2017.07.05

もはや昭和!過剰品質「ダメ資料」4つの特徴│「資料ダイエット」で長時間労働は減らせる


過剰品質な資料は、長時間労働の原因の1つかも…(写真:タカス / PIXTA)

過剰品質な資料は、長時間労働の原因の1つかも…(写真:タカス / PIXTA)

カラフルなグラフ、立体的な図形の見出し、凝った罫線の表……。これらが長時間労働の原因になっているかもしれません。
「過剰品質」をなくせば資料作成時間は今の半分以下ですみます。『プロの資料作成力』など資料作成の書籍を多く出版している清水久三子氏が”資料のダイエット”について説明します。

過剰品質!「Busyな資料」が長時間労働の一因

私は資料作成の研修をさまざまな業界で行っています。受講生の方に自分の資料を研修に持ち込んでいただいて改善したり、研修後に改善したものを提出いただき、私が添削することもあります。そのためかなり多くの業種・職種の方々が作成する資料を目にしていますが、総じて言えることは「Busy(煩雑な、冗長な)である」ことです。

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これは私だけがそう思うわけではなく、研修を依頼される経営者や人事の方も「うちの会社の資料は、何が言いたいかわからないんですよ」とおっしゃいます。作成するご本人が「気がつくと冗長な資料になってるんですよ」と言っていることも。

この現象は多くの企業で共通しており、Busyな資料は長時間労働の1つの原因になっているのではないかと感じています。今、目指すべきは過剰品質ではなく、最適品質です。

ピーター・ドラッカー氏は「成果を出すために行った労力が少なければ少ないほどよい仕事である」と述べていますが、日本企業はどちらかというと、ありったけの資源を投入してできるだけのことをするのがいい仕事とされてきてはいないでしょうか?

資源とは人や時間、またパワーポイントなどツールの機能も含みます。長い時間をかけて、パワーポイントの機能をできるだけ駆使して作る資料ははたしてよい資料といえるでしょうか? 国全体で生産性が問われている今、過剰品質、ひいては自己満足になっていないかを問う必要があると思います。

私は資料作成の本を何冊か出版させていただいているので、そのテーマの著者仲間がいます。彼らとの会話の中で、最近「過剰な演出モリモリの資料って、昭和度が高いイメージだよね」ということを話しています。個人として昭和という時代によくないイメージを持っているわけではありませんが、過剰演出はいまや時代遅れな印象を持たれることは否めませんし、無駄なことをしている生産性が低い人だと思われるリスクがあります。

今の資料に求められているものはシンプルで理解しやすく、それでいながら強いメッセージ性がある資料です。ある企業での生産性の講演でこのお話をした際には「よくぞ言ってくれました。うちの会社は凝った資料を作る人が優秀と思われる節があり、みんな過剰品質がやめられないんです!」と経営者の方から握手を求められたこともありました。みんな薄々感じているもののやめるのが難しいのだと再認識しました。

“昭和度”が高い資料「4つの特徴」

ではまずはどこから資料の品質を最適にするか。それを知っていただくために、昭和度の高い資料の特徴をご紹介します。

昭和度が高い資料の特徴① 線が多い

表の罫線や見出しの囲み、領域を四角で囲んだ下敷きなど、線が多いとBusyな印象になります。私は外資系企業で働いていたので各国の資料を多く目にしてきましたが、日本の資料は総じて、線の本数や種類が多い印象です。

たとえば、表の外枠は太線、中の線は細線と点線などと使い分けています。同じような表でも海外の資料は罫線が少ないのです。罫線を引かず、数字の桁をそろえてある程度の間隔をあけています。これが見えない罫線の代わりになっているわけです。

また、1枚のページに複数の情報を書くような場合も間隔をあければ囲み線などは不要ですし、むしろ洗練されて見えます。これをとても太い赤線にしている資料などは、中に書かれている情報よりも、線に目がいってしまうのでノイズになっています。

まずは、線をどれだけなくせるかチャレンジしてみてください。想像以上にすっきりしてきますし、資料を作成する際の微調整もいらなくなります。

昭和度が高い資料の特徴② 色が多い

色数の多さも日本はダントツでした。それもビビッドな濃い色です。見る側になるとストレスを感じませんか? といいつつ、私自身ビビッドな色使いの資料を作っていた時代があり、「ビジュアルクイーン」なる異名をいただいていましたが、今となってみると気恥ずかしく思います。また、印刷する際は白黒にすることや、色の違いを認識しづらい方への対応という意味でも、多色使いはあまりおすすめではありません。無彩色(白・黒・グレー)でも十分に伝えることはできますので、色に頼るのはやめてみましょう。

昭和度が高い資料の特徴③ 装飾・演出が多い

立体グラフやエンボス(凹凸)加工などもボタンひとつでできるため、つい使いたくなりますが、これも時代遅れ感を醸し出してしまいます。Webやアプリケーションの世界では今はフラットデザインが主流です。リッチなグラフィックを駆使するのではなく、フラット(平坦)でシンプルな形を使用するデザインです。MicrosoftやGoogle、Appleなどがフラットデザインを採用していることからもグローバルで共通したデザインの在り方といえるでしょう。

過剰装飾を廃したシンプルなインターフェースに慣れてくればくるほど、その禅的な本質だけを目立たせるフラットデザインとごてごてデザインのギャップが際立ってきてしまいますね。

昭和度が高い資料の特徴④ 小さいイラストや写真が多い

写真やイラストは伝える情報量も多く、リアリティを感じさせますが、多用するとこれも逆効果です。たとえば、1枚のスライドの中に写真が何枚もあると、小さくなってしまうため、見る人は何の写真か認識できません。作成した本人はどんな画像か写真かを理解しているので、小さくてもわかりやすいと思いがちです。情報量が多い写真やイラストは資料をBusyにしがちです。1つのスライドでせいぜい2枚までにしておいたほうがよいでしょう。

作成や使用の過程にも「過剰の罠」が

表現の過剰についてお話ししてきましたが、作成の過程にも過剰になってしまう罠(わな)があります。

過剰の罠① 前任者からの引き継ぎ

前任者から引き継いだ仕事はまずは過剰を疑ってみましょう。前任者のこだわりや、例外的な依頼などで付け加えてそのままになっている場合があります。もっと大胆にするなら、いったん作成するのをやめてみてもよいでしょう。それで問題がないようであれば、品質ではなく資料の存在自体が過剰ですから、作成自体をやめてしまいましょう。

過剰の罠② 身内の会議にてんこ盛りの資料

資料は相手との距離感に応じてどこまで手をかけるかを決めましょう。最近目にするのは社内の資料なのに非常に凝ったプレゼン資料を準備しているケースです。会議の半分以上をその説明で費やして肝心な意思決定ができないことも。長いパワーポイントを薄暗い状態で見ていると段々眠くなってきますね。これは「パワポ死」とよばれる現象です。

Facebook社をはじめとしたいくつかのグローバル企業では社内ミーティングでのパワーポイントを禁止しました。これによって、資料作成の時間、説明を理解する時間が大幅に短縮され肝心な議論に集中できるようになったとのこと。発表する人も資料に頼れないので、きちんと情報や考えをまとめて話すようになったともいわれています。コピー&ペーストで量産された資料はまさに過剰です。自部門会議であれば思い切って資料なしにしたり、それが無理であれば、ワードで議題だけ、ホワイトボードに手書きにするなど資料自体を減らしてみてはいかがでしょうか?

過剰の罠③ 使用用途を把握せずに作成している

実際にあった例で説明します。私の部下が資料作成で残業続きのため調べてみると、10くらいある他部門からいろいろなリクエストがあり、それに対応しているのでとても時間がかかっているとのことでした。

資料がどう使われているかを追跡調査をしてみると、どの部門も経営会議の報告資料にその資料を入れているということがわかりました。つまり提出先は同じにもかかわらず、バラバラの情報提供を求められていたわけです。これは私の部下だけではなく、10部門の担当者の時間もそれぞれまとめるので無駄です。交渉して10部門同じ形式でまとめて提出させてもらうようにしたところ、作成時間は劇的に減りました。依頼が重なってきたら「どんな目的でどんなふうに使うのか?」を確認すると過剰作成を防げます。

過剰の罠④ 「あれ、どうなってる?」に過剰反応

偉い方(上位職の方)がたまたま思いついたことに対して、「あれ、どうなってる?」と言うとお付きの方から「大至急⚪⚪の情報を提出してください!」と号令が下り、緊急かつ重要な仕事としてふってきて予定外の残業……という経験をした方は少なからずいるのではないでしょうか?

これは少なくない範囲の方々に影響が及ぶことも多く、一度「あれ、どうなってる?」のために費やした資料作成時間を算出したところ、30万~200万円くらいになったことも。

本当に経営視点や管理視点で重要な情報であれば対応が必要ですが、たまたまの思いつきに過剰に反応して資料を求め、かつそれを定期的に提出することになると過剰な資料がどんどんと増えていきます。金額換算してみるとその無駄に気づくことにつながります。

影響範囲と品質レベルを意識する

『できる人が絶対やらない資料のつくり方』

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また、中間管理職の方の裁き方によっても大きく変わります。実際に私がついた上司の方も、「XXさんが言ってるんだから至上命令! とにかく細かく正確に!」と過剰品質レベルにする人と、「今はざっくりわかればいいからね」と最適品質にする人に分かれ、当然ながら部下である私の作業量も大きく変わりました。中間でかかわる人の反応によって過剰が増幅していきますので、資料の依頼者、とくに上位職の方は影響範囲と品質レベルを意識して依頼したほうがよいでしょう。

いつもやっている資料の「当たり前」を少し疑って、どうやって使われるのかを追跡調査し、それを達成するための最適品質は何かを問い、過剰演出をやめてみましょう。生産性が注目されている今が、メタボ資料体質からの変換のチャンスです。

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清水 久三子 :オーガナイズ・コンサルティング代表取締役・人材育成コンサルタント

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提供元:もはや昭和!過剰品質「ダメ資料」4つの特徴│東洋経済オンライン

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