。
手間と時間をかけて作られるみりんは、作り方で味がまったく違います。古式制法の本みりんは、おいしいリキュールのようです。
酢の裏読み。原材料は「米」のみで十分
酢とは、酢酸を3~5%含む酸味のある調味料。「酒あるところに、必ず酢あり」と言われるように、どんなお酒でも発酵するとお酢になるのです。
お酢の原料はさまざまです。米、麦、コーンなどの穀物類、果実、野菜、サトウキビなどなど。世界各地にお酒があり、そのお酒を発酵させたお酢があります。イタリアだとワインビネガーが有名です。
『裏を見て「おいしい」を買う習慣』(主婦の友社)
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日本は米酢です。米酢は米を酢酸発酵させて造った醸造酢です。でも値段はピンキリ。
裏を見てみましょう。JAS規格では、米酢には米以外のアルコール、糖類、アミノ酸液、そのほかさまざまな添加物を加えてもいいことになっています。よくあるのが、アルコールを添加して酢酸発酵させているもの。原材料に「アルコール」と書かれているのは、昔ながらの製法で造られてはいません。原材料は、シンプルに「米」とだけ書かれている純米酢を私は選んでいます。
発酵時間が短いものも多く出回っていますが、長時間かけて発酵した「静置発酵法」のお酢は、まろやかで深みのある味わい。健康にもいいはずです。
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提供元:「減塩」ばかり選ぶ人が知らない、調味料の裏側|東洋経済オンライン