2018.01.31
入社3年未満の「早期転職」はやっぱり危険だ│人脈を残すためにも円満な辞め方が正解
スムーズに転職するにはどうすればいいのか(写真:xiangtao / PIXTA)
一通り仕事を覚え、そろそろ会社のいい面・悪い面が見えてきた頃、膨らんでくるのが転職願望だ。転職を勧める車内広告やテレビCM、ネット広告などが、刺激になる場合もあれば、正月に地元で友人たちと久しぶりに情報交換をしたことが引き金になる場合もあるだろう。この時期は、年末のボーナスが支給されたあとなので、4月の入社を目指して転職活動がさかんに行われる時期でもある。
抜け出して面接、嘘をついて退社…周囲は大不満
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「転職するのはいいけど、会社を抜け出して黙って面接に行くのはやめてほしい。みんな心配して必死に探したのに。今、考えても腹が立つ」(通信・28歳)
また、「体調が悪いと言って辞めたにもかかわらず、実際は同業他社へ転職した人がいた。狭い世界だから、すぐにばれた。嘘をついてまで転職するのは印象が悪い」(広告・34歳)。
こんな事態を引き起こさないように、今回は、転職の基本とマナーについてまとめた。
「新入社員の方で、転職支援サービスの登録にいらっしゃる方は多いです。しかし、基本的に社会人経験が浅い人にはあまりおすすめしてしません」と話すのは、転職支援サービスを手がけるパソナキャリアカンパニーのキャリアアドバイザー・山崎将吾氏だ。
企業のニーズが高いのは入社3年を過ぎたあたりの若手社員。社会人としての知識も経験も身に付き、一人前に仕事をできるようになった頃だ。それに対して、3年未満の求人、中でも1年未満の求人は数が少ないという。仕事をするための基礎ができていないことに加え、嫌なことがあれば、すぐに辞めてしまうととらえられてしまう。
「退職理由はいろいろあると思いますが、ネガティブな理由ではなく、前向きな理由で考えてほしい。今の環境で辞めたいと思わせているカベを乗り越えられないか、最善を尽くしましょう。それが難しい場合、転職も1つの選択肢です。また、困難なカベにぶつかったとき、それをうまく乗り越えられれば、面接でその経験を話せるし、評価される材料にもなります」(山崎氏)。石の上にも3年の定説通りで、がっかりする人もいるかもしれないが、その間、やることは多い。
「まず、やってほしいのは自己分析。社歴が浅いのに辞めたいという方は、新卒の時に自己分析をしっかりしていない人、親の意見で就職先を決めた人、就活で疲れたからと内定1社目ですぐに入社を決めてしまったなどの理由が多いですね」(山崎氏)。
自分との相性を見極めずに入社したから、違和感を覚えたり、入社前のイメージとは違ったという問題が起こりやすい。
転職活動を始めたら、だいたい1~2カ月で決まる。転職活動中にゆったり自己分析などしている暇はない。自分に合わないからと、自己分析もしないまま転職活動を始めれば、仮に運よく転職先が見つかったとしても、また、「思った雰囲気と違った」ということになりかねない。
本当に退職しか手がないのか再検討を
「社会人となり、仕事をしてみてわかったことも沢山あるはず。自分が働く上で、何を大切にしたいのか。仕事の内容なのか、働き方なのか、給与なのか、人によっていろいろあります。まずは、そういう自分が大切にしている軸を整理してから、転職活動を始めましょう」(山崎氏)。
同時に辞めたい理由について、本当にどうにもならないことなのか、再検討してみることも必要だ。たとえば、残業の多さがネックになっている場合。まずは残業が常態化しているのか、繁閑期があるのかをチェックする。
もし繁閑期があれば、1年でならせば、平均的な残業時間になるのかもしれない。また、会社として働き方の改善に真剣に取り組んでいれば、1~2年がんばれば、辞めたい理由は消滅しているかもしれない。残業時間改善のために、自分で働きかけできることがないか行動してみましょう。さらに、仕事の内容や働き方に不満がある場合は、転職しなくても、他の部署に異動すれば解決するかもしれない。
「転職の面接では、『上司にかけあったのか?』『前職で改善の余地はなかったのか』『どれだけ手を尽くしても、解決策は転職しかなかったのか』といった転職の理由を聞かれます。そういうところはしっかり説明できるようにしておきましょう」(山崎氏)。
「英語が堪能だったから、受ける会社受ける会社、みんな合格。いい気になって外資系企業を渡り歩いていたら、40代で10社を超えていた。書類選考でけっこう落とされたのはそのためだったような気がする」(メーカー・45歳)。
転職すると、前の会社が妙によく思えてくるという人は少なくない。前の会社のやり方になれていたこともあるだろう。また、これまで働いていた企業と、企業規模や雰囲気が違う場合も、違和感を覚えるかもしれない。
前より合わない会社に入ってしまったと再び転職をし、また新たな違和感につきあたるという悪循環に陥る人は実に多い。結果、転職回数が10回とか20回となってしまう人が生まれてしまう。
「たとえ勤務したのが1~2週間でも、働いた会社はしっかりと履歴書に書きましょう」(山崎氏)。経歴はずっとついて回るので、社歴を増やす(=履歴書の職歴欄を増やす)のは慎重にすべきだろう。
「辞めてから仕事を探す」は最後の手段に
実際に転職活動をする時に心配なのは業務との兼ね合いだ。
「私たちが面談等を行うゴールデンタイムは19時から21時。一方、企業との面接は、夜の時間帯に調整してくれるケースと、日中に行うケースの両方あるので、調整には工夫が必要です」(山崎氏)。日中の場合は有休休暇を取るなど、周辺に迷惑をかけない工夫が必要だ。残業が多く、どうしても面接が受けられない人は、退職してから転職活動をせざるを得ないかもしれない。
「離職期間が2~3カ月くらいまでなら企業からの評価は下がりませんが、4カ月、半年と伸びていけば離職期間を懸念されるようになります。ですから離職後に転職活動をするのは最後の手段として残しておくべきでしょう」(山崎氏)。いったん仕事を辞めて、少し休んでから仕事を探そうと思う人も多いようだが、空白期間が長ければ長いほど、市場価値を下げるリスクもあることを考えておいた方がいいだろう。
「担当していた業務資料をすべてもっていってしまった。破棄してしまった人もいる。信じられない!」(外資系サービス:40歳)、「長期休暇を取った後、上司にも報告せず、人事だけに連絡してそのまま退職。感じが悪かった」(商社:32歳)、「デスク周りをかたづけずに辞めていったので、われわれが処分しなければならず不愉快だった」(金融・27歳)、「有休消化はいいけど、1カ月前に退職届を出して、そのまま、ほとんど会社にこない人がいた。引継ぎができず大迷惑でした」(輸送・34歳)。
残った人たちに迷惑をかけないためには、どうすればいいのだろうか。
「いよいよ転職先のメドが立ってきたら、引継ぎの準備をしましょう。転職が決まってから準備をするのでは遅いので、自分の仕事をリストにしたり、作業方法を文書化したり、次の人に気持ちよく業務をしてもらえるよう引き継ぎをしておくのもマナーです」(山崎氏)。
加えて、親や配偶者への相談もしておきたい。転職先が決まったのに大反対されたのでは、目も当てられない。反対しそうな家族がいれば、早めに説得を始めよう。
多くの会社が就業規則で「1カ月前に退職の意思表示をすること」と明示しているが、民法では2週間前に会社側に申し出をすれば、退職することができる。会社側も「退職は認められない」とすることはできない。ただ、円満に退職を目指すなら、やはり1カ月前には伝えておきたい。
もっといえば、コメントにもある通り、有休消化を考えると1カ月では引継ぎができない場合もあるし、担当替えなどを考えれば、退職が決まったら早めに会社に申し入れた方がいいだろう。
転職先から、「1日でも早く来て」と言われるかもしれないが、引き継げる日数についても考慮することが必要だろう。
そして、職場に対する退職の報告は、「そういうチャレンジをしたいという強い気持ちがあるなら仕方ないね。応援しよう」と思ってもらえるような伝え方が大切だ。
気持ちのいい辞め方をすれば、辞めた会社での人間関係はそのまま続いていくし、そこで築いた人脈は将来の財産にもなる。転職すればするほど人脈は広がっていく。退職した会社と取引している人、昔の仲間と起業した人などは、そうした過去の人脈を財産にできた人たちだ。それに対して、うしろめたい辞め方をした人は、会社に顔を出しづらく、せっかく築いてきた人間関係も切れてしまうだろう。
人脈を残すためにも「後味のいい去り方」を
また、信頼のおける人には、事前に話をしておくのもいいだろう。転職が決まってから、会社の辞令が出るまでの間に、内々に伝えておく。そうすれば退職する際の手続きや、送別会などで力になってくれることもあるし、退職後の交流で情報交換を続けることができる。「退職した人同志で同窓会」をしている人も多い。
最後に、「最終出社日の挨拶」も忘れてはいけない。小さな会社ならできるだけ全員に、そうでなければ一緒に仕事をしたことのある同僚や、関係部署に「お世話になりました」と挨拶にいく。外出や出張で不在なら別だが、反りが合わなかったり、遺恨があったりした人にも、最後のけじめとして例外なく挨拶しておきたい。
その際、お世話になった気持ちを表す意味で「お菓子」を配るケースが多い。そうすれば、話をするきっかけにもなるし、手持ち無沙汰になることもない。意外に送り出す方も、一言お礼や言葉をかけたがっているものだ。
現在は、景気が上向いているので、あわてなくても求人は十分にある。転職を考えている人は、具体的な活動に入る前に、まずは、転職するための社内の足固めから始めたい。
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提供元:入社3年未満の「早期転職」はやっぱり危険だ│東洋経済オンライン