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2018.11.12

教養として読むべき「経済学の名著」ベスト5 |数式がほぼ出てこないすごい本も!


経済学必須の教養を、わかりやすく学べる名著(写真:ナオ / PIXTA)

経済学必須の教養を、わかりやすく学べる名著(写真:ナオ / PIXTA)

難解なイメージがある経済学ですが、その基本的な知識がすぐに頭に入る「名著」があることを知っていますか?
『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』の著書のある、代々木ゼミナールのカリスマ講師・蔭山克秀さんに教えてもらいました。

『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』 ※外部サイトに遷移します

(1)『経済学』サミュエルソン

――数式をあえて使わず説明してくれる良書

サミュエルソンは現代経済学の「隠れた巨人」です。従来理論の再構築と分析手法(特にモデルの単純化や数学の活用)で新しい道をバンバン拓き、経済学全体の学問的発展に多大なる功績を残したことで、1970年ノーベル経済学賞を受賞しました。

彼の著書『経済学(上下巻)』は「世界一売れた経済学の教科書」として知られ、全世界で1000万部を超える超ベストセラーとなっています。

初心者にやさしい教科書

この本はとてもすごい本です。まずグラフの説明がおそろしく丁寧で、初めての人でもかなり安心して学べます。図の説明もメチャクチャ具体的でわかりやすい。たとえば「生産物市場」の具体例として「トウモロコシの価格/医療/ロックコンサート/ピッツァの価格」などを挙げ、すぐ下にそのための「要素市場」として「トウモロコシ用農地の地代/医者の勤務時間数/スタジオの使用料/トラックの走行マイル数」などと書かれています。これ以上ないくらいのわかりやすさです。

さらにこの本、「何を・いかに・何のために」が徹底されている上、一番すごいのが「数式がほとんど出てこない」ことです。経済学で数学革命をもたらしたサミュエルソンが、教科書では数式を使わないのです!

(2)『セイラー教授の行動経済学入門』セイラー

――話題の「行動経済学」がわかる!

セイラーは「行動経済学」で経済学と心理学を見事に統合し、2017年ノーベル経済学賞を受賞しました。

行動経済学とは、経済学に心理学的アプローチを試みることで、人間の非合理的な行動をモデル化していく学問分野です。

伝統的な経済学は常に「合理的プレーヤー」を想定しますが、実際の人間は、非合理的な選択ばかりします。たとえば、今の住宅ローンから別の住宅ローンに借り換えれば金利面で得になることがわかっているのに、銀行員の熱心な売り込みや手続きの煩雑さ、プランの選択肢の多さなどに尻込みし、結局借り換えしないまま、何年も放置したりします。

ならばそういう人には、より「簡単」なプランだけを提示し、しかも「しつこくくどく(ナッグ)」ではなく、「軽く肘で小突く(ナッジ)」ように、ポンと背中を押してやればいいのです。つまり「このプランなら、今より確実に金利面でお得です。しかも月末までに借り換えれば、さらに0・5%お得」みたいな具合に。セイラーは経済学に心理学を統合させることで、僕らのお金に関する決断に、大きな判断基準を与えてくれています。

(3)『マクロ経済学』入門編 マンキュー

――初学者を決して突き放さない丁寧な教科書

マンキューはニューケインジアンのリーダー的存在で、29歳の若さでハーバード大学の教授に就任し、2003年にはブッシュ大統領の大統領経済諮問委員会の委員長を務めた英才です。そのマンキューといえばやはり「経済学の教科書」です。

根気強く説明してくれる一冊

彼が経済学部の学部生向けに書いた教科書『マクロ経済学』はベストセラーとなり、世界各国で翻訳・使用されています。彼はこの教科書の執筆料と印税で家を建てたといわれています。

本書はその教科書となった本から、さらに基礎的な部分だけを選んでまとめたものです。

読むと、とても丁寧な作りになっています。教科書には、最初から数式や難しい言葉を並べ立てた「かましてくる」系のものも多いですが、マンキューは決して初学者を突き放しません。「この章では何を学ぶか」「この単語の意味は何か」「なるべく数式を使わない」「具体例を多く」を徹底し、読者に伝わるよう根気強く説明してくれます。

「じっくり学べば絶対わかるよ」オーラが強い、オススメの1冊です。

(4)『クルーグマン教授の経済入門』クルーグマン

――「経済で注目すべき点」がハッキリわかる!

クルーグマンは、「新貿易理論と経済地理学」が評価され、2008年にノーベル経済学賞を受賞しました。彼は、「経済学のわかりやすい解説者」としても有名で、『クルーグマン教授の経済入門』はとても面白い本です。

彼自身によるとこの本は、「学問的な水準を保ちつつ、しかも専門家以外の一般読者にもわかるような、アメリカ経済についての短い本」です。原題は『期待しない時代』。この本が書かれた1990年代のアメリカは、経済的にはろくな実績を上げていないにもかかわらず、それをどうにかしろという政治的圧力もない停滞の時代でした。

クルーグマンは、なぜアメリカがそんなダメダメな経済状況への改善努力をしないのかについて、専門家目線ながら非常にくだけた文体で、僕らに説明してくれています。

この本のいいところは、読者に経済の着眼点をはっきりさせてくれている点。メチャクチャわかりやすく「経済で注目すべき点」と「注目しがちだが実は全然重要じゃない点」が書かれています。

しかも全然回りくどくなく、テンポがいい。彼によると経済書には「ギリシャ文字式(理論的で数学多用。内容が優れていても、ちんぷんかんぷん)」「ジェットコースター式(最新のニュースや統計データにばかり気を取られた、絶望的に退屈な本)」「空港式(空港の本屋によくあるベストセラー系。たいがいは大惨事を予言している)」の3パターンがありますが、この本はそのどれにもあてはまりません。

つまり彼は、従来なかった「中身があって気楽に読める本」を、僕らに提供してくれたのです。「どこが大事なのか」という僕らが一番知りたいことを、誰にでもわかるように書いてくれています。

(5)『隷属なき道』ブレグマン

――今注目の「ベーシックインカム」とは?

スマホにタブレットにハイブリッドカー……。物質的には豊かになったのに、何で気分はこんなに詰んでいるんだろう?――それは金がなくなることが怖いからだ!

労働時間を減らし、生活を豊かにする

生きるためにはお金がいるし、金を得るには職が必要です。でも今は、世に職業はそんなに必要がありません。生産能力はあり余っているし、技術革新だってめざましい。はっきり言って僕らの労働時間を半分以下に減らしたところで、モノが足りなくなったりしないのです。

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『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

そう、今日の生産活動の大半は「必需品を生み出すための生産」ではなく「雇用を維持するための生産」だとブレグマンは言います。

こんな不毛なことはもうやめよう。人々の労働時間を大幅に減らして、かわりに「ベーシックインカム制度」を導入すればいい。ベーシックインカムとは「すべての人に必要最小限の所得を無条件で保障」する制度で、昨今欧州で実験的に導入する国が出始めています。昨今ニュースでもとりあげられることが多いテーマです。

もう福祉も長時間労働もいらない。必要なのはベーシックインカムだ。お金を直接もらえる保障、これに勝る処方箋はない。詰んだ気分を払拭して、生活を真に豊かにしよう。これがブレグマンの訴える「隷従なき道」です。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

世代を超えて伝わる格差を放置している現実

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提供元:教養として読むべき「経済学の名著」ベスト5 |東洋経済オンライン

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