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2020.08.11

インスタグラムが「稼げる場所」に変貌する理由 |広告収入に投げ銭、中小業者も集客に活用


インスタグラムではライブ配信での「投げ銭」機能や投稿動画での広告収入など、クリエイターの収益化を可能にするほか、写真のように中小業者向けに通販の仕組みも用意し、稼げる手段を増やしている(画像:Instagram、画面はアメリカで試験運用中の機能を含む)

インスタグラムではライブ配信での「投げ銭」機能や投稿動画での広告収入など、クリエイターの収益化を可能にするほか、写真のように中小業者向けに通販の仕組みも用意し、稼げる手段を増やしている(画像:Instagram、画面はアメリカで試験運用中の機能を含む)

俳優や歌手、お笑い芸人、ネット上のインフルエンサーなど、さまざまな著名人が毎日のように、SNS「インスタグラム」でライブ配信をしている。新型コロナウイルスの感染拡大による自粛期間中、気になる著名人の配信を視聴したという人も少なくないだろう。

動画投稿プラットフォームとしては世界で数十億人のユーザーを抱えるアメリカ・グーグルの「ユーチューブ」が圧倒的ではあるが、ライブ配信に関してはこのコロナ禍でさまざまなサービスが台頭した。これまで“映える”写真の投稿が多かったインスタグラムも、動画配信が大きく増えた。

稼げる機能を続々拡充

ただこれまでインスタグラムでは、ユーチューブのように配信者側が収益を得る仕組みがなかった。そんな中、今年5月末、インスタグラムは初めて収益化の仕組みを実装すると発表。ライブ配信では「バッジ」と呼ばれる投げ銭機能の試験運用を6月からアメリカで始めた。配信中に視聴者がバッジを購入すると、コメント欄の自分の名前の横にバッジが表示されたり、購入者限定の機能を使えるようになったりする。

ライブ配信での投げ銭機能「バッジ」のイメージ。コメント投稿者の横にハートマークが並んでおり、購入したバッジの数を示している(画像:Instagram)

ライブ配信での投げ銭機能「バッジ」のイメージ。コメント投稿者の横にハートマークが並んでおり、購入したバッジの数を示している(画像:Instagram)

こちらもアメリカのみだが、インスタグラム上の長尺動画配信サービス「IGTV」でも、動画内に広告を挿入し、投稿者が収入を得られる機能が始まった。

「ユーチューバー」と呼ばれる動画クリエイターが注目を集めるようになったのは、ユーチューブで再生数が伸びれば伸びるほど、広告収入を稼げるという仕組みがあったからだ。インスタグラムにも同様の仕組みが整えば、これまでは企業からのスポンサー収入が主だった「インスタグラマー」の層も広がりそうだ。

個人のクリエイターに限らず、アパレルや外食などの中小店舗が稼げる機能の整備も進む。今春から日本でもインスタグラム上から飲食店の注文や商品券の購入ができるようになった。6月からは「フェイスブックショップ」というショップ作成機能の提供が国内で始まり、店舗の商品一覧や価格を表示し、ECサイトに誘導できるようになった。アメリカではインスタグラム上で支払い情報を保存し、その場で購入できるようになっており、今後日本にも導入される可能性がある。

インスタグラムはこれまで、企業やクリエイターにとって投稿や広告で集客する場所だったが、実際に“稼ぐ”場所に変わりつつある。新機能の狙いや今後の戦略について、インスタグラムのビジネス&メディア部門グローバル責任者を務めるジム・スクワイヤーズ氏に話を聞いた。

――コロナ禍でインスタグラムの使われ方はどのように変わりましたか。

インスタグラムにはもともと、大事にしている人や物の近くにいたいと思っているユーザーが来てくれている。コロナの感染拡大でそれがより重要になったと思う。全体の利用動向にも表れている。例えばライブ配信機能は非常に人気になった。2月と3月を比較すると、閲覧数は70%増加した。

日本では2月下旬に休館を迫られた森美術館が館内のバーチャルツアーを配信したり、アウトドアブランドのスノーピークは「バーチャルたき火トーク」を開催したりしていた。配信を終えた後は、長尺の動画を配信できる「IGTV」にアーカイブ動画を保存し、後からでも見られるようにしている。

芸能人が積極的にライブ配信

――企業だけでなく著名人の配信も多いです。なぜインスタグラムが選ばれるのでしょう。

私が思うに、ファンのコミュニティがどこにあるか、どこでつながりを感じられるかが重要だ。初めに話したとおり、ユーザーは好きなクリエイターとつながりたいと思ってインスタグラムを見に来ている。

ジム・スクワイヤーズ(Jim Squires)/インスタグラムでビジネス向けのソリューション開発を統括。インスタグラム入社以前は、米ヤフーで動画やエンターテイメント商品の開発に携わるなどのキャリアを経て、フェイスブックに入社し広告コンテンツ導入に貢献(撮影:山内信也、写真は2018年の取材時)

ジム・スクワイヤーズ(Jim Squires)/インスタグラムでビジネス向けのソリューション開発を統括。インスタグラム入社以前は、米ヤフーで動画やエンターテイメント商品の開発に携わるなどのキャリアを経て、フェイスブックに入社し広告コンテンツ導入に貢献(撮影:山内信也、写真は2018年の取材時)

とくにミュージシャンであれば、これまでファンとつながれるのはライブツアーだったが、今はそれが難しい。今すぐつながりを作れる場所はどこかを考えると、インスタグラムのライブ配信は自然な選択肢になる。ユーザーにとっては、バックステージやサイン会に来たような気分になれる。

(米有名歌手の)ジョン・レジェンドと妻のクリッシー・テイゲンがピアノの前に座って歌う配信をしていたが、彼らのリビングルームで演奏を聴いているような感覚だ。それに刺激されて、自分でもやってみようという人も増える。それがライブ配信がとても人気になった理由だろう。

――アメリカでは配信者が簡単に収入を得られる仕組みも始まりました。

これまでもクリエイターを支援するためにさまざまな施策を行ってきた。とくにプラットフォームが活性化するよう、クリエイターが収益を得るための支援を強化している。

例えばライブ配信では「バッジ」を開始し、ユーザーがクリエイターを(金銭面で)支援できるようにした。また、IGTVでは動画の中で広告を流すことで(インスタグラム側と)収入を分配できるようにした。

――とくにIGTVについては、2018年の開始当初からユーチューブのような収益化をしないのかという声も少なくなかったように思います。このタイミングで広告の仕組みの導入を決めた理由は。

これまでも検討は進めてきたが、コロナでそれが加速した。クリエイターと事業者ともに、コロナ禍を乗り切るために支援を必要としていた。これはバッジも同様だ。

根本的にはこの数年でIGTVを視聴するユーザー数や、クリエイターや事業者とのユーザーのエンゲージメント(かかわりの深さ)が大きく伸びたことが理由だ。インスタグラムで長時間の動画を見るという体験は新しかったが、着実に理解が進んだ。

フォローしているクリエイターがIGTVの動画を投稿すると、タイムラインにプレビューが表示される。これをタップすると本編に飛ぶようになる。そうした仕組みがその動画やIGTVの利用を促す起爆剤となった。

料理の注文機能を始めた理由

――動画を配信するクリエイターだけでなく、最近はインスタグラムに登録する飲食店などの中小業者が収益を伸ばすための機能強化も目立ちます。

スモールビジネスの支援もクリエイターなどと同様に大きな注力領域だ。飲食店向けには、4月に(「Uber Eats」などの提携サービスから)料理を注文する機能を、5月からは(割引で食事を購入できる権利などの)ギフトカードを買える機能をリリースした。

インスタグラムにおけるフードデリバリーの注文機能のイメージ(画像:Instagram)

インスタグラムにおけるフードデリバリーの注文機能のイメージ(画像:Instagram)

やはりコロナの感染拡大を受け、機能を実現するために必要なサービスとの提携に向け世界各国で素早く動いた。注文機能は、4月の開始当初は国内パートナーがウーバー1社だったが、5月には4社が加わった。小規模店舗をなるべく多くカバーしていくために、適切なパートナーとの提携をなるべく早く増やしていく。

店舗からの反応もポジティブだ。注文機能を導入した都内のベトナム料理店は導入後最初の1週間の全注文のうち、約43%がインスタグラム経由だった。物理的な店舗に人を呼び込めない中でも、インスタグラム上で顧客とつながり、ビジネスを続けられるということを示せたと思う。

――飲食だけでなく、アパレルなどのネット通販をフェイスブックやインスタグラムで可能にする「フェイスブックショップ」(ショップ作成機能)が国内で始まりました。ネット通販の戦略をどう描いていますか。

アメリカで試験的に始まった「ライブショッピング」の例。インフルエンサーなどがライブ配信で商品を紹介しながら、画面下部に商品情報が表示され、そこから購入できる(画像:Instagram)

アメリカで試験的に始まった「ライブショッピング」の例。インフルエンサーなどがライブ配信で商品を紹介しながら、画面下部に商品情報が表示され、そこから購入できる(画像:Instagram)

アメリカでは試験的に、ショッピング広告から直接商品を購入できる機能のほか、「ライブショッピング」という新機能もアメリカで試験的に始めている。業者やクリエイターがライブ配信をしながら商品を披露する場だ。消費者はリアルタイムでそれを購入できる。買い物の体験をより簡単に、シームレスにしていく取り組みの一環だ。

ただスモールビジネスは必ずしもテクノロジーに詳しいとは限らない。こうした機能をスモールビジネスに使いこなしてもらうために、オンラインセミナーなどを開催し、ビジネスをデジタル化する支援をしている。また、総額1億ドルの中小ビジネス助成プログラムも発表した。まもなく日本でも申し込みの受付を始める予定だ。

インスタグラムのビジネスモデルが変わる?

――ユーザーからすると、通販サイトとインスタグラムでの購買体験はどう異なるのでしょう。

ビジュアルでさまざまなものに触れられるインスタグラムでは、ユーザーの9割がビジネスアカウントをフォローしている。かっこいいと思う製品を探していると、ビジネスアカウントだけでなく、クリエイターや友人のアカウントからも見つかる。ただそれを詳しく調べたり、購入したりするには、リンクを見つけるか、検索をしなければならず、やりづらいという声が多かった。

7月末から日本で始まった「インスタグラムショップ」機能の画面。ショップを作成した業者の商品一覧をテーマごとに見られる(画像:Instagram)

7月末から日本で始まった「インスタグラムショップ」機能の画面。ショップを作成した業者の商品一覧をテーマごとに見られる(画像:Instagram)

気になった商品があれば保存し、検討に時間をかけ、またあとで戻ってきたい。あるいはすぐに購入したい。こうした顧客体験を実現するために、インスタグラム上でのショッピング機能が必要だった。通常のネット通販では、何か欲しいものが決まっていて、検索し購入するが、インスタグラムは新しいものを発見する可能性を広げる。

――アメリカで始まった機能は日本にも導入されるのでしょうか。

新機能はアメリカ以外に広げる前に、試験を重ね、改善していく。時間軸は公表していないが、日本を含む他国に広げていきたいのは確かだ。そのために各国で必要なパートナーシップを築きながら、適切なインフラを整備していきたい。

――これまでインスタグラムの収益源は広告収入でした。今回さまざまな新機能の提供が始まったことで、収益構造も大きく変わりそうです。

将来においても、われわれの第一の収益源が広告であることは変わらないだろう。ショッピングの事業では、インスタグラムで直接購入できる機能(現在はアメリカのみ)で業者から少額の手数料を取っているが、利用しているのはまだ数百の店舗だ。しかも(自社の収益にするというよりも)開発や取引にかかるコストを補うのが目的だ。ライブ配信におけるバッジはクリエイターと収益を分け合うが、まだまだ試行段階にある。

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提供元:インスタグラムが「稼げる場所」に変貌する理由|東洋経済オンライン

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