2017.12.19
「ビジネス年賀状」今さら聞けない基本マナー│メールは元日でなく相手の仕事始めの日に
取引先など、ビジネスの現場でも年賀状のやりとりはある。その際の注意点とは(写真:プラナ / PIXTA)
年末の仕事のひとつに、年賀状書きが挙げられる。いろいろな人の顔を思い浮かべながら年賀状を書く作業は楽しい反面、面倒でもある。最近は「出さない」、あるいはメールに切り替えたという人が増えた。企業においては、年賀状のやりとりを廃止したところもある。
実際、日本郵便局の年賀ハガキの発行枚数は、2003年度の約44.6億枚をピークに減少を続け、2016年度は31.4億枚まで減少した。といっても、1人当たりに換算すると30枚以上。年賀状は依然として日本の正月の風物詩といっていいだろう。
年賀状の意義は新年のあいさつと幸せを祈ること
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そもそも年賀状は、通常は年始のあいさつ回りができない場合に、書状であいさつを行っていたことから始まる。その歴史はかなり古い。
一方、メールやSNSで新年のあいさつをするといったスタイルが普及したことで、年賀状の基本を知らない世代も現れた。年賀状は日本の正月の風物詩のひとつ。年賀状を出す人はもちろん、出さない人も、この機会に年賀状の基本を知っておくのはどうだろうか。
「年賀状には2つの意味があります。それを知れば、何が相手に失礼になるのか、自然に判断できると思います」。こう語るのは、人材派遣・紹介サービスや教育事業を手掛けるキャプラン社の教育部門、Jプレゼンスアカデミー事業部のチーフインストラクター・伊東絹子氏だ。
1つ目の意味は、「年を新たにして、今年もよろしく」というメッセージ。これは、誰でも実行しているだろう。もう1つの意味は、相手に対して、「幸多き年になるように」という祈り。これを満たしていない年賀状は、そもそもの目的を果たしていないことになる。
典型は、BCCで一斉に出した年賀メール。1つの文面を全員に使いまわすのだから、一人ひとりの幸を祈ったようにはみえない。家族の連名で出すのも、家族ぐるみでつきあっていない限り、正式な意味ではふさわしくない。配偶者や子供が、顔も知らない同僚や上司の幸せを祈るとは思えないからだ。仕事関係で出す年賀状は、家族の連名は避けた方が無難だろう。
「最近は、裏面だけではなく宛先もプリンタで印刷する人が増えました。このまま出したのでは、BCCのメールと同様に、すべての人に対して同じものを送ることになり、年賀状の位置づけから考えれば望ましくありません。相手を思い浮かべながら、ひと言書き添えることが大切になるのです」(伊東氏)
分かっているが、なかなかむずかしいのは、その年賀状に添える一言だろう。
「お客様が購入した洋服など、パーソナルな内容の一言にする工夫をしています」(アパレル勤務・29歳)、「趣味が野球なので、プライベートはもちろん、会社内の人にも、すべて野球に絡めた一言を添えています。野球にあまり興味がない人には、少しでも興味をもってもらえるような一言に知恵を絞ります」(IT・25歳)。
こういった意見がある一方で、「一言を思いつかないので、全部、『今年もよろしく』になってしまいました」(旅行・24歳)という人もいる。大半の人は、「今年もよろしく」タイプではないだろうか。
「去年」は不可、句読点も入れてはいけない
「一般に良いとされているのは、ポジティブなメッセージ。『今年の目標』や『感謝の言葉』を添えるのが、望ましいでしょう」(伊東氏)
たとえば、新入社員であれば、「2年目を迎えて、仕事の厳しさとともに、面白さを感じ始めています」といった一言が優等生的に映る。評価ポイントは、「厳しさ」と「面白さ」の両方について触れていること。単に「仕事が面白くなった」といえば軽い感じがするが、「厳しさ」が加わることで「仕事の面白さ」に重みが出てくる。
このように、一言でいうべき基本を押さえておけば、「今年もよろしく」から脱却できるはずだ。
「年賀状を書く時、忌み言葉を使っていないか確認してください。受け取る相手によっては、快く思わない方もいらしゃいます」(伊東氏)
忌み言葉とは、縁起が悪い言葉。「去る」「落ちる」「終わる」「切る」「絶える」「衰える」「失う」など、病気や死や別離などを連想させる言葉が、それにあたる。年賀状で、もっとも使いがちなのは「去年」。「去」という字が入っているので、年賀状で使うのはよくない。だから、一般に「昨年」、もしくは「旧年」が使われるわけだ。
さらに、「年賀状に句読点を入れないということも覚えておいてほしいですね」と、伊東氏。
そもそも日本では、句読点を入れる習慣がなかったので、年賀状はそれを踏襲している。加えて、年の初めは新たな展開、いいかえれば新しい可能性が広がることが期待できる。だから、限界を設けるような区切り(=句読点)はつけないというわけだ。
「重複表現」で失敗する人もいる。「『謹賀新年』と印刷してある年賀はがきに、『あけましておめでとうございます』と書き込んでしまった」「『新年あけましておめでとうございます』と書いてしまった」などが、その例だ。使いなれない言葉なだけに、知らずに同じ意味を重ねて使いがち。言葉の意味をきちんと調べて理解すれば、重複表現は避けられる。
年賀状の文面を考えたり、市販の年賀状を購入する時に悩むのはあいさつの言葉。1文字の「寿」や「福」、2文字の「迎春」や「初春」、四文字熟語の「謹賀新年」「恭賀新年」、文章の「あけましておめでとうございます」「謹んで新春のお慶びを申し上げます」など、様々な賀詞があるからだ。
「1文字は『祝う』とか、『喜ぶ』といったメッセージしかありません。2文字になれば、『新年を祝う』という意味になりますが、相手に向かって『新年を祝う』というのは、少しいばった印象を与えます。ビジネスの場では、より丁寧な『四文字熟語』か『文章』を使う方が望ましいでしょう」(伊東氏)
ただ、四文字熟語は丁寧な印象を与える一方、漢字が重なって固い印象になる。気持ちを伝えるためには、やわらかい印象の文章にした方が効果的。新入社員なら、文章の方がおすすめだ。
修正ペンの使用や、古い部署名はマイナス効果
誤字や脱字など、基本的な間違いにも注意したい。
「3年連続で、宛名の漢字を間違えて送ってくる人がいる。来年も、また間違えた年賀状が来るんでしょうね。出してくれるのはうれしいが……」(サービス・34歳)
「修正ペンを使って書き直している人がいた。ハガキを無駄にしたくないのは分かるけど……」(教育 40歳)、「書き損じた年賀状が送られてきてびっくり! 送る束に紛れちゃったんでしょうね」(運輸・29歳)。
「異動して数年たつのに、前の部署に年賀状が送られてくる。情報の管理はどうなっているのかなと思います」(商社・46歳)
「毎年2枚ずつ出してくる人がいる。リストの見直しもしてないんだろうなぁ。返事を書くのをやめました」(広告・39歳)
といった声があるように、せっかく年賀状を出したのに、相手に「失礼だ!」「常識がない」などと思われては、逆効果になる。
「最近、はやりの消えるボールペンで書いて修正するのも好ましくありません。あとは切手にも気をつけたいですね」(伊東氏)
年賀状には正月用の切手を貼るのがマナー。ふつうの切手を貼ると、いかにもその辺にあったものを使ったという雰囲気がするからだ。正月用切手を手に入れたら、心をこめて真っ直ぐ貼る。曲がっていると、適当に貼ったように見えて、せっかく出したのに相手の印象を悪くしてしまう。
「お年玉付きではないハガキが来ると、がっかりする」(旅行・24歳)
こうした人は多いのではないだろうか。お年玉ハガキは、送った相手に喜ばれるだけではない。送った方にもメリットがある。通常の年賀状は1度しか見られないのに対して、お年玉ハガキは、新年と抽選日、少なくとも2回見られるので、営業ツールとしては効果的だ。さらに当たれば、いいイメージをもたれるだろう。
メールは相手の仕事始めの日に出すのが望ましい
最近は、メールで出す人もいる。メールのマナーには、どんなものがあるのだろうか。
「まず、発信日。新年は休日なので、ビジネス用の年賀状を休日に出すのはふさわしくありませんです」(伊東氏)
メールの場合、出す相手の仕事始めの日の朝に出すというのが望ましいという。土日の入り具合によっては、企業によって初日がバラバラ。送信する日にちの調節は、けっこうやっかいかもしれない。文面のマナーについては、年賀ハガキの場合と同じだ。
「新年最初のメールのやりとりは、『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします』といった、簡単な新年のあいさつを入れるのがいいでしょう」(伊東氏)
気をつけたいのは、送っていない相手から年賀状が来た時にメールで対応しようと考えること。返事をメールで出すことは、非常に失礼にあたるという。
「返事は、相手に合わせるのが鉄則です。ハガキで来たら、ハガキで返す。連名で来たら、連名で返す。メールで来た場合には、メールでお返ししましょう」(伊東氏)
なお、今年から、1月8日以降に投函する年賀はがきは、「52円」ではなく、通常のはがき料金と同じ62円となり、10円切手を貼って出す必要がある。連休があることを考えると、5日までには出しておきたい。
このように、年賀状には、さまざまなマナーや常識が凝縮している。
「年賀状は一般職の人が、全部やってくれるからお任せ!」(不動産 22歳)
それも効率的だが、社会人としてのマナーの勉強にもなるので、新入社員の時くらいは、ぜひ年賀状を書く作業にも挑戦してみたい。
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提供元:「ビジネス年賀状」今さら聞けない基本マナー│東洋経済オンライン