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2018.06.12

私たちは日々「錯覚」でモノを買い続けている|ムダ出費を誘う価格の錯覚「5つの典型」


価格のジャッジは錯覚に左右される(写真:sharaku1216/iStock)

価格のジャッジは錯覚に左右される(写真:sharaku1216/iStock)

おカネの価値は、伸び縮みする。たとえば、大人にとっての5000円と、小学1年生の5000円は同じ価値ではない。このように、モノの高い安いの判断は絶対値ではなく、環境や状況、比較する条件に応じて判断されているわけだ。

それゆえに、商品やサービスに付けられた価格をジャッジする際に、私たちは時々錯覚を起こし、買うべき値段でないものをうっかり買ってしまうことがある。そんな錯覚をわざと起こさせて、消費者におカネを払わせる手法は多い。財布のひもが緩みがちな時期を前に、この錯覚を起こすパターンの5つを整理してみた。

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錯覚を起こすパターン5つ

その1 最初に見たものが親的錯覚

買い物の最初に印象的な数字を見ると、それがまず頭に残る。人は高い安いを判断する根拠として何かしらのベンチマークを求めるため、最初に見たもの=数字を、なんとなく基準に据えてしまいがちだ。

高級品を扱うお店のショーウインドーに、20万円の値札が付いた商品が飾られているのを見て「さすがに手が出ないな」と思ったとしよう。しかし、ちょっと店の中をのぞいてみると、5万円の商品を見つけた。「なんて安いんだ、これはお買い得じゃないか」と、うっかり感じてしまった人は、まさに錯覚におちている。

5万円が安いか高いかは、それ自体の価値のジャッジではなく、先に見せられた20万円との比較によって判断されている。先に高額な価格を見せて、その金額からの変化により安く錯覚させる、いわゆる「50%オフ」商法も同じ。価格高めのものをお値打ちに見せる手法としては効果的だ。普段めったに行かない高級ブランド店に行くときは、このことをぜひ思い出してほしい。

その2 機内ショッピング的錯覚

飛行機に乗ると機内販売のカタログが置いてある。暇つぶしにページをめくっていくと、キャリーバッグや財布などが目に入る。価格は、まあまあ手ごろじゃないかと感じたとすれば、それはすでに錯覚ワールドに入り込んでいるかもしれない。

私たちは、どの商品がどんな場所で販売されているかでも、高い安いの判断を狂わされる。たとえば1袋500円の値段が付いたコーヒー豆でも、激安スーパーの棚にあると高く感じ、青山のカフェの棚に並んでいれば手ごろな価格に思える。モノの値段のジャッジが、モノ自体の価値よりもどこで売られているか、その“場”に左右されてしまうという例だ。

機内販売のカタログは、「今このとき、機上にいる特別なお客様に向けた商品です」というステージを作り出しているがために、掲載商品の価格が全体的に高額ゾーンでもさほど気にならない。

最近は国内線でもWi-Fiが使えるとはいえ、同じ商品をネットショッピングでの価格と比較して判断しようというツワモノは少ないだろう。全体的に価格帯が高めの場での買い物は、普段買うより高い値段のものに手が出やすい。

均一ショップの魔力

その3 100均的錯覚

錯覚によるうっかり買いは、価格帯が安いものでも起きる。その最たる例が、「均一価格買い」だ。何か1つ欲しいものがあって100円ショップに入ったところ、なぜかレジに並んでおカネを払ったときには1000円近くも買っていたことはないだろうか。

ついつい余計なものを買っているのは、この100均的錯覚によるものだ。「すべて100円です」と言われると、そのものの要不要よりも、100円であることに魅力を感じてしまう。人は、損や買い物の失敗を恐れるから、自分の選択で決して後悔したくないと思う。

そもそも買い物とは結構めんどくさい行為だ。手に取ったモノを吟味して、それは付いている価格に見合う価値があるのかないのか、これを買っても後悔しないか、明日になればもっとよい商品が見つかるのでは――そんな迷いを断ってくれるのが、「100円ならいいか」という免罪符だ。

「まあ、たとえ失敗してもいいか、100円だし」と心理的ハードルがぐんと下がるのだろう。個々の高い安いを考えることなく、気持ちよくカゴにどんどん放り込める。実際には、よそで買うと100円より安い商品も中にはあるだろうが、気にしない。考えるのがめんどくさいからだ。かくして、ついつい予想外の買い物をしてしまうことになる。均一ショップの魔力、おそるべし。

その4 割安買い的錯覚

価格の判断をする際に、人は先に基準を求める傾向があると先に書いたが、厄介なのは「割安」商品。大容量であったり、数が多かったり、あるいはセットになることで割安ですよとアピールされている。たしかに、1個当たり、100グラムあたりは割安に見え、その数字に私たちは飛びつきがちだが、それをまとめた形で一度に払う価格自体は決して安いものではない。

グラム単価が日頃より安い日があったとして、一度の買い物に、1パック2000円もの肉を買っていいのか? この量をムダにすることなく食べきれるのか? そっちのジャッジは案外スルーされてしまう。もし、使い切れずに捨てることにでもなれば、元は取れないのだが。

政府広報によると、日本国内における年間の食品廃棄量のうち、売れ残りや期限を超えた食品、食べ残しなど、本来食べられたはずの「食品ロス」は約632万トンで、うち家庭から捨てられているのが全体の約半数にあたる年間約302万トンだそうだ。さらには、家庭から出される生ごみの中には、手つかずの食品が2割もあるという。少なくとも、食品に関しての割安買いは、慎重にしたほうがいいのではないかと思う。

松竹梅のワナ

その5 だんご3兄弟的錯覚

「松竹梅のワナ」をご存じの方も多いだろう。定食屋のメニューに「梅」950円、「竹」1200円の2種類が並んでいたときには、ためらいなく梅を選んでいた人が、さらに「松」1800円が加わった途端、つい梅より高い「竹」を選んでしまう心理のことだ。

なぜか、われわれは「真ん中」がいいと思いがちだ。それにも、選択に失敗したくない心理が潜んでいて、高すぎるもの(=これだけの金額を払う価値があるのか?)や、安すぎるもの(=いちばん安いということは相当しょぼいのでは?)への不安があり、消去法的に最も無難な真ん中を選んでしまうのだという。

さらに、われわれは価格が高いほうがより高品質であろうという印象を抱いている。だから、最安のものよりは、最高なものにより近い価格にある、真ん中を選ぶのだという説もある。ちなみに、2015年にリリースされ大流行した「だんご3兄弟」の歌詞を改めてみると、串にささった真ん中の次男は「自分がいちばん」だと思っているらしい。

3つというのは比較するのにちょうどいいようだ。しかし、比較するのが価格だけでないパターンもある。

先日、筆者はデジカメを購入しようと家電量販店に行ったが、メーカー各社が似たような機能のカメラを出しており、かなり迷った。性能と、それに見合う価格をジャッジするのは至難の業だからだ。後日、『価格の心理学』(リー・コールドウェル著)という本を読んでいて、ある部分に目が留まった。いわく、人は条件(機能)が異なる別のメーカーの商品を比較する場合は、選択に迷う。その場合は、同じメーカーのやや機能が劣るものを、さらに一つ加えると、途端に選びやすくなるというのだ。

Aメーカーのカメラと、Bメーカーのカメラがあったとし、Bのほうが性能が優れているが、その分Aよりは値段が高い。値段的にはAが優位だが、どれほどの性能が必要かジャッジが難しいと悩む客には、さらにBメーカーの前年モデル(B´)を見せるというのがその手法。同じメーカーなので、BとB´の比較は容易だ。もちろんBは、前年モデルのB´よりは値段が高い。しかし、B´の価格と比較すると、最新機種のBの今の売価は妥当に思えてくるという錯覚だ(この本では、機能が劣ったB´のほうが定価が高い場合とあるが、日本の販売店でそれはありえないので筆者なりにアレンジしたとお断りしておく)。

筆者も結局、同じメーカーの、性能が劣る機種より、一段上の、やや高いデジカメを選んでしまった。どの例にしろ、選択肢が3つある場合は、どれかがおとりということか。

迷ったら即決しない

ここまで5つの例を挙げたが、価格のジャッジはいろんな錯覚に左右される。いちばんいいのは、自分の中にぶれない金額の基準を持つことだが、それができないときは、迷ったら即決しないことだろう。

さまざまな錯覚や雑音から一度離れ、頭を平常に戻してから価格の数字だけを考えてみる。価格を相対値から絶対値に戻すわけだ。100均ショップで買いすぎたり1200円の「竹」定食を選ぶくらいは実害は少ないが、高額商品を買うときには、ぜひいったん頭の数字をリセットすることをお勧めする。

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提供元:私たちは日々「錯覚」でモノを買い続けている|ムダ出費を誘う価格の錯覚「5つの典型」|東洋経済オンライン

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