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2018.11.20

努力しても「自信が持てない人」に欠けた視点|精神科医・名越康文が教える小さなコツ


自分に自信が持てない人の特徴とは?(写真:polkadot / PIXTA)

自分に自信が持てない人の特徴とは?(写真:polkadot / PIXTA)

臨床に携わる一方、TVやラジオ番組でのコメンテーターや映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍する精神科医・名越康文氏による連載「一生折れないビジネスメンタルのつくり方」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。

「アルファポリス」 ※外部サイトに遷移します

なぜ「自信を持つ」ことが難しいのか?

答えがわかっていても、それを受け入れ実行するのは難しいことが、人生にはたくさんあります。

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アルファポリスビジネス(運営:アルファポリス)の提供記事です ※外部サイトに遷移します

「自分に自信が持てるようになるにはどうすればいいか?」というのも、そうした問いのひとつです。この質問には、過去、何百回と繰り返されてきた「正解」があります。しかし、多くの人はその答えを聞いても、なかなかそれを実行することができません。

それは、「ありのままの自分を受け入れる」ということです。

仕事であれば、会社での評価や売り上げ、プライベートなら友達の数や恋人の有無。そういった「自分の外側の基準」に惑わされるのではなく、ただありのままの自分自身を受け入れる。それこそが本当の自信を手にする、ただひとつの道である……。

おそらく、多くの人が、これと同様の答えを見聞きしたことがあるはずです。というのも、古今東西、多くの賢人たちの答えも、枝葉に違いはあれど、最大公約数を見ると、だいたいこのあたりに落ち着くんです。

そして、僕の答えも「結論」としては同じです。いくら仕事で成果を上げても、出世をしたとしても、人はどこかで「ありのままの自分を受け入れる」ことなくして、「本当の自信」を手にすることはできません。これはおそらく間違いなく、人間の本質に沿った鉄則なんです。

ところが、です。この「答え」は、「自分に自信が持てない」と今まさに悩んでいる渦中の人の心には、決して響きません。どれほど懇切丁寧に教え説いたとしても、きっと納得してはくれないし、変わることはできません。

当然ですよね。だって「自分に自信が持てない」と悩んでいる人は、今の自分が嫌いだから、自信が持てないんです。仕事がうまくいかない、周囲からの評価もかんばしくない。なにをやっても「自分ならやれる」と心から自信を持つことができない。そんなふうに悩んでいる渦中の人が、「ありのままの自分を受け入れなさい」なんて言われても、「そんなの無理!」となってしまって当たり前ですよね。

というわけで、今回はひとつずつ階段を登っていくように段階を追って、自信について、考えてみることにします。なかなか本題に近づかなくてじれったく感じるかもしれませんが、読み進めていただければ、きっとそのほうが「早道」だということに気付いていただけると思います。

「自分に自信がある」って、どういうこと?

さて、そもそも「自分に自信がある」って、どういうことなんでしょう。

「自信満々の犬」とか「いまひとつジャンプ力に自信が持てないバッタ」みたいなものを、たぶん私たちはうまく想像することができません。実際に彼らがどうなのかはともかくとして、自信があるかないかということが生活の中で問題になるのは、人間だけと言っていいでしょう。

いつもバリバリと仕事をこなす同僚のAさんは、自信に満ちあふれているように見えます。実際、Aさんは能力的にも優れた部分を持っているかもしれませんが、それ以上に「自信がある」ことによって、成功を引き寄せているように見えます。

それに比べて、なかなか出世できないBさんは、いつもどこか自信なさげです。スキルや知識がないわけではないはずなのに、自信がないから会議でも発言しません。だから結局、成果を上げる、出世するチャンスを逃しています。

こんなふうに、自信というのは、ただその人の内面の問題というより、仕事の成果や人生の成功を左右する、大きな要素になっています。

また逆に、仕事の成果や家族、友人関係や恋愛が、その人に自信をつけさせたり、失わせたりする要因にもなります。「自分に自信が持てない」と悩んでいる人は、自覚しているかどうかはともかく「自分はどの程度社会に適応できているのだろう?」ということに不安を覚えている人なのです。

では、仕事で成果を上げ、同僚や上司、あるいは家族から高い評価を得ることができれば、私たちは「自信を持つ」ことができるのでしょうか? 仕事で成果を上げれば自信がつき、自信がつけば、さらに仕事の成果も上がっていく。そういう「成功のループ」に入っていけば、それで自信の問題は解決なのでしょうか?

もしかすると、世間一般では、自信というのはそういうものだと考えられているかもしれません。しかし、精神科医という立場で多くの人と接してきた私が感じているのは「それだけでは十分ではない」ということです。

「社会に適応すること」は自信を持つための「必要条件」ではあります。ただ、残念ながら「十分条件」とはいえません。客観的に見れば、バリバリ仕事をして、十分な社会的評価を得て、友人もたくさんいるにもかかわらず、なぜかいまひとつ「自分に自信が持てない」という人が少なくないのです。

もちろん、社会の中での居場所や評価を得ることは、自分に自信を持つうえで大切です。自信を持ちたければ、私たちは普通、仕事を頑張ったり、勉強したり、あるいは人付き合いをして関係を深めようとし、実際そうやって成果を積み上げていけば、ある程度、自信を持つことはできるはずです。

ところが、「自分にどうも自信が持てない」という悩みは、まさにそうやって頑張っている人の中で、芽を出してくる傾向があるんですね。少なくとも「社会に適応している=自信が持てる」という図式が単純に成り立つほど、自信というのは、一筋縄で手に入れることができないものなんです。

一線で活躍してきた人でも「自信を失う」ことがある

イソップ童話に「樫の木と葦」というお話があります。ほんの少しの風に首を垂れてしまうなよなよとした葦を見て、樫の木は「なんだ情けない。俺はどんな風がきても大丈夫だぞ!」と威張っています。そこへ大きな台風がやってきます。葦は大風に吹かれて地面に這いつくばったようにしなっていますが、持ち前のしなやかさでなんとか一晩やり過ごします。樫の木はなんだこんな風くらいと踏ん張っていますが、台風が過ぎたあと見てみると、見事に根本からバキバキバキッと折れて倒れていました。そんなお話です。

子どものころの僕はこの童話がお気に入りで、興奮して母親に何度も「読んで、読んで!」とせがんでいたそうです(変な子どもですね)。

ただ、臨床のなかで多くの人を見ているうちに、僕はこの童話には、深い洞察がこめられていると感じるようになりました。「樫の木」のように強く、何に対しても負けず、戦い続け、勝ち続けて高い社会的地位を築いてきたタイプの人が、自分でも予測できないような思わぬタイミングで、突然「バキッ」と心が折れてしまう。そうすると、それこそ「根本から折れてしまった樫の木」のように、ひどい状態に陥ってしまって、立て直すのに何年もかかってしまう。

私はそういう人を、臨床の中で何人も、何人も見てきました。そのなかで気づいたことは、「樫の木」タイプの人というのは、実は内側に、すごくもろい部分を抱えながら生きてきた人なのだろう、ということでした。

樫の木タイプの人は一度「バキッ」と折れると、なかなか立ち直ることができません。それは心が折れたその瞬間に「ひどい状態」に陥ったからではなく、ずっと前から心の「芯」の部分に少しずつ、少しずつ問題が積み重なっていたからです。

バリバリ一線で活躍してきた人が、直属の上司が左遷されてしまった瞬間、仕事へのモチベーションを失ってしまうということがあります。それまで「信頼する上司からどう評価されるか」ということでモチベーションを支えていたために、それがなくなってしまうと、仕事にどう取り組んでいいかが一切わからなくなる。

「自分に自信が持てない」理由は「何をやってもうまくいかない」というものだけではありません。「樫の木」のように、いろんな問題に対して頑張って、頑張って、頑張り続けた末に、どこかで「無理」が溜まり、あることをきっかけに心が「バキッ」と折れてしまう。そういう人は決して少なくはありません。

仕事を頑張り、友人関係を大切にし、積極的に恋愛をし、家族や親戚を大事にする……。そうやって一見充実した生活を送っているにもかかわらず、どこか自分に自信が持てない。キラキラした生活の裏側で、心の中がカラカラに干上がっている。そうした人たちに共通しているのは、「周囲からの評価」を求め続けるなかでだんだんと心の内側が干上がっていく。そんな形の「自信のなさ」なのです。

自信があるとは「明るくて、余裕がある」ということ

私が「この人は自信があるな」と感じる人に共通しているのは、余裕があって、明るいことです。

例えばスポーツを見ていると、どの競技でも「王者」と呼ばれる強い人は、いつも限界ギリギリで力を100%出し切るような戦い方をしているわけではありません。むしろ、どれほど切羽詰まった場面でも、どこか余裕がある。ゆとりがある。だからこそ、相手のほうがだんだんとその人のペースに巻き込まれて余裕を失い自滅し、結果として「王者」でい続けることができる。ラッキーパンチでも当たらない限りは、勝負の分かれ目は、実はこの「自滅」が多いはずなのです。

「本当の自信」って、まずはそういうふうに「明るさ」や「ゆとり」を伴っているものだということです。

もちろん、それがわかったからといって「明るく」「余裕を持つ」というのは簡単ではありません。「明るく見せる」「余裕を見せる」ことはできたとしても、それだけでは「自信がある」ことにはならない。

実際に「明るくて、余裕がある」状態でやるべきことをこなせるかどうか。それは突き詰めれば、その人の「地力」が練られたとしか言えないものかもしれません。ただ、自分に自信を持つためには「明るい自分」「余裕のある自分」でいることが大切なのだということがわかると、努力の方向性がはっきり見出しやすくなってくるとは言えるわけです。

僕自身はもともと、自分に自信が持てない人間でした。「でした」と過去形でお話しするのは、最近はどういうわけか、あまり「自信がない」という感覚がなくなってきたからです。別に今でも「自信満々」というわけではないのですが、以前に比べると「自信がなくて、不安が襲ってくる」という場面が少なくなってきた。

そのポイントのひとつは、ある種の「あきらめ」です。「自分はこうあるべきだ」というこだわりを捨てること。頑張ってなんとかなることと、なんともならないことの区別をつけていくこと。自分にできること、できないことの整理がつくにしたがって、以前に比べて自己嫌悪に陥ったり、自信を失って落ち込む、ということが少なくなってきたのです。

「自信が持てない人」に共通するのは、「キラキラした自分」や「成功している自分」への期待と、そうなることができない現実とのギャップです。自分に自信が持てない人は、いつもそのスパイラルのなかで苦しんでいる。そこから抜け出すための一歩は、適度な「あきらめ」を身につけて、自分のできる範囲に目標を定めることなのです。

そうすることで、気楽に実績を積み重ね、自分への自信を高めていく道が開けてくるんです。

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提供元:努力しても「自信が持てない人」に欠けた視点|東洋経済オンライン

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