2017.11.17
咳が2週間以上続いたらキケン!長引く咳の対処法
咳が続くと、体力を消耗し眠れないこともあるため、心身ともに疲弊し、とてもつらく感じます。重大な病気の可能性もあるため、長引く咳を放っておくのはとても危険です。今回は、長引く咳の原因や、咳が起こる病気の種類、対処法、予防法について、呼吸器の専門医で『長引くセキはカゼではない』の著者である池袋大谷クリニック院長の大谷義夫先生にお話を伺いました。
目次
ー咳が出るメカニズムと咳の種類
ー長引く咳から考えられる病気
ー咳の一時的な対処法と予防法
ー咳で病院を受診するときの注意点
咳が出るメカニズムと咳の種類
咳は、大きく分けて「風邪による咳」と「それ以外の病気による咳」の2種類あり、原因も対処法も異なります。ここではそれぞれどのような特徴があるのか紹介します。
咳が出る理由
咳とは、体内に入った異物に対する防御反応です。人は鼻や口から空気を取り込んで呼吸をしていますが、その中にはホコリや花粉、タバコの煙、ウイルス、細菌、真菌(カビ)など、さまざまな異物が混ざっています。鼻や口から体内に入った異物を排出するために咳が出るのです。
ただのホコリであれば咳をすることで体外に出ていきますが、ウイルスや細菌などの場合、咳をしても体外に出ていかず、体内に残る場合もあります。すると、のどに張り付いたウイルスや細菌が炎症を起こして、さらに咳が悪化してしまいます。
「風邪による咳」と「それ以外の病気による咳」の見分け方
咳の原因には大きく分けて、風邪と風邪以外の場合の2種類があります。それぞれの特徴と見分け方について解説します。
風邪の場合
ウイルスや細菌によって起こる風邪が原因となる咳は、ウイルスや細菌が消滅するとおさまるため、通常2週間以内に治ります。
風邪以外が原因の場合
2週間以上咳が続く場合、「風邪ではない」と疑う必要があるでしょう。
風邪とは原因や患部が異なり、重大な病気の可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。
長引く咳から考えられる病気
咳が2週間以上長引く場合、風邪以外の病気の可能性があります。ここでは可能性が高い4つの病気について解説します。
咳ぜんそく
咳ぜんそくとは、気道(下気道)が刺激に対して敏感になり、2週間以上、慢性的に咳が続く病気です。気道に炎症が起こると粘膜が敏感になり、温度差や湯気、香りなど、普段は反応しないようなちょっとした刺激にも反応して咳が出てしまいます。
風邪がきっかけで、咳ぜんそくに移行するケースが多いといわれています。特に、花粉症や食物アレルギーなどのアレルギー素因を持っている人に多く起こります。ストレスを感じたり、お酒を飲んだ時に症状が強く表れることもあります。胸の深いところから起こる咳が特徴です。
咳ぜんそくを放置した場合およそ3割の人が気管支ぜんそくに移行するといわれています。咳がいつもより長引いていると感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
気管支ぜんそく
気管支ぜんそくは、咳ぜんそくのように気道が刺激に敏感になって咳が出るだけでなく、炎症状態が慢性化し、気道の狭窄(きょうさく)を引き起こしてしまう病気のことです。呼吸をする際に、「ゼーゼーヒューヒュー」という異音がします。
咳ぜんそくと同様、アレルギーやウイルスによる気道の炎症が原因ですが、咳が悪化するとともに気道の内壁がむくんで厚くなり、空気の通り道がだんだん細くなっていきます。すると、呼吸がスムーズにできなくなり、咳が出たときに呼吸困難を引き起こすこともあります。
命に係わることも多いため、早めに受診する必要があります。
後鼻漏(こうびろう)
後鼻漏は、通常は鼻から出ていくはずの鼻水が、のどに流れ込んでしまう状態のことを指します。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(ふくびくうえん)などによって大量に鼻水が発生すると、鼻腔の構造や鼻水の発生位置などによって鼻水がのどの方へ流れ込んでしまいます。大量の鼻水が痰と勘違いされやすく、鼻水がのどに引っかかることで咳きこみます。夜、寝るために布団に横になった時に激しい咳が起こることが特徴です。
口臭の原因になったり、味覚障害を引き起こしたりする場合もあり、重症になると食事や睡眠などの日常生活だけでなく対人関係にまで影響を及ぼすことがあります。
逆流性食道炎
健康な人の場合、胃液が食道に逆流しないように食道と胃のつなぎ目にある筋肉「下部食道括約筋」が働いています。
しかし、加齢などで筋力が低下すると、下部食道括約筋がゆるんで胃液や胃の内容物が逆流します。
これにより食道粘膜が胃酸にさらされて炎症を起こし、逆流性食道炎になってしまいます。
上がってきた胃液がのどや気管支を刺激し、炎症を起こして咳を誘発するほか、胃液が口まで上がってきてゲップがでる「呑酸(どんさん)」という症状が現れることもあります。
咳やゲップが頻繁に続くことで、吐いてしまうこともあります。
咳の一時的な対処法と予防法
咳の症状が続いて睡眠や日常生活に支障をきたすような場合は、できるだけ早く医療機関で受診し、治療を受けましょう。ここでは病院に行くまでの一時的な対処法や、咳を引き起こす前にできる予防法について紹介します。
咳の一時的な対処法
一般的に、1回咳をすると、2kcalのエネルギーを消費するとされています。
つまり、100回咳をすれば200kcal、運動で換算すると軽いジョギングを30分行った時と同等のエネルギーを消費することになります。こうしたつらい咳を少しでも鎮めたいときの対処法を紹介します。
のど飴をなめる
咳のしすぎでのどがイガイガするときや、痛みを感じるときに有効なのがのど飴です。唾液の分泌を促すことで気道にある繊毛の働きを高め、咳を引き起こしているウイルスや細菌を体外に排出するのを助けてくれます。
「コーヒー+はちみつ」ドリンクを飲む
コーヒーに含まれるカフェインには、気管支を拡張する作用や抗炎症作用があります。1980年代にイタリアで行われた調査では、コーヒーを1日3杯以上飲む人は、全く飲まない人に比べてぜんそくの発症リスクが28%も低いという結果が出たとのこと。また、はちみつにも抗炎症作用が期待できるため、コーヒーにプラスしてもよいでしょう。
咳の予防法
咳の症状の発症をおさえるために、普段からできる簡単な予防法をご紹介します。
手洗い+水うがいをする
風邪の原因となる病原体を気道に入れないようにするために、手洗い・うがいを習慣化しましょう。
風邪をひいているときにはうがい薬を処方されることがありますが、風邪をひいていないときの、普段のうがいは水で行うようにしましょう。うがい薬は殺菌力が強すぎて、身体にとって必要な細菌まで殺してしまい、身体の免疫機能が低下してしまう可能性があります。
こまめに部屋を掃除する
咳の原因となるアレルギー対策のためには、こまめな掃除が必要です。ハウスダストやホコリにはさまざまなアレルゲンが混ざっているからです。また、空気中に舞い上がったハウスダストは掃除機で除去できないので、空気清浄機を活用するとよいでしょう。
部屋を加湿する
ウイルスは乾燥していると活性化する性質があります、そのため、加湿器などを利用して部屋の湿度を保つことが有効になります。
睡眠は最低7時間以上とる
睡眠不足が続くと体力や免疫システムが低下し、風邪のウイルスを防ぎにくくなるため、咳の原因となる病気を引き起こしやすくなります。
また疲労が蓄積することで、一度起こった気道の炎症がなかなか治らず、咳が長期化する可能性もあります。
咳と睡眠の関係について、2007年から2011年にかけてアメリカのカリフォルニア大学が実施した研究によると、1日の睡眠時間が7時間以上ある場合に比べ、6時間未満の場合は風邪にかかるリスクが4.2倍に、5時間未満の場合は4.5倍になることが分かっています。
睡眠時間は7時間以上確保するのが理想的です。
軽めの運動を習慣づける
咳ぜんそくやアレルギー性の咳が出る人は、急に激しい運動をすると咳発作のきっかけになってしまう場合があります。
普段から軽めの運動を行うことを習慣づけましょう。
特にウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、身体の中の免疫細胞を活性化させるという研究データもあるので、風邪や咳の予防にも効果的です。
咳で病院を受診するときの注意点
「ただの咳」と思っていても、実は重大な病気が潜んでいる可能性もあります。ここでは受診すべきかどうかの判断基準とかかるべき医療機関、問診時に伝えたほうがよいことをご紹介します。
医療機関にかかるかどうかの判断基準
いつもより咳が長引くなど、咳の症状に違和感を覚えたら、早めに医療機関で受診してください。
2週間以上咳が続くとき
通常の風邪であれば、ウイルスは2週間以内に消滅し咳も治まります。そのため、2週間以上にわたって咳が続く場合は、風邪以外の原因が考えられます。咳ぜんそくの場合、気づかずに処置しないまま過ごしていると悪化して気管支ぜんそくに移行し、命に係わる場合もあるため、早期の受診が必要です。
眠れないほど激しい咳のとき
普段の風邪のパターンに比べて、咳き込み方や頻度に異変を感じたら受診すべきといえるでしょう。特に眠れないほどひどい咳であれば、一般的な風邪とは考えにくいので、診察を受けましょう。
何科へ行くべきか?
「咳といえば風邪」と真っ先に内科に行きがちですが、内科とひと口にいってもさまざまな専門分野があり、症状を適切に見極めるのが難しいケースがあります。咳の症状で悩んだときは、可能であれば、呼吸器内科を選ぶようにしてください。咳の症状を多角的に診察できます。
問診時に伝えること
病院へ行く前に、自分自身で症状をあらかじめチェックしておくとスムーズに診察が進みます。医療機関にかかる際は、下記の項目を押さえておくとよいでしょう。
ー咳はいつから出るようになったか
ーどういうときに咳が出るか
ー痰は出るか
ー胸焼け、むせる感じはあるか
ー鼻水はあるか、鼻水に色がついているか
ーアレルギーはあるか
大谷先生によると、近年、風邪以外の咳症状を訴える人は増えているそうです。放置すると症状が悪化したり、さまざまな病気を併発したりすることもあります。「いつもの咳と違う」と違和感を覚えたら、早めに医療機関にかかるようにしましょう。
監修:大谷義夫
大谷義夫
1963年東京都生まれ。1989年群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年池袋大谷クリニック開院。呼吸器内科のスペシャリストとして、メディアへの出演も多い。著書に『肺炎にならないためののどの鍛え方 (扶桑社ムック)』(KADOKAWA)など。
池袋大谷クリニック
東京都豊島区西池袋1-39-4 第一大谷ビル1F
TEL.03-3986-0337
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※体験談は個人の感想であり、特定の効能・効果を保証したり、あるいは否定したりするものではありません。
提供元:咳が2週間以上続いたらキケン!長引く咳の対処法|フミナーズ