2017.12.25
のどの奥の違和感が続くのはなぜ? 鼻水が流れ込む「後鼻漏(こうびろう)」とは
後鼻漏(こうびろう)は、のどの奥へ鼻水が流れ込んでくる症状です。平常時は意識せず鼻水を飲み込んでいますが、「のどにからむ」「つかえる」と感じるような症状が出た場合は後鼻漏の可能性があります。今回は後鼻漏の症状や原因、対処法について解説します。
目次
ー後鼻漏のメカニズム
ー後鼻漏を引き起こす症状
ー後鼻漏を引き起こす症状への対処法
後鼻漏のメカニズム
後鼻漏とは、のどの奥へ鼻水が流れ込んでくる症状のことを指します。鼻水は鼻の中を潤すために欠かせないもので、毎日数リットル近く分泌されており、異常がない場合ものどに流れ、飲み込んでいます。しかし、鼻腔(びくう)や副鼻腔(ふくびくう)、咽頭腔(いんとうくう)、喉頭腔(こうとうくう)などに問題があった場合、「鼻水を飲み込みづらい」などの違和感を覚える場合があります。ここでは、後鼻漏が起こるメカニズムや症状について解説します。
鼻と口とのどの構造
後鼻漏が起こるメカニズムを理解するために、まずは鼻と口とのどの構造について解説します。鼻とのどと口はつながっており、それぞれの場所で後鼻漏による違和感を覚えるケースがあります。
鼻の構造
鼻の穴をのぞくと、左右に「鼻腔」と呼ばれる空洞があります。鼻腔は奥でのどにつながっており、周囲を取り囲むように、頭部の骨の中に「副鼻腔」と呼ばれる空洞が左右に4つずつ存在します。
口の構造
口の天井には「軟口蓋(なんこうがい)」と呼ばれるやわらかい部分があり、のどの奥には軟口蓋後端の中央から垂れ下がっている乳頭状の突起「口蓋垂(こうがいすい)」があります。ものを飲み込むと、軟口蓋との口蓋垂は奥に押し付けられ、のどから鼻腔に通じる道をふさぎます。
のどの構造
のどの内部の空間は「咽頭腔」と呼ばれており、入り口から上・中・下と大きく3つの部分に分かれています。おもに機能するのは食べ物などを飲み込む時で、空気の通り道となる気管につながる空間は「喉頭腔」と呼ばれています。食べ物などを飲み込むときは気管に入ってしまわないよう筋肉や神経が連動し、スムーズに食道へと送り込めるようになっています。
後鼻漏の発症箇所と症状
後鼻漏は、大きく分けて鼻内とのどの周辺の2カ所で起こります。鼻内症状は、鼻の内部の鼻腔や副鼻腔で起こる症状で、鼻外症状は、おもに咽頭腔や喉頭腔などのどの周辺で起こる症状です。
鼻内症状(鼻腔や副鼻腔)
鼻腔や副鼻腔で発生する鼻水の量が過剰に増えたり、からんだりすることで違和感を覚えます。
また、鼻腔などの粘膜に問題がある場合もあります。鼻水を排除して浄化する粘膜の機能がうまく働かなくなると、鼻水が鼻腔にたまったままになります。すると、感染が起きやすくなったり、老廃物がたまりやすくなったりして、さらに後鼻漏が増えることがあります。
鼻外症状(咽頭腔や喉頭腔)
咽頭腔や喉頭腔など、のどの周辺で起こる症状です。おもな症状は以下の4つです。
●鼻水がのどにからむ
のどに流れ込んでくる入り口で鼻水がへばりつき、不快感や異物感につながって、鼻息が荒くなったり、鼻を鳴らしたりしてしまいます。
●つかえた感じがする
唾を飲み込むたびにつかえるような感覚があったり、のどがひりひりして風邪のような状態が続いたりする症状です。たばこや寒暖差、風邪などで悪化します。
●たんがからむ
たんは肺や気管から出てくるものだけではなく、鼻腔から出てくる鼻水がもととなるものがあります。これにより、のどの奥でたんがからんだような違和感を覚えます。
●咳
鼻水がのどをふさぐようにたまってしまうと、肺や気管に異常がなくても、咳が出ます。後鼻漏も気管の中に入ってしまうと、咳が出てしまうケースがあります。
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後鼻漏を引き起こす症状
前述のとおり、鼻腔や副鼻腔の異常により、後鼻漏による違和感を覚えます。ここでは、後鼻漏を引き起こす症状について、解説します。
鼻副鼻腔炎
鼻腔や副鼻腔でウイルスや細菌などに感染し、炎症が起こる病気です。主にウイルス感染が原因で風邪をひき、この状態で細菌感染が起こると副鼻腔炎が発症します。主な症状は、鼻づまりや鼻水、せきなどです。鼻水がのどに流れると、後鼻漏による違和感を覚えやすくなります。短期間で治癒する急性鼻副鼻腔炎から、炎症が治りにくくなって慢性化してしまう慢性鼻副鼻腔炎、好酸球性鼻副鼻腔炎なども同様に後鼻漏の症状が気になるようになります。
アレルギー性鼻炎
ほこりやダニ、花粉症などで、鼻腔内で炎症が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが症状として出ます。鼻水の量が増えるので、後鼻漏を意識しやすくなり、炎症が長引くと、鼻水の粘り気が増すことで後鼻漏の症状を気にするようになります。
後鼻漏につながる鼻副鼻腔の病気への対処法
違和感のあるひどい後鼻漏の症状を緩和するには、後鼻漏の原因となっている鼻腔や副鼻腔の病気を治すことが重要です。主に専門医による治療が中心なので、病院を受診しましょう。ここでは症状別の対処法について解説します。
鼻副鼻腔炎
急性副鼻腔炎は初期段階からウイルス感染により鼻粘膜が痛めつけられ、副鼻腔で炎症を引き起こす疾患で、細菌による感染も併発します。
治療としては抗菌薬などの飲み薬の使用、霧状の抗菌薬やステロイドを直接副鼻腔に送る「ネブライザー治療」などを行います。
慢性鼻副鼻腔炎
軽度の場合や経過期間が短ければ、「ネブライザー治療」という霧状の抗菌薬やステロイドを直接副鼻腔に送る方法や、薬物療法などを行います。薬物療法で使用する薬はマクロライド系の抗菌薬をはじめ、アレルギー症状を緩和させる抗アレルギー薬や粘り気のある鼻水を分解する消炎酵素薬・粘液溶解薬などです。症状が強かったり、薬物療法が効かなかったりする場合は、異常な粘膜を内視鏡で取り除く手術が行われることもあります。
好酸球性鼻副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくうえん)
好酸球性鼻副鼻腔炎は長期間に渡る鼻づまり、嗅覚障害などの症状を起こし、気管支喘息が合併することもある慢性副鼻腔炎で、抗菌薬(マクロライド系)を服用しても治りづらい疾患です。
そのため、ステロイドの内服治療や鼻副鼻腔を洗浄する治療などが行われます。こうした治療がうまくいかない場合は、鼻副鼻腔の粘膜を内視鏡で取り除く手術が行われることもあります。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎の対処法は主に以下の3つです。
アレルギーの元を回避・除去する
アレルギーの元となる、ほこりやダニ、花粉などのアレルゲンを体内に入れないようにしましょう。花粉症であれば、マスクやめがねを装着してください。
薬物療法
出た症状をおさえるためには、薬物療法が有効です。有効だとされる薬には、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬、副腎皮質ホルモン、漢方薬などがあります。
舌下免疫療法
舌下免疫療法は舌の下にアレルギーの原因である「アレルゲン」を含む治療薬を投与し、身体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法です。花粉症やダニアレルギー性鼻炎に有効とされています。
<参照>
「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版」(日本鼻科学会誌)
書籍「知られざる後鼻漏」
呉猛達著(幻冬舎)
書籍「ハリソン内科学第5版」
デニス・L・カスパーほか編・福井次矢ほか監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
書籍「カプラン臨床精神医学テキスト第3版」
ベンジャミン・J・サドックなど編著・井上令一監修(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
書籍「今日の治療指針2017年版」
福井次矢など編(医学書院)
書籍「家庭の医学」
溝口秀昭ほか執筆(主婦の友社)
photo:Getty Images
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