2017.08.09

永遠に文章が下手な人と、上達する人の「差」|プロたちがやっているテクニックを教えます


文章を書くのに、「文才」は必要ありません(写真:Rawpixel / PIXTA)

文章を書くのに、「文才」は必要ありません(写真:Rawpixel / PIXTA)

文章を書くことが苦手と感じたことはありませんか? ビジネスでもプライベートでも、文字コミュニケーションが必要な場面が増えるなか、もし書ける力があれば、強い武器になります。
では、どうすればいいか? 「ビジネスで必要な文章を“速くわかりやすく書く”のに、文才は必要ありません」と言うのは、年間10冊以上の書籍ライティングを手掛ける佐藤友美さん。ビジネスノンフィクション『道を継ぐ』をはじめ、さまざまなジャンルの人の言葉をわかりやすくまとめてきた佐藤さんに、すぐに役立つテクニックを紹介してもらいます。

『道を継ぐ』 ※外部サイトに遷移します

わかりやすい文章を書くのに「文才」はいらない

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人気ライター佐藤友美さんによる新連載です。この連載の一覧はこちら ※外部サイトに遷移します

■文章が苦手な人に共通する「誤解」

「文章が苦手」というビジネスパーソンの方々から、「さとゆみさんは、文章が書けていいですね。僕は文才がまったくなくて、メールを書くにも一苦労です」などとよく言われます。

でも残念ながら、これが、文章が苦手だという人のほとんどに共通した「勘違い」です。文章を書くのに、「文才」は必要ありません。

もちろん、小説家であれば、人の心を打つ感動的な文章や文体、予想もしなかった展開を考える才能が必要ですが、多くのビジネス文書ではそういった情緒は求められません。代わりに必要なのは「正しい情報をわかりやすく伝える技術」です。

前回の記事「仕事で絶対役立つ『タモリ式』『徹子式』聞き方」では素材集め(聞く)の話をしました。今回は、その素材を使って、具体的に調理をする(書く)方法を伝えします。

「仕事で絶対役立つ『タモリ式』『徹子式』聞き方」 ※外部サイトに遷移します

■文章の3フェーズ

ビジネスパーソンに文章の書き方を教えてほしいと言われるとき、私はよく下の図を見せ、文章には3段階のフェーズがあるとお伝えします。

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まず、最低限必要なのは第1段階の「間違っていない」こと。言い換えれば、その文章に書かれている情報が正しい情報であること。これがいちばん重要です。

第2段階は、その情報がわかりやすく整理されていること。誤解のない表現を選ぶことも、この「わかりやすい」ことに含まれます。

そして、ビジネスで使用される文章は、ここまでの2つのフェーズがクリアされていれば、十分です。皆さんがよく言う「文才」は、第3段階の「おもしろい」文章を書く際には必要ですが、ビジネス文書では、マストではありません。

ですから、「間違っていない文章」+「わかりやすい文章」を書く技術さえマスターすれば、どんな人でも(文才がなくても)、苦手意識を持たずに、文章を書くことができるようになります。

あなたの文章がもっとわかりやすくなる「組み立て」

必要なことを全部盛り込んで書いたはずの文章が、どうしてもわかりにくい、読みにくいと感じるときは、大抵「構成(文章の組み立て)」に問題があります。

「構成」というと、大げさに感じるかもしれません。しかし、報告書でも、ビジネスメールでも、企画書でも、大事なのは「構成」です。文章に苦手意識がある人は、この「構成」の作り方をマスターしましょう。

長い文章でも、短い文章でも、構成のステップは2つです。

① 同じ内容の素材をグループ分けする
② それぞれのグループを「接続詞」でつなぐ

たった、これだけです。

■素材をKJ法で組み立てる

① 最初に、素材をグループ分けします。

このときに使うのは、KJ法です。

KJ法とは、川喜田二郎氏が考案した大量の情報を効率よく整理するための手法です。企画会議やブレーンストーミングで、使用している人も多いのではないでしょうか。これを、文章の構成に応用するのです。

附箋を使って「要素」をグループ分けする

附箋を使って「要素」をグループ分けする

まず、集めた素材(第1回の記事「仕事で絶対役立つ『タモリ式』『徹子式』聞き方」参照)を箇条書きで付箋に書き出します。この段階では、絶対に使わないと思った素材以外は、すべて書き出しましょう。

そしてそれらの付箋を、似た要素、近い要素ごとにグループ分けします。

■わかりやすさは「接続詞」で決まる

② 次に、付箋で分けたそれぞれのグループ同士を「接続詞」でつなぎます。

1の作業で、たとえば5つの付箋のグループができたとします。その5つを、どの順番で並べたら、いちばんスムーズに話が進むかを考えます。

このとき、単に順番を考えるだけではなく、それらのグループを「どのような接続詞でつなぐと話を進めやすいか」を意識しながら考えると、自然とわかりやすく論理的な構成が作れます。

例)当社が、A国に進出すべきかどうかというテーマで文章をまとめる場合。

素材グループ1
「わが社はA国の市場から撤退すべきである」と考えられる現地ヒアリング素材
さらに ←接続詞

素材グループ2
「わが社はA国の市場から撤退すべきである」を証明する競合データの素材
もちろん ←接続詞

素材グループ3
「A国から撤退したときには、このようなデメリットがある」を示す素材
しかし ←接続詞

素材グループ4
「そのデメリットは最小限で抑えられるであろう」を示す素材
しかも ←接続詞

素材グループ5
「A国を撤退したときのリソースをB国に回したときのメリット」を示す素材
というわけで ←接続詞

「A国からは撤退すべきだと提案します」(結論)

多くのプロが採用する手法

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多くの方にエピソードを聞く手法でまとめた佐藤友美さんの近著『道を継ぐ』(クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

KJ法で素材を分類すると、文章が苦手な人がやりがちな「同じようなことを何回も繰り返し書いて文章が長くなってしまう」ことがなくなります。

また、グループ分けした素材を「接続詞」でつなぐと、どの順番で素材を並べると効果的かが一目瞭然になります。それだけではなく、論理破綻がある場合は、接続詞が不自然になるので、すぐ気づきます。

この方法は、提案書でも、パワーポイントなどで作るプレゼン資料にも使えるテクニックです。プレゼンの場合は、パワポの一枚一枚が、素材A、素材Bだと思ってください。もちろん、長い文章や論文を書く際にも、この手法が有効です。書籍1冊(8万〜10万字)でもこのやり方は使えます。

準備もなにもなく、いきなり書き始めるのに比べて、「①KJ法で分類→②接続詞でつなぐ」は一見、時間がかかって面倒のように思われるかもしれません。

でも、この作業をしておくだけで、ぐっと「わかりやすい」文章が書けるようになります。筆者だけではなく、多くのプロのライターさんが採用している手法です。ぜひ、参考にしてみてください。

次回からも「書く」ことがラクになる、ちょっとしたコツについてお話しいたします。

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佐藤 友美 :書籍ライター・インタビューライター

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

仕事で絶対役立つ「タモリ式」「徹子式」聞き方

「話がわかりやすい」人は一体何が違うのか

意外と知らないライターという仕事の「裏側」

提供元:永遠に文章が下手な人と、上達する人の「差」 │東洋経済オンライン

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