2020.10.12
定期券、1駅延ばして「通勤時間を短縮する」裏技|急行停車駅まで戻ったほうが早く着くことも
定期券の区間を手前の急行停車駅まで延ばしておき、一度折り返したほうが目的地に早く着けるケースがある(写真:Graphs/PIXTA)
大学生のころ、東武東上線の下赤塚駅から通う仲間にこんな話を教えてもらった。それは各駅停車しか停まらない下赤塚から池袋へ行く場合、1つ隣の成増へ戻って急行または準急に乗り換えたほうが、池袋に早く着くことがあるというものであった。
もちろん、この場合は成増へ1駅戻る分と、そこから池袋への運賃が必要だ。だが、もしこの方法が早いのであれば、定期券ならいくらかの差額追加で区間を1駅延ばし、急行などに乗り換えることによって通勤時間を短縮できるではないか。定期券区間外の「折り返し乗車」は不正だが、区間を延長すれば問題ない。
場所にもよるが、急行停車駅より各駅停車のみの駅周辺のほうが家賃が安いケースも多い。というわけで、いくらかの差額追加で定期券の区間を延ばし、折り返し乗車による急行・快速利用で便利になる例を挙げてみたい。
どんな駅が当てはまる?
急行などの停車駅まで戻ったほうが早くなる主な条件は下記のようになる。
1:戻る駅までの所要時間が短い
2:都心のターミナルまでの駅数が多く、かつ、途中駅で速達列車への連絡がない
3:都心のターミナルまでの駅数が多く、かつ、途中駅で速達列車の通過待ちがある
4:戻った駅での乗り換え時間が1〜2分程度である
1と4は当然だろう。急行停車駅まで行く際や、乗り換えのために時間がかかっては意味がない。2・3は、簡単にいえばターミナル駅まで行く場合に途中で急行などに乗り換えできず、しかも追い抜かれるということだ。各駅停車しか停まらない駅でも、都心のターミナル駅から離れている場合は途中の駅で急行などに乗り換えられることが多い。この場合は戻るとかえって時間のロスになる。
この4条件すべてに当てはまる駅はありそうで意外にないが、今回は首都圏の路線で朝ラッシュ時に使える数例を紹介する。
■東武東上線・下赤塚→池袋
まずは冒頭で触れた、筆者が学生時代に友人から聞いた区間だ。
東武東上線の下赤塚駅。隣は急行・快速などが停まる成増駅だ(写真:sunny/PIXTA)
下赤塚は池袋から数えて8つ目、成増は9つ目の駅だ。なぜ成増まで戻ったほうが早くなるケースがあるかといえば、東上線の準急・急行・快速は成増の次が終点・池袋だからだ。つまり下赤塚は成増―池袋間の各駅停車しか停まらない駅の中で、池袋までもっとも遠いのである。
実例を挙げてみよう。下赤塚8時16分発の各駅停車に乗ると池袋には8時40分着で24分かかるが、成増だと8時23分の準急に乗れば池袋に8時35分に着き、所要時間は12分だ。
そこで、下赤塚8時19分発の各駅停車で成増に戻れば(20分着)、23分の準急に乗れる。3分遅く出て5分早く着くので8分の短縮になる。
下赤塚―池袋間の通勤定期券は1カ月8160円だが、成増まで延長しても9250円で、差額は1090円。平日月平均21日出勤とするならば(以後、1日あたり追加額は同様の基準で計算)1日あたり52円の追加で10分近く時間短縮できるというわけだ。成増まで定期券範囲に入っていれば何かと便利でもある。
追加なしで定期の区間が延ばせる
■西武池袋線・練馬高野台→池袋
池袋から8つ目の駅が練馬高野台だ。ここから池袋へ行く場合は、各駅停車を乗り通すか地下鉄直通の各駅停車に乗り、練馬で通勤準急または準急に乗り継ぐという方法がある。朝の通勤準急と準急は各駅停車の追い越しをしないため、どちらの方法でも池袋に先着する。
ところが朝ラッシュピーク前後の時間帯は、1つ手前の石神井公園から急行に乗るのが一番速いルートになることがある。
例えば練馬高野台7時05分発の新木場行きに乗り、練馬で各駅停車池袋行きに乗り継ぐと、池袋には7時25分に着く。練馬高野台7時09分発、13分発はどちらも練馬で同じ通勤準急に乗り換えて池袋に7時27分に着く。
だが、逆方向の7時08分発小手指行きで石神井公園に戻り、同駅を7時12分に出る急行に乗ると、池袋には7時22分着。上記のどの方法よりも早く池袋に着く。
練馬高野台―池袋間の通勤定期券は1カ月7910円だが、実は石神井公園―池袋間も同額。差額追加なしで5分の時間短縮ができるおいしい区間だ。同額なら定期券を延長しても経理担当者は何も言わないだろう。
■京王線・芦花公園→新宿
京王線の芦花公園は新宿から8つ目(新線の2駅を入れると10)の駅だ。各駅停車で新宿方面へ行く場合、例えば8時11分発の本八幡行きに乗ると明大前には8時27分、新線新宿には8時39分に着く。
京王線の芦花公園駅。隣の千歳烏山駅は準特急が停まる(写真:髙橋義雄/PIXTA
距離で言えば新宿まで約9km、明大前なら約4kmの割にかなり時間がかかっているが、この列車は八幡山で急行に追い抜かれ、その後の桜上水でも準特急に追い抜かれる。踏んだり蹴ったりな列車である。
そこで同じく芦花公園8時11分発の逆方向の電車、高尾山口行きで千歳烏山まで1駅戻り、ここから8時16分発の準特急に乗ると明大前には8時25分、新宿には8時37分に着く。たった2分の短縮ではあるが、朝の2分は貴重だ。
短縮効果はわずかだがこの区間を取り上げたのは、新宿との間であれば芦花公園も千歳烏山も定期券の額が変わらないためだ。どちらも通勤定期1カ月は6680円。千歳烏山は買い物にも便利だ。区間を延長して損はない。
なんと10分短縮も可能?
■京成線・菅野→日暮里
京成線の菅野は上野から14駅、日暮里からだと13駅。上野方面に行くには普通列車に乗り通すか、20分おきにしか来ない通勤特急に青砥で乗り継ぐかだ。朝のピーク時は基本的に前者となり、おおむね36~40分かかる。
だが、1つ前の京成八幡へ戻って特急または快特に乗ると、なんと10分以上もの通勤時間短縮になる。しかも京成八幡は上下線が同じホームなので乗り換えは非常に楽だ。例えば菅野8時01分発の上野行きに乗ると日暮里には8時40分着だが、菅野8時06発の逆方向の電車(京成大和田行き)に乗り、京成八幡で8時08分発の通勤特急京成上野行きに乗り換えられれば日暮里には8時34分着。5分遅く出て6分早く着ける。
そして、定期代は菅野―日暮里間も京成八幡―日暮里間も1カ月1万2670円で同じだ。差額なしでかなり便利になる。なんといい話だろうか!
■JR京葉線・千葉みなと→東京
JR線は1駅間が長いことが多く、戻る時間が長くかかって時間短縮効果を打ち消してしまうことが多い。
そんな中でも、京葉線なら時間短縮効果がありそうだ。千葉みなとから各駅停車で東京まで行くとおおむね50分かかる。しかも朝のラッシュ時は快速がなく、通勤快速は蘇我から新木場までノンストップのため途中駅で乗り継げない。沿線に実家がある筆者としては通勤快速を海浜幕張にも停めて、千葉市美浜区の利用者も使えるようにしてもらいたいものだが、千葉みなと駅のユーザーは蘇我まで戻って通勤快速に乗ったほうが速いケースがある。
例えば千葉みなと6時59分発の東京行きは、東京に7時50分に着く。1本後の7時06発だと7時56分着だ。一方、7時00分発の蘇我行きで蘇我まで戻り、同駅7時08分発の通勤快速に乗ると東京には7時47分着。1分遅く出て3分早く着くが、これは6時59分発に乗り遅れたときの遅刻防止保険としての利用が現実的なところだろう。
帰りのほうが効果がある
むしろ効果があるのは帰りだ。東京19時18分発の通勤快速君津行きで蘇我まで行き、蘇我19時55発の各駅停車東京行きで千葉みなとへ戻ると19時59分着。東京19時08分発・千葉みなと19時54分着の快速に乗るよりも到着は5分遅いが、出るのも10分遅くできる。
千葉みなと―東京間の通勤定期券は1カ月1万9360円、蘇我―東京間の定期券は2万2110円。差額は2750円で1日あたり131円、片道あたり65円だ。
いかがだったであろうか。いつもは金銭面での節約術ばかり書いている筆者には歓迎のコメントが寄せられる一方、「鉄道好きなら料金を払って鉄道会社を助けなさいよ!」といった声もある。そこで今回は、お金を少し追加して時間の節約になる手段を考えてみた。共感いただける方はぜひ、定期券の区間延長で減収にあえぐ鉄道会社を応援しつつ、便利に通勤しようではありませんか!
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提供元:定期券、1駅延ばして「通勤時間を短縮する」裏技|東洋経済オンライン