2017.06.22
「PDCA」より仕事を速く進める"逆転の思考"|たったひとつのコツで大きな差がつく
より短期間で確実に成果を得る方法とは?(写真:ワトソン / PIXTA)
昨今、ビジネスパーソンの間で「PDCA」による仕事の効率化に再び注目が集まっています。ところが、その手法に異を唱えるのが金川顕教氏(近著に『すごい効率化』がある)。
大学在学中に3大難関国家試験である公認会計士試験に合格、その後外資系企業の激務をこなし成果を出しながら、起業準備の時間も捻出してきた金川氏は、より効率的なやり方があるといいます。この記事ではその具体的な手法を紹介します。
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「PDCA」で計画を立てるのはベストではない
業務の効率化を図る古典的な手法に、「PDCA」という考え方があります。最近はその大切さが再認識され、ベストセラーとなるビジネス書もいくつか出ているようですからご存じの方も多いかと思いますが、PDCAとは、Plan-Do-Check-Actの略。すなわち、計画→実行→評価・検証→改善を繰り返すことにより、各段階をレベルアップさせ、業務を効率化していくのです。
しかし、結論から述べるなら、新たに何かをしようというとき、普通にPDCAで計画を立てることから始めるべきでない、というのが私の考えです。理由は、まだやっていないことについて、有効な計画は立てられないからです。
計画を立てることから始めるのは危険だということを、私は公認会計士試験のときに痛感しました。大学に入るのもやっとだった私が、大学3年生までのたった2年間で公認会計士試験に合格するという目標を果たすには、悠長に計画を立てているわけにはいかなかったのです。
いったいどう勉強したら、試験に受かるのか? 普通に考えれば、テキストを読み、問題集をやってから、試験を受けるというP(計画)→D(実行)の順序です。しかし、試験で不合格となれば、C(評価・検証)してからA(改善)をして、初めからやり直しになってしまいます。これでは、大学在学中に公認会計士試験に合格するという目標を到達することはできません。
合格という結果ベースで考えると、自ずと「CAPD」、つまり、評価からスタートさせるべきだという考えに至りました。たとえば、試験に受かった人はどうやって勉強していたのか。一方で、落ちた人はどうしていたのか。不合格の人はどこを改善すればよかったのか。そうした評価(C)の視点から、改善点(A)を理解したうえで、計画(P)を立て、実行(D)すれば、より短期間で確実に、成果を得られるはずです。
世間で広く知られるPDCAではなく、評価・検証から始まるCAPDサイクルで回すこと。これこそが本当に効率的な手法なのです。
上司に言われるがままでは、いい結果は望めない
では、なぜ評価・検証から始めたほうが効率的なのか。その部分について、もう少し詳しく考えてみましょう。
おそらく多くの人は、計画ばかり立てて実行ができていないか、もしくは計画を立て、実行もしているけれど、日々の仕事に追われるばかりで検証ができない、あるいは計画も立てずに作業だけをしているのではないでしょうか。いずれにしろ、PとDだけになっている人がほとんどで、本来のPDCAのサイクルを回していないことになります。
ただ、こうなってしまうのは、環境のせいもあるかもしれません。日本の会社組織では、ある仕事を行う際に、その前にどうしていたかを確認することが求められるはずです。私が勤務していた外資系の企業でも、何か計画するときには前年から3年ほど前の結果を見てから、書類を作成していました。ただし、過去を振り返ることはあっても、実際にそれを評価・検証しているかというと、そこまではしていないケースがほとんどだったと思います。
つまり、「過去を評価して改善から始める」のではなく、「過去のありもので準備をして、とりあえず始める」という状態です。しかし、「過去を振り返るだけ」と、「それを評価・検証する」のでは結果がまったく違ってきます。
仕事でなくても、海外旅行に行くとして、前回は直前に決めたせいで手配が大変だったから今回は2カ月前に予約しようとか、予備のバッテリーを持っていかず失敗したから今回は持っていこうとか、前の経験を評価してから計画を立てたりします。そのほうが「今年もそろそろ海外に行こうか」と、なんとなく計画するよりも、ずっとスムーズな旅ができるはずです。
プライベートの旅行なら失敗してもいい思い出ですむかもしれませんが、ビジネスの場では結果が出なければ仕事をしたとはいえません。
それでは具体的に、仕事の場でうまくCAPDを回すにはどうしたらいいでしょうか。
「自分」「結果が出ている人」「出ていない人」を比べて評価
私が最初に行ったのは、効率的に仕事ができている人を評価することでした。たとえば、自分の周囲に際立って仕事ができるX先輩がいるとします。旧来のPDCAであれば、「X先輩を目指そう」と計画を立てることから始まります。しかし、CAPDだと、「X先輩は誰よりも速く仕事を終えているのに、いつも結果を出しているのはなぜだろうか?」と、評価するところから始まるのです。
この場合は、ズバリ本人に聞いてもいいでしょう。
「仕事が速いのに、そのような結果を出せている秘訣はなんでしょうか?」
「私は営業に苦手意識がありまして、改善するのはどうしたらいいと思いますか?」
このように、どんどん具体的なポイントを挙げてもらうのです。その結果、
「俺の場合はこうしているけど……」
「きみの課題はスケジュール管理にあると思う」
といった評価が見えてくれば、すぐに取り込んで改善ができます。直接、聞くことができなくても、X先輩の行動と自分の行動を比較して、評価することもできるでしょう。
一方で、結果が出ていない人を評価することも大切です。同僚のY君はまじめに頑張っているように見えるのに仕事が遅く、結果も出ないが、X先輩とはどこが違うのか、観察し、評価するのです。たとえば、あるプロジェクトで、X先輩は「走りながら考えよう」という思考だったために、途中でトラブルがあってもフォローができた。しかし、Y君は「すべてを完璧にしないと進めない」という思考だったために、納期に間に合わなかった。そのように違いがわかれば、「走りながら考える」を取り入れてみよう、などと考えることができます。
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自分だけでなく、周囲の第三者も評価したほうがいいのにはほかの理由もあります。自分自身の弱点というのは、評価する際の物差しがないと、意外と漠然としたものになってしまうためです。周りを見て比較し、「評価を見極める」ことが必要です。
近年はインターネットの普及により、誰もが同じような情報を得て、同じような計画を作ることができます。ありきたりの計画から始めるのでは、他人より速く、質の高い仕事をするのは難しいのではないかと思います。必要なのは、最初に行う評価・検証の精度なのです。
金川 顕教 :Social River代表取締役
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提供元:「PDCA」より仕事を速く進める"逆転の思考"|たったひとつのコツで大きな差がつく|東洋経済オンライン