2017.12.01

外資マネジャーはなぜ「即行動」を嫌がるか│どんな環境下でも生産性が上がる3行動


段取りを考えることが大事です(写真 : Ushico / PIXTA)

段取りを考えることが大事です(写真 : Ushico / PIXTA)

多くの外資系企業は一般的な日本企業と異なり、結果を出せなければ大幅な降格・降給を提示されたり(実質上の退職勧告)、実際に指名解雇されてしまう可能性が高い。

そんな外資系企業でサバイブし、より上級のポジションへと上がっていくマネジャーたちが実践していることを、『MBA生産性をあげる100の基本』を上梓したグロービス経営大学院教授の嶋田毅氏が解説する。

『MBA生産性をあげる100の基本』 ※外部サイトに遷移します

究極の「生産性向上の鍵」はシビアな職場にある

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『MBA生産性をあげる100の基本』(クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

外資系企業は、いわゆる「Up or Out(昇進か、退出か)」です。必然的に、生産性を高め、よいパフォーマンスをあげ続けることが必要になります。

現実には、いわゆる「ダークサイドスキル(裏技的仕事術)」を駆使したり、外国人のボス(上司)の機嫌をうまくとるといった要素も必要ではありますが、今回は正攻法とも言える、生産性を高めるために彼らがやっている、即効性のある行動を3つ紹介します。

これらは、本人自身がそれを実践することはもちろん、多くの場合、部下にもそのように指導することで、職場全体にレバレッジをかけていることがほとんどです。ぜひそうした仕事の技術を参考にしましょう。

「仕事ができる」人が陥りがちな罠の代表が、「思いついたら即行動」です。

「思いついたら即行動」はビジネスパーソン失格

生産性を上げる鍵1:最初に仕事の段取りを描け

2018年2月、グロービス経営大学院大阪校にて『MBA生産性をあげる100の基本』発売記念講演会を開催します。

2018年2月、グロービス経営大学院大阪校にて『MBA生産性をあげる100の基本』発売記念講演会を開催します。

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「即行動に移す」。これだけを聞くと、ビジネスパーソンとして行動力にあふれる、よい印象を受けるかもしれません。しかし、生産性を高めたいのであれば、「思いついたら即行動」は命取りになりかねません。

これは、目についたところから仕事を片づけようとするのではなく、事前に大枠の段取りを考えることが重要ということです。

たとえばある営業所の立て直しを任されたシーンを想定します。ここで、目についた問題点、Aさんのモチベーションが低い、Bさんの顧客維持率が低い、などを順に解決しようとしても、あまりよい結果には結びつきません。

このケースであれば、次のように考える必要があります。

(1)どのくらいの業績にすればいいのかなどの目的、目標を確認する
(2)目標と現状のギャップを見きわめる
(3)重要な問題点(改善余地のある課題)を知る
(4)その理由を検討する
(5)克服する方法を複数考える
(6)施策の実現性を考え、優先度をつける
(7)アクションをとり、次に生かす

このように段取りを最初に考えることで、フォーカスすべき課題が明確になり、「何はしなくてもよいか」「どこから手をつけるべきか」が明確になります。

多くのビジネスパーソンは「しなくてもいいこと」「優先順位の低いこと」に時間を使っていますから、それがなくなるだけで劇的に生産性はあがります。

生産性を上げる鍵2:巨人の肩に乗れ

「巨人の肩に乗る」は万有引力で有名なアイザック・ニュートンの言葉です。毎回一から自分で考えるのではなく、すでにある成果物や情報、ノウハウなどを徹底的に利用し、最初から「発射台」を高くすることで、生産性を高くするということです。

誰かに聞けばすむことなのに、ネット検索に数十分の時間を費やしてしまう、似たようなパワーポイントの資料が社内に存在するのに自分で一から作ってしまうという、非効率的なことをしているビジネスパーソンは多いものです。

これらをショートカットできるだけでも、はるかに時間効率は高まります。

なお、人を利用するだけでは信頼は積み上がりませんから、率先してノウハウを言語化して共有したり、自身のノウハウをテンプレート(ひな型)化して使ってもらうことも大事です。

日々の「言語化」が生産性の土台を鍛える

生産性を上げる鍵3:変化は常態、つねに可視化する

生産性を高めるなかでボトルネックになりやすいのは、仕事の進め方やノウハウ、あるいは現時点での業績がブラックボックス化していて、どこから手をつけていいのかわからないことです。それを乗り越える最も手っ取り早い方法が可視化です。

業績であれば、財務数字だけではなく、それにつながるような先行指標、たとえば顧客満足度や不良品率といった数値をKPI(重要業績評価指標)として測定します。これを的確に行うことにより、早期の問題発見、動機づけ、ユニークな改善案の策定、タイトなPDCAサイクルの実現などにつなげることができるのです。

管理会計の分野では「測定できないものはコントロールできない」という言い習わしがあります。適切にマネジメントするうえでも、KPIを測定し、可視化することは非常に大切です。

ノウハウなども、部下に言語化してもらう習慣を徹底していけば、横展開ができるようになり、職場全体の生産性向上につながります。また、言語化するという行為自体が考える力を養うことになり、これも部下の能力向上につながります。

人間は「眼で考える動物」でもあります。その「眼」を最大限活用するためにも、費用対効果を見据えながら極力物事を可視化し、「手を打つべき箇所に手が打てる」状態をしっかり作ることが生産性の高いマネジャーの必須条件の1つなのです。

さて、ここまで紹介したこと、特に鍵1と鍵2は、業務の効率化、すなわちスピードアップにつながることといった印象を持たれたかもしれません。しかし、スピードが増すこと、言い換えれば処理量が増すだけでは生産性向上は道半ばです。

効率化とクリエーティビティの意外な関係

それ以上に重要なのは、業務の質、つまり顧客への付加価値が高まることです。たとえば、いままでに顧客が10万円の価値しか感じなかったものを、20万円の価値を感じるようにできれば、生産性は一気に高まります。経営学の泰斗、ピーター・ドラッカーも、「生産性は量より質が大事」といったことを言っています。

実は、効率化することの最大のメリットは、処理量を増やすこと以上に、時間に余裕が生まれることで、クリエーティブなアイデアを考える時間を確保できることです。

クリエーティビティは、ある程度の時間的余裕の中でこそ生まれやすいものであり、その時間を作るためにも、業務をスピーディにこなしていくことが大事なのです。

クリエーティビティを発揮するヒントとしては、過去の常識を疑う、視点を変えて考える、新しい組み合わせを考える、異なる業界の人々と議論することで新しいヒントを得るなどさまざまなものがありますが、これらは日常の仕事が忙しいと、なかなか実現できません。しかし、これだけ経営環境の変化の速い時代、顧客や競合がどんどん変わっていく時代にあっては、こうした発想抜きには会社を健全に発展させることはできません。

特に新しいビジネスチャンスを見出すことは、企業が成長する必須条件ですが、それまでの発想を疑うところからスタートすることが多いものです。たとえばアパレルの話であれば、クリーニングしてもよれない製品よりも、そもそもクリーニングの必要性が小さい製品のほうが顧客に好まれるかもしれません。

グーグルなどの企業は、従業員がクリエーティブに考えられる時間を確保するような人事施策を講じています。ただ、会社全体としてそこまで配慮してくれる会社は多くはありませんから、多くのケースでは一人ひとりの心がけと実践次第となります。

今回紹介したことを、できることから実践していくと、日々の仕事の生産性がよい方向に向上していくでしょう。

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提供元:外資マネジャーはなぜ「即行動」を嫌がるか│東洋経済オンライン

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