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2018.05.28

AI時代を生き抜くための「勉強法」とは何か|弱点を突いて生き残れ!


この「AI時代」をどう生き抜けばいいのでしょうか(写真:Koji_Ishii / iStock)

この「AI時代」をどう生き抜けばいいのでしょうか(写真:Koji_Ishii / iStock)

ここ最近、AI(人工知能)がにわかに注目され、さらにはわれわれの仕事を奪う脅威として語られるようになっています。AIがディープラーニング(深層学習)によって、自ら学習するようになり、将棋や囲碁の世界で人間を凌駕し、注目を集めたことがきっかけでしょう。

実際、10年~20年後には現在の仕事の約半分がAI&ロボットによって置き換えられてしまうという予測結果が出ているほどです。この「AI時代」をわれわれはどのようにサバイブしていけばいいのでしょうか。

AIにも弱点がある

将棋や囲碁における活躍を見ると絶望的になるかもしれませんが、AIにも弱点があります。ベストセラー『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)で、新井紀子・国立情報学研究所教授は次のように書いています。

「AIの弱点は、万個教えられてようやく一を学ぶこと、応用が利かないこと、柔軟性がないこと、決められた(限定された)フレーム(枠組み)の中でしか計算処理できないことなどです」

逆に言うと、われわれがこうした弱点を突いて、強みにすればいいのです。「ですから、その反対の、一を聞いて十を知る能力や応用力、柔軟性、フレームに囚われない発想力などを備えていれば、恐るるに足らず、ということになります」(前掲書)。

では、どうすれば、この「一を聞いて十を知る能力」「応用力」などを身に付けることができるのでしょう? また、そもそも「一を聞いて十を知る能力」「応用力」とは何なのでしょうか。

「一を聞いて十を知る」というのは、孔子の弟子である子貢が同じく弟子の顔回の頭の良さを評した言葉ですが、簡単に言えば、一瞬にして「本質をつかむ力」と言えます。また、「応用力」も物事の「本質をつかむ力」と言えます。表面的なことや枝葉末節にとらわれないからこそ、さまざまな状況に応用できるのです。

この「本質をつかむ力」を具体的に言うと、「要は……」「つまり……」と言える力であり、「要約力」、さらには「抽象化力」と言い換えることができます。

「抽象化力」は、AIに負けないために身に付けるべきものであるのはもちろん、仕事において「デキる」人になるためにも必須です。というのも、脳を効率的に使い、思考力を高めるためには、「抽象化力」が欠かせないからです。

われわれの脳には「ワーキングメモリ(作業記憶)」と呼ばれる情報処理を行う領域があり、長期記憶などから情報や知識を呼び出して、ここで思考すると考えられています。ただし、ワーキングメモリには制約があります。容量が非常に小さいため、一度にたくさんの情報を呼び出すことができないのです。

そこで大事になるのが、情報を圧縮することです。「抽象化力」によって本質をつかみ、少ない情報で内容を表現することで、ワーキングメモリへの負荷を下げ、より高度な思考が素早くできるのです。

実際、仕事で「デキる」人は例外なく、「抽象化力」がすぐれています。
では、この「抽象化力」を伸ばすにはどうすればいいのでしょうか。

AI時代を生き抜くための「勉強法」とは?

それはズバリ「勉強」です。本を読む、資格の試験に挑戦するなどして、新たな知識を学び、それを記憶・理解し、さらには活用することです。

知識そのものが膨大な具体的経験を整理し、体系立て、「抽象化」したものです。そういった知識を学ぶこと自体が、「抽象化力」を鍛えることになります。

ただし、単に情報を得る、知識をそのまま覚えるだけの勉強では効果はありません。また、単に情報や知識を持っているだけであれば、インターネットやAIにはかないません。

「抽象化力」を鍛える「勉強法」とは、知識を学ぶ際に、抽象から具体へ、具体から抽象へ、往復しながら整理し、体系づけて記憶・理解することです。

「要するにこれはどういうことだろう?」と自分につねに問いかけつつ、抽象化する、「たとえばこれはどういうことだろう?」と問いかけて、具体化することです。

こうした勉強をすることによって、使える知識が身に付けられるほか、「抽象化力」が鍛えられ、仕事が「デキる」人になります。AIにできないことができるため、「AI時代」でも生き残れるのです。

ただ、「勉強に使えるおカネもないし、する時間もない」という人がいるかもしれません。でも心配はいりません。もしあなたが「おカネがない」「時間がない」状況であっても、効果的な勉強はできます。というのも、私自身がそうだったからです。

「おカネがない」から効果的な勉強ができた!

30年以上前になりますが、私の高校時代、父親がガンで入院していたため、家計はかなり苦しい状況でした。当時通っていた私立高校は奨学金を借りることでなんとかやめないですみましたが、塾や予備校に通うことはもちろん、受験のための参考書や問題集を買うおカネにも不自由をしていました。

ただ私の場合、この「おカネがない」ことが、効果的な勉強を可能にしてくれたのです。勉強する対象をあれこれと広げることなく、数少ない教材を徹底的にくり返すことで、情報や知識を徹底的に使いこなせるようになったのです。

たとえば、「世界史」の勉強は、学校で使っていた教科書を日々くり返し読むことが中心でした。目指していた東大文科Ⅱ類には論述試験があったので、その対策として通信添削を受けていたのですが、答案も百科事典を補助に使う以外はすべて教科書をもとに書いていました。

その結果、ほぼ毎日、教科書を読んでいたため、単に知っているとか、覚えているとかのレベルではなく、そこに書かれている知識を本当に自分の道具として使いこなせるレベルにまで記憶・理解できるようになりました。

本文を読みながらそれが全体のどの部分なのか意識できる、見出しを見ただけで本文が思い出せる。つまり、自由に抽象と具体を往復できるようになっていたのです。

塾や予備校に行ったり、たくさん参考書や問題集を買ったりして、手を広げていたとしたら、そこまでひとつの教材を読み込むことはなく、ただ知っているとか、覚えているとかのレベルにとどまっていたでしょう。

「おカネがない」という制約が、少ない教材を徹底的にくり返すことにつながり、結果的に抽象と具体をつねに往復し、「抽象化力」を鍛えることになったのです。

また、当時は「時間がない」状況でもありました。通信添削を受ける費用や模擬試験、さらには入学試験の受験料を稼ぐために、朝刊の新聞配達をしており、夜遅くまで勉強することはできませんでした。

また、母が家計を助けるために内職をしており、その手伝いや家事も分担していたので、勉強時間に割ける時間はあまりありませんでした。ただ、この「時間がない」状況さえ効果的な勉強を可能にしてくれたのです。

私は新聞配達をしているときや、自転車で通学している途中なども、勉強した内容をせっせと「思い出す」ようにしていました。

この「思い出す」という行為が、実は勉強した知識について抽象化・具体化することを促し、「抽象化力」を鍛えてくれたのです。そして、この行為を促したのは、「時間がない」という状況だったのです。

ただ勉強するだけでなく、「勉強法」も勉強する

ここまで、AIに負けないための力として「抽象化力」の重要性、そして、「おカネがない」「時間がない」状況でもできる、「抽象化力」を鍛える「勉強法」をお伝えしてきました。

AIはディープラーニングという「勉強法」で飛躍的に能力を伸ばしましたが、AI自体が「勉強法」そのものを見直すことはまだ無理でしょう。これができるのは人間だけです。

AI時代を生き抜くためには、「抽象化力」を鍛えるための「勉強法」を自分なりに見直し、進化させていくことが重要なのです。そのためには、「勉強法」について学ぶことも大切です。

最近は認知科学の研究者によって書かれた本や、そこで実証された学習原則に基づいた本が増えており、大変参考になります。『ノルウェー出身のスーパーエリートが世界で学んで選び抜いた王道の勉強法』(オラヴ・シーヴェ著 片山奈緒美訳 TAC出版)もそのひとつです。

この本は、ノルウェーの平均的な中学生だったオラヴ・シーヴェ氏が、効果的な勉強法に興味を持ったことがきっかけで、高校から一気に成績を伸ばし、カリフォルニア大学バークレー校やオックスフォード大学に進学した経験をもとに書かれたものです。

しかも、さまざまな「勉強法」を研究したうえで、試験をはじめ勉強するうえで大事な法則、効果的なテクニックがまとめられています。ノルウェー教育・研究大臣の推薦と言いますから、日本で言えば、文部科学大臣推薦!となるでしょうか。

ちなみに、この本の中で、「学習にいちばん大事な法則」として、8つが挙げられているのですが、そのうちの2つが「反復する」と「暗唱する」。

これは、私が大学受験のときに期せずして行っていた、教科書を「くり返す」ことや「思い出す」ことそのものです。

AI時代を生き抜くためにも、勉強はもちろん、そのやり方である「勉強法」を見直して、より効果的なものにしていきましょう!

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『王道の勉強法』(クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

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提供元:AI時代を生き抜くための「勉強法」とは何か|弱点を突いて生き残れ!|東洋経済オンライン

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