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2017.12.14

親子間の「伝わらない」には重大な原因がある│「早くしなさい」としかる毎日を変える方法


子どもを勉強嫌いにさせるための究極の言葉は…(写真:Rina / PIXTA)

子どもを勉強嫌いにさせるための究極の言葉は…(写真:Rina / PIXTA)

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小6の男の子の母親です。うちの子はいつもゆっくりとしか動かず、「早くしなさい!」と言ってもやらず、また片付けも、何度も言われてようやくやります。もちろん勉強も、言われないとやりませんし、言ってもやらないことも、しばしばです。先日も学校の宿題で、読書感想文があったのですが、それも、ようやく書かせたと思ったら、本のあらすじを書いているだけで、「感想なんだから、もっと自分の気持ちを書いたら」と言っても、どういうふうに書いていいかわからないと言って、逃げてばかりなのです。このような状況なのですが、何か打開策はあるものでしょうか。

(仮名:早川さん)

「やりなさい!」と連呼してもダメ

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ご家庭での様子が目に浮かぶようです。子どもはいつも家ではのんびりしていて、それを見て、お母さんはいつもイライラという状況なのでしょうね。

そして、質問内容には書いていませんでしたが、おそらく、“子どもを勉強嫌いにさせるための究極の言葉”である「勉強しなさい!」を日々、連呼していることでしょう。このような状況ですと親も子も日々、しんどいですよね。1日も早く打開させたいという気持ちもよくわかります。

では、まず状況の整理です。お子さんは次のような状況ということですね。

1)のんびりしている →「早くしなさい!」で対応

2)片付けしない →「片付けしなさい!」で対応

3)宿題(読書感想文)をやらない →やるように促したが、結果に親が満足せず、さらに子どもは言い訳をしている

このような対応をしてきて、好転しないということですから、この方法は間違っているということになります。

たとえば、「早くしなさい!」、この言葉は多くの家庭で使われている言葉ですね。実は、大人と子どもでは時間感覚に差があるということをご存じでしょうか。「ジャネーの法則」というのがあります。これによれば、時間の心理的長さは、年齢の逆数に比例するそうです。

たとえば、40歳の人間にとって1年の長さは人生の40分の1ほどになりますが、10歳の人間にとっては10分の1に相当しますね。簡単に言ってしまえば、親子で年齢が4倍違うと、心理的な時間の長さは、親の1分が、子どもには4分ということなのです。親が1分でできることは、子どもはその4倍の4分かかるのが普通ということです。したがって、「早く」の感覚が異なるのです。このようなことを知らないと、ただ親は自分の感覚で「早くしなさい!」と言うことでしょう。

しかし、早川さんの場合、単純にこのようなことを知るだけでは根本的な解決ができそうにありません。今、お子さんが直面している上記の3つの状況には、実はある種の共通した原因があるのです。

それは、「抽象的指示」をしているということです。

抽象的な指示言葉は、一見わかりやすいものの…

抽象的指示とは、具体的に行動するための内容が入っておらず、いわゆる「ざっくり」とした指示のことを言います。ここでは「早くしなさい」「片付けなさい」、そしておそらく言っているであろう「勉強しなさい」(ここでは「感想文の宿題をしなさい」)。

このような言葉は、一見わかりやすいように思えますが、抽象的指示言葉では、具体的に行動が起こせないということは、さまざまなところで現実に起こっています。親子関係だけでなく、会社の中での上司部下関係においてはもちろんのことです。

早川さんのお子さんが語った「(読書感想文の)書き方がわからない」「(気持ちを書けと言われても)わからない」と言っていますね。これは言い訳ではなく、実は、もっと具体的に方法を教えてもらいたいというメッセージかもしれないのです。

方法がわからずに具体的行動が移せないという事態に直面することは読書感想文にとどまりません。ありとあらゆる日常生活の場面で、抽象的指示をされると、言われたほうは困ってしまうという状況が起こりうるのです。さらに、言われたとおりにやっていないと、伝えた側が怒る場合もあるのですから、まるでコントです。

パワーバランスからいえば、上司部下、教師生徒、親子では上下関係があり、下の立場の者は上の立場に進言や質問はしづらいものです。それを上の立場の者は認識しておかなければならないのですが、これまた上に立つ者は、子どもへの伝え方や、部下への指示の仕方・伝え方を教えてもらったことがない場合が少なくないため、いつまでも改善しません。また自分の指示の仕方が間違っていることにも気づかない場合すらあります。

では、このような事態にならないようにするために、どうしたらよいでしょうか。

「抽象的指示をもっと具体的指示に変えていけばいい」ということになるのですが、そのためには、たとえば次のようなことを取り入れると具体的になります。

1. 5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)を盛り込む

2. 「たとえば……」(特に相手が子どもの場合、子どもの経験の範囲内で)

3. 主語と述語と目的語を明確にする(特に主語がない日本語では、ときとして意味がわからない)

4. 数字を入れる(漠然とせずにはっきりと。「できるだけ早く」→「明日の15:00までに」)

わかりやすい話というのは、大方1〜4の要素が入っていますので、何となく納得がいくことではないでしょうか。

ただし、これだけでは人は動かないことがあります。確かに具体的になったことで、わかりやすくどう行動すればいいかわかるようになるのですが、子どもが積極的に動くようになるための「子どもの心理」を考えなくてはなりません。

早川さんの事例で考えてみましょう。

◆「早くしなさい」という言葉。「あと30分でやりなさい」と具体的に表現したところで、行動しない可能性もかなり高いものです。

そこで、「子どもが行動しなければならないと感じる心理」を考えてみましょう。すると次のような質問になります。

「あとどれくらいの時間でできる?」

つまり、親が具体的な数字を言うのではなく、子どもに具体的な数字を言わせていきます。すると、自分で言ったことには責任が伴うため、実行する可能性が高くなるのです。

「子どもの心理」を考えた表現にする

◆「片付けしなさい」という言葉も、具体的に表現すると「あと10分で片付けなさい」とか「机の上の物を元の場所に片付けなさい」などとなりますね。しかし、これでも動かないときは、次のように表現しましょう。

「30分で部屋を片付けるから手伝ってもらえるとお母さんはとてもうれしい(助かる)」

この表現も、単に具体的にというだけでなく、「子どもの心理」が考えられた表現です。親も一緒に行動するということで一方的指示ではないと感じ、受け入れやすくなります。さらに、もし手伝ってくれたらとてもうれしいという感情を伝えることで、お母さんを助けたいという感情が湧き出て行動する可能性が高まるのです。

◆「宿題(勉強)をやりなさい」という言葉、これはいちばんやっかいな問題です。

この問題については、「子ども手帳の活用」「強制的指示をしない」など、これまでたくさんアプローチについて記事を書いてきました。それというのも、一言で解決することはできないほど、この問題は原因も対応方法も多種多様だからなのです。そこで、ここでは、言葉が抽象的すぎて行動できないという理由であると仮定して話を進めます。

具体的な指示となると「○時までに、△△の宿題を終わらせてしまいなさい」という言葉になると思われがちです。しかし、これは、ほぼ効果がありません。なぜなら「勉強関係に関する親からの指示」は基本的に受け入れないという傾向を子どもがもっているからです。

では、どのように伝えればいいかというと、次のような表現をしてみてください。

「宿題のやり方がわからなければ、聞いてね。わかる範囲で教えてあげられるから」

つまり、親が伴走しているという感覚の表現です。「サポートはできるよ」というメッセージです。裏のメッセージとしては、「宿題をやるのはあなたの問題」ということを伝えているのです。

以上のように、抽象的な指示をすることを今後やめて、具体的言葉に切り替えるか、単に一方的な指示ではなく、子どもと伴走しているという表現を使うことで、子どもは具体的に行動に移せる可能性が高まります。よろしければ、試してみてください。

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提供元:親子間の「伝わらない」には重大な原因がある│東洋経済オンライン

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