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2020.10.08

iPhone悲願「PASMO対応」生活はどう進化する|アップルはSuicaで大きな成功を収めたが…


Apple Payに対応したPASMOを、Apple Payに登録。手首をかざすと、改札を通ったり、コンビニでの買い物ができる(筆者撮影)

Apple Payに対応したPASMOを、Apple Payに登録。手首をかざすと、改札を通ったり、コンビニでの買い物ができる(筆者撮影)

アップルは10月6日より、同社のモバイル決済機能「Apple Pay」で、PASMOをサポートした。これにより、iPhoneから新しいPASMOカードを発行でき、iPhoneやApple Watchをタッチするだけで改札通過やコンビニでの買い物ができるようになる。その際、エクスプレスカード設定をしておけば、通常Apple Payを利用する際に必要なFace IDやTouch IDによるロック解除は必要なく、ただリーダーにかざせばいい。

PASMOは首都圏の鉄道・バス事業者が発売するICカード乗車券で、コンビニなどの加盟店での決済にも利用できる。これまで交通系ICカードでは、SuicaがApple Payに対応してきたが、同様に利用することができるPASMOを対応させた理由と狙いについて、アップルのApple Pay担当バイスプレジデント、ジェニファー・ベイリー氏に話を聞いた。

日本は最も成功している国の1つ

まずApple Payの日本における対応状況だ。日本では、iPhone 7をリリースした2016年からApple Payが利用可能になった。アメリカでは2014年のiPhone 6以降の対応であったことから、2年遅れての対応だ。

Apple Pay対応のPASMOがスタートした10月6日午前9時半、新宿駅では記念イベントが開催され、パスモ協議会会長の五十嵐秀氏(一番右)と、乗り入れている私鉄・都営地下鉄の駅長がそろって参加した(筆者撮影)

Apple Pay対応のPASMOがスタートした10月6日午前9時半、新宿駅では記念イベントが開催され、パスモ協議会会長の五十嵐秀氏(一番右)と、乗り入れている私鉄・都営地下鉄の駅長がそろって参加した(筆者撮影)

対応は遅れたものの、ベイリー氏は「日本はApple Payが最も成功した国の1つ」だとした。

「東京は世界で最も巨大な交通網を持つ市場であり、SuicaとともにPASMOのApple Pay対応で、これをカバーすることができるようになります。Suica、iD、QUICpayのサポートとあわせて、非常に多くの場所で利用できるようになっており、PASMOへの対応で、私鉄各線や地下鉄路線での利便性が向上します」(ベイリー氏)

Apple Payは、クレジットカードやデビットカードなどをiPhoneやApple Watchに登録することで、セキュリティを高めながら、非接触決済を行うことができる仕組みだ。すでに日本のクレジットカードの約95%はApple Payに対応している。

日本上陸の際、アップルは日本向けのiPhone 7とApple Watch Series 2 にのみ、FeliCaチップを搭載することで、Suicaだけでなく、コンビニなどに広く普及していたクレジットカードの非接触ICサービス、iDとQUICPayに対応した経緯がある。

ハードウェアを専用に開発してでも、アップルにとって、日本市場への参入は魅力的だった。その最大の理由は、トランザクション(決済)数の多さにある。人々の移動で毎日のように利用し、日々の買い物にも広く普及している電子決済手段交通系ICカードであり、取扱高だけでなく、安心して交通系ICカードを使う環境を整えることで、iPhoneやApple Watchへのロイヤルティを高めることもできるからだ。

進化した3つのポイント

Apple Payは2016年にSuicaに対応しており、すでに全国で交通系ICカードとして利用されている。PASMOとも相互に互換性があり、JRでもPASMOが利用でき、東京メトロでもSuicaで乗車できる。ではなぜ、PASMOもApple Payに対応させたのか?

iPhoneのWalletアプリを使うと、Suica同様、PASMOカードの新規発行や手元にあるICカードの取り込みを行うことができる(筆者撮影)

iPhoneのWalletアプリを使うと、Suica同様、PASMOカードの新規発行や手元にあるICカードの取り込みを行うことができる(筆者撮影)

「Suicaは非常に大きな成功を収めていますが、PASMOユーザーも多く、彼らに対してよりよい体験を提供する必要があると考えました。もちろんPASMOはSuicaと同じ場所で使うことができます。しかしApple PayにおけるPASMO体験には、何の制限もありません。カードを作る、チャージすることはもちろん、もう列に並んで定期券を購入・更新する必要もありません。またバスの定期券も利用することができます」(ベイリー氏)

ベイリー氏によると、Apple Payによってできるようになったことは主に3つある。

まず1つ目は、これまでPASMOで利用していた定期券をiPhoneに取り込んだり、私鉄・地下鉄各線、さらにバス路線の定期券を新規で購入することができるようになった点だ。特にバス路線の定期をiPhoneやApple Watchで実現したのは今回が初めてとなる。

もし手元にPASMOカードがあれば、Walletアプリから新たなPASMOカードを登録する操作の際、iPhoneをかざして情報を読み取ることで、残高や定期券の情報をiPhoneに移すことができる。

PASMOの新規発行は、iOSのWalletアプリを使うか、新たに用意されたiPhone向けPASMOアプリを利用する。後者の場合、記名カードを発行できるほか、初期の残高0円でも発行することができるため、クレジットカードを持っていない人や、現金でチャージしたい人も安心して利用できる。

2つ目は、海外の人でも簡単に利用することができるようになった点だ。海外の人がiPhone 8以上のデバイスを日本に持ち込み、WalletアプリからPASMOを新規作成する場合、Apple PayにVISA・Master、JCB、アメリカンエキスプレス、もしくは銀聯カードが設定されていれば、残高を追加して発行することができる。iPhoneの使用する国や地域の設定を変更する必要もなくなった。

PASMOアプリが新たに配信され、チャージや定期券の購入などを行うことができる(編集部撮影

PASMOアプリが新たに配信され、チャージや定期券の購入などを行うことができる(編集部撮影

現在、新型コロナウイルスの影響で観光での訪問が難しい状況になっているが、2021年に東京オリンピックが開催されるのであれば、海外から観戦に来た人は、手元のデバイスだけで、東京の交通機関を乗りこなすことができるようになる。iPhoneは通常、自分の母国語に設定しているため、駅の中や窓口で対応できない言語であっても、PASMOが利用できるようになる点は大きいだろう。

もう1つはオートチャージだ。鉄道事業者が発行するクレジットカードを持っている場合、残高が少なくなった際に自動的に残高を追加するオートチャージも利用できるようになる。Suicaの場合、Viewカードを持っている人にしか対応しなかったが、私鉄沿線に住んでいて、鉄道会社発行のクレジットカードを持っている人にも、オートチャージの便利さが拡大する。すでにPASMOカードへのオートチャージを利用していた場合、PASMOカードをiPhoneに取り込むことで、設定していたオートチャージも引き継がれる仕組みだ。加えて財布の中のカードを1枚減らすことができる。

端末を紛失した場合は?

ベイリー氏は、Apple PayのPASMO対応について、2つの安全性を強調した。

1つはセキュリティとプライバシーだ。Apple Payを設定しても、アップルは利用者がどこで、いくら利用したのかなどのデータを取得しないという。またICカードはiPhoneやApple Watch内のセキュアエレメントに格納され安全性が保たれるほか、端末をなくした場合でも「探す」アプリやウェブサイトからApple Payの機能を停止し、不正に利用されないようにすることができる。

もしデバイスを見つけた場合、カードの再発行は必要なく、ロックを解除すれば元通り使えるし、新たなデバイスに設定する場合でも、Apple IDに紐付けられ、残高をそのまま使い始められる。この点は、Suica同様、PASMOのセキュリティにApple Payの機能が追加される形となる。

またベイリー氏は、コロナ禍においては非接触ICによる決済は、感染拡大防止に役立つと指摘した。実際、改札やコンビニでSuicaやPASMOのカードを利用する際、タッチしなくても、近づければ反応してくれる。これはiPhoneやApple Watchでも同様で、自分のデバイスを不特定多数が触れる可能性がある改札などのリーダー部分に接触させる必要はない。

iPhoneのバッテリーがなくなったら?

iPhoneにSuicaやPASMOを設定する際の不安として、電池がなくなったときにどうするのか?がある。

解決策としてアップルはiPhoneに予備電源を用意した。iPhone XS・XR以降では、生体認証を回避するエクスプレスカード設定をしたPASMO・Suicaについて、本体の電源が落ちて起動しなくなってから最大で5時間までは、引き続き利用することができる。例えば夜、帰りの電車の中でiPhoneの電源が落ちてしまっても、予備電源対応モデルであれば、改札を通って家に帰ることができるのだ。

チャージのしやすさも向上した。オートチャージ設定をしていなくても、鉄道に乗ったときにiPhoneに通知が届き、残高がロック画面に表示される。そこで残高が少ないと思ったら、通知をタップすればすぐにチャージできる画面が開く。

またiOSのマップで経路検索をした際、価格運賃とiPhone内のPASMO・Suicaの残高が不足している場合、その旨が表示され、経路表示からチャージ画面を開くことができる。このあたりは、クレジットカードと違い、チャージしながら利用する交通系ICカードの体験をよく踏まえた設計を感じる。

最新の数字では、日本のスマートフォン市場におけるiPhoneの比率は6割で世界トップとなっている。StatCounterによると、およそ63%をiOSが占めている。特にApple Payの視点からすると、日本、とくに首都圏は、世界の中でも重視すべき都市圏であり、決済体験の充実に引き続き力を入れていくことになるだろう。

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提供元:iPhone悲願「PASMO対応」生活はどう進化する|東洋経済オンライン

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