2019.01.08
今年こそ「抱負」を実現させる7つのポイント|30歳を過ぎて人は変わることができるのか?
多くの人が自分の何かを変えて人生を変えたいと思っているが、長年続けてきた習慣を変えるというのは容易なことではない(写真:oatawa / iStock)
明けましておめでとうございます。2019年も「コミュ力」という切り口からこの世の中の事象や仕事術などについて深掘りしていきたいと思っています。今年も、よろしくお願いいたします!
そもそも、人は変われるのか?
というわけで、筆者の今年の抱負は何にしようかと思いあぐねていたが、ここ数年、そんなものなど考えていなかったことに気づいた。大体、すぐに忘れてしまうし、簡単に実現できたこともないし……。そんなことを思いめぐらせていたら、今年の1回目にふさわしい壮大なテーマに行きついた。「そもそも、人は変われるのか? 変わってしまうのか?」である。
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「抱負」。心の中に抱く決意や計画のことだが、新年にこれを掲げる習慣は日本だけではないようだ。英語では、New Year’s Resolutionと呼び、世界の多くの国で、新年にその年の目標などを掲げる伝統がある。
アメリカ人の2018年の抱負についての調査によると、(1)お金を貯める(53%)、(2)やせる(45%)、(3)もっとセックスをする(25%)、(4)もっと旅行する(24%)、(5)もっと本を読む(23%)、(6)新しいスキルや趣味を身に付ける(22%)、(7)家を買う(21%)、(8)煙草をやめる(16%)、(9)恋人を見つける(15%)という結果だった。しかし、結果的に、80%の人は1カ月ほどで、あきらめてしまったというデータもある。成功率はわずか8%であるとか、12%だ、という調査もある。
「何かを始める」「何かをやめる」など、長年、続けてきた習慣を変える、というのは容易ではない。特に、「抱負」というものがその言葉どおり、「(決意を)負う」「負荷を伴う」ように、楽なものだったり、快楽を伴うものではないので、なおさらだ。多くの人が自分の何かを変えて、人生を変えたいと思っている。しかし、なかなかそうはいかないのが現実だ。
アメリカ人の2018年の抱負についての調査 ※外部サイトに遷移します
そもそも、人はかないもしないのに、こうなりたいと思う高い望みを持ってしまいがちなところもある。自分が変われるという過大な希望を持ちがちな性向をトロント大学の心理学者はFalse hope syndrome(偽りの希望症候群)と名付けた。「自分が変わろう」と決意したときに人は高揚感を感じ、ポジティブな気分に包まれる。だから、人は守りもできない「抱負」や「目標」というものをついつい、掲げたがる。しかし、それが多くの場合は、かなわず、大きな落胆に代わってしまう。結局、人生は「よし、変わろう」「やっぱり駄目だった」の繰り返しになりやすいということだ。
30歳を過ぎたら変わりにくい?
人というのは実際、変わりにくいものらしい。「30歳を過ぎたら、人の性格は石膏のように固まり、変えることはできない」とはアメリカの高名な心理学者・哲学者のウィリアム・ジェームズの言葉だ。多くの研究で、子ども時代から20代までは人間の性格は大きく変化するが、30代以降はあまり変化しないことが指摘されている。つまり基本となる性格・パーソナリティは30代までにおおむね形成されるということになる。
ただ、まったく変わらないかというと、そういうわけでもない。衝撃的な経験や身体的な変化、たとえば、子どもが生まれる、大病をする、大きなストレスにさらされる、更年期などを経験することによって、変わる場合もある。
年を経るごとに少しずつ変わっていく側面もある。人の性格を類型化する手法はさまざまあるが、海外の研究などで最も一般的に使われ、信頼される理論が「Big 5」というものだ。人の性格を以下の5つの特性で表すことができる。
1. Neuroticism(神経症傾向、情緒不安定性)
不安や緊張、否定的感情の強さ。
2. Extraversion(外向性)
社交性や積極性など、自分の関心を外に向けられるかどうか。
3. Openness to Experience(経験への開放性、知性)
新しいものに興味や好奇心を持ったり、チャレンジしていくかどうか。
4. Agreeableness(調和性、協調性)
利他性や共感性。相手と協調していくことができるかどうか。
5. Conscientiousness(勤勉性、誠実性、まじめさ)
責任感や計画性、忍耐力などきちんと目標を立てて、それを達成しようとするかどうか。
多くは遺伝的な要素が強いが、年齢によって、これらの特性も変化する。このBig 5の経年変化を分析した調査では、人に対するやさしさ、共感性である「調和性・協調性」と「勤勉性」は、年を取るほど、上がっていくとされている。また、「神経症傾向」、新しいものへの興味などの「開放性」、「外向性」はやや減少するとされており、人は年とともに円熟していくと考えられている。
このBig 5の経年変化を分析した調査 ※外部サイトに遷移します
2017年1月にイギリス・ケンブリッジ大学の脳科学者たちが発表した脳の分析調査でも、「年を取るほど脳の前頭皮質が薄くなり、よりしわになることなどから、気が長くなり、穏やかになる」と、結論づけられた。彼らの言葉を借りれば、「人間は年を取るほど、神経質ではなくなり、感情をコントロールしやすくなる。同時に、誠実さと協調性が増し、責任感が高まり、より敵対的でなくなる」のだそうだ。まさにBig 5の経年変化が脳科学でも裏付けられたということになる。
脳の分析調査 ※外部サイトに遷移します
一方で、日本では、高齢者は気が短くなる、怒りっぽくなる、などというラベルが貼られがちだ。加齢とともに脳の前頭葉の働きが衰えて、感情の抑制が効かなくなるという説明がなされるが、全員がそうなるわけでもない、ということだろう。もしかすると、高齢化が最も進む日本だから(厚生労働省平成29年簡易生命表、平均寿命の国際比較による)、その不機嫌さが目立つのかもしれないし、日本の高齢者の不幸感が、海外と比べて、並外れて高い(参考記事:日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか)ことを考えると、その「怒り」には文化的・社会的な問題も隠れている可能性もある。
(参考記事:日本の高齢者は、なぜこうも「不機嫌」なのか) ※外部サイトに遷移します
どうしたら「抱負」を実現させられるのか
というわけで、人は変わりにくいけれど、変わらないことはない、ということが結論のようだ。では、今年こそ、自分を変えて、目標を達成したいと考えている人はどのようにして、「抱負」を実現させることができるだろうか。
1.高すぎず、低すぎず
「やせる」「お金を貯める」「勉強する」「何か新しいものに挑戦する」といった、抽象的な目標は、具体的な手順や行動が可視化しにくい。あまりに難度の高いもの、逆に簡単すぎるものは意味がない。ちょっとの努力で手が届きそうな具体的な目標を掲げる。たとえば、1カ月に500グラムずつやせる、1カ月1万円ずつ貯める、など。
2.小さなステップから始める
どのようなステップで、実現させるのかを思い描く。いきなり大きな目標を達成させることを考えるのではなく、どういう手順で到達するかを計画する。たとえば、運動を1週間に10分を3回、休日には15分、などというように、ミニマムな努力でできるところから始める。
3.習慣にひも付ける
いつもの習慣を改め、ゼロから始めるのはハードルが高い。普段、何気なく行っている習慣にほんのちょっと背伸びするぐらいの負荷をかける。テレビを見ながら、体を動かす。犬の散歩の途中に寄り道をして、10分運動する、など。
4.環境を整える
誘惑になりそうなものはあらかじめ、身の回りから排除し、行動しやすいように周りの環境を整える。
5.公言する
友人やソーシャルメディアなどに、自分の抱負、目標を公言する。自分にプレッシャーを与え、簡単にあきらめられない状況を作る。ノートなどに書き記す。紙に書いて部屋に貼るなど、エビデンスを残すのもよい。
6.経過を記録する
達成までの道のりを記録に残す。紙、携帯、パソコンなどに、簡単でいいので、メモにして残しておく。
7.インセンティブをつける
大きな目標達成まで、待つのではなく、一定のマイルストーンに達したら、少しずつ自分にご褒美を与える。
「抱負」の代わりに、「今年の言葉」を掲げるのもいいらしい。ビル・ゲーツの妻、メリンダ・ゲーツさんは「Grace(寛大さ、やさしさ)」を2018年の言葉に選んだ。落ち込んだとき、くじけそうになったとき、この言葉を「マントラ」のように、自分にささやくのだそうだ。
皆さんの今年の「抱負」や「言葉」はなんだろう。このコメント欄で宣言することで、「コミット」してはいかがだろうか。
大きな目標達成まで、待つのではなく、一定のマイルストーンに達したら、少しずつ自分にご褒美を与える。
「抱負」の代わりに、「今年の言葉」を掲げるのもいいらしい。ビル・ゲーツの妻、メリンダ・ゲーツさんは「Grace(寛大さ、やさしさ)」を2018年の言葉に選んだ。落ち込んだとき、くじけそうになったとき、この言葉を「マントラ」のように、自分にささやくのだそうだ。
皆さんの今年の「抱負」や「言葉」はなんだろう。このコメント欄で宣言することで、「コミット」してはいかがだろうか。
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提供元:今年こそ「抱負」を実現させる7つのポイント|東洋経済オンライン