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2019.12.18

定年間際に貯金ゼロでも安心老後をすごす方法|サラリーマンは「2つの資本」で何とかなる


もうすぐ60歳になるのに、貯金がほとんどない…。老後のために「今やるべき対応策」とは?(写真:sasaki106/PIXTA)

もうすぐ60歳になるのに、貯金がほとんどない…。老後のために「今やるべき対応策」とは?(写真:sasaki106/PIXTA)

私は仕事柄、各地で50代の人を対象としたセミナーで講演することが多いのですが、最近、こんな質問を受けることがあります。

「私は、まもなく60歳の定年を迎えますが、貯金がほとんどありません。いったいどうすればいいのでしょう?」

財務省の「財務総合政策研究所」が出している『フィナンシャル・レビュー』(平成30年第2号)によれば、金融資産が150万円以下の層は55~59歳で19.71%と、2割近い数字になっていますから、ほとんど貯蓄を持っていない人たちが一定数いることは確かでしょう。かくいう私自身もサラリーマンで定年を迎えたときの預金残高は150万円しかありませんでしたから、この2割の中に入っていたことになります。

普通に考えたら、定年のときに貯金がほとんどないのであれば、「それから先はどうやって生活すればいいのだろう?」と心配になるでしょう。しかも今年は「老後2000万円問題」が話題になりましたから、余計にそう思うかもしれません。でも、あなたがサラリーマンであれば、定年時に貯金がほとんどなくても「資産はゼロ」というわけではないのです。

貯金以外にも、定年以降の隠れた「金融資本」が必ずある

会社が事業活動をするための元手を「資本」といいますが、この「資本」を個人の場合に置き換えれば、消費活動をするための元手ということになります。個人にとっての資本は2つに分けることができ、「人的資本」と「金融資本」があります。

人的資本とは、わかりやすくいえば「働いて稼ぐ力」です。一方、金融資本は自分が持っている金融資産のことですが、それは貯金だけではありません。公的年金制度も金融資本ですし、サラリーマンであれば企業の退職給付制度は隠れた金融資本です。

公的年金制度の本質は保険です。歳を取って働けなくなった場合、生活するためのお金の一部が死ぬまで支給される、いわば終身の所得保障保険のようなものです。現役の頃から保険料を納めておけば、将来に働けなくなったら所得保障が受けられる権利を手にできる、と考えればいいのです。

一方、企業の退職給付制度は、公的年金制度のような保険とは異なり、「給与の後払い」という性格を持っています。支給の形式によって、退職金になるか企業年金になるかが違うだけで、本質はどちらも給与の後払いです。後払いの退職給付制度を廃止する代わりに「退職金前払い制度」を導入し、現役時代の給料に上乗せして支払っている会社もあります。

このようにサラリーマンの金融資本には、(1)公的年金という保険制度による老後の生活保障のお金、(2)会社から給料の後払い分として定年後に支払われるお金、そして(3)自分で蓄えたお金――の3種類があるのです。「定年時に貯蓄がほとんどない」という人は、3種類のうち(3)がほとんどない、ということにすぎません。したがって、貯蓄がほとんどなくても焦ったりせず、まずは(1)の公的年金と(2)の退職給付制度でどれくらいの収入を得られるかを把握することです。

ところが、多くの人は、これらの数字をきちんと把握していません。私は、老後のライフプランに関するセミナーを年間140回以上行っていますが、自分が受け取れる公的年金額や、会社の退職給付制度を十分理解している参加者はほとんどいません。人間は、わからないことに不安を感じるものです。老後のお金についても、これらのことがよくわかっていないから不安が増幅されるのです。

そうなると、金融機関の言いなりになって不要な保険商品を契約したりリスクの高い金融商品を買ったりしがちです。現に「老後2000万円問題」が取り沙汰された今年6月以降、金融機関に口座を開設したり、投資を始めたりする人が増えたという話を聞きます。

私は、老後の生活にいくら必要かという以前に、不安感をあおられて変な金融商品を買ってしまったり、投資にお金をつぎ込んで失敗したりする、いわば二次災害の問題を強く懸念しています。

60歳以降も「人的資本」を活用し、稼ぎを得ていく

人的資本についても、60歳で定年になったからといって「ゼロ」になるわけではありません。

総務省統計局の「労働力調査」(2018年)によると、60~64歳で働いている男性は81.1%、65歳以上でも33.2%となっています。2013年に高年齢者雇用安定法が改正され、企業に対し、希望する人全員を65歳まで雇用することが義務づけられました。それ以降、働きたい人のほとんどは60歳以降も働いています。

多くは再雇用ですから現役時代の収入に比べれば大幅に下がっているでしょうが、仮に年収200万円(月給約17万円)で働いたとしても、5年で1000万円となります。60歳時点で貯蓄がゼロだとしても、人的資本の価値は決してゼロではないのです。

「定年で収入がなくなるのに、貯金がない。もう生活していけない」などと老後を心配しすぎたり、諦めたりするのは早計です。貯金以外の金融資産となる「公的年金制度や退職給付制度」を正しく把握しておくこと。そして、人的資本を活用して「60歳以降も元気である限りは働く」というやり方を再考してみることが大事ではないでしょうか。

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