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2021.07.05

禁煙は3日目がカギ|禁煙を続ける3つのコツ


「禁煙を始めても挫折してしまう」という人は少なくないでしょう。東京衛生病院健康増進部の佐々木温子先生は、喫煙によるニコチン依存を治すには、我慢や無理を強いる方法は避け、成功率を高める方法をもって対処することが重要といいます。今回は、禁煙が難しい理由、禁煙成功率が高い方法や離脱症状への対処法、禁煙のメリットについて解説します。

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目次
ー禁煙ができない理由
ー禁煙の方法
ー禁煙を続けるための方法
ー喫煙したくなったときの対処法
ー離脱症状別の具体的な対処法
ー禁煙が心身に与えるメリット

禁煙ができない理由

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禁煙が難しいのはタバコに含まれるニコチンのためです。ニコチンには依存性があります。ここでは、ニコチンが心身に及ぼす影響について解説します。

ニコチンによる依存状態

ニコチンは依存性が強い物質で、使用を中止する困難度は「ヘロインやコカイン、アルコールなどと同等の難しさ」ともいわれます。

「ニコチンは体内に吸収されると、さまざまな作用をもたらしますが、そのひとつがドパミンという快楽物質による作用です。喫煙により放出されるドパミン量は大量で、脳はいつもドパミンにさらされることになるため、喫煙しないとドパミン欠乏状態におちいった脳がパニックを起こして離脱症状(強い喫煙欲求、不快感など)が現れます。これを解消するために喫煙せざるを得ず、ニコチンが補給されればたちまち離脱症状が解消されるので、それを繰り返すうちにタバコはリラックスさせてストレスを解消させるものだという思い込みを喫煙者にもたらします。喫煙者が信じているタバコのもたらすメリットとは、実は離脱症状の解消でしかない悪循環なのです」(佐々木先生)

「睡眠中は喫煙しないので、血中ニコチン濃度は下がっていき、起床時はニコチン欠乏状態になります。朝起きてから最初のタバコを吸うまでの時間が短ければ短いほど、また1日の喫煙本数が多ければ多いほど、ニコチンへの依存度が高いといえます」(佐々木先生)

ニコチンによる3つの依存

「ニコチン依存は、心理的、身体的、習慣という3つの依存が強く結びついた“悪の大三角形”の構図を作り出します」(佐々木先生)

以下で、ニコチンによる「3つの依存」について説明します。

心理的依存

喫煙が常習化すると、「タバコ=リラックスできる」「タバコ=ストレス解消」など、タバコが心身への効用をもったものであるかような錯覚を覚えてしまいます。

「心理的依存とは、『仲間とのコミュニケーションだ』『タバコ以外にも体に悪いものはある』など、次々とやめない理由を正当化する状態です」(佐々木先生)

身体的依存

禁煙すると身体は「ニコチン不足のイレギュラーな状態」と認識し、脳の活動や身体に不調をきたします。

「代表的な症状に“いらいらする””不安””気分が沈む”“頭が働かない”“眠い”などが挙げられます。これらの離脱症状は大変に不快な症状ですが、本来はニコチンのない状態が正常なのですから、禁煙はニコチンなしの正常な状態にもどるための一時的な期間ととらえましょう。離脱症状は禁煙を続けると次第になくなります」(佐々木先生)

習慣による依存

喫煙は、食後の一服、休憩の一服など、生活パターンに組み込まれていくことで習慣化します。

「禁煙すると、手持ち無沙汰と感じたり、口さみしいと感じたりすることが多々あります。これは日常の生活から喫煙を切り離すことが難しくなってしまったためです」(佐々木先生)

禁煙の方法

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「離脱症状を抑えて禁煙を成功させる一番簡単な方法は禁煙外来受診です」と佐々木先生はいいます。

禁煙外来による禁煙治療

「タバコの煙には5300種類以上の化学物質が含まれており、そのうち約200種類が有害物質、約70種類が発がん性物質です。これらによってタバコは、がん、呼吸器疾患、循環器疾患をはじめとした全身の病気をもたらします。喫煙者もタバコに害があることは知っているでしょう。にもかかわらず喫煙をやめられないのがニコチン依存症という病気ですから、迷わず禁煙外来を受診してください。素直な気持ちで来診に来られる方ほど、禁煙の成功率は高い傾向にあるようです」(佐々木先生)

以下で、禁煙治療の方法や処方薬などを解説します。

禁煙治療の期間と方法

禁煙治療の期間は初診から3ヵ月間です。初診を含めて5回診察し、その間に禁煙補助薬(貼り薬あるいは飲み薬)が処方されます。

「禁煙外来に通い始めたら、自己判断で薬をやめたり通院を中断したりせず、最後までしっかり受診することで禁煙成功率は確実に高くなります」(佐々木先生)

処方薬について

保険適用のある処方薬は、『ニコチンパッチ』と『飲み薬(バレニクリン)』です。

●ニコチンパッチ

ニコチンを含んだ貼り薬で、1日1回、上腕や腹部、背中などに貼ります。皮膚からニコチンが吸収され、禁煙時の離脱症状を抑える効果があります。

●飲み薬(バレニクリン)

最初の週は服用しながらタバコを吸ってよいのですが、タバコを吸っても美味しいと感じにくくなるので、実質的な禁煙開始日の8日目に禁煙しやすくなります。またバレニクリンの離脱症状を抑える作用によって禁煙の成功率が高まります。

禁煙外来以外での禁煙の進め方

禁煙補助薬を使うと禁煙成功率が高まることは証明されていますが、禁煙外来を受診する時間がない方は、市販の禁煙補助薬を使って禁煙にチャレンジすることもできます。ただし飲み薬は市販されておらず、ニコチンパッチも禁煙外来で通常最初に処方されるものよりニコチン含量が少ないパッチになります。市販薬にはニコチンガムもあります。これらを使ってもうまくいかない場合は禁煙外来受診を検討してください。

それでも「まずは自力で頑張ってみる」と考える人もいますので、次にそのような方々へのアドバイスを紹介します。

期日を決めて、一気に禁煙実行

まず禁煙をする日を決めて、その日からはタバコを一切吸わないことが重要です。

「喫煙本数を減らすことから始めても構いませんが、本数を減らすと、離脱症状が出ないように深く吸うなど、吸い方が自動的に調節されます。したがって一定の本数以下に減らすことは難しく、10本程度まで減らしたあとは一気に禁煙しましょう。そうしないと、次の喫煙が待ち遠しくなり、心理的な依存度がましてしまう可能性があります。『この日から禁煙する』と決めたら、タバコはもちろん、灰皿やライターなどタバコ関連の用品を捨て、1本も吸わないように徹底することが重要です」(佐々木先生)

ニコチンが少ないタバコ(いわゆる軽いタバコ)に変えて禁煙を試みることも、ほとんど効果がないといいます。

「パッケージに表示されているニコチンやタールの数値は、一定の吸引条件のもとで機械に喫煙させた場合の摂取量です。いわゆる軽いタバコはフィルターの穴の数を多くするなどして摂取量が少なく記載されることになるわけですが、タバコ自体は普通のタバコと大差ありません。喫煙者は離脱症状が出ないニコチン量が維持されるよう、深く吸ったり吸う本数を多くしたりしますので、パッケージの表示通りの摂取になりません。軽いタバコに変えることがタバコの害を少なくしたり、禁煙しやすくしたりすることにはつながらないのです」(佐々木先生)

離脱症状を知っておく

禁煙と離脱症状は切っても切れない関係です。禁煙をするからには、心身に不快な症状が現れることを知っておく必要があります。

「禁煙を始めて3日目になると、多くの人が離脱症状に苦しめられ挫折していきます。しかし、ここを乗り越えると“希望の4日目”が訪れて離脱症状が多少和らぐようになり、5日をすぎると禁煙の成功率は上がります。禁煙後も離脱症状は現れますが、その程度も頻度も減っていきます。あとで説明する離脱症状の特徴をあらかじめ知っておくことで対処方法を準備することができます」(佐々木先生)

禁煙を続けるための方法

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禁煙を続けるためには周囲のサポートを得ること、喫煙に結びつく行動や環境を避けること、達成感を得ることが有効だと佐々木先生はいいます。

ここでは、禁煙を続けるための具体的な方法について解説します。

禁煙を「宣言」する

禁煙することを周囲に言いたくない、という人もいますが、一般的には禁煙宣言が勧められています。

「禁煙宣言は自分の決心を強くし、周囲に宣言することで逃げ道をなくします。また、『禁煙してイライラするかもしれないけど協力してね』『自分が吸いたいって言ってもタバコを勧めないでね』なども伝え、周囲に協力を求めるとよいでしょう。宣言によってタバコを吸いにくい環境を作ることで、禁煙の成功率が高まります」(佐々木先生)

喫煙と結びつく「行動」をやめる

禁煙を成功させるためには、「コーヒー」「パチンコ」「飲酒」など、それまでタバコを吸うときに一緒にとっていた行動を見直しましょう。

「コーヒーや飲酒はタバコとの結びつきが強いので、禁煙が成功するまでは控えるのが無難です。これらの店に行かねばならない場合は『禁煙のお店』を選びましょう。」(佐々木先生)

吸いやすい「人間関係や環境」に気をつける

自分の行動にくわえ、「タバコを吸いやすい環境」にならないように注意を払うことも重要です。

「周りに喫煙者がいると喫煙の危険性が非常に高まります。喫煙の誘惑に負けたり、喫煙を勧められたり、周囲に気遣って自分から吸ったりなどしがちです。どうしても喫煙者と同席せねばならない時は非喫煙者に囲まれる席に座る、など工夫しましょう。タバコを勧められたときに断る練習をしておくのも禁煙の訓練の一つです」(佐々木先生)

禁煙「日誌」をつける

「禁煙を始める人に実践してほしいのが、禁煙カレンダーや禁煙日誌です。吸わなかった日にマルをつけましょう。離脱症状の頻度、程度やその日の気分を書き添えるのもおすすめです。日が経つにつれて、吸わなかった『マル』が増え、離脱症状出現が減る様子を見ると、達成感や禁煙継続意欲を得ることができるでしょう」(佐々木先生)

喫煙したくなったときの対処法

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タバコを吸わない環境を整え、禁煙行動を心がけていたとしても、「1本だけ」とタバコに手を伸ばしたくなることがあります。そのようなときにタバコを遠ざける具体的な対処法を紹介します。

吸いたくなったら「代わりの行動」をとる

タバコを吸う習慣が身についてしまっていると、いざ禁煙したときに手持ちぶさたになってしまいます。そんなときは、タバコの代わりになる、息抜きや別の行動をとるようにしましょう。

「おすすめは深呼吸です。タバコを吸うときは、息をスーッと吸ってハーッと深く吐きますが、これはまさに深呼吸と同じ行動です。タバコがなくても十分にリラックスできますし、息抜きにもなるはずです。また、タバコを吸いたくなったら、水、特に冷たい水を飲むのもおすすめです」(佐々木先生)

「いまは吸わない」と時間稼ぎをする

「吸わないことを積み重ねていきましょう。『一生吸わない!』と考えると余計に吸いたくなります。『とりあえずこの1分間は吸わない』『午前中は吸わない』、など時間稼ぎを繰り返していくことで、禁煙が続きます」(佐々木先生)

離脱症状別の具体的な対処法

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ニコチンはドパミンを大量に放出するだけなく、神経から分泌される他の物質にも影響を与えます。このため禁煙によって急にニコチンが不足すると、眠気や集中力の低下、イライラ感をはじめとしたさまざまな離脱症状が現れます。禁煙を始めてから3日間ほどの最も辛い時期を乗り越えても、しばらくは以下のような離脱症状が現れるでしょう。ここでは、代表的な離脱症状とその対処法を紹介します。

イライラ感

発症時期:禁煙から2〜3週間以内

対処法:「体を動かす」「注意を別なことに向ける」「気分を変える」ことが有効です。お風呂に入る、音楽を聴くなど、自分に合った気分転換の方法を実践しましょう。職場の場合は、深呼吸をする、冷たい水を飲む、体を動かす、なども効果的です。

頭痛

発症時期:禁煙から7日以内

対処法:症状が強い場合は、無理せず頭痛薬を服用して対応しましょう。

眠気や集中力の低下

発症時期:禁煙から2〜3週間以内

対処法:禁煙を始めて2〜3週間は「集中できないのが当たり前」と割り切りましょう。夜更かし、睡眠不足にならないようにし、仮眠時間がとれるようであれば15〜20分程度の仮眠をとるとよいでしょう。

食欲の増加

発症時期:禁煙から数週間以内

対処法:食欲が増すのは自然なことで、最初はあまり気にせず禁煙に専念してください。1~2週間たって禁煙が落ち着いて、その時に体重が増えていたら食事に気をつけ、運動をするようにしてください。そうしないと体重がどんどん増え、そのために再度喫煙してしまうという結果におちいる可能性もあります。食事は、朝昼晩規則正しい時間に食べ、野菜をたくさん食べましょう。身体を動かすことも大切で、これまで喫煙に使っていた時間を運動に費やしましょう。

口さみしさが増す

発症時期:禁煙から数週間以内

対処法:ここでも深呼吸と冷たい水が有効ですが、噛みごたえのある、糖分の少ないもの(糖分の少ないガム、干し昆布など)で口さみしさをまぎらわせることもできます。

睡眠障害

発症時期:禁煙から7日以内

対処法:カフェインが入ったものを夕方以降とらないようにし、日中に軽い運動を心がけて身体にほどよい疲労感を与える、38~40℃のぬるめのお風呂に入って心身をリラックスさせ、質のよい睡眠につながる行動をしましょう。「寝付けない」「睡眠が浅くなる」などが続く場合は睡眠導入剤を使うこともあります。

禁煙が心身に与えるメリット

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禁煙を続けることで、徐々に以下のようなメリットが心身に生じるようになります。

病気のリスクが下がる

禁煙は、心臓や肺機能の回復につながり、病気のリスクを軽減します。

「禁煙前の最後のタバコを吸い終わった直後から、身体は、ニコチン、一酸化炭素やタールなどによるダメージから回復しようと働き始めています。禁煙により冠動脈疾患や脳卒中、肺がんなどの病気のリスクも低下していきます」(佐々木先生)

禁煙開始から身体に起こる変化と改善される病気のリスクは以下の通りです。

<禁煙直後からはじまる身体の変化>

20分後:血圧や脈拍が正常化する
2時間後:血液中のニコチン濃度が低下する
6時間後:離脱症状が出始める、タバコを吸いたい欲求が高まる
12時間後:血液中の一酸化炭素が正常な数値になる
2~3日後:離脱症状がピークになり、眠気やイライラが強まる
1週間後:肺の中の痰が咳とともに出始める
2~3週間後:心機能や肺機能が回復する
1~9ヶ月後:咳・息切れ・疲れやすさが改善される
1年後:高くなっていた冠動脈疾患のリスクが半減する
5年後:脳卒中のリスクが非喫煙者と同じレベルになる
7年後:白内障のリスクが非喫煙者と同じレベルになる
10年:肺がん死亡率が喫煙者の半分になる、口腔・喉頭・食道・膵臓・膀胱・子宮頸がんになるリスクが低下する
15年:冠動脈疾患のリスクが非喫煙者と同じレベルになる

自分も周囲も気持ちよく過ごせるようになる

禁煙後しばらくは離脱症状である日中の眠気などで生活リズムに支障をきたすこともありますが、それも次第になくなり、生活リズムが正常化し睡眠の質も向上します。また、起床時のニコチン欠乏状態もなくなりますので、朝の目覚めが爽やかになるでしょう。

「周囲の人に対しての受動喫煙による健康被害がなくなるだけでなく、衣服が臭くなくなる、喫煙所を探す必要もなくなるなど、これまで喫煙に振り回されてきた状況から解放され、ストレスにも強くなります」(佐々木先生)

お金が貯まる

禁煙すると、それまでタバコに使っていたお金が、そのまま貯金などに還元できます。

「例えば440円のタバコを1日1箱吸っていた場合、1ヵ月で約13,000円、これは家族でちょっとした外食ができる金額です。1年なら約16万円、5年なら約80万円も貯まります。タバコをやめることで、貯金はもちろん、ちょっとした贅沢や旅行ができると思えば、禁煙はもっと楽しいものになるでしょう」(佐々木先生)

photo:Getty Images


※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。

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提供元:禁煙は3日目がカギ|禁煙を続ける3つのコツ|フミナーズ

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