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2018.07.31

気象庁の言う温度より微妙に暑く感じるワケ|自分や子どもの身を守るには?


圧倒的な暑さの下では、もはや精神論は通用しない(写真:Flatpit / PIXTA)

圧倒的な暑さの下では、もはや精神論は通用しない(写真:Flatpit / PIXTA)

今年の夏は記録的な暑さですね。7月23日には、埼玉県熊谷市で41.1℃という国内最高気温を5年ぶりに更新。東京都の青梅でも40.8℃を観測しました。23日がこれほどの暑さになったのは、地球温暖化やヒートアイランド現象といった近年の気温上昇要因に加え、フェーン現象も発生したからだと考えられています。

毎年のように話題になる熊谷の気温ですが、都心よりも暑くなるのには大きく2つの原因があるようです。1つは、東京湾からの海風が、都心部の熱い空気を埼玉県に運ぶから。そしてもう1つは、都心の空気がヒートアイランド現象で暖められて上昇し、その上昇した空気がちょうど埼玉県の内部へ下降するからです。

どこで観測するかで気温は変わる

さて、記録的な猛暑になった7月23日の13時過ぎには、私も都内を歩いていました。持ち歩いている温度計を見たところ、「40℃」と表示されていて卒倒しそうになったのですが、この日の13:30の東京のアメダスの観測値は38.5℃でした。私が持っていた温度計の観測値とは違いますよね。これはなぜなのでしょうか。

その理由は、観測の方法が違うからです。

まず、気象庁では、観測にはあらかじめ検定に合格して観測精度が維持されている、決まった仕様の気象測器を使用することになっています。しかし、私の持っていた温度計は、気象庁の定める検定に合格するようなしっかりとしたつくりのものではありません。なので、どうしても気象庁ほど精度のよい観測は行えません。

また、気象庁では気温の観測方法も厳密に決まっています。気象庁のホームページには、気温の観測方法について、このような記載があります。

「風通しや日当たりの良い場所で、電気式温度計を用いて、芝生の上1.5mの位置で観測することを標準としています。また、電気式温度計は、直射日光に当たらないように、通風筒の中に格納しています」

さて、下記の写真は気象庁のアメダスで使用されている気温の観測機器です。気温の観測と聞くと百葉箱をイメージするかもしれませんが、今は写真のような形をしています。

昔の「百葉箱」とはずいぶん違う(写真:気象庁ホームページ)

昔の「百葉箱」とはずいぶん違う(写真:気象庁ホームページ)

写真に写っている通風筒の上部に電動のファンがあり、筒の下からつねに外気を取り入れて、気温を計測しているのです。さらに、東京のアメダスは、北の丸公園の中にあります。緑に囲まれた公園の中で観測を行っているということです。

ここまで書くと、「なんだ、自分たちの置かれている環境とは全然違うじゃないか」と思いませんか? だって、街中を歩くときはアスファルトの上ですし、日なたを歩くことだってあります。風は吹いていないかもしれませんし、通気性のよい服を着ているとも限りません。

事実、7月23日の午後は、私自身は日なたのアスファルトの上を歩いていました。そう考えると、気象庁の観測値ほど精度はよくなかったとはいえ、案外体感温度に近い値が、私の持ち歩く温度計に表示されていたのかもしれません。

車内はたった15分で「危険」レベルに

さて、子どもの場合はさらに過酷な環境に置かれています。人間の大人よりも身長が低い分地面と近いため、アスファルトの照り返しをより強く受けることになるからです。大人の感覚で「まだ我慢できる」と思っていたとしても、子どもにとっては我慢できない暑さになっている可能性が高いです。しかも子どもは大人に上手に症状を伝えることができないので、気づいたら手遅れになることが多いのです。

暑さといえば、車の中も要注意です。ガラスの窓から車内に注ぎ込んだ日光が車内を温め、温まった空気がこもってしまうため、車内の気温は大幅に上昇します。要するに温室効果です。

JAF(日本自動車連盟)の行ったユーザーテストでは、晴れて気温が35℃の日に、エアコンで車内の室温を25℃にしたあと、エアコンを切ってからの車内温度の上昇具合を測定したところ、1時間で車内温度が50℃を超えるという結果が出ました。しかも、エアコン停止からたった15分で熱中症の「暑さ指数(後述)」が「危険」レベルに到達したのです。

子どもを車内に残したまま、親がパチンコなどに熱中し、車内の子どもが熱中症で亡くなるケースがよく報道されますが、この結果を見ると、コンビニなどの駐車場に寝ている子どもを置いて、ちょっと買い物をするだけでも危険だということがよくわかります。

大切な命を失わないためにも、熱中症を避ける工夫が必要です。環境省の熱中症予防情報サイトには、人体の熱収支に与える影響の大きい湿度、日射などの周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた「暑さ指数」という指標を確認することができます。

1890年以降、気温は確実に上昇

暑さ指数として表示される温度は、純粋な気温以外の要素も加わっているため、気象庁の観測値とは違って一見低めの数字に見えます。しかし、「駐車場」「子ども」「体育館」など、シチュエーション別に暑さ指数が算出されているうえ、熱中症の危険度が「危険」「厳重警戒」「警戒」などと分類されているため、当日から2日後までの行動予定を判断しやすいのです。

暑さ指数(WBGT)の実況と予測(出典:環境省熱中症予防情報サイト)

暑さ指数(WBGT)の実況と予測(出典:環境省熱中症予防情報サイト)

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環境省熱中症予防情報サイト ※外部サイトに遷移します

また、このサイトには熱中症の予防方法や、熱中症になってしまった場合の応急処置などの情報も書かれていますので、目を通しておくことをお勧めします。

いまだに、「エアコンのつけっぱなしはぜいたくだ」「暑さに慣れることが強い体を作る」といった考えの下で無理な行動をした結果、熱中症で倒れる人が続出しています。確かに、昔はそれが通用したのかもしれません。しかし気象庁の「日本の年平均気温偏差」というデータを見ると、1890年以降の気温は確実に上昇傾向にあります。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉がありますが、「火もまた涼し」と感じる臓器や器官は、ゆでれば固まるタンパク質でできている事実を謙虚に受け止める必要があります。圧倒的な暑さの下では、もはや精神論は通用しないのです。特にイベントの主催者やスポーツなどの指導者は、暑さを侮らず、ときにはイベントやスポーツの練習などを中止にする勇気を持ってもらいたいと思います。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

それでも「教室にエアコン不要」と言う大人へ

東京の夏が「昔より断然暑い」決定的な裏づけ

「体温超え」が18歳未満の子に超危険なワケ

提供元:気象庁の言う温度より微妙に暑く感じるワケ|東洋経済オンライン

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