2018.04.11
私がテレビの「ババ抜き」対決で負けない理由|メンタリストDaiGoが明かす不安を除く方法
不安心理を突くと人は動揺して自滅します(写真:Satoshi KOHNO / PIXTA)
「ババ抜き対決」で連戦連勝するのには理由があった
「そんなに簡単な配置でいいんですか?」
お互いにジョーカーを含む、5枚のトランプのカードを目の前に並べ、先攻後攻で1枚ずつ引いていく。最後までジョーカーが手元に残った側が負け。テレビ番組などの「ババ抜き対決」で、私が相手に向けて最初に投げかける言葉です。
ゲームが始まり、相手が5枚の手札を並べたとき、このように挑発すると、相手の性格にもよりますが多くの人はイラッとして、怒りの感情が表に出ます。すると、無意識のうちに視線がジョーカーのほうに向かいます。
たとえば「ジョーカーを引いたらモノマネをする」という罰ゲームが設定されているとします。その場合には、「モノマネ、得意なネタがあるんですか?」など、相手が負ける前提で雑談を始めます。こちらの自信を暗に伝えることで、相手の心では不安が高まります。
「自分のジョーカーの位置はここでいいのか」「DaiGoはなぜあんなに自信満々なのか」「何か仕掛けがあるのか」「もし負けたらモノマネをするのは嫌だ」など、脳はネガティブなことに反応し、相手は勝手に不安の渦に追い込まれていきます。
その結果、目の前の勝負に集中できず、ミスをして自滅していくのです。
実は、私はメンタリストとしてテレビ番組でこうしたパフォーマンスをするときに、心理療法の「脱フュージョン」という手法を反対方向から活用しています。
そもそも、フュージョンとは「融合」「混ざり合う」といった意味です。たとえば、音楽のジャンルの1つであるフュージョンは、ジャズ、ロック、ラテンなどを融合させたジャンルです。
そのフュージョンに「脱」を付けた「脱フュージョン」は、混ざり合った私たちの感情からネガティブな考えを切り離し、否定的な感情に巻き込まれないようにする効果があります。
たとえば、資格試験のために週末は勉強しようと思っていたのに、ついつい寝過ごし、だらだら過ごしたうえ、「今日は出るかも」とパチンコに出かけてしまい、おカネが減ったうえ、夜になってしまった……。そんな1日には、「自分は最低な人間だ」と落ち込むものです。
すると、「自分は最低な人間だ」「どうせ勉強しても試験には受からない」「いっそのこと受験自体をやめたほうがいいんじゃないか」といったネガティブ思考の連鎖が始まります。
当然ですが、受験しなければ合格することもなく、成果という運からは遠ざかることになります。そこで役立つのが、脱フュージョンです。
ネガティブな考えを客観視できる
最も簡単なやり方は、ネガティブな考えに得点をつけて客観化していく「採点法」と呼ばれる方法です。
「自分は最低だ」という落胆した気持ちが、自殺を図るほどの落ち込みならば100、部屋から出たくないというくらいの感情ならば60といったふうに、そのネガティブ度合いに応じて採点していきます。
「いまの自分への落胆は、80点までひどくはないけど、50点くらいはあるな」と。このように考えるだけで、自分の感情について一歩引いて見ることができるようになります。
その結果、何が起こるかというと、不安にし、動揺させているネガティブな考えを切り離すことができ、感情の揺れが収まっていくのです。
私が「脱フュージョン」という手法を反対方向から活用するのは、人が怒りの感情に支配されていると、目の前のことにしか集中できなくなり、不安が高まると目の前のことにとらわれ、注意力が散漫になって物事を広く見ることができなくなるからです。
一方、テレビのババ抜き対決で私が相手から怒りや不安をあおるような仕掛けを受けたときは、その場で脱フュージョンを行います。テレビ的にも盛り上がるのは、思考を歌ってみる「歌唱法」です。
不安からイライラするなら、「いらーいらーすーるー♪」という具合です。非常にバカバカしいと思われるかもしれませんが、だからこそ、自分の感情を切り離すことができ、笑いとともに不安を遠ざけることができます。
「自分はダメな人間だ」と落ち込んでいるなら
もし、「自分はダメな人間だ」と落ち込んでいるなら、そのフレーズを好きなメロディに乗せて歌ってみましょう。小声でも、大声でもかまいません。すると、ネガティブな思考と一気に距離が取れるようになります。
ポイントは、不安やネガティブな思考を言葉として外に出すことです。不安を心の中に抱え込み考え続けていると、深刻な事態に陥っているような感覚がどんどん増していきます。
ところが、言葉にして外に出す、しかも歌にして歌うことで不安を客観視すると、人生を左右するほどの重大事ではないことに気づけるのです。
ちなみに、脱フュージョンにはほかにも、怒り、悲しみなどの感情を「怒りくん」「悲しみさん」というように擬人化して処理する「擬人法」、自分が駅のホームにいると仮定して走ってきた貨物列車に次々とネガティブな感情を放り込んで、遠ざけていくイメージを膨らませる「列車法」などといった手法もあります。
いずれの手法もコミカルな印象を受けるかもしれませんが、どれもボストン大学など、一流どころの心理学部の研究で効果的だと立証されている方法です。
それぞれにある種のバカバカしさが残されているのは、不安やネガティブな思考を笑いに変え、リラックスさせる狙いがあるのでしょう。
拙著『運は操れる』でも詳しく解説していますが、心理学的に、不安傾向が高い人、物事をネガティブに考える人は、自分の周りで起こっている物事の変化に気づきにくくなります。また、新たな出来事を受け入れにくくなることもわかっています。
つまり、不安を抱えていると、行動する回数が減り、新しい取り組みを試さなくなり、結果的に幸運にも気づかなくなるわけです。逆に、「やっても、どうせうまくいかない」「以前も失敗した」など、否定的な現象に目が向くようになります。
何かに挑戦するときも心理的に後ろ向きのまま取り掛かるので、失敗の可能性が高くなり、うまくいかなかったときには「ほら、思ったとおりだ」「自分はツイていないから」と不運を受け入れてしまうのです。
運を操る力は、誰もが備えた能力です。ところが、「運は向こうからやってくるもの」ととらえていると、いつまでも運を操る力は発揮されません。運を操る力を鍛えていくには、その人が持っている運のとらえ方を変える必要があるわけです。スピリチュアルな方法では、運は開けません。
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提供元:私がテレビの「ババ抜き」対決で負けない理由|東洋経済オンライン