2018.05.22
子どもが自動的に「本好き人間」になる仕掛け|10歳以上で読み聞かせが難しい子にも有効
読み聞かせが手遅れな子を本好きにする秘策を紹介します(写真:real444/iStock)
前回、わが子を本好きにする方法として、読み聞かせを紹介しました。
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でも、すでに子どもが大きくなっていて「今さら読み聞かせは無理」という場合も多いことと思います。そういうときは、もうあきらめるしかないのでしょうか? いえ、いえ、そんなことはありません。読み聞かせ以外にも効果的な方法がありますので、今回はそれを紹介いたします。
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子どもが好きな分野の本から入る
まず1つめは、子どもが好きな分野の本から入ることです。たとえばサッカーが好きで読書はあまりしないという子がいたら、サッカーに関する本がイチオシです。サッカーの歴史、サッカーの戦術、サッカーの練習方法、有名選手の伝記など、子ども向けの本がたくさん出ています。サッカー少年が活躍する物語もたくさん出ています。ネットで検索すれば、すぐ見つかります。もちろん、文字の本が無理なら漫画でもいいでしょう。
いわゆる本ではありませんが、専門雑誌もお薦めです。たとえばサッカーが好きな子ならサッカーの専門雑誌です。雑誌はビジュアルが充実していますので、本が苦手な子でも手に取りやすいという長所があります。また、雑誌はつい読みたくなるようなタイトルや見出しを上手につけてありますので、それに釣られて読み始める可能性が高いといえます。
中身もタイムリーなものが多いというのも長所です。話題になっている試合の分析と解説、有名選手のインタビューや名言録、有名監督のサクセスストーリー、新しい戦術の解説など、サッカーが好きな子なら興味深く読めるはずです。
専門雑誌に出ている情報や知識は、量的にも質的にもテレビなどよりはるかに優れているので、大いに勉強になります。サッカーが好きな子なら、プロの試合をよくテレビで見ると思いますが、ただ漫然と見ているだけの子も多いと思います。親がこういう雑誌を与えてあげれば、できたら一緒に読んで内容について会話をしたりにすれば、大好きなサッカーについてどんどん深掘りすることができます。
情報や知識のインプットが増えれば、それをもとに自分で考える力もつきます。すると、プロの試合をテレビで見ても、より深い見方できるようになります。これらはすべてサッカーについての頭がよくなるということであり、実際の練習やパフォーマンスにも必ずよい影響が出ます。
何のスポーツでも、あるいは習い事でもそうですが、体だけでやるわけではなく頭を使ってやることがとても大事です。ですから、その分野について頭で深める部分が必要なのです。そして、好きな分野の本や雑誌で情報や知識を得たり、それをもとに自分が考えたことなどがあったら、それを「自分ノート」に書くようにすればさらに効果倍増です。
道を究めた人は「自分ノート」に何を書いたか ※外部サイトに遷移します
好きな分野の本や雑誌を読んでいるうちに、漢字も読めるようになり、使える語彙も増え、読解力もつきます。文字、文章、活字などに対する抵抗感もなくなりますし、これらすべてが読書一般の基礎力になります。
さらに、これが大事なのですが、子どもが好きな分野の本や雑誌を読んでいるときに、「あなたは本が好きだね」と言ってあげてください。すると、子どもは「自分は本が好きなんだ」と思えるようになります。
人生は思い込みで決まります。「自分は本とか嫌いだし……」という思い込みがあると、当然ながら本を手に取る機会は減ります。「自分は本が好きなんだ」という思い込みがあれば、本を手に取る機会は増えます。
毎日決めた時間に読書をする
2つめは読書タイムの設定です。つまり、毎日決めた時間に読書をすると決めるのです。子どもだけの読書タイムでもいいですが、圧倒的に大きな効果があるのは家族みんなが同じ時間に読書する「家族読書タイム」です。お父さんもお母さんも、おじいさんもおばあさんも、この時間は本を読みます。こういう状態なら、子どもも自然に読むようになりますし、気も散りません。この時間は読書をするのが当たり前、という雰囲気にすることが大事です。
教師だったとき、私のクラスでは一年中、毎日、朝8時から8時20分まで読書タイムと決めていました。毎日やっていると、生活リズムとして読書タイムが定着します。すると、「読書タイムだよ」などと言わなくても本を読み始めるようになります。実際、私のクラスでも8時にはみんな本を読み始めていました。中には10分も前から読み始める子もいました。毎日読んでいると続きを読みたくなるからです。
そして、読書タイム以外にも、子どもたちは、休み時間、給食を食べ終わった後、体育の着替えが終わった後など、ちょっとした隙間時間にも本を読むようになりました。先ほども言ったように、続きを読みたくなるからです。ですから、読書タイムは20分間でも、それがきっかけになって実際には毎日もっと長い時間読むようになったのです。これは自慢ですが、私のクラスの子どもたちが図書室で借りる本の冊数はつねに学校でいちばん多かったです。このようなわけで、みなさんの家庭においても、たとえ10分でもいいので、毎日同じ時間帯に読書タイムを取ることをお薦めします。
それは子どもだけでなく、大人であるみなさん自身が読書習慣を維持するためにも役立ちます。今の世の中、仕事においてもプライベートにおいても、アクティブかつ創造的に生きていくためには、私たち大人も毎日学び続ける必要があります。もちろん、ネットやスマホを通してもいろいろな情報や知識を得ることはできますが、やはりそれらは断片的かつ表層的なものが多いというのが現実ではないでしょうか。やはり、まとまった情報を得たり、1つのテーマについて深く極めたりするためには、本を読むことは欠かせないはずです。もう少し時代が進めば違ってくるかもしれませんが、現状ではやはり読書は欠かせないと思います。
もちろん、みなさんの中には、「働き盛りで忙しくて読書どころではない」「子どもの世話や家事もあって読書どころではない」という人も多いと思います。でも、そういう人にこそ、読書タイムをお薦めしたいと思います。1日10分の読書でも、1カ月で300分、つまり5時間になります。1年では3650分、つまり60時間です。読書タイムをきっかけに、ほかの隙間時間にも読むようになれば、さらに読書時間は増えます。まったくゼロの状態に比べれば大きな違いです。そして、「塵も積もれば山となる」ということわざのとおり、やがて大きな成果に結び付きます。
親がいくら上手に誘っても、子どもが読書タイムに乗ってこないということもあるでしょう。そういうときは、せめて親だけでも読書タイムを取ってください。もちろん親自身のためでもありますが、親が読書をしている姿を見ることで、子どもが読書に興味を持つということも大いにありうることだからです。というのも、身近な親の姿は、つねに子どもにとって模倣するためのモデルになっているからです。これをモデリング効果といいます。
子ども用の新聞はとっておきの「楽勉」
3つめは、子ども用の新聞から入ることです。小学生用としては、「○○小学生新聞」や「○○KODOMO新聞」という名前で日刊で出ています。漢字はすべて振り仮名つきです。中高生用としては、週刊の「○○中高生新聞」などが出ています。
なんといってもすばらしいのは、宅配されるということです。特に小学生新聞の場合は、毎朝新しい新聞が届きます。子どもは新しいものが大好きで、本能的に開いてみたくなります。新しいから読みたくなるのです。そして、毎日来るから続けられるのです。毎日1つの記事でも読めば、ここでもまた塵が積もって山となります。見出しやリードの部分をざっと読むだけでも、毎日続ければ大きな違いになってきます。
また、新聞のよいところは、ニュースだけでなくいろいろな分野の記事が出ていることです。政治、経済、環境、科学、スポーツ、動物、昆虫、料理、趣味、芸能、クイズ、知的パズル、受験模擬テスト、勉強法、マンガなど、ありとあらゆる分野の記事です。ですから、子どもが興味を持てる記事が出ている可能性が高いといえます。
また、はじめは興味がない記事だったけど、読んでみたら面白かったということも起こります。それがきっかけで新しい分野にも興味が持てるようになり、そういうことが積み重なって多方面における知的好奇心が育つ可能性も高いといえます。新聞を読んでいるうちに、知的好奇心が育ち、漢字も読めるようになり、使える語彙も増え、読解力もつきます。文字、文章、活字などに対する抵抗感もなくなりますし、これらすべてが読書一般の基礎力になります。
私は、この小学生新聞と中高生新聞こそ、子どもたちの知力、学力、感性を総合的に伸ばすとっておきの楽勉ではないかと思います。というのも、以前、次のような話を読んだことがあるからです。
明治維新の後に、日本は急速な文明開化と近代化を果たすことができましたが、そのとき新聞の宅配制度が大きな役割を果たしたという話です。その頃の新聞は、漢字に振り仮名が振ってありました。学校という制度がまだ十分でなかった時代にあって、人々は毎日振り仮名付きの新聞を読むことで、漢字が読めるようになり、いろいろな知識も身に付けていきました。それが、急速な文明開化と近代化の礎になったのです。もし新聞の宅配制度がなかったら、そのようにはいかなかったかもしれないのです。小学生新聞と中高生新聞で子どもの文明開化をしてあげてください。
以上、読み聞かせが手遅れな子を本好きにする秘策を3つ紹介いたしました。ぜひ、実行してみてください。
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提供元:子どもが自動的に「本好き人間」になる仕掛け|東洋経済オンライン