2020.10.26
「老後資金に満足している人」が50代にしたこと|50代からお金をしっかり貯める5つのコツ
年金生活を安心で豊かなものにするため、50代でしておくべき備えとは?(写真:NOV/PIXTA)
私が編集長を務める雑誌『ハルメク』は、いわゆるシニア女性誌である。読者層はおおむね65~68歳が中心で、いわば“年金もらいたて”世代。夫や自分が仕事を引退し、年金中心の生活に切り替わり、家計の収支が大きく変動するなかで、「えっ、年金ってこれだけしかもらえないの?」と驚いたり、「どんどん貯金が減っていく!」と焦ったり。そんなリアルな姿を取材の過程で目の当たりにすることも多い。
年金生活を安心で豊かなものにするための秘訣は、ズバリ「50代からの備え」だ。単に貯金するという意味ではない。いずれ訪れるリタイヤ後の生活、年金中心の家計をリアルにイメージして、50代のうちから少しずつ暮らしを整えておくことだ。年金受給が始まってから慌ててもできることは限られてしまう。そこで今回は、ハルメクで紹介している“備え方”のなかから、いくつか紹介していきたい。
50代からのお金の使い方・守り方
ハルメクでは2020年に、調査機関「ハルメク 生きかた上手研究所」を通じて「年金とお金の使い方に対するアンケート」を実施した。回答者は55歳から79歳の女性読者839名。年金の受給状況や給与収入の有無、金融資産といった基本的な項目から、毎月の家計簿の収支、節約したい項目、逆に削りたくない支出といったリアルな質問まで、30問近くに記述式で答えていただく長大なアンケートだった。
839名分の回答を分析するうちに、「老後も満足して暮らしている方」には、お金との向き合い方に以下のような共通点があることがわかった。そしてその満足度は、年金額の多寡には関係なかった。
【共通点1】将来使えるお金をしっかりと計算できている
年金生活というのは、たいていの場合「貯金を取り崩す生活」だ。年金収入と今ある貯金を使いながら、100歳まで生きるとしたら、年にいくら、月にいくら取り崩せるのか。早い段階でそのシミュレーションをしておくことで、「少し支出を見直そう」とか「無理のない範囲で仕事を続けよう」といった打ち手を考えることができるし、やみくもに不安がる必要もなくなる。
【共通点2】年間の「特別支出」を見直せている
前項の「使えるお金」を計算する際、見落としがちなのが年間の「特別支出」だ。たとえ月々の収支が黒字に見えても、各種の税金、冠婚葬祭の支出、お中元やお歳暮、旅行やレジャー、家電の購入、家のリフォーム、車の維持費、孫へのお祝いなど、年間ではさまざまな支出があり、そのたびに貯金を取り崩すことになる。総額を把握できていない方も多い。50代のうちに全体像を把握し、本当に必要か、額が妥当かなどを見直しておくことが重要だ。
【共通点3】好きなものにはお金を使っている
言い換えれば、支出に優先順位をつけているということ。「毎年の海外旅行だけは譲れない」「食事が楽しみだから食費は削りたくない」など、自分が大切に思うものを決めてそこには十分にお金をかけ、それ以外の支出を抑える。
そのようなメリハリのついた消費ができていると、老後も満足度の高い生活ができる。リタイア後、自分は何を優先し、どんな楽しみを持ちたいのか、そのためには月にいくらくらいあればよさそうか。一度じっくりと考えて、支出のバランスを見直してみよう。
5つの中で最も「重要」なのは
【共通点4】賢い節約ができている
当たり前のことだが、限られた年金収入のなかでやりくりするのだから、節約上手になることは必須だ。といってもやみくもに支出を減らせばいいということではない。「賢い節約」、すなわち生活の質を維持しながら無駄な支出だけを減らす。
スマホや光熱費のプランを見直す、あまり使っていないサービスは解約する、同じものをより低価格で買えないか調べてみる、おトクな制度を利用する──などなど、「賢い」消費者としての習慣を早くから身につけておくこと。これにより、収入が年金だけになってからも生活の質を維持できる。
【共通点5】お金の制度や最新情報をチェックしている
実はこれが意外と大事なポイントで、しかも個人差が大きい。キャッシュレス、マイナポイント、GoToキャンペーン……。ここ1~2年の間でも、お金にまつわる新しいサービスや制度が次々に生まれているが、理解して活用できる人とそうでない人が存在し、その差が家計の差となって表れる。
資産運用や税制に関する仕組みは頻繁に更新されるし、シニア世代を対象とした割引サービスも日々登場している。新しい情報をキャッチするアンテナ、面倒がらずに活用してみる実行力を、50代のうちから磨いておこう。
前述の5つのうち、50代にとってとくに重要なのが「特別支出」の見直しだ。あなたはわが家の特別支出が、年に何万円くらいかかっているか、把握しているだろうか。毎月の収支があっていればおおむね問題ない、と思いこんでいないだろうか。「とくに贅沢もしていないのに、いつの間にかお金がなくなる」という方は、この特別支出が想定を超えてしまっているケースが多い。
アンケートに答えてくれた方のなかから、Tさんの例を紹介しよう。
現在の貯金は500万円。数年前に娘が家を建てるとき、1000万円を貸したため、目減りしてしまった。現在は夫に給与収入があり、ご本人もパートで働いているため、月の収支は10万円程度の黒字だが「老後資金が足りているのかわからない」と話す。
よく調べてみると、月の支出以外に年間40万円以上の特別支出があることがわかった。税金に7万円、孫への支援に15万円、冠婚葬祭に10万円、その他もろもろで10万円。これらを引くと、実は年間では数十万円しか貯金が増えておらず、このまま年金生活に突入した場合、老後資金が足りなくなる事態が予想される。
「娘さんと率直に話して、貸している1000万円を毎月少しずつでも返してもらう」「若いころから支払い続けている保険を一度見直して、必要な保障だけに絞る」「なんとなく続けてきた親戚づきあいのための交際費は、予算の上限を決めて管理する」といった見直しをしてみることになった。
とくに子どもとお金の話をするのは気が重い、という人も多い。しかし、将来老後破綻してしまったら、結局は子ども世代に負担をかけることになる。自分の人生を自分のお金でカバーできるようになるためには、早いうちから今までの「当たり前」を見直していくことが重要だ。
暮らし上手が実践する身近な節約術
最後に、誰でも今日からできる節約術をいくつかご紹介しよう。先述のお金アンケートでは、55~79歳の読者が実際に行っている節約術についてもきいている。複数回答によるランキング結果は以下のとおり。
1位:外食を控え、自炊する(62.4%)
2位:お店が発行しているポイントを貯める(59.2%)
3位:電子マネーやスマホ・カード決済でポイントを貯める(53.2%)
4位:節電する(51.0%)
5位:節水する(38.5%)
6位:携帯電話の料金プランを見直す(32.4%)
どれも当たり前のことに見えるかもしれないが、それでも「やっていない人」が半数近くいる。あなたはどうだろうか。
「知っている、わかっている」ことと、「実際にやっている」ことは違う。50代からは「実践」のフェーズだ。遅かれ早かれ、あなたにも「給与収入がなくなって年金収入と貯金だけで生活をする日」がやってくる。
その日に備えて、1日も早く、特別支出の見直しや身近な節約をスタートし、暮らしをシンプルに、備えを充実させることができるかどうか。その意識と実行力の差こそが、将来の安心の差になるのかもしれない。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「老後資金に満足している人」が50代にしたこと|東洋経済オンライン