2017.11.30
「部下のやる気を引き出せない人」にない視点│もっとも有効なモチベーションアップ法とは
部下のやる気を引き出すにはどうしたらいいのか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
多くの企業の人材開発ニーズと日々向き合っている米人材開発支援会社、コーナーストーンオンデマンド。今回はその経営陣のブログから、社員のモチベーションを上げる方法についてご紹介します。
リーダーシップにはさまざまな形があります。たとえば、自分の考えを押し付けようとする権威主義型リーダー、成果に対して報奨を与える論功行賞型リーダー、意思決定の際に部下の意見を聞き、部下を巻き込むコンサル型リーダー、などが例として挙げられるでしょう。
変革と改善をもたらす最高の方法とは?
しかし、マッキンゼー&カンパニーのシニアパートナーであるクラウディオ・フェザー氏によると、最も効果的なアプローチは「インスピレーショナル(部下にやる気を起こさせる)・リーダーシップ」だといいます。
同氏は、著書『マッキンゼーが教える科学的リーダーシップ』の中で、インスピレーショナル・リーダーシップこそ、組織に顕著で(かつ実効性のある)変革と改善をもたらす最高の方法であると述べています。
これは、ほかのどのやり方よりも多くのエネルギー、やる気、コミットメントを生み出す、最も強力な統率方法といえます。人々は、自らのやる気を起こさせてくれるリーダーの目標の実現のために、それぞれの限界を超えた力を発揮できるのです。
しかし、インスピレーショナル・リーダーシップには、力量と信頼の両方が求められるので、簡単には実行できません。ゆえに、それを実践できているリーダーは極めて少ないのです。
そこで、従業員のエンゲージメントとやる気を引き出して変革を行い、優れた組織を構築するために、インスピレーショナル・リーダーシップをどのように取り入れればよいのか、フェザー氏に話を聞きました。
やる気を起こさせるためには
――「インスピレーショナルなリーダーになる」とは、どういうことなのでしょうか。
1つの明確な定義があるわけではありません。もしインスピレーショナルなリーダーだと思う人は誰か、と10人に尋ねたら、おそらく8~10人の異なる人物の名前が挙がるのではないでしょうか。もし2人が同じ人物の名前を挙げたとしても、そう思う理由はそれぞれ異なるはずです。
この質問をすると、名前が挙がったそのリーダーよりも、むしろそう答えた当人について知るべき事柄が多いものです。人の感じ方はそれぞれ異なります。リーダーがやる気を起こさせてくれると感じるとき、彼らは自分たちの価値観や感情に訴えかけてくる何かをそのリーダーの中に見いだしているのです。
このことを理解すれば、次に「自分がリーダーになった場合、どうすれば部下の価値観や感情を理解したうえで、彼らにやる気を起こさせることができるか」という疑問が湧くはずです。
――やる気を起こさせるには、どうすればいいのでしょうか。
その人の価値観や感情に訴えかける何かを仕掛けたとき、あなたのことを「やる気にさせてくれる人物」だと見なす可能性が高くなります。たとえば、企業のリーダーであれば、「あなたはダイバーシティを重視しているので、ダイバーシティに関するこのプロジェクトをぜひ任せたい」と持ちかけてみる。あるいは、「今起こっている変化の中であなたは不安を感じているかもしれない。それを解消するための解決策を一緒に考えよう」と呼びかけるのもいいでしょう。
――集団のモチベーションを上げようとする場合は?
個人と同じように、組織もまた価値観と感情を持っています。組織の価値観はその文化の中に組み込まれているのです。ある強い感情を持つ人たちと一緒にいると、その集団の中で、人々は「感情の伝染」というプロセスを通して、同じ感情を共有することになります。
たとえば、ある組織で不安が高まっている場合、リーダーはメンバーの感情を察知し、こう呼びかけることが可能です。「われわれが困難な時期にあることは承知している。皆さんがプレッシャーを感じ、将来に不安を感じていることもわかっている」と。
そのうえで、グループ全体でモチベーションを保つために「一企業として、私たちは人々の暮らしを大切に考え、よりよい製品を作るために懸命に努力している。小さなことを一つひとつこなしていくことで、今後もミッションを達成していこう」と伝えるべきです。
自分のビジョンだけが独り歩きすると
ほとんどの社員は、自社の目標を認識しています。その目標とは、通常、組織の大部分で共有されている価値観を表しています。以前、ある企業のCEOと話をしたことがあります。
彼は、組織を変革し、業界のトップになることを目指しており、ビジョンの達成に向けて並々ならぬやる気を見せていましたが、社員をうまく動かすことができずにいました。なぜなら、評判の高い大企業を築き上げることはあくまでもそのCEOの夢であり、社員の夢ではなかったからです。
彼にとって大切なことでも、社員たちにとってはそうではなかったのです。彼は、自分のビジョンと組織の目標を結び付けることで、はるかに多くの人々を巻き込み、社員にやる気を起こさせることができると学びました。
――インスピレーショナル・リーダーシップを実践しようとするときに、犯しやすい間違いとは。
最もよくあるのは、「ふりをする」ことです。つまり、実際には相手のことを気にかけていないのに、感情に応えているかのようなふりをしたり、あたかも相手の価値観を尊重しているかのように振る舞ったりするのはやめなければなりません。
たとえば、企業の現状を改善するために賃金カットの受け入れを社員に迫っているにもかかわらず、リーダー自身の賃金を削っていないことが公になった場合、不信感、怒り、反抗心といった反応を引き起こすことになります。
インスピレーショナル・リーダーシップを効果的なものにするには、本心で向き合い、「有言実行」することが欠かせません。本心で向き合うというのは、相手のことを心から尊重して感情に応え、しっかりと準備を整えたうえで、やってもらいたい事柄を依頼することを意味しています。
部下が何を考えているのかを探る
つまり、相手――その価値観や感情――を尊重しないのであれば、本気でやる気を起こさせる気があるとはいえません。中途半端な気持ちでこのリーダーシップを発揮するのはやめるべきです。
――インスピレーショナルなリーダーになるには、まず何から始めるべきでしょうか。
部下が何を考え、感じているのかを時間をかけて探ることです。やる気を起こさせるリーダーになるには、相手の感情と価値観に働きかける必要があり、他者に共感するための訓練が欠かせません。部下が状況をどう受け止めるかを想像するようにしましょう。
また、時間をかけて自分自身のことを理解し、組織のリーダーとして何を大切に思い、どのような感情を抱くのかを知ることも重要です。
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提供元:「部下のやる気を引き出せない人」にない視点│東洋経済オンライン